野田追川水系中二股川

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野田追川の支流にある。取材中、中二股橋の上流側で河岸が崩壊していることが分かった。この川には中二股川砂防ダムがあり、更に上流の国有林内に7基の治山ダムがある。

この崩壊は、河床低下に原因があると思われる。橋の下流側でも河床が下がっており、左岸は垂直の崖状になり、草木は根が剥き出しになって倒れ込み、川岸を包み込むように覆い被さっている。その左岸に当てられた布団カゴ(金網に砂利を詰めた護岸工)が、壊れているのが見える。川岸や川底に砂が目立ち、砂利の大きさも小さいことから、上流にあるダムが砂利を選り分けていることが覗える。

2019-06-18・加工済・野田追川支流中二股川・KAZ_0046
中二股川橋の下流側。左岸は草木で覆われているように見えるが、川岸が崩れて崖化している。河畔林の根は、剥き出し傾いて草木と共に崩れた川岸を覆っている。これが河床低下を示す姿である。
2019-06-18・加工済・トリム・野田追川支流中二股川・砂利の粒径が小さい・KAZ_0051
川の砂利は大きな石が見当たらず、小ぶりの石や砂が川岸にも川底にも堆積している。このことから、この上流で川岸や山斜面が崩れていると読み取れる。
2019-06-18・加工済・野田追川支流中二股川・KAZ_0038
橋の上流側の左側(右岸)が崩れている。砂山崩しと同じ仕組みだ。河原の石は小さい。渓流には巨石がごロゴロあるものだが、巨石は無い。つまり、流されっ放しで供給も断たれている。
2019-06-18・加工済・野田追川支流中二股川・KAZ_0044
斜面の上で農地開墾されているが、そこから水が流れ崩れたのではない。また、途中に地下水が浸み出しているが、これが崩壊の原因になった訳でもない。農地の縁は、水で削られてはいないし、今、地下水が斜面をズリ落とした筈もない。従って、川底が下がり、斜面の下部が砂山崩しのように浸食され、崩壊したといえる。
2015-06-19・加工済・トリム・野田追川水系中二股川・砂防指定地看板・KAZ_0004
砂防ダムは、砂防指定地にされてから建設される。中二股川砂防ダムは昭和42年(1967年)に建設されている。48年が経過した砂防ダムである。
2015-06-19・加工済・トリム・野田追川水系中二股川・砂防ダム・KAZ_0188
中二股沢川とあるが、地図表記は中二股川。堤高10.2mある、深い渓谷なのだ。
2015-06-19・加工済・野田追川水系中二股川・砂防ダム・KAZ_0172
螺旋型の魚道が付いた二股川砂防ダム。ダム下流側は、小ぶりの石ばかりで、あるべき沢山の巨石が無い。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの直下・KAZ_0145
砂防ダムの直下。ダムから流れ出る石の大きさは、せいぜいサッカーボール大。それよりも小さな石や微細な砂、シルトばかりが大量に流れ出ている。つまり、一旦、ダム下流の巨石が流されてしまうと、上流から巨石は供給されなくなるということだ。従って、ダム下流では川底の砂利は流され易く、川底はどんどん下がっていくことになる。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの直下・KAZ_0115
砂防ダムの直下。巨石が少なく、小ぶりの石ばかりになっている。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの直下・KAZ_0132
中二股川砂防ダムから下流を望む。砂利を失い、岩盤が露出している。明らかな砂利不足である。また、巨石は殆ど無く、僅かしか残っていない。これがダムの影響の姿である。ダムから川底が下がったところでは川岸が崩れ、川に面した山の斜面が崩壊する。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0136
ダムの堤体に押し寄せている砂利は小ぶりの石ばかりである。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0139
砂防ダムから上流側の堆砂域を見る。ここは深いV字谷だったところだが、まるで下流域の風景になった。流速の緩い構造を創出させ、川の仕組みを壊したのだ。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0032
ダムの堤体に押し寄せる堆砂。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0102
ダムの堆砂域からダムを見る。ダムへ向かって押し寄せる砂利は小ぶりのものばかりだ。ダム堤体よりも盛り上がっている。深いV字谷だったところが、砂利で埋まり、河床を押し上げ、その上を水が蛇行しながら流れている。あり得ない光景だ。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0035
川底が押し上がり、広くなった河原を水が蛇行して流れるようになる。そうすると水が届くことが無かった山の斜面に水流が当たるようになり浸食され、山斜面が崩れ始めることになる。山斜面の木は、根が剥き出しになって倒れ込み始めている。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0051
山の斜面が崩れ始めている。砂山崩しのように、大規模に崩壊するようになるだろう。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0053
山の斜面がどんどん浸食されているので、土砂災害、流木災害が発生するのも当たり前だ。予期せぬ大雨ではなくて、ダムによって崩壊が準備されている。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0072
ダムがなければ、水が届くはずがない場所で、こうした崩壊が起きるはずもない。ダムによってもたらされる新たなる災害である。
2015-06-19・加工済・野田追川支流中二股川・砂防ダムの堆砂・KAZ_0084
ダムは、ダムの堆砂容量を遙かに超えた砂利を、更に上流に向かって貯め続けている。川底を押し上げ、川幅を広げ、その上を水が流れ蛇行して暴れる。ついには山の斜面を崩すようになり、災害を多発化させる。

ダム上流では、砂利が貯まると、川底は上昇し、川幅が広がる。その上を水が蛇行して流れると、山の斜面を浸食し始める。そして、山が崩れて土砂が流れ出し、流木が発生する。災害が起きるのは、当然の帰結。

中二股川砂防ダムが貯め続けているこの砂利は、一体どこからどのような仕組みで流れ出してきたのだろうか…?ダムの下流では砂利が流されていく。ということは、上流の7基の治山ダムがこの砂利を生み出していると読むことが出来る。

各地で次々に建設されてきた治山ダム・砂防ダムが、砂利を止め、川底を押し上げ、川幅を広げる。川が暴れるようにしてきたのは河川行政である。近年の土砂災害は、ダムによって引き起こされているものが多い。自作自演の災害は、失われなかったはずの人の命が、人によって奪われている。これからも続くのかと思うと、この国の河川事業に大いに疑問を持つ。行政と科学者たちは、人の命を奪っている原因の真実を認め真摯に向き合うべきだ。私たち国民も、行政任せにせず、これからは自己防衛の為に現場をよく見て知る必要がある。そして災害の原因を知ることで河川事業に改善を求めていくことが出来るだろう。