壊れた川
少しの雨で泥流となる壊れた川
今では、ちょっとした雨で川は泥水となります。
あっちの川も、こっちの川も、どの川からも泥水が流れ出し、沿岸は泥の海となります。
泥水が流れる川は異常な状態なのです。
海に流れ出した泥水は沿岸に深刻な影響を与えます。
泥(微細な砂やシルト)は海底に沈殿し、海藻は泥をかぶり、生存を脅かされることになるのです。みなさん、思い出してください。えりも岬が泥の海になったとき、海藻が消えて磯焼けになったこと、魚が寄りつかなくなったことを。今、日本海や太平洋岸で磯焼けが広がり、影響は深刻さを増しています。しかし、科学者たちは磯焼けの原因が泥水にあるなどとは決して口にしません。えりも岬に事例があっても、誰も真実を言わないのですから、とても不思議なことです。海藻が消えたのは、ウニが食べ尽くしたせいだと言うのです。
私が、水中カメラマンとして北海道の海域を潜っていた30年程前は、海に泥水が流れ込むようなことはありませんでした。大雨が降ってもどこまでも美しかった海を懐かしく思うほどです。コンブやワカメが繁茂した海底に、エゾバフンウニが群がり、緑がかった茶色の塊になって、まさしく馬糞のごとく、あちこちに転がっていました。漁師は「なにぃ~、ウニが海藻を食い尽くしたって?、学者先生は、な~んも解ってねえ。ウソだべさ」と大笑いします。確かに、海藻がびっしりだから、ウニは代々絶えることなく生きて来られた訳です。ウニが食い尽くしてコンブやワカメが絶滅するなんて有り得ないことです。ウニだって食べるものが無くなれば生きていけない訳ですからね。疑問を大いに感じてください。
泥水が流れる川では根付きの河畔木が流れ出すことも多くなりました。
川岸の木が倒れ込み、流木となった
根っこ付きの木が次々に流れてくるようになった
流れ出した木は橋脚を壊し、沿岸にまで流れ出て、定置網やホタテ養殖ケタに引っ掛かり、漁業被害をもたらすようになりました。
壊れた川では川岸が崩れていく
河床(川底)が下がり、傾らかだった川岸は段差ができ、崩落して崖のようになります。
それに伴って、河畔の木は倒れ込み流されるのです。いつの間にか氾濫原も無くなってしまい、川幅が広がっていきます。
洪水で川岸が崩れると、補修工事が行われます。
川岸はコンクリート護岸に作り替えられ、水際まで草木が生えていた自然の川岸は、どんどん失われて来ました。
その後も、川底はどんどん下がり続け、川岸の崩壊は止めどなく続くようになりました。
どんなにコンクリート護岸で補修しても、再び基礎が抜けて崩壊します。崩壊しては補修する工事が繰り返されているのです。
コンクリートに埋められた石の4段目の列が水面
コンクリートの石の7段目の列まで水面が下がった
川が壊れる根源である河床低下の問題が置き去りにされているので、被害は拡大するばかりになっています。だから、工事は延々と繰り返され、工事のたびに、被害の規模が拡大しています。みなさんの税金が莫大に失われているのです。何の効果もなく、ただただ工事を繰り返すためにだけ使われているのです。
川が壊れるはじまりは、ダムだった
「雨が降れば、川が濁るのは当たり前」
「山の木を伐ったり、開発したから、川が荒れるのは当たり前」
「昔、川から砂利を採ったから、川底が下がった」
本当でしょうか…?
何度も何度も川を見ているうちに、川が壊れるその始まりは、ダムであることに気が付きました。