朱太川水系黒松内川
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朱太(しゅぶと)川の支流で、複数の砂防ダムがある。
その一つ、スリット型砂防ダムを取材した。
![スリットを塞いでいた流木処理がされた後の2013年08月03日に撮影。下段、中段、上段の段違いのスリット型ダムになっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/① 2013-08-03・黒松内川・スリットダムのスリットの数.jpg)
このスリット型の砂防ダムは、切り込みの度合いが、上・中・下の3段階に別れている。 スリットの切り込みの度合いが異なることにどんな意味があるのだろうか?
砂防ダム建設の目的は、土砂災害を防ぎ、流下する砂利を「扞止(かんし)」して、砂利の大きなものを止めたり、砂利の量を減らすことにある。
写真のように砂防ダムにスリットを入れることで、大きな石を止め、砂利の全量が流れ出さないように出口を狭めて、流れ出す砂利の量を減らすように調節しているようだが、本当に機能するのだろうか…?
2006年の現地取材では、狭い間口は流木で塞がり、スリットの切り込みよりも上まで砂利が貯まっていた。川を上っていたサクラマスやアメマスが乗り越えられず、ジャンプを繰り返していた。こうしたスリットは間口よりも大きな石が流れてきても同じように塞がってしまうのだ。
そして、スリットが塞がるたびに、河川管理者は塞がった流木や土砂を取り除くために20万円なにがしかの費用をかけて、スリットを維持しているというのだ。この維持に費やすお金はみなさんから取り立てた税金なのだ。
![2006年09月09日に撮影した際には、スリットは流木で塞がり、土砂を止めていた。スリットの切れ込みが基底まで切り込まれていながら、上部まで土砂が貯まっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/② 2006~2013年・スリットのメンテナンスはいつ誰が…?.jpg)
科学者、専門家、河川管理者らが英知を結集して建設したスリット型ダムなのに、どうしてこのようなことが起きるのだろうか…?
流木災害と土砂災害を防ぐために、流木を止め、巨石を止めることを目的に建設したものだ。河川の橋脚や川の中の杭などには大量の流木が引っかかることは昔から知られていることである。
流木がスリットを塞ぐことくらいは予測、想定できるはずだ。
道南の野田追川には2010年(平成22年3月)にスリット型ダムが建設された。そして、スリットが流木で塞がらないように上流側に鋼鉄製の巨大なアングルダムを併設し、莫大な国税を注ぎ込み、大規模な二ダム方式のダムを建設したのである。
![2012年07月05日に撮影した野田追川のスリット型砂防ダムとその上流に建設された巨大な鋼鉄製アングルダム。増水毎に多くの流木が鋼鉄製アングルダムに引っかかり、大量の砂利を止め、砂防ダムと同じ機能を発揮している。何とも不思議なダムである。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/③ 2012-07-05・野田追川・1号砂防ダム・スリット+鋼鉄製アングルダム.jpg)
黒松内川のスリット型ダムはスリットを塞いだ流木と土砂を除去することに20余万円の北海道の予算を投じている。勿論、税金。
![流木と堆砂を処理した後にスリットダムから流れ出した微細な砂とシルト。(下流側からスリットダムを見る)2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑤ 2013-08-03・黒松内川・スリット型ダム・下流側・DSC_0145-300x198.jpg)
![スリットダムから流れ出した微細な砂とシルト。(下流側からスリットダムを見る)2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑥ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・下流側・DSC_0146-300x195.jpg)
![スリットダムの上流側。流木と堆砂は除去されていた。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑦ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・上流側・DSC_0154-300x198.jpg)
![スリットダムの上流側では流木がスリットを塞いでいる間に大量の土砂が堆積し、樹林化していた。スリットの切り込み位置よりも遙かに上まで堆砂していた。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑧ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・内側の堆砂・DSC_0159-300x198.jpg)
![スリットダムの上流側には粒径の小さな石が目立つ。大きな石は見当たらない。ダムが流速を小さくするので、砂利を運ぶ力が小さくなり、ここまで大きな石が流れて来ないことを示している。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑨ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・内側の堆砂・DSC_0165-300x198.jpg)
![スリットダムでありながら、土砂が大量に堆積しており、樹林化している。スリットの流木と土砂を取り除いた後、堆積した土砂が流され、土砂の断面が垂直の崖になっている。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑩ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・内側の堆砂・DSC_0158-300x198.jpg)
![スリットダムの上流を見ると、上流に向かって堆砂域が延びており、川幅が広がっている。スリットダムでも、大量の土砂を貯め込み続けることがよく分かる。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑪ 2013-08-03・加工済・黒松内川・スリット型ダム・内側の堆砂・DSC_0166-300x198.jpg)
![スリットダムの堆砂状況を推定して図示してみた。スリットの機能を果たしていないことがよく分かる。土砂は上流へ向かってどんどん貯まり続けることも知ってほしい。2013年08月03日](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑬ 2013-08-03・黒松内川・スリット型ダムの堆砂-01.jpg)
土砂は上流へ向かってどんどん貯まり続けるということも知ってほしい。