① 遊楽部川水系砂蘭部川

おかしな「(遊楽部川支流)砂蘭部川河床低下対策検討委員会」はダムのスリット化の先送りが目的…?

そもそものはじまりは、遊楽部川支流砂蘭部川の深刻化した河床低下対策のため、上流で砂利を止めている1基の治山ダムと2基の砂防ダムのスリット化を目的に、地元主導で「新・遊楽部川流域懇談会」が立ち上げられたことにはじまる。そして、スリット化の論議が具体化し始めたころ、全く突然に、北海道(渡島総合振興局)函館建設管理部が「砂蘭部川河床低下対策検討委員会」を立ち上げると申し入れてきて、主導権を取ってしまった。
砂蘭部川河床低下対策検討委員会は河川の専門家2名、魚類の専門家1名の合計3名と地元の団体と流域の住民で構成され、これまで4回の会合を重ね、5回目の会合は2014年5月30日に予定されている。
4回の会合を重ねておりながら、ダムのスリット化の具体的な論議は全くされていない。
3回目の会合で、函館建設管理部は2号砂防ダムをスリット化した場合、砂利が流れ去ってしまわないようにする必要があるので、2号砂防ダムの下流に巨石を配置して、砂利が止まるかどうかの実験をしたいと提案した。住民はこの実験を評価することができず、意見を言うことなく、そのまま提案が通った。

この実験は、
【1】ダムに貯まった砂利の中から巨石を抜き取って、ダムの下流に配置して砂利を止める工夫をする。
【2】ダムに貯まった砂利をダム直下に移動させ、流される砂利の止まり具合を調べる。
という実験である。

【図-1】:①~③は人頭大の石、④~⑥は丸太+巨石、⑦~⑨は袋体床固工の9基の帯工 ●帯工は河床の勾配や砂利の状況、地形など考慮されることなく正確に60 mおきに作られていた
【図-1】:①~③は人頭大の石、④~⑥は丸太+巨石、⑦~⑨は袋体床固工の9基の帯工
●帯工は河床の勾配や砂利の状況、地形など考慮されることなく正確に60 mおきに作られていた

砂利を止める工夫とは、図-1で示すように川を仕切る構造物「帯工」だった。
これでは帯工の下流側が掘られて段差ができるから、川は階段状になる。
この不具合はすでに多くの川で分かっていることだ。
不思議なことだが…なぜ、結果が見えていることをあえて繰り返すのだろうか…?

また、巨石は2号砂防ダムの下流の河床から抜き取っていた。
帯工に使用した砂利は、多くは2号砂防ダムの下流の河床をさらった砂利だった。
砂利不足で河床低下が進行し、川岸崩壊や山裾崩壊の災害が多発しているから、砂利を供給して河床低下の進行を止めようと始まった検討会なのに、河床低下をさらに促進させるようなことをなぜするのだろうか。
河床で互いに噛み合って河床が低下しないようにしていた巨石を抜き取ったり、河床の砂利をさらったりしたことは河床低下を促進させる行為である。
こんなことを河川管理者が行い、河川の専門家はそれを傍観し、容認しているのである。

2号砂防ダムの下流280 m地点から、正確に60 mおきに、3種類の帯工を各3基ずつ、540mの区間にわたり全部で9基を設置した。
この9基の帯工は下流への砂利の供給を一層強固に遮断する。
2号砂防ダムが砂利を止めているから、ダムの下流で河床が下がり、それが原因で災害が多発しているのに、さらに砂利を止める人工構造物をたくさん作るこの”実験”とは、いったいどのような理念があってのことだろうか。
不可解なことである。
しかも、帯工は川の勾配も地形も地質も考慮せず、川岸や河床の状況も無視し、机上の図面だけで正確に60 mおきに配置している。
帯工を実験水路のように見事に配置したこの立派な実験を指摘したら、専門家らは苦笑した。
実験を苦笑するだけで、問題を指摘もせずに見過ごしている専門家は、この検討委員会の専門家としての責任をどう考えているのだろうか。

2号砂防ダムの直下は平らな岩盤で、増水時には岩盤の上を水が流れる。
この平らな岩盤の上に2号砂防ダムから砂利を運んで置いた。
誰が考えても分かることだが…岩盤の上に積み上げた砂利は水の流れを二分し、砂岩質の軟弱な岩盤の浸食を促進することになった。

おかしな実験を行う、何もかもがおかしい検討委員会なのである。
この事実を知っていただきたい。

早期のスリット化を求める意見を出せば、「砂防ダムから砂利を流したら土砂災害の危険がある」などと住民の恐怖心をあおっていたが、4回目の会合で、1号砂防ダム、2号砂防ダムをスリット化した場合の砂利の移動状況については全くの検討もしていないことが分かった。

アララ…根拠のない説明をして、無用な土砂災害の怖さを住民に植え付けていたわけだ。
これもスリット化が具体化されないようするガードの一つなのであろう。

まさに、納得の、「あっ、そうだったのかっ!」である。

専門家の役割は専門的な知識を持たない地元住民の意見を封じ、真の議論をさせないようにすることにあるらしい。
検討委員会の主導権を取ったのは、スリット化を先送りし、帯工などあまたの土木事業の創出を狙ってのことだろう。
どうやら検討委員会の真の目的は住民操作にあるようだ。
地元主導の懇談会に横やりを入れ、砂蘭部川河床低下対策検討委員会を立ち上げて主導権を奪ったと考えれば納得できる。
地元主導の懇談会で、もしも、スリット化を求める要望が出されでもしたら、河川管理者は動かざるを得なくなるから、そうならないようにその前に、主導権を取ったのだろう。
検討委員会でスリット化の具体的な論議をさせないのはスリット化の先送りをしている証拠であろう。
だから、スリット化の論議を遅々として先に進ませないようにしているわけだ。

真駒内川河床低下対策検討委員会も全く同じ手法でことが進められている。