遊楽部川水系ポンセイヨウベツ川

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遊楽部川水系のセイヨウベツ川から更に分岐している小さな支流である。この小さなポンセイヨウベツ川を源流へと取材したところ、行く手に巨大な砂防ダムが姿を現した。

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小さな支流の行く手に突如、姿を現した巨大な砂防ダム。

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着工は昭和57年(1982年)12月。前年の1981年8月3日、台風12号による石狩川大洪水があった。この日、石狩川に限らず大雨による洪水が各地で発生。その後、増水で氾濫した事例を契機に、道内各地で土砂災害対策として、あらゆる河川に次々と砂防ダムや治山ダムが建設されることになった。

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写真左が下流側、右が上流側。上流には水が溜まっている。
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建設後、50年を経ているにもかかわらず、砂利で埋まってはいない。

建設後、50年を経ていながら砂利が溜まらないということは、土砂災害を発生させるような砂利移動が無い川といえる。

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砂防ダムに溜まった水は沼のようになっている。この砂防ダムが溜め込んでいるのは膨大な微細な砂やシルトだ。
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砂防ダムの下流側。ダム直下はコンクリート板。川底が浸食されないようにコンクリートブロックで固められている。被災したのか左岸はブロック護岸になっている。川底は下がり続けるので、河岸の崩壊と補修工事は繰り返されるだろう。
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砂防ダム直下のコンクリート板と川底を固めるコンクリートブロック。
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ダム下流側は川岸が崩れたのか、新しいコンクリートブロックが充てられている。
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砂防ダムの下流側。勾配が緩いので砂利移動が少ないようだが、川底には大きな石がまばらにしかない。
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大きな石が少ない。
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この辺りは流れが大きくカーブしていたが、ショートカットで直線化された。
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ショートカットした箇所の下流側。ショートカット部は元の川筋に接続されたので、真っ直ぐ水が走るようになった。その為、川底の砂利が流され河床が下がった。
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この小さな川には、多くのサケが産卵していた。ウライの設置でサケは上れない上に、産卵場所まで失ってしまった。

砂利移動の少ない川だが、砂防ダムが砂利を止めている影響は大きい。ゆっくりとだが確実に河床を低下させ、川岸を崩しはじめている。

河床が下がり、川岸が崩壊すれば、茶色く泥水になって流れる。泥水が頻繁に流れるようになれば、川魚は激減、壊滅する。川岸が崩れて流れ出す泥水は、微細な砂やシルト分を含んでいる。これが沈澱すると、川底の間を流れる水流が断たれることになる。その結果、魚卵の周りの水は入れ替わりが遮断される為、卵は窒息してしまう。そして、魚はいなくなる。泥水は自然の物質だから問題ないと言う魚類学者もいるが、川から魚は確実に消えている。

八雲町の雪まつりで、「雪の水族館」と題して身近な川の生き物を展示している。毎年、町内の子供達と厳冬の、このポンセイヨウベツ川の中に入り、魚の捕獲をして来た。子供達はまさにお祭り騒ぎでウキゴリやフクドジョウ、スナヤツメなどを捕まえる。面白いほどウジャウジャ採れた。ところが、この数年でウキゴリもフクドジョウもスナヤツメも瞬く間に姿を消してしまったのである。子供たちが楽しみにしていた「雪の水族館」の水槽は、空っぽで展示しなければならない。そして生き物がいない沈黙した川は、川遊びに興じた子供たちの姿をも消してしまう。