石狩川水系忠別川
石狩川水系忠別川の最新ニュース
ニュースはまだありません。
忠別川は石狩川の源流の一つで、天人峡温泉がある。2010年08月24日の未明の雨で、天人峡温泉に続く道路が流され、観光客らが孤立したところである。
天人峡温泉の下流には堤高86m、堤長885mの巨大な多目的ダムの「忠別ダム」がある。その上流には取水ダムを始め、たくさんの治山ダム・砂防ダムがある。
![忠別ダム・堤高86m、堤長885m](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/①・2010-10-04・加工済・忠別川・忠別ダム・DSC_0285.jpg)
![忠別ダム](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/②・2010-10-04・加工済・忠別川・忠別ダム・DSC_0327.jpg)
![忠別ダムの湛水域・このダムが決壊したらどうなるのだろうかということを常に考えていただきたい。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/③・2010-10-04・加工済・忠別川・忠別ダム・DSC_0295.jpg)
2010年08月24日の未明に、大雨で天人峡へ続く道路が崩壊し、さらには忠別川をまたぐ「上忠別橋」のコンクリート擁護壁がはがれて、取り付け部の盛土が流れ出して路面が崩落し、通りかかった車3台がここから転落し、1人の生命が失われた。
2010年10月04日に現地を取材した。
上忠別橋の取り付け部には土嚢が積み上げられ、応急処置がされていた。
![右岸の取り付け部に土嚢が積み上げられた上忠別橋。右が上流である。コンクリートブロック護岸であったのだろうが、流されて川岸が崩れて垂直の崖になっている。●注目⇒川岸の草はなぎ倒されておらず、木にも草が引っかかった痕跡がない。つまり、水位が上昇して右岸側に溢れ出してはいないことを示している。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/④・2010-10-04・加工済・忠別川・上忠別橋被災・DSC_0361.jpg)
![上忠別橋の上流、右岸の少し上流部に残ったコンクリートブロック護岸とその基礎のコンクリートブロック床固工。●注目⇒コンクリートブロックの草がなぎ倒されていない。増水時の水位は草のところがわずかに浸った程度らしい。また、コンクリートブロックがめくれ剥がされて壊われている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑤・2010-10-04・加工済・忠別川・上忠別橋上流側右岸・護床ブロックが前のめりになっている・DSC_0394.jpg)
![上忠別橋の上流側の左岸。床固コンクリートブロックが前のめりに崩れている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑥・2010-10-04・加工済・忠別川・上忠別橋上流側・左岸の護床ブロック・DSC_0386.jpg)
急峻な川には巨石と言われる大きな石がたくさんあるものだ。しかし、ここには大きな石がない。
あるのは、こぶしの大きさ程度の石で、砂や泥ばかりである。
このような川の上流には決まってダムがある。
ダムは流速を減じるから、流下する大小様々な粒径の砂利をふるい分けて、大きくてもせいぜいサッカーボールほどの石やこぶし大の石、砂や泥など、粒径の小さな砂利ばかりを下流に流す効果がある。やがて、ダムから下流に流れ出す粒径の小さな砂利の量が次第に増していく。
ダムの流下する砂利のふるい効果は絶大で、その特徴がこの川に表れている。
ダムの下流の川底の石がこぶし大程度の石に変わってしまうと、流されやすくなり、増水毎にどんどん流されていく。その結果、川底が下がってしまう。これを専門用語で「河床低下」という。
※当ホームページのイラスト解説「ダムの仕組み」をご覧ください。
この川の川底の砂利は「増水した時に流されやすくなっている」ことに是非注目ください。
AやBの写真では川岸から水が溢れ出した痕跡は見られず、水位も上昇していない。それなのにコンクリートブロック護岸が崩れている。
さらに、BとCの写真では護岸の下に置かれたコンクリートブロックが前のめりに沈み込み、バラバラになっている。
このコンクリートブロックは川底が水流で掘られないように川底に敷き詰められていた護床工(ごしょうこう)と呼ばれるものだ。そのブロックの基礎の砂利が抜かれたため、前のめりに傾き、沈み込んで壊れたわけだ。
護床工は川底に敷設するもの。それが水面上に露出したのだから、川底が下がったことを意味している。
忠別川の2010年8月24日の増水は、容易く砂利が押し流されて川底を掘り下げてコンクリート護床工ブロックの基礎の砂利を吸い出すように抜き出した。その結果、コンクリート護岸が壊れ、上忠別橋のコンクリート擁護壁が倒壊し、道路の盛土が崩れ出して道路を陥没・崩落させたことがA、B、Cの写真からも伺える。
上忠別橋から上流を辿った。
![根がついたままの巨木が河原に散乱していた。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑦・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0425.jpg)
![川岸が崩れ、立木は倒れ込んでいた。根がついたままの流木の多くは山が崩れて、そこから流木が流れてきたと河川管理者や専門家らはいうけれど、実際には川岸や山の斜面にあった立木が流されているのが事実だ。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑧・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0478.jpg)
![途中にコンクリートの堰があった。向こう岸(右岸)は⑧と同様に、垂直に崩れている。この堰があるので、⑧と⑨は川底が下がったから川岸が崩れたのとは違い、川底が上がり、かつ、流されやすい粒径の小さな砂利ばかりになっていたために、浸食されて川岸が崩落したと考えられる。砂利を止めるダムは川岸の崩壊で流れ出してきた砂利を貯め、やがて、満杯になると平らにならされて、流路が蛇行して川岸を新たに浸食するようになり、川岸がどんどん崩されることになる。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑨・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0486.jpg)
![取水用のダム。ダム直下に粒径の砂利が目立ち、川底が下がっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑩・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0505.jpg)
![取水用のダムの直下の石を見ると、巨石はあまりなく、砂利は人頭大前後の粒ばかりになっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑪・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0516.jpg)
![】巨石が少なく、川岸が崩れ、垂直になっているのが目立つ。水は草木のところまで達していないことにも注目ください。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑫・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0513.jpg)
![天人峡温泉への道が寸断された場所。人物の前のコンクリートブロックは川底、つまり、水の中にあったものが、水面から出てしまっている。川の水面が大きく下がっているのが分かる。つまり、川底が下がっている証拠でもある。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑬・2010-10-04・加工済・道路崩壊箇所・忠別川・DSC_0526.jpg)
![忠別川は巨石があって川底が安定する川である。人物から巨石の大きさを知ってほしい。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑭・2010-10-04・加工済・道路崩壊箇所・忠別川・DSC_0533.jpg)
![道路が崩壊した下流を見ると、明らかに川底が掘り込まれている。また、巨石が少なくなっているのが特徴でもある。右岸の山の斜面が基礎にあった石が抜かれているので、岩盤が露出し、山の斜面もずり落ちそうになっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑮・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0549.jpg)
![道路崩壊した地点。川底が下がり、川に面した山の斜面が砂山崩しのように崩れている。また、巨石が非常に少ないことに注目していただきたい。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑯・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0588.jpg)
![少し上流に巨大なダムがあり、大量の砂利が貯まって川幅が異常に広がっている。ダムは河口をつくるようなもの。ダムの数だけ、河口ができるという専門家もいる。河口は傾斜が緩やかだから、流速が小さい。従って、流れ込んだ巨石を含めておおむね人頭大以上の砂利がこのダムによって止められ、下流へは人頭大からこぶし大・砂やシルト(泥)が選り分けられて流れ出すようになる。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑰・2010-10-04・加工済・忠別川・本流に大きなダムがあった・DSC_0600.jpg)
![】忠別川の支流のクワウンナイ川にも巨大なダムがあった。直下の河床があまり下がっていないのは岩盤だからだと思われる。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑱・2010-10-04・加工済・忠別川支流クワウンナイ川・DSC_0632.jpg)
![圧倒的に巨石が少ない。川底も下がっている。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑲・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0668.jpg)
![大雪山系独特の柱状節理だが、川に面したところで基礎が抜かれて、オーバーハングしている。いずれは大規模に崩落することだろう。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/⑳・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0672.jpg)
![天人峡温泉](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/㉑・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0703.jpg)
![天人峡温泉](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/㉒・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0731.jpg)
![川底が下がり、本来は川底にあり、水に浸かっていなければならないコンクリートブロックの護床工が水面から出ている。今後も、川底が下がり続け、河岸崩壊、道路崩壊、山脚崩壊が発生する危険性は大とみる。](http://protectingecology.org/wp/wp-content/uploads/2015/03/㉓・2010-10-04・加工済・忠別川・DSC_0734.jpg)
忠別川には多くのダムが建設されており、急峻な川に不可欠な巨石が少ない。川底の砂利は小粒化、したがって、川底の砂利は流されやすくなっている。増水のたびに川底の砂利が流され、川底はさらに下がり続け、道路や山の斜面が崩れる災害が多発するだろう。
「河床(川底)は下がっていない」とする北海道大学工学部のS教授の発言が当時の毎日新聞に記載されている。しっかりと記憶にとどめておいていただきたい。
ダムは川の安定に必要な石の供給を止め、ダム下流の巨石をも流してしまい、その結果、川底が下がるようになって、川を壊していくことになる。ダムが河床低下をもたらせて災害を引き起こしていることを知っていただきたい。
そして、次代のために、河川災害の現場を記録しなければならない。取り返しがつかぬ河川荒廃を招いた河川工学や砂防学の過ちを悔い改めるためにも。