厚沢部川水系小鶉川
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魚道はダムと同じもので、河床低下が起きる。
この小鶉川は、どこか懐かしい故郷を思い起こすような美しい川だ。サクラマスが産卵し、カワセミがヤマメを獲り、釣り人がヒグマに驚く。この中流域に古い農業用取水堰がある。。その取水堰に魚道建設計画が浮上した。
「魚が上れないよりも上れた方がいいべ。んだら、ここに〇つけろ…」 土地改良区が、集落の大方、お年寄りである農家からアンケートを集めた。そして、魚道建設は決まった。
この農業用取水堰は非灌漑期はゲート板は転倒しているから魚道は不要だ。また、川が増水すればゲート板は自動的に転倒する。魚は増水の引き際に上るから、この取水堰は障害にはならない。上らせる魚はサケやサクラマスだという。サクラマスは遊泳力があり増水時に上るし、サケは非灌漑期に上ってくるから何の問題もない。
ウグイやアユは水産業とは無縁であるし全く影響は受けない。なぜならここには取水堰を外れた副流川があり、そこを往来しているからだ。【図-①】
私たちは、魚道は要らないと主張した。すると「堰の下に上れないで集まったサケをヒグマが食べに出てくるので危険だ」という地元農家の意見が突然浮上した。何故か「サケを上らせるため」が、「ヒグマが危ないから」になってしまったのである。
取水堰の下には湧き水帯があって、サケはそこで産卵するために集まっているのが実際だ。 取水堰を上れないのが問題ではなくて、上る必要がないのだ。魚道が出来たらヒグマは出ないのか?それは有り得ない。サケは堰の下にある湧き水帯で産卵したいのだから。
改良区が、容易に造れると思った小さな集落の頭首工の魚道問題は、後に、論争へと発展する。事業主体者である檜山振興局農村振興課が、検討委員会を立ち上げ、御用者たちが集められた。コンサルト会社の魚家が、魚道は必要だと主張。川の専門家は、引き込み型の魚道を提案した。【図-②】
予算が付いたのだから何が何でも魚道は建設するという意気込みだ。
更に、コンサルは、魚道に入るには水深が必要だとして、コンクリートの堰を建設してプールをつくることを提案。【図-③】
そして、魚道の入口まで上れるように外側にも魚道を建設した方が良いと言い出した。【図-④】
その提案が、事業主体者に通ると、今度は、その魚道に入るための水深が必要だと主張しだして、川にコンクリート堰を建設してプールをつくることを提案した。【図-⑤】
こうして、特盛りの魚道が建設されることになった。
ここで新たな問題が見えてきた。魚を上らせるために河川横断工作物を建設して水が溜まるようにプールを造ったことだ。この工作物は、砂利を止める砂防ダムと全く同じ構造である。即ち下流で必要とする砂利は滞る。
そして、下流の川底は砂利が流され始める。苔むした石も流されてしまう。
美しく豊かな川は、すでに現在、石の移動が激しくなり、減少し、荒れ始めている。
特盛りに建設された魚道は河川横断工作物、砂防ダムと同じ働きをするので、その影響は必ず下流に現れる。私たちは、魚道の完成後から経過を観察し取材を続けている。
やはり川底の砂利は流され、川底が下がり、とうとう岩盤が露出してしまった。この岩盤は軟弱なので、侵食されて剥がれるように流され始めている。どんどん深くなっていくだろう。川岸は砂利が抜かれて、木の根が剥き出しになっている。今は、根が川岸の砂利を押さえ込んでいるが、遅かれ倒れ込む。河畔林を失い川岸は更に崩れ、土砂や流木災害を発生させることになるだろう。
魚道建設の目的は何だったのだろうか…?
川底の砂利が失われて岩盤が露出すれば、魚は繁殖場を失ってしまう。卵を産んでも砂利ごと流される。川岸が崩れれば、卵は泥を被って窒息死する。魚道とは、結果的に多くの魚を殺していることを知っていただきたい。
岩盤が露出したことで、ここで産卵していたサケは産卵場を失ってしまった。
「魚道はダムと同じ」であることを知っていただきたい。