宿野辺川

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ワカサギ漁が行われている大沼に注ぐ川である。土砂の流入を防ぐ目的で、1995年に2基、1996年に1基の合計3基の砂防ダムが建設された。その当時、漁師に「砂防ダムを建設したら、泥水が出るようになり、ワカサギ資源に影響が出る」と、口が酸っぱくなるほど伝えたが、信じては貰えなかった。漁協は、砂防ダムの建設を容認してしまったのだ。

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3基の砂防ダム建設に伴い、ダム下流から国道5号線までの間を、河床低下を補う為に、川底に巨石を埋め込み岸に陳列され、自然の川岸は異様な姿に変わっていった。

砂防ダムが完成して間もなく、大雨で増水した宿野辺川から、大量の土砂が大沼の文吉湾に流れ込み、湾を埋めてしまったのだ。被害を受けて、初めて砂防ダムの影響を知った漁師が、「流域の自然を考えるネットワーク」の代表である。

手痛い被害を被った漁師の経験が、漁師を動かした、こんな出来事があった。巨大な砂防ダムを持つ桧山地方瀬棚町の須築川では、サクラマス資源の減少対策として、河川管理者が提案した「ダムに付帯した魚道改築」を、桧山漁協は拒否している。当ネットワークの代表から「ダムがある以上は資源の回復は見込めない」と聞いたからだ。桧山漁協は、ダムそのものの撤去を求めたのだ。

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砂防ダムを建設すれば、その下流で川底が下がる。川底が下がると川岸が崩れる。河川管理者は先手を打って、川岸に巨石を置いて固めた。
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ダム建設と同時に施工された巨石護岸。自然河川なのに、まるで遊園地のアトラクションだ。河川管理者は、砂防ダムの影響で河岸が崩壊することを知っているのだ。
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右が砂防ダムのある川。正面の支流はダムの無い川だ。ダムのある川の河床が下がれば、この支流の砂利も引っ張られて流れ出す。既に支流の河床まで下がり始めている。

2004-04-17・加工済・宿野辺川砂防ダム・堆砂 021ダムの無い支流でも、河床が下がり、河岸が崩れている。砂防ダムの影響は、支流へも波及することを知っていただきたい。

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3基の中で一番大きな1号砂防ダム。堤高7m、堤長113m。ダム下流は、見事に川底が下がっている。
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1号砂防ダム。
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1号砂防ダム。
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ダムの上は、砂利で一杯になっている。溜まっているのは砂利ではなく、砂ばかりであることが調査で判明している。
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砂防ダムも治山ダムも、砂利が一杯に溜まると、堆砂域は安定する為に樹林化する。そうなると、ダムを越えて流れてくる砂利は極端に少なくなる。
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堆砂域の立木は、ダムそのものがプールのようなものなので、砂利の下は水で満たされている為に、根腐れして枯れてしまった。

 

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2号砂防ダム。堤高4m、堤長57m。既に砂利で一杯だが…。河川管理者は砂防ダム建設時に掘った土砂を、そのままダムに放り込み埋めたと言う。

河川管理者は、ダムの建設で発生した土砂を、完成したダムに放り込み埋めたと言う。その理由は、「砂防ダムは満砂になって機能を発揮する」と説明している。どういう意味なのだろうか…?

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ダムに埋めた土砂が、取り付けられている魚道の入口を塞いだようだ。その取り除いた土砂を、今度は堆砂域に盛り付けている。増水したら崩れて流れ出すのではないか。土砂災害を防ぐ目的で建設した筈である。こんな本末転倒なことが行われているのが実際だ。

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2号砂防ダムの下流側。河床は下がっている。
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左右のコンクリートブロックは、元は川底に敷き詰められていた床固工だ。まさに底が抜けて、垂れ下がっている。まるで護岸のブロックかと見間違う程の河床低下だ。
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川底に敷き詰めてあったコンクリートブロックが、左右とも垂れ下がっている。護岸ではない。
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コンクリートブロックが見事に垂れ下がっている。川底に敷き詰めてあったコンクリートブロックの床固工だ。底が抜けて左右とも垂れ下がっている。護岸ではない。

 

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一番上流にある3号砂防ダム。堤高5.5m、堤長82m。
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砂利で一杯になっているが…

この3号砂防ダムも建設中に掘り出した土砂を、ダムに放り込んで平らにならしたそうだ。ここでも河川管理者は、「砂防ダムは、砂利で一杯になってから効果を発揮する」と説明している。はてな?である。この発言をした担当者は、「私が犯人です」と、言っている。何故なら、他所では「ダムが砂利で一杯になると、更に砂防ダムを追加して建設しなければ土砂を防ぐことが出来ない」と説明しているからだ。

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3号砂防ダムは、埋められた土砂の上に草木が生えている。

大沼の文吉湾を土砂で埋めたのは、微細な砂やシルト分である。砂防ダムが振るい分けたものと、河床低下で河岸が崩れたものが、大量に流れ込んだようだ。

砂防ダムは、土石流災害を防ぐ目的で建設される。では、本当に危険な土石を抑止しているのだろうか。河川管理者と現地調査をした。

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一番下流の1号砂防ダムに溜まった土砂を掘り起こして、土石があるかどうかを調べた。
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砂防ダムの堆砂域は、流速が極めて遅くなる。その為、砂防ダムの流れ込み付近には大きな石が溜まり、逆に流れ出す付近には微細な砂やシルトが堆積する。
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掘っても掘っても石ころは出てこない。微細な砂ばかりである。
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掘っても掘っても、厚く堆積した微細な砂の層だ。
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深い所で石が出てきたが、元からその深さにあった石のようだ。
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見事なまでに堆積した微細な砂やシルト。
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掘削しても土石流の原因となる土石は出てこない。微細な砂とシルト分と黒く変色した腐った葉っぱの有機物だけだった。

1号砂防ダムの堆砂域の掘削調査によって、砂防ダムは流れてくる土砂から微細な砂やシルトを選り分けて堆積させ、増水時には巻き上げて大量に流れ出すことが読み取れた。そしてダムは、土砂から微細な砂やシルトを選り分けて、下流に流す役割をしていることが解った。砂防ダム、治山ダム、さらには灌漑や治水の巨大ダムなどは、川に重大な影響を与えることが分かる。では、どうすれば良いのか?「ダムを撤去」すれば良いのだ。桧山漁協が、求めたように。