「良い渓流なのに残念です…」小鶉川の今。

2019年6月19日、当会のHPに以下の投稿が寄せられた。

「先日,厚沢部の小鶉川に行ったところ,取水堰堤の下流でグランドキャニオン化が進んでいて驚きました。今後どうなっていくのか不安です。良い渓流なのに残念です…」

頭首工の魚道建設から10年。厚沢部町の鶉川支流「小鶉川」の今を取材した。

撮影:2006年10月4日 
砂利がたくさんあったのに、すっかり流されて岩盤が露出した。撮影:2019年6月26日
撮影:2006年8月1日  ↓
魚道とダム(プール)で砂利が止められると、見事に砂利が流され、岩盤が露出してしまった。撮影:2019年6月26日
撮影:2006年10月4日 ↓
「ここにあった砂利ないよ~。これじゃサクラマス産卵できねぇじゃん」小作ブツブツ…。撮影:2019年6月26日

当時、魚道建設の検討会で砂防学の中村太士・大学教授は、「河道に張り出すような魚道建設は止めよう」と発言していたが、魚類の専門家と称する妹尾優二氏が、砂利が溜まらないという安田式台形断面型魚道と、その魚道に上らせるためのダム(プール)建設が必要だと提案し、北海道檜山振興局はそれを採用して2009年に建設した。

厚沢部川水系小鶉川

 

砂防学の専門の大学教授が提案した河道に張り出さないコの字型魚道がすでに取り付けられてあるのに、魚の専門家はそれでは不足としてダムを2つも建設させたのだ。

役に立たない魚道が残り、その魚道に上らせるために必要として建設されたダム(プール)は、砂利を止めてしまった。その結果、下流側では川底の砂利が失われ岩盤の露出は広がり、サケもサクラマスも産卵する砂利も場所も失ってしまった。

この石が下流で必要とされるのに、魚道で止められた。撮影:2019年6月26日
流れ下っていた砂利が、さらに下流のダム(プール)で止められてしまった。撮影:2019年6月26日

サクラマス資源の保護目的の魚道に加え、ダムを建設したのだから、他の川同様に、ダムの下流で砂利が失われて岩盤が露出することは目に見えていた。それを知らない筈は無いと思うのだが、見事に岩盤を露出させ、産卵場を消滅させた魚の専門家と称する妹尾優二氏。魚の産卵の仕組みや魚の産卵場を形成する川の仕組みを知っているとは到底思われない。多くの川でダムの下流を観察していれば、こうなることは事前に予測できることだ。行政に”忖度”する専門家恐るべしだ。このままではサクラマスはいなくなるし、川岸が崩壊し、土砂・流木災害発生の兆しすら見える。サクラマスや川からしっぺ返しを受けるのは魚の専門家ではなく、他でもない地元の人たちなのだ。

川底の砂利が失われ、岩盤が露出している。ご覧のように水流を受ければ、基礎が抜かれ「砂山くずし」のように川岸が崩れることになる。大雨が降れば土砂流木が流れ出し。災害が発生することになる。こんな現場があちらこちらの川で見られる。撮影:2019年6月26日

露盤化してサクラマスが産卵できなくなったばかりではない。川底が掘り下がり、左右岸から砂利が転がり出しはじめている。このままでは大雨の時には川岸が「砂山くずし」のように崩壊するのは目に見えている。サクラマス資源を減らすばかりか、土砂・流木がこうして流れ出し、土石流災害や流木災害を発生させることになり、流域の住民の生命財産を脅かすことになるのだ。

ではどうすればよいのか?魚道に魚を上らせるとして建設したダム(プール)が砂利を止めているのだから、この2つのダムを撤去することが必要だ。小さな構造物だと思われるかも知れないが、写真で見てお分かりのように、小さな作用が「チリも積もれば山となる」の例え通り、下流側の砂利を一掃し、岩盤を露出させた。今後は河岸が崩壊し、土砂流木が流れ出す。災害を起こす前に一刻の猶予もない。

まずは事業者による現地確認が必要である。そのために北海道檜山振興局に現地調査を申し入れたが、「事業が終了し、厚沢部町に移管されており、現地調査することなど出来ない」と回答。こんな対応では道民の生命財産を守ることなど出来ないし、基幹産業の水産資源すら守ることも出来ない。北海道としてこうした対応が適切かどうかについて更に説明を求めたが、「当方が行う事業では、譲与後においては、構造物などに関する全ての権限が譲与先に移りますため、道には現地調査の要否判断を含め、一切の権限がないことをご理解いただきたいと存じます」と言う事だ。しかし、構造物の所有・管理の面ではなく、構造物の影響によって下流で発生している「河床低下」及び「路盤化」については別事象である。構造物との因果関係の面から調査するべきではないか。

 

ダム下流で繰り返される補修工事…現地からの報告

天塩川支流のオカホナイ川に関する情報が、ダムの問題に取り組んでいる長谷部真さんから届いた。この工事は「河床低下が原因して、川岸が崩壊するようになり、河床が掘り下がって橋脚の基礎が剥き出しになるようになったための補修工事ではないか」との見解だ。

工事標識には国道275号線の工事「…常盤橋補修外一連工事」となっている。しかし、…一連工事とは何処の工事なのか?、工事発注者である旭川開発建設部へ問い合わせたところ、天塩川に注ぐ小さな支流「オカホナイ川」に架かる国道40号線の「岡穂内橋」の補修工事であることが解った。この標識では、一般の人には支流の橋の工事だとは分からない。どこの工事なのか解りやすい丁寧な表記をして頂きたいものだ。

長谷部さんから送られてきた岡穂内橋の写真では、橋脚の基礎が剥き出しになっていることが解る。河床低下が進行し、これまでにも補強工事がされていたことが伺える。

河床(川底)が掘り下がり、上流にある護岸の基礎は、水面から出て剥き出しになっている。水面は護岸より遙か下にあり、河床低下が進行していることが読み取れる。こうした川の上流には必ずダムがある。Google Earthで見ると、川幅が広がった所がある。

Google Earthでは解らないが、国土地理院の古い空中写真で見ると、ダムがあることを確認することができる。

1974年~1978年に撮影されたこの空中写真では2基のダムが写っている。Google Earthの写真の堆砂が見える場所は、この2基のダムより上流であることから、更に上流にもダムがあることは間違いない。

ダムの下流では河床低下が進行し、河岸崩壊、山脚崩壊(山崩れ)、道路崩壊、橋梁崩壊などの災害が数多く発生している。ダムが砂利を止める影響によるものだ。道路管理者は河川管理者と協議し、根本から災害を防ぐために、その原因となる河床低下を引き起こすダムの見直しを考える必要がある。縦割り行政で互いの権益に触れないような対応をしていたのでは、人の命はいくつあっても足りない。人命財産を守るという大義名分があるのだから、現場をしっかりと検証して、真摯に取り組んでいただきたい。

 

 

 

良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

2019年1月18日、ひやま漁協の漁師と釣り人、住民で結成された「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の総会が、せたな町で開催された。道・町議会議員、桧山振興局、函館建設管理部今金町出張所、せたな町役場の職員が出席した。

総会の代表から「須築川砂防ダムの魚道改築の要望に対し、「流域の自然を考えるネットワーク」の宮崎代表から、魚道の改築ではサクラマス資源の回復は見込めないと指摘があり、魚道改築ではなくスリット化を求めることになった。その結果、良瑠石川の4基の治山ダムでもスリット化が実現し、管内のサケ定置網8ヶ統ある中、一番悪い漁場だった良瑠石川地区の2ヶ統が、2015年から昨年に至るまでの4年間、管内で漁獲量が1~2位になった」と報告があった。

2011年2月22日には良瑠石川の本流の下の治山ダムのスリット化工事が行われた。

2011年2月に本流下の治山ダムがスリット化されたので、この年の秋にはサクラマスとサケの産卵場が大幅に拡大した。その後、2012年3月までに全4基の治山ダムがスリット化された。従って、2011年の秋に産み落とされたサケの子どもたちは翌春、海に下り、四年後の2015年に大きく育ったサケたちがこの川に戻って来たわけだ。このサケたちが良瑠石川地区のサケ定置網で漁獲されて、漁獲増をもたらしたと言える。

2017年9月13日良瑠石川を視察。サケがそ上していた。
2017年9月13日、良瑠石川本流のスリット化した下の治山ダムの魚道を上るサケのペア。
スリット化された治山ダムの上流へ上ってきたサケ。右の円内は産卵行動中のサケ。
本流のスリット化された上の治山ダム・逆台形型のスリット化は流木が挟まることもないので、メンテナンスフリーだ。スリット化後、川は上流と下流の川石の大きさが同じになり、川が蘇ったことがよく分かる。これが逆台形型のスリット化の効果だ。

当初、治山ダムの管理者である道林務課は、ダムをスリット化すれば、「土砂・流木が流れ出し、橋が壊され、その先の集落が陸の孤島になる」として、スリット化に難色を示していた。しかし、スリット化してみれば、災害を引き起こすような土砂も流木も流れ出すことはなかった。むしろスリット化で川は蘇えり、その効果は期待以上のもので、総会では、沿岸の海藻の育ちが良くなったことが報告された。良質のコンブ・ワカメが採れるようになり、ウニが大型に育つようになったとも言う。ダムのスリット化で海藻が育つようになれば、磯焼けも解消され、やがてはニシンの群来も見られるようになることだろう。

土石流と流木が押し寄せて壊れると説明されていた橋は何らの被害もなく、健在。河床はきれいな砂利で覆われ、多くの魚の繁殖に適した河床に蘇った。

橋の下流はすぐに日本海だ。

橋をくぐればそこは日本海だ。泥水が出なくなれば、海藻の育ちもよくなる。

良瑠石川が注ぐ日本海。泥の流れ出しが減少すれば海藻が蘇る。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。
良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川河口。海中の黒く見えるのはコンブにワカメ、ホンダワラなどの海藻だ。

全道でサケの漁獲が減少している最中に、サケの漁獲を増加させ、沿岸海藻の育ちが良くなり、ウニを大型に成長させるというスリット化の効用を目の当たりにした漁師たちの総会は、漁業復活の明るい兆しが見えたダムのスリット化に盛り上がり、熱気に沸いた。

 

 

写真展の開催お知らせ

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パタゴニア 札幌南店に於いて、当会の活動記録「漁師と釣り人と活動家たちが川を蘇らせる~ダム撤去までの道のり」と題した写真展を2018年12月3日~30日まで開催中です。店内に展示された写真についてパタゴニア・スタッフさんたちが解説してくれます。是非、お立ち寄りください。

パタゴニアアウトレット札幌南ストア

URL:https://www.patagonia.jp/patagonia-sapporo-minami-japan/store_924604533.html

良瑠石川・ダムのスリットで川はどうなった?

2018年8月8日、治山ダム4基をスリットした良瑠石(ラル石)川が、その後どうなったのか?パタゴニア札幌スタッフと現地を踏査した。河川管理者は、ダムをスリット化すれば、流れ出した土砂や流木で下流の橋が被災し、その先の集落が孤立する危険があると説明していたが、本当にそうなったのか?

まず、2基の治山ダムをスリット化した支流へ入った。小さな砂利が目立つ程度で、川が荒れた痕跡は無い。巨石が挟まり合って川底を安定させていた。

2基の治山ダムのスリット化後、小さな砂利が増えてはいるが、土石流が流れ出したような痕跡は無い。
支流のスリット化した下の治山ダム。削岩機で削っただけだが、倒壊するような危険は無い。
左右の草が生えた土壁はダムの堆砂だ。ダムの堆砂の大半は、流れ出さずに残って草木が生え山と同化していた。「堆砂の全量が流れ出すから危険」という管理者の説明は根拠の無いもののようだ。
支流のスリット化した上の治山ダムが上流に見えてきた。辺りは小さな砂利が多少は増えたようだが、川が荒れたような痕跡は見られない。
スリット化した上の治山ダムの前で、パタゴニア・スタッフへスリット化の効果を説明する宮崎司代表。
支流のスリット化した上の治山ダムと上流側の堆砂。堆砂の大半が残っており、増水時に僅かに分散して流れ出し、草木が生えて地山と同化している。大規模に流れ出すとは考えられない。(川筋の左右の草が生えたところ全部がダムの堆砂)

支流の川は急峻だが、スリット化後にダムに貯まっていた堆砂の全量が流れ出すような事態にはなっていなかった。増水時に流れている堆砂の量は少なく、大半がそのままに残っていた。

次に本流へ入った。

本流のスリット化した下の治山ダム。砂利の流れが安定してきたところ、魚道が砂利の流下を阻害し始め、魚道下流で僅かだが河床が下がってきていた。魚道は不要だ。

砂利の流下が安定してきたところで、今度は魚道が砂利の流下を妨げるようになり、直下では僅かに河床が下がり始めている。魚道がある区間ではサケは産卵できない。撤去すればここにも産卵できるのだから、蘇った川には無用の長物である。

スリット化したダムの直下に魚道が見える。魚道がまるでダムのようである。今後は魚道による影響が現れてくるだろう。
本流のスリット化した上の治山ダム。上流と下流が繋がり、川は蘇った。
流木がすぐに詰まって役立たずの斬新な螺旋型魚道は、やはり役立たずのまま一生を終えた。
スリット化によって川が蘇り、資源が回復することを説明する宮崎司代表。
堤体で分断されていた河床は、スリット化で上流と下流が綺麗に繋がり、川が蘇っていた。
堤体天端まであった堆砂は、ちまちまと流れ出しており、全量が流れ出すようなことにはなっていない。削岩機で削った堤体も強度は保持したまま残されていた。
スリット化で上流と下流が一つに繋がった。
川を分断していたダムを切れば、上流と下流が繋がって本来のごくありふれた川の姿に蘇るのだ。

河川管理者は、ダムをスリット化すれば「堆砂の全量が流れ出すから危険だ」、「流木が橋を壊す」と説明していたが、橋を壊すような流木も無ければ、土砂災害を発生させるような土砂も流れてきていない。むしろ、砂利が流れるようになって川は安定し、元の自然の川に蘇っていた。

ダムのスリット化で川が蘇ったことで、サケやサクラマスの産卵域が広がり、水産資源が増大している。地元の漁師は「サケの漁獲が落ち込んでいるのに、この地区では漁獲量が増えた」と言う。そして「泥水が流れなくなったので、海藻の育ちがよく、良質なコンブが採れ、ウニが大ぶりになって実入りがよい」と言う。現場の漁師が実感しているスリット化の効果は絶大だ。この川にあった砂利の流れる仕組みが蘇るだけで、サケ・サクラマスの再生産の仕組みが復活し、沿岸の海藻も育ちがよくなり、水産資源が増大することが証明された。ダムのスリット実現まで苦悩した漁師や釣り人の功績である。この川が教えてくれることは絶大だ。

良瑠石川河口・微細な砂よりも礫が多く見られるようになった。
河口付近に打ち上げられた海藻は、泥が被らなくなったので綺麗だ。ただし、漁業権無き者は拾ってはいけない。ご注意を!
下流域は、まだダムに溜まっていた堆砂が流れているが、次第に砂利の量は減り、安定してきた。
良瑠石川の河口を望む。スリット化後に荒れた様子は見られない。
本流2基と支流2基の治山ダムをスリット化した後。川が荒れたような痕跡は無い。