良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

2019年1月18日、ひやま漁協の漁師と釣り人、住民で結成された「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の総会が、せたな町で開催された。道・町議会議員、桧山振興局、函館建設管理部今金町出張所、せたな町役場の職員が出席した。

総会の代表から「須築川砂防ダムの魚道改築の要望に対し、「流域の自然を考えるネットワーク」の宮崎代表から、魚道の改築ではサクラマス資源の回復は見込めないと指摘があり、魚道改築ではなくスリット化を求めることになった。その結果、良瑠石川の4基の治山ダムでもスリット化が実現し、管内のサケ定置網8ヶ統ある中、一番悪い漁場だった良瑠石川地区の2ヶ統が、2015年から昨年に至るまでの4年間、管内で漁獲量が1~2位になった」と報告があった。

2011年2月22日には良瑠石川の本流の下の治山ダムのスリット化工事が行われた。

2011年2月に本流下の治山ダムがスリット化されたので、この年の秋にはサクラマスとサケの産卵場が大幅に拡大した。その後、2012年3月までに全4基の治山ダムがスリット化された。従って、2011年の秋に産み落とされたサケの子どもたちは翌春、海に下り、四年後の2015年に大きく育ったサケたちがこの川に戻って来たわけだ。このサケたちが良瑠石川地区のサケ定置網で漁獲されて、漁獲増をもたらしたと言える。

2017年9月13日良瑠石川を視察。サケがそ上していた。
2017年9月13日、良瑠石川本流のスリット化した下の治山ダムの魚道を上るサケのペア。
スリット化された治山ダムの上流へ上ってきたサケ。右の円内は産卵行動中のサケ。
本流のスリット化された上の治山ダム・逆台形型のスリット化は流木が挟まることもないので、メンテナンスフリーだ。スリット化後、川は上流と下流の川石の大きさが同じになり、川が蘇ったことがよく分かる。これが逆台形型のスリット化の効果だ。

当初、治山ダムの管理者である道林務課は、ダムをスリット化すれば、「土砂・流木が流れ出し、橋が壊され、その先の集落が陸の孤島になる」として、スリット化に難色を示していた。しかし、スリット化してみれば、災害を引き起こすような土砂も流木も流れ出すことはなかった。むしろスリット化で川は蘇えり、その効果は期待以上のもので、総会では、沿岸の海藻の育ちが良くなったことが報告された。良質のコンブ・ワカメが採れるようになり、ウニが大型に育つようになったとも言う。ダムのスリット化で海藻が育つようになれば、磯焼けも解消され、やがてはニシンの群来も見られるようになることだろう。

土石流と流木が押し寄せて壊れると説明されていた橋は何らの被害もなく、健在。河床はきれいな砂利で覆われ、多くの魚の繁殖に適した河床に蘇った。

橋の下流はすぐに日本海だ。

橋をくぐればそこは日本海だ。泥水が出なくなれば、海藻の育ちもよくなる。

良瑠石川が注ぐ日本海。泥の流れ出しが減少すれば海藻が蘇る。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。
良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川河口。海中の黒く見えるのはコンブにワカメ、ホンダワラなどの海藻だ。

全道でサケの漁獲が減少している最中に、サケの漁獲を増加させ、沿岸海藻の育ちが良くなり、ウニを大型に成長させるというスリット化の効用を目の当たりにした漁師たちの総会は、漁業復活の明るい兆しが見えたダムのスリット化に盛り上がり、熱気に沸いた。

 

 

写真展の開催お知らせ

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パタゴニア 札幌南店に於いて、当会の活動記録「漁師と釣り人と活動家たちが川を蘇らせる~ダム撤去までの道のり」と題した写真展を2018年12月3日~30日まで開催中です。店内に展示された写真についてパタゴニア・スタッフさんたちが解説してくれます。是非、お立ち寄りください。

パタゴニアアウトレット札幌南ストア

URL:https://www.patagonia.jp/patagonia-sapporo-minami-japan/store_924604533.html

良瑠石川・ダムのスリットで川はどうなった?

2018年8月8日、治山ダム4基をスリットした良瑠石(ラル石)川が、その後どうなったのか?パタゴニア札幌スタッフと現地を踏査した。河川管理者は、ダムをスリット化すれば、流れ出した土砂や流木で下流の橋が被災し、その先の集落が孤立する危険があると説明していたが、本当にそうなったのか?

まず、2基の治山ダムをスリット化した支流へ入った。小さな砂利が目立つ程度で、川が荒れた痕跡は無い。巨石が挟まり合って川底を安定させていた。

2基の治山ダムのスリット化後、小さな砂利が増えてはいるが、土石流が流れ出したような痕跡は無い。
支流のスリット化した下の治山ダム。削岩機で削っただけだが、倒壊するような危険は無い。
左右の草が生えた土壁はダムの堆砂だ。ダムの堆砂の大半は、流れ出さずに残って草木が生え山と同化していた。「堆砂の全量が流れ出すから危険」という管理者の説明は根拠の無いもののようだ。
支流のスリット化した上の治山ダムが上流に見えてきた。辺りは小さな砂利が多少は増えたようだが、川が荒れたような痕跡は見られない。
スリット化した上の治山ダムの前で、パタゴニア・スタッフへスリット化の効果を説明する宮崎司代表。
支流のスリット化した上の治山ダムと上流側の堆砂。堆砂の大半が残っており、増水時に僅かに分散して流れ出し、草木が生えて地山と同化している。大規模に流れ出すとは考えられない。(川筋の左右の草が生えたところ全部がダムの堆砂)

支流の川は急峻だが、スリット化後にダムに貯まっていた堆砂の全量が流れ出すような事態にはなっていなかった。増水時に流れている堆砂の量は少なく、大半がそのままに残っていた。

次に本流へ入った。

本流のスリット化した下の治山ダム。砂利の流れが安定してきたところ、魚道が砂利の流下を阻害し始め、魚道下流で僅かだが河床が下がってきていた。魚道は不要だ。

砂利の流下が安定してきたところで、今度は魚道が砂利の流下を妨げるようになり、直下では僅かに河床が下がり始めている。魚道がある区間ではサケは産卵できない。撤去すればここにも産卵できるのだから、蘇った川には無用の長物である。

スリット化したダムの直下に魚道が見える。魚道がまるでダムのようである。今後は魚道による影響が現れてくるだろう。
本流のスリット化した上の治山ダム。上流と下流が繋がり、川は蘇った。
流木がすぐに詰まって役立たずの斬新な螺旋型魚道は、やはり役立たずのまま一生を終えた。
スリット化によって川が蘇り、資源が回復することを説明する宮崎司代表。
堤体で分断されていた河床は、スリット化で上流と下流が綺麗に繋がり、川が蘇っていた。
堤体天端まであった堆砂は、ちまちまと流れ出しており、全量が流れ出すようなことにはなっていない。削岩機で削った堤体も強度は保持したまま残されていた。
スリット化で上流と下流が一つに繋がった。
川を分断していたダムを切れば、上流と下流が繋がって本来のごくありふれた川の姿に蘇るのだ。

河川管理者は、ダムをスリット化すれば「堆砂の全量が流れ出すから危険だ」、「流木が橋を壊す」と説明していたが、橋を壊すような流木も無ければ、土砂災害を発生させるような土砂も流れてきていない。むしろ、砂利が流れるようになって川は安定し、元の自然の川に蘇っていた。

ダムのスリット化で川が蘇ったことで、サケやサクラマスの産卵域が広がり、水産資源が増大している。地元の漁師は「サケの漁獲が落ち込んでいるのに、この地区では漁獲量が増えた」と言う。そして「泥水が流れなくなったので、海藻の育ちがよく、良質なコンブが採れ、ウニが大ぶりになって実入りがよい」と言う。現場の漁師が実感しているスリット化の効果は絶大だ。この川にあった砂利の流れる仕組みが蘇るだけで、サケ・サクラマスの再生産の仕組みが復活し、沿岸の海藻も育ちがよくなり、水産資源が増大することが証明された。ダムのスリット実現まで苦悩した漁師や釣り人の功績である。この川が教えてくれることは絶大だ。

良瑠石川河口・微細な砂よりも礫が多く見られるようになった。
河口付近に打ち上げられた海藻は、泥が被らなくなったので綺麗だ。ただし、漁業権無き者は拾ってはいけない。ご注意を!
下流域は、まだダムに溜まっていた堆砂が流れているが、次第に砂利の量は減り、安定してきた。
良瑠石川の河口を望む。スリット化後に荒れた様子は見られない。
本流2基と支流2基の治山ダムをスリット化した後。川が荒れたような痕跡は無い。

 

 

 

土砂で埋まった二風谷ダム。

2018年7月4日に二風谷ダムは大雨に備えて、水位を下げるためにダム底のオリフィスゲート7門のうち5門から放流操作がされた。通称「土砂吐きゲート」と呼ばれ、深黒の泥そのものが吐き出されていた。湛水域の水位が下がったので土砂で埋まった二風谷ダムの全容が見えた。

撮影:2018年7月4日
堤体の直近まで土砂で埋まっているのが分かる。撮影:2018年7月4日
堤体の直近まで土砂で埋まっている。撮影:2018年7月4日
流木止工のロープも土砂の上に乗っかっているような状態だ。泥に埋まった流木が水面から出ている。撮影:2018年7月4日
オリフィスゲート7門のうち5門から土砂が放流されていた。撮影:2018年7月4日
清流?あり得ない放流水の色である。撮影:2018年7月4日

「二風谷ダム定期報告書概要版・平成27年3月」の二風谷ダムの仕様図から土砂の堆積状態を照合した。

 

露出した土砂のレベルは、凡そ41.0mの位置と分かる。このレベルを二風谷ダムの仕様図に当てはめて見ると…、

水面から露出した土砂の位置は、オリフィスゲート放流口の上端の5mほど上に位置していることが分かる。ということは、オリフィスゲートはすっかり泥に埋まっているのだ。泥に埋まった放流口から放流しているのだから、出てくるのは泥ばかりという訳だ。つまり、二風谷ダムは土砂で埋まっており、オリフィスゲートの放流口付近だけが土砂に埋もれた中で溝のようになっていると推測される。下記のサイトにも二風谷ダムの状況が報告されているので参考にしてください。

URL:https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/ud49g700000088o0.html

土砂で埋もれた放流口から、ダムの堆砂を定期的に吐き出しているのだから、膨大な土砂が日常的に下流へと放出されている訳だ。こんな状況では、二風谷ダムの下流域で産卵するサケやシシャモ資源が枯れるのは当然である。魚類学者や生物多様性保全戦略にかかわる委員会や行政、また、水産行政は水産資源を失うばかりのこの状況をどう判断しているのだろうか。地元漁協は補償金を得ているので声を上げられないのかも知れないが、水産資源を失っては元も子もない。損害額は毎年毎年増えて補償金を遙かに超える損害とともに、取り返しがつかない禍根を残すことになる。

清流・沙流川だったころを思い出してほしい。そして、現状を直視して記憶にある清流・沙流川と比較してほしい。二風谷ダムが冒しているこの現状に黙っていないで声を上げることが必要だ。

上記のサイトでは二風谷ダムの堆砂量(貯め込んだ土砂)は大きく増えていないという。頭打ちで、増加傾向は見られていないというが、下の写真を見ていただきたい。二風谷ダムの流入部にある管理橋とその真下にある貯砂ダムだ。貯砂ダムには階段状の魚道が付属しているが、流れてきた土砂で上流側も下流側もほぼ埋まってしまい、現在は魚道は砂利の中にある。これでも二風谷ダムの堆砂量は増えていないというのだから、不思議なことである。

二風谷ダムの流入部では沙流川・額平川共に上流へ上流へと土砂が貯まり続けている。この土砂量は二風谷ダムの堆砂量に加算されないのは何故? 撮影:2018年5月21日

二風谷ダムは堆砂容量の範囲を超え、貯砂ダムも埋まり、さらに上流へ、上流へと土砂を堆積し、貯め込み続け、V字谷を埋めて河床を押し上げ平にならしている。このように上流へ上流へと堆積していく土砂量は二風谷ダムの堆砂エリアから外れているとでもいうのだろうか?明らかに二風谷ダムの影響で上流へと堆積しているのだから、これを二風谷ダムの堆砂量に含めて然るべきである。

膨大な土砂を貯め続ける二風谷ダムの現場がそこにありながら、現場の実態と乖離した、責任逃れの自己正当化した報告書でしかない。

 

 

NHKが報道した芽室川の災害の現場…②

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芽室川3号砂防えん堤の下流には、4号砂防えん堤がある。更にその先には5号砂防えん堤と、その直下に4号床固工がある。

5号砂防えん堤と堆砂状況。撮影:2018年7月3日
5号砂防えん堤の直下に右岸のコンクリート擁護壁(そで部)が補修されたばかりの4号床固工がある。撮影:2018年7月3日
4号床固工の下流は河床(川底)が掘り下がって、両岸が崩壊しているのが分かる。撮影:2018年7月3日
5号砂防えん堤の下流側での補修工事。撮影:2018年6月28日
4号床固工。倒壊した右岸側のコンクリート擁護壁(そで部:写真では対岸)が補修された。手前の魚道も被災したため補修が行われていた。撮影:2018年6月28日

4号床固工の右岸側の堤体と左岸の魚道が崩壊し、補修工事が行われていた。写真から分かるように、5号砂防えん堤の堆砂域は砂利で満杯になっている。一方、4号床固工の下流側は川底が深く掘り下がっていた。

芽室川の災害を報告した書「4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態」には、河床の「縦侵食」と「横侵食」が示されている。つまり、流下してきた土砂の扞止効果を発揮した砂防えん堤(床固工を含む)の下流側は砂利が供給されないために、川底が深く掘り下がっていることを示している。一方、扞止した土砂を貯めた砂防えん堤(床固工を含む)の堆砂域ではV字谷が土砂で埋まって平になり、その上を澪筋が左右に蛇行して流れている。蛇行した流れは左右の川岸を侵食している。報告書に示された「縦侵食」と「横侵食」は砂防ダム(治山ダム・落差工・流路工など河川横断構造物)のある川に共通した特徴を分かりやすくまとめてある。

https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/splaat00000139gd-att/splaat00000139la.pdf

出典:4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態

砂防えん堤や床固工は「重力式ダム」と言われ、流れてきた土砂では倒壊しないように、十分な重量のコンクリートブロックを横に並べて作られている。倒壊するはずが無い4号床固工の右岸側で堤体が倒壊したというわけだ。堤体を破壊するような巨石が流れてきたわけではない。また、大量の水や流木が押し寄せても、びくともしない強固な堤体だ。しかも、巨大な5号砂防えん堤の直下にあるから、土砂・流木の負荷は軽減されている筈である。こんなにも手厚く護られ、強固な筈の4号床固工のコンクリート擁護壁(そで部)と堤体の一部が倒壊したというのだから不思議だ。

では、倒壊するにはどんな場合があるのだろうか?

どんな巨体も、足をすくわれたら転倒する。同じように、いかに強固な堤体であっても、堤体の基礎が抜かれたら、支えを失い、あえなく倒壊する。

報告書「4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態」には、扞止機能を発揮した砂防えん堤の下流側は「縦侵食」とあるから、4号床固工の下流側は川底が掘り下がる「縦侵食」が進行していたと読める。川底が掘り下がれば、4号床固工の基礎の砂利が抜かれる。この報告書から、右岸側の堤体の倒壊は堤体の基礎が抜かれて倒壊した可能性を導き出せる。

上2枚の写真は、4号床固工からず~っと下流の写真である。高さの低い床固工(落差工)の堤体が倒壊している。床固工(落差工)の下流側の川底が縦侵食されて、河床が下がり、堤体の基礎の砂利が抜かれて倒壊したと推察される。土砂を貯めていた床固工が倒壊すれば、貯まっていた土砂は一気に下流へと流れ出す。流れ出した土砂が膨大であればあるほど下流に膨大な土砂が押し寄せる。こうしたメカニズムが危険な土砂災害を生み、ややもすれば人命・財産が失われる甚大な被害を発生させるのだ。

この現場から、危険な土砂災害発生のメカニズムが見えてくる。