厚沢部川水系糠野川
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アユやカワヤツメ(ヤツメウナギ)、モクズガニが棲み、ヤマセミやミサゴも訪れる。流域は深い山々に囲まれ、ヒグマも暮らす。今では少なくなった貴重な清流度の高い自然河川である。
今から20年前に、糠野川から溢れた水で田畑が冠水する水害に見舞われたことから、川幅の拡幅が計画され、下流域で工事が行われた。現状の川幅では水を飲み込めないので、厚沢部川との合流点から上流14kmの区間を川幅を広げるという計画である。
水害の原因を資料や取材で調べると、中流にある農業用取水堰の「城丘頭首工」の上流あたりから溢れ出したことがわかった。この城丘頭首工は糠野川支流の矢櫃沢川との合流点直下にある。頭首工の間口は25m、堰の高さは2m程である。
ここで疑問なのが、糠野川と矢櫃沢川の合算された320トン/秒の水量が、頭首工の25mの間口を溢れ出さずに通り抜けられるのだろうか…?とうことである。
下の写真は城丘頭首工の間口。
田畑へ流れ出した水は、城丘頭首工の間口が狭くて洪水時の流量を飲み込めずに溢水したのではないかと疑われる。
糠野橋から上流を見る。河道拡幅工事の前。岸が崩れているように見えるのは砂利の堆積場所。左岸は高い位置にある。橋脚に水流が当たる為、コンクリートブロックで澪筋を抑制しているが、増水毎に簡単に壊れる。崩れている右岸の橋脚取り付け部が危険だと指摘しても、管轄が違うという。2010年8月14日
上の写真と同じ場所。私たちは、河畔林の存続を求めて河川管理者と現地で話し合いをしていた。担当者は、検討の結果を知らせると言ったきり、連絡がなくなった。そして、配慮して欲しいと嘆願していたヤマセミやカワセミの止まり木や、魚の休息場所になっていた木陰の河畔林も全て伐り払い、川岸を掘削し、平らな河川敷にしたのだ。約束を反故にした担当者は異動していた。2011年3月29日
糠野橋から下流側。右護岸に農業用取水口が見える。担当者は、橋の下流側は「工事はしない」と答えていたが、既に川幅が広げられていた。二枚舌を持つ担当者は、さっさと異動していた。2010年7月01日
糠野橋上流側。工事完成の3ヶ月後。2011年7月9日
更に4ヶ月後、川は変貌してゆく。2013年11月9日
とうとう流路が変わった。2014年7月17日
川幅拡幅に伴い、農業用の取水口が2つ建設されたが、一つは流れが離れ、砂利で埋まってしまい水を取り入れることが出来なくなった。もう片方は川底が下がって、水の取り入れ口の水位が下がり、流路も変わったことで取水が困難になってしまった。いずれも川幅を広げた為に不具合が生じている。川幅を広げるこの工事は根拠も効果も検証されていないずさんで計画性の無いものであることが見えてきた。こんなことに税金が使われることにも大きな疑問を感じる。
糠野橋上流側の河道拡幅工事。2011年3月29日
農業用取水口は、完成したばかりなのに、砂利で埋まり、水流が断たれていた。取水不能となっている。2011年5月26日
その2年後、農業用取水口から水は完全に離れた。蛇行した流路の内側には砂利が堆砂すること位、河川管理者や専門家なら最初から分かっていた筈だ。2013年6月7日
このようなことは、小学校五年生の理科の教科書の「川のはたらき」に書かれていることだ。川の流れは外側は浸食作用があり、内側は堆積作用があると習った筈だ。教科書通りに、砂利が堆積し、取水口は砂利で埋まっている。小学校程度にも達していない専門家とは一体何者なのかと呆れる。税金が、こうした人たちによってムダに浪費される。小学校レベルにも達していないこの管理者や専門家は、自分たちの失敗を認めることなく、取水口から取水できるように新たに堰をつくるのだという。
管理者は、「洪水の時に水が飲み込めない」「河畔林が障害になって水の流れを悪くしている」と説明しておいて、堰という障害物を建設するという矛盾は感じないようである。
更に、下流の取水口も十分な取水が出来なくなっている。ここにも取水の為に、堰を設けるというのだ。自ら川幅を広げておいて、水位が下がり流路が変わって取水不能になったから、また堰を新たに造るという。これでは事前に予測した、まるで事業興しではないか。
なんとも茶番な河川事業である。
専門家は「バーブ工」という取水堰を新たに設けるという。洪水流量が飲み込めないから、川幅を広げると説明しているのに、堰を造ればそれだけ水が飲み込めなくなるではないか。河道拡幅の計画時点で十分に検証がされていなかったというよりも、計画そのものが根拠不明なようだ。
この流域に暮らす農家の人たちは、昔と比べて1m以上は川底が下がっているので、農地が崩れないように守ってほしいと願っていた。「お役人から災害を防ぐ工事をしてやるからと言うんで、用地買収に応じて来た。でも、工事完成後の川の変わりようには驚いている。こんなことなら、売らなきゃ良かった」と漏らす。決して、表に出せない声だ。これが、現場のそこで暮らす住民の本音である。昔も今も川の姿を一番良く知っている流域住民。田畑を守りたいのは当然のこと。同様に美しい自慢の川も大事に思っていることを知っていただきたい。