北海道のヒグマ対策質問書への回答から見えてくる、札幌市東区で発生したヒグマによる人身事故

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北海道のヒグマ対策について、2021年4月5日に知事宛に提出した現行の「ヒグマ関連予算」と、ヒグマ対策のあり方の見直しに関する質問書への回答が、4月26日付けで、知事からではなく担当部署から届いた。

道民の血税で行う事業を担う担当部署からは、質問に対してまともに答える姿勢が見られず、再度、回答を求めたところ、5月10日付けで回答が届いた。

この回答を得た後の6月18日、札幌市東区で市街地をヒグマが徘徊し、人的被害が発生した。北海道からの回答を読み解けば、東区の人的被害は起こるべくして起きた人災被害であることがお分かりいただけると思う。

分かりやすいように、質問と回答を以下に並べる。

ヒグマが、今まさに出没している時には、北海道は関わらないということだ。それを裏付けるように高額な北海道の「ヒグマ関連予算」令和2年度1,760万円、令和3年度1,950万円の内訳には、ヒグマ出没時の予算は組まれていない。

出没しているヒグマを抑止するのではなく、ヒグマの識別や資料の入手を目的にした予算であることが分かる。また、徘徊を放置しているとヒグマの行動がどうなるのか?についての答えは無い。

ヒグマの出没抑止は市町村がやることであって、北海道は「ヒグマ出没対策事業費」とは「技術開発」を目的にした予算だという。

同様に、「ヒグマ出没対策事業費」は「技術開発を総合的に行う」ことを目的している予算だという。

ここでも「ヒグマ出没対策事業費」は、「調査事業(費)」と回答している。30年以上もヒグマ出没対策をして来ていながら、今さら基礎資料が必要だという可笑しな話だ。

ヒグマを芳香剤で誘引し、餌でおびき出す行為は「餌付け」行為には当たらないという。学習能力のあるヒグマが、芳香剤の臭いや餌の味を覚えれば、同様な臭いが人里にあれば出て来るようになるではないか。ヒグマのこうした行動拡大の可能性については答えていない。

毎年、約2,000万円もの高額な予算を組んで、30年以上の実績を経てしても、いまだ「事故防止」や「普及啓発」、「体制整備」についての知見が足りないという信じ難い話だ。

30年以上も調査・研究していながら、今なお「基本的なデータを収集する」という。今まで何をやって来たのだろうか…?

約300万円はICT等の活用を検討・検証する予算だという。ICTを活用しなければ、ヒグマの出没を抑止することが出来ないらしい。

札幌市東区でヒグマが出没し、人的被害が発生したが、「市街地周辺ヒグマ出没対策事業費」として計上された約1,100万円は、こうしたヒグマの出没を抑止する予算ではなく、「ヒグマの体毛を採取する」予算だった。

以上のように、北海道の「ヒグマ関連予算」は調査・研究が目的の予算であって、道民をヒグマの危険から守る目的には使われない予算であることが分かった。こんな対策だから、札幌市野幌、藤野、簾舞、真駒内でヒグマの出没が繰り返されて来た訳だ。ヒグマの出没の「抑止」が、されていないのだから当然である。その当然の流れとして、また東区でヒグマが出没し受傷する人的被害が発生した。出没騒ぎの現場に「ヒグマ関連予算」に関わる専門家は見えず、警察官らがヒグマを追い回していた。追い回され、追い詰められたヒグマはパニックに陥り、何をするか分からなくなり危険になることくらいは誰でも想定できることだ。挙げ句は、ハンターを動員して追い詰めての銃殺処分となった。追い詰められ、逃げ場を失い、怖くて怖くて怯えきったヒグマの哀れな表情が目に焼き付いている。初期対応が適切であれば、住民が受傷することもなかったし、このヒグマも殺されることは無かった。人目を忍び、夜間に徘徊し、明るくなる前には戻るような智恵を持った賢いヒグマだったのにである。「ヒグマ関連予算」からは、ヒグマ出没騒ぎが繰り返される理由が読み解ける。このままでは、今後も東区のように、ヒグマが市街地を徘徊することが続くだろう。ヒグマ関連予算が見直しされない限り、人的被害は絶対に解消されることはない。現行の北海道のヒグマ対策は、「ヒグマ出没抑止を目的とした予算では無い」ことを、「北海道のヒグマに関する調査・研究のあり方は間違っている」ことを、ヒグマの棲む地に暮らす私たち道民、札幌市民はよく理解しておく必要がある。

この東区のヒグマ出没騒動から、図らずもヒグマの出没抑止対策には研究者や専門家は不要ということが明確になった。研究者や専門家は、市街地を徘徊するヒグマを自分の調査・研究目的で放置し、餌付けをし、手に負えない危険なヒグマに仕立てあげ、挙げ句は檻罠で他個体のヒグマをも巻き添えにして、無差別に捕獲して銃殺処分しているのが実態である。本気で道民の生命・財産を守るのであれば、ヒグマの出没情報を得た時点で、即時に現地調査に入り、出没経路を特定して、迅速に出没経路を電気柵で封鎖して、ヒグマの出没を抑止することが北海道として執るべき策だ。現場の指揮は、ヒグマ追跡のエキスパートであるハンターに任せれば良いのだ。ヒグマの行動を読み取れる経験と多くの知見を持ったハンターにこそ、この「ヒグマ対策予算」を充てて、スピーディで的を射たヒグマ出没抑止対策を担ってもらうことの方が、よほど私たち道民の生命・財産を守るに相応しい。無益な殺生をも起こさない真のヒグマ出没対策が確立出来るだろう。

改めて北海道知事に「ヒグマ関連予算」の見直しと、真のヒグマ出没抑止対策への転換を早急に願い求める。

 

 

サクラマス保護河川「臼別川」サクラマス稚魚(0+)調査

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せたな町大成区の臼別川にある砂防ダムは、サクラマス保護河川でありながら、砂防ダムが4基(うち1基は堆砂で埋没)、最上流部に治山ダム1基が設置されている。それぞれのダムに付けられた魚道は、直ぐに閉塞して機能せず、これまで漁業者が清掃を続けて来た。魚道の維持管理は困難であり、資源回復にはダムの撤去が望ましく、遂に漁業者からダムをスリットさせる要望が出された。2021年6月15日、スリット化着手前のサクラマス稚魚(0+)調査を行った。

まず、臼別温泉上手にあるB砂防ダムの堆砂域へ下りる。ここから上流域へ進む。

右側に魚道の出口が見える。

B砂防ダムの魚道の上流側の出口。出口は堆砂の溜まり具合で水位が上下に変動するので、上下三段階の出口が設置された高価で立派な魚道だ。だが砂や泥、流木で塞がっており、機能不全状態だった。
右側のコンクリート擁護壁の四角い切れ込みが魚道の入口である。極僅かの水しか流れていないから、サクラマスが上れる筈もない。
B砂防ダムは堆砂で満砂状態。小石や砂が目立つ。B砂防ダムから流れ出すのは小さな石や砂ばかりということが読み取れる。
B砂防ダムの上流は、「小学校理科」の教科書で習った小石ばかりが目立つ中流から下流の特徴になっていた。
B砂防ダムの上流の淵は砂が目立つ。
臼別川は谷間を流れる渓流である。砂防ダムが出来ると川相が一変することが分かる。B砂防ダムの堆砂域の淵は、砂ばかりのあり得ない光景だ。
B砂防ダムの堆砂域に注ぐ小さな川。ここでアメマス稚魚(0+)を確認した。

B砂防ダムの堆砂域ではアメマス稚魚(0+)はいたものの、サクラマス稚魚(0+)は確認できなかった。

そして、C砂防ダムが目前に立ちはだかる。

このC砂防ダムに取り付けられた魚道には水が流れていなかった。フキまで生えている状況から長いこと機能していないことが分かる。

C砂防ダムの魚道の出口は土砂で埋まり、陸地になっていた。

C砂防ダムの魚道の水路は泥で埋まり、オニシモツケ、イラクサ、イタドリが繁茂していた。C砂防ダムの堆砂域は、やや石は大きくなったものの大きさは均一で、砂が多い。渓流なのに、これではどう見ても中流の様相だ。

C砂防ダムは、堆砂で満砂状態なので堆砂域を上流へと広げ、その上流にあるD砂防ダムの堤体を埋めていた。驚くべき堆砂量である。

C砂防ダムの堆砂によって、D砂防ダムの堤体が埋没していた。

埋没したD砂防ダムの下流側に取り付けられた魚道。当然、堆砂に埋没していた。
埋没したD砂防ダムの上流側の魚道の出口。水が溜まっていた隙間にアメマスが隠れていた。

埋没したD砂防ダムの堆砂域に注ぐ小さな川の出合いで、陸封された体長20㎝ほどのアメマスを見つけて観察した。

D砂防ダムに注ぐ小さな川ではアメマス稚魚(0+)を確認した。堆砂の影響で渓流に似つかわしくない砂利が多く堆積していた。

CからD砂防ダムへと続く堆砂域の上流にあったE治山ダム。最上流部の治山ダムさえも魚道は砂利で埋まっていた。

E治山ダム魚道は砂利で埋まり、全く機能していない。
E治山ダムと直下の淵。透明度の高い美しい水なのだが…

E治山ダムの堆砂がどこまで続いているのかを調べる為に、更に上流へと向かった。やや大きめの石が現れるが、おしなべて同じ大きさのものが多い。

E治山ダムの堆砂域の上端付近。ここから巨石が見えてきた。苔むした本来ある姿の渓流が…しかし、サクラマスはここまで来られる術が無い…。

E治山ダムの堆砂域を超えたところから、巨石が目立ち、苔むした石が多くなった。

B→C→D砂防ダム→E治山ダムの堆砂域を調べた後、A砂防ダムの堆砂域に注ぐ臼別温泉脇の小さな支流を調査した。

B砂防ダム下流の臼別温泉脇を流れる小さな支流。ところどころ石の下に手を入れると暖かい温泉水が沸き出していた。
更に進むと、そこはもう魚は上ることが出来ない「魚止の滝」となっていた。この滝壺にはサクラマスとアメマスの1+、2+が見られた。

次に、A砂防ダムの堆砂域でサクラマス稚魚(0+)を探した。魚道は、出口の方へ押し出された砂利でチョロチョロ水が注ぐ程度になっていた。これではサクラマス親魚は遡上出来ない。

A砂防ダムの上流側の出口には砂利と砂が押し寄せ、出口はほぼ塞がっていた。水はチョロチョロ程度の流れで、これではサクラマス親魚は魚道を上れない。

A砂防ダムも満砂状態で、小石と砂ばかりだ。

A砂防ダム堤体に押し寄せた堆砂は小石が目立ち、砂が目立つ。写真の左の脇を流れる水が魚道の出口に繋がっている。
サクラマス稚魚(0+)を探す。
A砂防ダムの堆砂の右岸側の小さな流れの溜まりで、ヤマメ(サクラマス2+)を見つけた。

A砂防ダムの堆砂域の細流でサクラマス稚魚(0+)を見つけることが出来た。

A砂防ダムの堆砂域の細流で確認したサクラマス稚魚(0+)たち。撮影は橋本泰子さん。

その後、A砂防ダムの下流側でも探したが、見つからなかった。

A砂防ダム下流。
A砂防ダムの下流でサクラマス稚魚(0+)を探したが見つけることはできなかった。

A砂防ダム下流の淵にはサクラマス親魚がいた。ダムの魚道は上れないので、やむなく下流で産卵するしかない。

A砂防ダム下流の淵にはサクラマス親魚がいた。ダムの魚道は上れないので、やむなく下流で産卵するしかない。

調査データを地図に落としてみると、昨年はA砂防ダム魚道は機能していたようだが、稚魚(0+)の数から、遡上したサクラマスは少なかったと思われる。また、B砂防ダムの魚道は機能していなかったことが伺える。A砂防ダムから下流では稚魚(0+)が見つからなかったことから、産卵場所がなかったのか、卵が育たなかったのか?分からない。そして、サクラマス親魚が遡上してきているのに、A砂防ダム魚道は機能していない為、上流へ上ることは出来ないでいた。サクラマス稚魚(0+)が見られたのは細流ばかりだったことから、川岸の多様な流れが必要だと分かる。砂防・治山ダムがある川では河床低下が進行するために、川岸の多様な流れが失われるので、稚魚(0+)の生育には不利となる。

今回の調査で言えることは、①砂防・治山ダムの魚道はすべての魚道が機能していなければサクラマス資源は減少する。②ダムの堆砂域は上流へと広がり、かつ、河床の透水性が萎えるので産卵場所が減少する。(B砂防ダムから上流において、アメマス稚魚(0+)が見られたが、数が非常に少ないことから、アメマスですら産卵に適した場所が無かったと伺い知ることが出来る)③ダムの下流では微細砂・シルトが河床に堆積するので、産卵が行われても卵が窒息し育たない可能性が大きい。あるいは河床に微細砂・シルトが堆積して産卵に適した場所が失われている可能性が示唆される。(A砂防ダム直下ではサクラマス稚魚(0+)が見られなかった)

以上から、砂防・治山ダムがあるだけで、サクラマス資源が減少することは明らかである。臼別川でも、サクラマス資源が激減していると言える。せたな町では釣り人と漁師たちが毎年、臼別川の魚道清掃を手がけており、何度か私たちも参加したが、魚道内の砂利のかき出し、魚道出口を塞ぐ砂利の除去、出口から流れに繋ぐ溝掘りをしなければならず、大変な労力が必要だった。汗を流して奮闘しても、その後の増水で再び塞がるのだから、まさに労あって益ナシの徒労に終わる。魚道の維持管理は極めて困難なのである。

臼別川のサクラマス資源を回復させるためには、一刻も早く5基のダム撤去が必要であり、まずスリット化することにより、サクラマス親魚が確実に遡上できるようにさせ、且つ、至る所で産卵出来るような川の仕組みを蘇らせることが必要だ。間口を広くスリットすればするほど維持管理は不要となるし、水質良好な川なのだから、改善しさえすれば、間違いなくサクラマス資源は回復し増加する。

 

 

須築川砂防ダム・スリット化後のサクラマス稚魚調査

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2021年6月3日コロナ感染対策の上、せたな町の一平会メンバーとパタゴニア・スタッフの皆さんの協力を得て、須築川でサクラマス稚魚調査を行った。【昨年の秋に親サクラマスから産み落とされた卵がふ化し、今年の早春に浮出(泳ぎ出してきた)した1才未満の稚魚】

河床低下で川底が掘り下がり、川岸が崩れて(写真左側の)河畔林の土台が抜かれて根っこが剥き出しになり、倒れそうになっていた河畔林は、流れてきた砂利で土台が復活したので、もう、倒れる心配は無い。

須築川砂防ダムの下流で進行していた河床低下は、スリットから流れ出した砂利で緩和され、川岸の崖化が抑止されつつあり、河岸崩壊や河畔林は倒れる危険を免れる傾向にあった。しかし、スリットから流れ出す砂利の粒径は小ぶりなものばかりだ。須築川の河床低下を抑止し、河床を安定させるには巨石の供給が必要だ。

スリット化した須築川砂防ダム。間口幅は3.5m。下流には砂利が供給されていたが、まだ、粒径が小さい。
スリット化した堤体を上流から見る(堆砂側)。スリット化工事で砂利を左右に振り分けたこともあり、砂利が広く抜けているが、一気に抜けるようなことはない。
右側の崖上端までダムで止めた堆砂の痕跡。泥や砂を膨大に溜めていたことが解る。つまり、砂防ダムは流れてきた土砂から、泥や砂ばかりを選り分けて貯め込み、これらが攪拌されて下流に流れ出す。そして泥水を発生させ、泥川・泥海にすることが読み取れる。

砂防ダムが止める土砂の粒径は小ぶりなものが多く、且つ、流れ込んできた土砂は上流に向かって無限に堆砂して行き、膨大な量の土砂を止めることを知っていただきたい。ダム上流の渡渉で、この膨大な量の土砂は、上端まで6~700mも続いていた事が分かった。

右側の崖になった土砂は砂防ダムが止めていた砂利。上流に向かって堆砂は続く。スリット化した堤体から上流へ向かって6~700mも堆砂域が広がっていた。膨大な量だ。この堆砂域を過ぎると景観が一変する。

そして、堆砂域の上端からは、須築川本来の苔むした巨石がゴロゴロした雄々しい渓相へと一変した。

巨石は苔むしていた。
巨石の多い川だが、所々に淵や瀬があり、サクラマスの産卵には適した環境となっていた。写真の右岸でサクラマス稚魚を見つけることができた。
サクラマス稚魚2尾を確認。スリットを乗り越えたサクラマスが上流で産卵していることが確認された。

ここで、サクラマス稚魚2尾を見つけた。稚魚を見つけられたことは、スリットをくぐり抜けて上流で産卵している証である。貴重な発見であり、今後が楽しみだ。

巨石がころがる渓相が上流へと続いていた。

さらに上流への調査は、雪融けの増水が続いていることから、次回に。皆さん、お疲れ様でした。

止めていた砂利を下流へ流す「砂防ダムのスリット化」だけで、サクラマスばかりか、沿岸の海藻、ウニ・アワビまでが育まれるようになるのだ。

須築川の橋の近く、国道229号線脇の駐車場には看板が設置されている。須築川砂防ダムのスリット化によって、漁業資源の増加を期待する願いが込められている。

 

北海道のヒグマ対策について…知事へ質問書提出。

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北海道は、人とヒグマの共存する社会やヒグマの地域個体群の保護を目途に、30年以上に亘りヒグマ対策に取り組んでいる。しかし、札幌市近郊の住宅地にヒグマが出没する度に、檻罠を設置して問題グマ以外も含めた無差別な捕獲を行い、容赦なく猟銃で殺処分している。この現状について、「北海道の羆問題を考える会(ヒグマ研究者の門﨑允昭氏らで構成)」は、北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)が、本年度中に改正されるのを機に、2021年4月5日に、北海道知事宛に質問書を提出した。

春先、道路の法面のフキノトウを食べるヒグマ。

驚くことに、現行のヒグマ管理計画では、情報を得た時点での出没を抑止する対策がされていない。この管理計画は、ヒグマの出没情報を得ると、まず「出没個体の有害性判断フロー」の手順に従って、出没しているヒグマを抑止ではなく徘徊させたままにし、その間に「経過観察」や「調査研究」を行い、その結果をもって、どのような対策にするのかの選別をする手順になっている。つまり、ヒグマの出没を迅速に抑止することよりも、「出没個体の有害性判断」を目的にしたものなのである。こんな対策では、いつまで経っても人とヒグマとの共存は確立できない。ヒグマの地域個体群の保護もままならず、ヒグマの出没騒ぎが収束する気配は無い。

このような計画では、同一個体が徘徊を繰り返すと出没情報が増えるため、あたかもヒグマの生息数が増えたかのように錯覚させる。研究者や専門家ですら、「ヒグマは確実に増えている」と豪語する始末である。判断能力や学習能力などヒグマの習性の考慮に欠けた無知な研究者や専門家の提言を鵜呑みにしているとヒグマは絶滅に導かれてしまう。

出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ対策の枠組

ヒグマの徘徊を放置していれば、その間にヒグマは身に危険が無いことを学び行動範囲を広げ、食べ物があれば食し、居心地がよければ居座るようになっていく。ヒグマに限らず、エゾシカ、キタキツネ、エゾタヌキなど学習能力のある野生動物に共通したごく普通の習性である。

札幌市南区のヒグマ出没騒ぎの報道では出没時間帯は夜で、昼間はどこかに身を潜めているという。それならば、一刻も早く出没経路を特定し、ヒグマが人里で諸々のことを体験する前に、学習する前に、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖して出没を抑止しなければならなかった。それを怠った為に、ヒグマは徘徊を続け、住宅地を歩き回り、警察官やハンターが出動したもののヒグマを目の前にして、手も足も出せない状況を作ってしまったのである。北海道が、「人とヒグマとの共存」を目指しているのであれば、野生のヒグマを初期に「しつける」。「やっていいこと、悪いこと」を学ばせる。つまり、電気柵を活用して、そこから先は「人間のなわばり」という境界線をヒグマに学ばせることが”要”となる。

最近では、「人を見ても逃げない、人を恐れない”新世代ベアー”が出現するようになった」とヒグマの研究者や専門家たちが苦言しているが、己の無知さに気付くことなく、手に負えなくなると、新たな習性を持ったヒグマが出現するようになったと言い訳しているに過ぎない。この”新世代ベアー”なる新語の発祥の地は、世界自然遺産登録の知床ウトロである。管理する知床財団は、ヒグマが現れたら人が引き下がるように指導し、推奨している。

知床財団はヒグマの前で人が引き下がるような対策を提唱している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

知床五湖の遊歩道ではヒグマが現れたら、案内人がヒグマの目の前で観光客を引き下がらせ、遊歩道をヒグマに明け渡す。その後、遊歩道は閉鎖にする。この対応は、ヒグマの習性に基づいた、正しい対応と言えるだろうか?

知床五湖の遊歩道は閉鎖になり、ヒグマが居座れば、いつまでも閉鎖のままになる。

「人は引き下がり、道を譲ってくれる」と学んだヒグマは、次に人に出会った時、逃げるどころか人を見ても恐れもしない。やがて、彼ら研究者や専門家の言う”新世代ベアー”に仕立て上げられていく。この誤った対応によって、ヒグマは知床五湖の遊歩道を自分の「なわばり」と認知する。その結果、世界遺産登録後の知床五湖の遊歩道は、人は自由に利用することが出来なくなった。野生動物の習性を知っていれば、誰もが読み解ける流れである。

では、管理計画の出没を抑止しない理由は何故なのか?それは、学術調査が目的になっているからである。下記の表、北海道のヒグマ関連予算を見れば一目瞭然である。

北海道のヒグマ関連予算。

ヒグマの研究者や専門家たちは、人里に出没したヒグマを個体識別する目的で、ビデオ撮影やDNA分析用に体毛採取をしている。その目的のために、「芳香剤」や「餌」でヒグマを誘引する「餌付け」をしているのである。この「餌付け」行為は、調査や研究が目的なら良いと言う事は断じてあってはならない。

芳香剤に誘引されて現れたヒグマ。芳香剤の臭いを嗅いでいるのが分かる。    出典:道新ニュース。北海酪農学園大学佐藤喜和教授らが2019年6月11日に撮影したというビデオ映像から。

道新NEWS:https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/6050307841001

北海道や知床財団は、食べ物などでヒグマを誘引すれば、人と食べ物を関係づけるようになるので、食べ物などで誘引しないように指導している。一般人には「餌付けはするな。誘引するような物は置くな。」と指導していながら、研究者・専門家たちが、調査の為にやる「餌付け」行為は、容認しているのだから、呆れた話である。2021年4月、第204回国会に提出された自然公園法の改正案には、ヒグマの「餌付け」行為を厳罰化する目的で、国立公園や国定公園の中の「特別地域」などの範囲に限って野生動物への「餌付け」行為を規制し、30万円以下の罰金を科すとしている。地域限定とはなっているが、国立公園であろうがなかろうがヒグマはヒグマなのだから、調査や研究目的で芳香剤や餌で誘引する「餌付け」行為が招く問題も同じなのだ。調査、研究目的においても「餌付け」行為は即刻禁止すべきである。

知床財団は人間と食べ物を関係づけるから放置しないように指導している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

そして、芳香剤や餌で誘引する「餌付け」調査は止めさせることだ。「餌付け」行為により、問題が発生し、何よりも人とヒグマとの関係が歪められてしまう。よって、現状のような調査が続く限りは、いつまでも人とヒグマの軋轢は低減することもなければ、人的被害の危険性はますます高まるばかりとなる。今のままでは、「人とヒグマとの共存」など到底実現し得ず、地域個体群の保護も出来る筈もない。

現在のヒグマの調査・研究は、芳香剤や餌でヒグマをおびき出す「餌付け」や、GPS発信器の首輪をつけたり、家畜の牛につける耳タグを付けたりしての調査を続けているが、こうした、うわべだけの、こぎれいで、安直な調査を繰り返している限りは、ヒグマという動物を理解し得ることは出来ない。自らが山に入り、汗をかき、踏査して野生のヒグマにたどり着き、ヒグマと長く対峙してこそ、ヒグマという動物がどういう動物なのかが見えてくるものだ。判断力や学習能力のある動物の気持ちまで読み取れるようにならなければ、相手を理解することなど出来るはずもない。手早く成果を挙げたいがために、短絡的に研究対象として扱っていれば、ヒグマ対策は根拠の無いものになってしまい、いつまで経っても功を奏しない。

研究者が識別しやすいように目印として家畜同様に耳タグがつけられ、首には重たいGPS発信器を付けられたヒグマ。
両耳には耳タグが、首には重たいGPS発信器を着けられたヒグマ。上を向けば肩にズリ落ち、下を向けば顎にぶつかる。首の毛は擦れ、見るからに痛々しい。

現行のヒグマ管理計画は、ヒグマの徘徊を抑止しておらず、その間にヒグマは諸々のことを学び、徘徊を繰り返している。その結果、手に負えなくなったという理由で、檻罠で捕獲して殺処分する…という流れになっている。北海道は、現行の計画がこうした流れになっていることに早く気がついて欲しい。もうこれ以上、無意味で無差別なヒグマ惨殺劇は止めるべきだ。よって、現行の「北海道ヒグマ管理計画」は、ヒグマの習性を考えた計画に練り直し、何よりも真っ先に出没を抑止する対策に変更した新しい計画を立案して欲しい。ヒグマが人里を体験し、学習する前に、すみやかに出没経路を特定し、人里への出入口に間髪を入れずに電気柵を設置して封鎖する「抑止」対策を行えば出没騒ぎは解決するのである。

以下に「ヒグマ出没抑止策の概念図」と北海道知事宛てに提出した質問書を添える。