北海道のヒグマ対策について…知事へ質問書提出。

北海道は、人とヒグマの共存する社会やヒグマの地域個体群の保護を目途に、30年以上に亘りヒグマ対策に取り組んでいる。しかし、札幌市近郊の住宅地にヒグマが出没する度に、檻罠を設置して問題グマ以外も含めた無差別な捕獲を行い、容赦なく猟銃で殺処分している。この現状について、「北海道の羆問題を考える会(ヒグマ研究者の門﨑允昭氏らで構成)」は、北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)が、本年度中に改正されるのを機に、2021年4月5日に、北海道知事宛に質問書を提出した。

春先、道路の法面のフキノトウを食べるヒグマ。

驚くことに、現行のヒグマ管理計画では、情報を得た時点での出没を抑止する対策がされていない。この管理計画は、ヒグマの出没情報を得ると、まず「出没個体の有害性判断フロー」の手順に従って、出没しているヒグマを抑止ではなく徘徊させたままにし、その間に「経過観察」や「調査研究」を行い、その結果をもって、どのような対策にするのかの選別をする手順になっている。つまり、ヒグマの出没を迅速に抑止することよりも、「出没個体の有害性判断」を目的にしたものなのである。こんな対策では、いつまで経っても人とヒグマとの共存は確立できない。ヒグマの地域個体群の保護もままならず、ヒグマの出没騒ぎが収束する気配は無い。

このような計画では、同一個体が徘徊を繰り返すと出没情報が増えるため、あたかもヒグマの生息数が増えたかのように錯覚させる。研究者や専門家ですら、「ヒグマは確実に増えている」と豪語する始末である。判断能力や学習能力などヒグマの習性の考慮に欠けた無知な研究者や専門家の提言を鵜呑みにしているとヒグマは絶滅に導かれてしまう。

出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ対策の枠組

ヒグマの徘徊を放置していれば、その間にヒグマは身に危険が無いことを学び行動範囲を広げ、食べ物があれば食し、居心地がよければ居座るようになっていく。ヒグマに限らず、エゾシカ、キタキツネ、エゾタヌキなど学習能力のある野生動物に共通したごく普通の習性である。

札幌市南区のヒグマ出没騒ぎの報道では出没時間帯は夜で、昼間はどこかに身を潜めているという。それならば、一刻も早く出没経路を特定し、ヒグマが人里で諸々のことを体験する前に、学習する前に、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖して出没を抑止しなければならなかった。それを怠った為に、ヒグマは徘徊を続け、住宅地を歩き回り、警察官やハンターが出動したもののヒグマを目の前にして、手も足も出せない状況を作ってしまったのである。北海道が、「人とヒグマとの共存」を目指しているのであれば、野生のヒグマを初期に「しつける」。「やっていいこと、悪いこと」を学ばせる。つまり、電気柵を活用して、そこから先は「人間のなわばり」という境界線をヒグマに学ばせることが”要”となる。

最近では、「人を見ても逃げない、人を恐れない”新世代ベアー”が出現するようになった」とヒグマの研究者や専門家たちが苦言しているが、己の無知さに気付くことなく、手に負えなくなると、新たな習性を持ったヒグマが出現するようになったと言い訳しているに過ぎない。この”新世代ベアー”なる新語の発祥の地は、世界自然遺産登録の知床ウトロである。管理する知床財団は、ヒグマが現れたら人が引き下がるように指導し、推奨している。

知床財団はヒグマの前で人が引き下がるような対策を提唱している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

知床五湖の遊歩道ではヒグマが現れたら、案内人がヒグマの目の前で観光客を引き下がらせ、遊歩道をヒグマに明け渡す。その後、遊歩道は閉鎖にする。この対応は、ヒグマの習性に基づいた、正しい対応と言えるだろうか?

知床五湖の遊歩道は閉鎖になり、ヒグマが居座れば、いつまでも閉鎖のままになる。

「人は引き下がり、道を譲ってくれる」と学んだヒグマは、次に人に出会った時、逃げるどころか人を見ても恐れもしない。やがて、彼ら研究者や専門家の言う”新世代ベアー”に仕立て上げられていく。この誤った対応によって、ヒグマは知床五湖の遊歩道を自分の「なわばり」と認知する。その結果、世界遺産登録後の知床五湖の遊歩道は、人は自由に利用することが出来なくなった。野生動物の習性を知っていれば、誰もが読み解ける流れである。

では、管理計画の出没を抑止しない理由は何故なのか?それは、学術調査が目的になっているからである。下記の表、北海道のヒグマ関連予算を見れば一目瞭然である。

北海道のヒグマ関連予算。

ヒグマの研究者や専門家たちは、人里に出没したヒグマを個体識別する目的で、ビデオ撮影やDNA分析用に体毛採取をしている。その目的のために、「芳香剤」や「餌」でヒグマを誘引する「餌付け」をしているのである。この「餌付け」行為は、調査や研究が目的なら良いと言う事は断じてあってはならない。

芳香剤に誘引されて現れたヒグマ。芳香剤の臭いを嗅いでいるのが分かる。    出典:道新ニュース。北海酪農学園大学佐藤喜和教授らが2019年6月11日に撮影したというビデオ映像から。

道新NEWS:https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/6050307841001

北海道や知床財団は、食べ物などでヒグマを誘引すれば、人と食べ物を関係づけるようになるので、食べ物などで誘引しないように指導している。一般人には「餌付けはするな。誘引するような物は置くな。」と指導していながら、研究者・専門家たちが、調査の為にやる「餌付け」行為は、容認しているのだから、呆れた話である。2021年4月、第204回国会に提出された自然公園法の改正案には、ヒグマの「餌付け」行為を厳罰化する目的で、国立公園や国定公園の中の「特別地域」などの範囲に限って野生動物への「餌付け」行為を規制し、30万円以下の罰金を科すとしている。地域限定とはなっているが、国立公園であろうがなかろうがヒグマはヒグマなのだから、調査や研究目的で芳香剤や餌で誘引する「餌付け」行為が招く問題も同じなのだ。調査、研究目的においても「餌付け」行為は即刻禁止すべきである。

知床財団は人間と食べ物を関係づけるから放置しないように指導している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

そして、芳香剤や餌で誘引する「餌付け」調査は止めさせることだ。「餌付け」行為により、問題が発生し、何よりも人とヒグマとの関係が歪められてしまう。よって、現状のような調査が続く限りは、いつまでも人とヒグマの軋轢は低減することもなければ、人的被害の危険性はますます高まるばかりとなる。今のままでは、「人とヒグマとの共存」など到底実現し得ず、地域個体群の保護も出来る筈もない。

現在のヒグマの調査・研究は、芳香剤や餌でヒグマをおびき出す「餌付け」や、GPS発信器の首輪をつけたり、家畜の牛につける耳タグを付けたりしての調査を続けているが、こうした、うわべだけの、こぎれいで、安直な調査を繰り返している限りは、ヒグマという動物を理解し得ることは出来ない。自らが山に入り、汗をかき、踏査して野生のヒグマにたどり着き、ヒグマと長く対峙してこそ、ヒグマという動物がどういう動物なのかが見えてくるものだ。判断力や学習能力のある動物の気持ちまで読み取れるようにならなければ、相手を理解することなど出来るはずもない。手早く成果を挙げたいがために、短絡的に研究対象として扱っていれば、ヒグマ対策は根拠の無いものになってしまい、いつまで経っても功を奏しない。

研究者が識別しやすいように目印として家畜同様に耳タグがつけられ、首には重たいGPS発信器を付けられたヒグマ。
両耳には耳タグが、首には重たいGPS発信器を着けられたヒグマ。上を向けば肩にズリ落ち、下を向けば顎にぶつかる。首の毛は擦れ、見るからに痛々しい。

現行のヒグマ管理計画は、ヒグマの徘徊を抑止しておらず、その間にヒグマは諸々のことを学び、徘徊を繰り返している。その結果、手に負えなくなったという理由で、檻罠で捕獲して殺処分する…という流れになっている。北海道は、現行の計画がこうした流れになっていることに早く気がついて欲しい。もうこれ以上、無意味で無差別なヒグマ惨殺劇は止めるべきだ。よって、現行の「北海道ヒグマ管理計画」は、ヒグマの習性を考えた計画に練り直し、何よりも真っ先に出没を抑止する対策に変更した新しい計画を立案して欲しい。ヒグマが人里を体験し、学習する前に、すみやかに出没経路を特定し、人里への出入口に間髪を入れずに電気柵を設置して封鎖する「抑止」対策を行えば出没騒ぎは解決するのである。

以下に「ヒグマ出没抑止策の概念図」と北海道知事宛てに提出した質問書を添える。

 

魚道では得られないスリット化の効果

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須築川砂防ダムのスリット化した間口は3.5mと狭く、流木で塞がるリスクがあるものの、2020年2月末までに8mの切り下げが完了した。そして8か月後の2020年11月6日、パタゴニア札幌スタッフたちと現地調査を行った。

堤高8mの砂防ダムの下部までスリット化を終えた須築川砂防ダム。撮影:2020年2月27日
間口は3.5mと狭いながらも8m切り下げた。今後は流木で塞がるかどうかをしっかりと見極める必要がある。撮影:2020年2月27日。

川底が掘り下がり巨石がゴロゴロしていたところは、スリットから流れ出してきた大小の石で覆われていた。自然の河床、河原が蘇ってきたのだ。

スリット化された須築川砂防ダムから流れ出した砂利が河床を覆い始めていた。川岸の落差も緩和されてきた。撮影:2020年11月6日。
大きな石ばかりで、掘り下がっていた河床は、ほぼ砂利で埋まって自然な瀬になっていた。撮影:2020年11月6日。
大きな石だけがゴロゴロしていた瀬は、砂利で埋まって歩きやすくなっていた。撮影:2020年11月6日

スリット直下のコンクリートの盤(叩き台)に穴が空き、良い深みができていたが、2月に行われた最後の切り下げの際に、この穴を塞ぎ、平らにされてしまった。

スリット化した堤体直下のコンクリート盤が露出していれば、サクラマスやサケの遡上は困難になることが気がかりであったが、現場は、スリットから流れ出した大量の砂利で、腰までの深さの淵になっていた。

堤体8m下部までスリット化が終わった直後。流れ出す水の下はコンクリートの盤だった。左右の穴よりもずっと下に水面がある。撮影:2020年2月27日。
スリットから流れ出した砂利でコンクリート盤は埋まり、深い淵が出来ていた。左右の穴まで砂利が堆積している。撮影:2020年11月6日。

スリット部は腰までの深さの淵になっていた。この淵で3尾のサケを見た。撮影:2020年11月6日。

堤高8mの堤体のスリット部は近づいて見ればその大きさが分かる。撮影:2020年11月6日。
堤体のスリット部の深い淵と自然な流れが戻った上流が見える。撮影:2020年11月6日。

スリット部の淵に3尾のサケがいた。多くのサクラマスやサケがスリットを通り抜けて上流で産卵したことだろう。産卵域が上流へと広範囲に拡大したばかりか、砂利が下流に供給されるようになったことから、ダム下流でも産卵域が蘇えった。ダムで分断されていた川の流れが一つの流れに繋がり、下流でも上流でも広い範囲でサクラマスやサケが産卵できるようになったのである。

サクラマスやサケは、1尾のメスが3,000粒前後の卵を産み落とす。スリット化によって産卵場が拡大したことから、3,4年後には爆発的に増えることが期待される。また、スリットから流れ出した砂利は、アユの産卵場も蘇らせた。地元の漁師も「見たことが無いほどの数が産卵していた」と言う。「河口の海岸は大きな石ばかりで歩きにくかったが、スリット化されてから小石化し、今ではサンダルで歩けるようになり、昔の砂浜が蘇った」「河口周辺では茎が太く背丈の高いワカメが、ヤナギの林のように密生するようになった」とも聞いた。

函館の土建業者とコンサルタント会社が立ち上げた「道南魚道研究会(現在は北海道魚道研究会と改称)」が、提案した日本大学の安田陽一教授が考案した魚道改築案を受け入れていたら、こうはならなかっただろう。そこには「ダムを撤去するしか川は蘇らず、漁獲高も望めない」という漁師たちの英断があったからだ。今後も、地元の漁業者から話しを聞き、川の変遷記録を続けていく。

須築川に建設した砂防ダムが、流れ下るべき大小の石を扞止したために、安定した自然の川の流れを狂わせ、その結果、川が変化を始め、川岸が崩れ、山が崩れ、川が荒れ、サクラマスやサケが枯渇するまでに激減してしまった。ダムをスリット化するだけで、元のように大小の石が流れ下り、産卵場が復活し魚が増え、海藻が増え、自然の仕組みが蘇る。。注目すべきは、全道でサケの漁獲が低迷しているというのに、この管内は、サケの漁獲が好調だということである。

 

青山ダムと当別ダムによる河川荒廃と危惧される当別活断層の存在

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巨大ダムは、微細な砂やシルト分(泥)ばかりを選り分けて下流へ流す。だから、川は泥川になり、川から魚がいなくなる。

非灌漑期に貯水をカラにする農業用ダムの底を見れば分かる。カラになった巨大ダムの底は泥ばかりになっている。水が抜かれてカラになった石狩川支流当別川の青山ダムを取材した。

非灌漑期に水を抜いた青山ダム。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムから流れ出る水は濃い泥水だ。撮影:2019年11月3日

青山ダムは、泥ばかりを溜め込んでいることがお分かりいただけるだろう。流れ出す水はご覧のように泥水だ。その結果、川底には微細な砂やシルト分(泥)が堆積し、魚は繁殖が出来なくなる。川底に産み落とされた卵は、微細な砂や泥を被り、窒息してしまうからだ。かつてはサクラマスやサケ、カワヤツメなど魚類が豊富な川だったというが、その面影はもう無い。そして、青山ダムの下流には更に巨大な当別ダムが建設された。

石狩川水系当別川

 

当別ダムは多目的ダムである。青山ダムで見たように、ダムの底は泥だらけ。そして、その泥が大量に下流に放流されることになるわけだ。撮影:2019年11月3日。
巨大な当別ダム。撮影:2019年11月3日

巨大な当別ダムは、溜め込んだ泥を下流に流す。その泥は、石狩川を経由して石狩湾を泥で染めることになる。そればかりか…

この当別ダムには一抹の不安がある。ダム付近に活断層とされる「当別断層」があるからだ。実際に活断層が動き、地表がずれた痕跡がある。青山中央地区にある「道民の森」公園の敷地内に当別断層の露頭があり、当別断層を直に見ることが出来る。下の写真で分かるように右側と左側で大きな段差が出来ている。これがずれた断層面である。地面には亀裂が走っている。

当別断層公園。左の平らなところと右側の一段高くなったところが当別活断層の断層面がズレたところ。.断層の露出部。撮影:2011年10月28日

この当別断層の位置がよく分かる図は、下記のサイトで見ることができる。

当別断層

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/f04.htm

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/ktk/bousaikaigi/zisin/08sankouzuhyou.pdf

活断層「当別断層」と「当別ダム」の位置関係が分かるように地図とGoogle Earthの衛星写真に重ねて表示してみた。

元図に加筆している。当別ダムと当別活断層の位置関係の図。
Google Earthの衛星画像と当別活断層の位置を重ねた。出典:Google Earth

当別断層とダムの位置関係を図示してみれば、ダムのこんなにも近くに断層があることが分かる。もしも当別断層が動けば、ダム湖に面した山が湖面に崩れ落ち、ダム津波が発生する。そうなった時、当別ダムの堤体は津波に耐えられるのだろうか?

地すべりで発生するダム津波の怖さは、イタリアの「バイオントダム」の事例で知ることができる。

衝撃の瞬間「ダム津波の脅威」

また、当別ダム直下の地層がずれれば、堤体そのものが崩壊するかも知れない。地図や衛星写真にダムと断層を重ねてみれば、この場所に巨大ダムを建設することが果たして適切だったのか、疑問を感じるばかりである。当別ダムの下流には住民の暮らしがある。こんな場所に巨大ダムの建設を認めるだけの安全を担保する科学的な裏付けはあるのだろうか?

当別断層が動く確率は低いと言われても、福島第一原発事故や熊本地震のように事後になって「未知の断層」が動いた「想定外」だとして始末される。一昨年の2018年9月6日未明には、胆振東部で震度7の地震(平成30年北海道胆振東部地震)が発生し、JESEA地震科学探査機構「MEGA地震予測」のホームページには、この地震の前に苫小牧から札幌にかけての地表が沈降する現象が見られ、震源となった胆振地方では沈降と隆起が見られたとある。この地震でも、震度や震源が事前に予測された訳ではない。

https://www.jesea.co.jp/earthquake/003/

https://shizensaigaichosashi.jp/higashinihon-zishinhasseikikendo-katsudansou/

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/index.htm

科学的な地震予知が確立されていないのに、巨大な当別ダムを当別断層と接するような位置に建設したことは、大きな過ちを犯したのではないか?

「人間の愚かさ、自然への理解の欠如、管理の失敗」

人間の過信が引き起こす人災は、日本の巨大ダムでも起き得る。

ダムは安易に建設してはいけない。