見市川

見市川の最新ニュース

ニュースはまだありません。

見市川はサクラマス保護河川に指定され、この川が見渡せるところに北海道立水産ふ化場がある。源流域は、遊楽部岳(標高1,277m)登山コースがある急峻な岩山を流れる。

わき水のような透き通った水が流れる。上流は岩壁の迫る狭い流れとなっている。

湧き水の透き通った水が流れる。上流は岩壁の迫る狭い流れとなっている。

水質良好な清流であるが、この写真から下流域にはたくさんの治山ダム、巨大な砂防ダム、古い発電ダムがあり、ダムが砂利を止めている影響で、下流では川底が下がり、川岸の崩壊や国道の崩壊が多発し、通行止めになることも多い。

堤高23m、堤長84m、貯砂量944,000㎥の「見市川砂防ダム」。既に砂利で満杯になっているが、更に上流へと砂利が堆積し続けている。貯砂量944,000㎥を遙かに超えた量が、この砂防ダムによって止められ、その分量だけ下流に供給されなくなった。その為、今尚、川底はどんどん下がり続け、川に面した山斜面の崩壊が拡大している。

巨大な「見市川砂防ダム」が立ちはだかる。2007年3月9日
聳え立ちはだかる巨大な「見市川砂防ダム」。2007年3月9日
2007年2月9日、見市川が真っ赤に染まった。見市川砂防ダムの堆砂中に埋まった大量の落ち葉などの有機質がヘドロ化し、酸化鉄が生成され、堤体下部の穴から、大量に噴出し、川を真っ赤に染めたのだ。
2007年2月9日、見市川が真っ赤に染まった。砂防ダムの堆砂中に埋まった大量の落ち葉などの有機質がヘドロ化し、酸化鉄が生成され、堤体下部の穴から、大量に噴出し、川を真っ赤に染めたのだ。
川底は酸化鉄混じりの真っ赤なヘドロで覆われた。
川底は酸化鉄混じりの真っ赤なヘドロで覆われた。
真っ赤な酸化鉄混じりのヘドロで覆われた川底。
真っ赤な酸化鉄混じりのヘドロで覆われた川底。

見市川砂防ダムが、土砂から微細な砂とシルト(泥)を選り分けて下流へ流している。更に、河床低下によって河岸及び山脚崩壊を招き、少量の降雨でも泥が流れ、川底に大量の泥を堆積させている。

サクラマスの保護河川でありながら、サクラマスは減少し続けている。過去にはよく見たウグイやウキゴリ、ヨシノボリやカジカなどの姿も見ることが希になってしまった。

保護河川の管理者は、北海道である。更に、この見市川には同じ北海道の機関である水産ふ化場もある。これだけの保護する態勢があるにも関わらず、サクラマス資源が激減した。禁漁河川にして釣り人を排除さえすれば、資源が保護されると思っているのだろうか。北海道水産部や水産ふ化場の人たちは、サクラマスの繁殖や幼魚・稚魚の生活を支える仕組みを知らないとでも言うのだろうか。繁殖し、生息できる川の仕組みが損なわれているから資源が減少しているのだ。現場を直視し、損なわれた理由を真摯に考えていただきたい。

上流の治山ダムや砂防ダムによって砂利が止められると、川はどうなってしまうのか。現場の写真を見ていただきたい。

見市川最上流部の治山ダム。治山ダムから下流では川底が下がる。
見市川最上流部の治山ダム。ダムから下流では川底が下がる。
同、治山ダムの直下。治山ダムから流れ出す砂利の大きさはサッカーボール大か、小石や微細砂、シルト(泥)ばかりだ。治山ダムの下流では川底の石がどんどん押し流されて、川底が下がっていく。そのため、川岸が崩れ、川に面した山の斜面が崩壊し、大量の土砂と流木が流れ出す。
治山ダムの直下。砂利の大きさは小さなものばかりになる。

治山ダムから流れ出す砂利の大きさは、小石や微細砂、シルト(泥)ばかりである。ダム下流では川底の石はどんどん押し流されて、河床が下がっていく。その為、川岸は崩れ、川に面した山斜面が崩壊し、大量の土砂と流木を流し出す。

同、治山ダムの堆砂。大きな石は見当たらない。
治山ダムの堆砂。大きな石は見当たらない。
同、治山ダムの堆砂域は、上流へどんどん広がっている。そのため、川底が上昇し、その上を水が蛇行して流れるので、山の斜面を浸食し始める。
治山ダムの堆砂域は、上流へどんどん広がっている。その為、川底は上昇し、その上を水が蛇行して流れるので、山の斜面を浸食し始める。
鋼鉄製アングルのスリット式治山ダム。大量の流木がひっかかり、砂利を止めているため、川底が下がっている。大きな石が減少し、こぶし大、小さな石から微細砂が目立つ。
鋼鉄製アングルのスリット式治山ダム。大量の流木が引っ掛かり、砂利を止めてしまっている為、川底は下がっている。
スリットの間口が狭いので、流木がスリットを塞ぎ、大量の砂利がたまり、コンクリート式の治山ダムと何ら変わらない。この大量の流木や土砂は、上流の治山ダムの下流で川底が下がったために、川岸が崩れ、山の斜面がずり落ちて、そこから土砂と流木が大量に発生し、それが流れてきたものだ。また、たまった砂利の大きさは小さいものや微細砂、シルト(泥)が目立つことに注目してほしい。
スリットの間口が狭いので、流木で塞がり、大量の砂利が貯まる。スリットの意味は無い。この大量の流木や土砂は、この更に上流にある治山ダムの下流で、河床低下を起こし、河岸崩壊と山脚崩壊によって流れてきたものだ。まさしくダムによる負の連鎖である。
スリット式の治山ダムなのに、スリットが塞がっているために、堆砂域は上流へと広がっている。川底が上昇し、その上を水が蛇行して流れるようになり、山の斜面を浸食して崩壊させて土砂と流木を発生させる。
スリット式の治山ダムでありながら、塞がっている為に、堆砂域は上流へと広がっている。川底が上昇し、その上を水が蛇行して流れるようになり、山斜面を浸食し崩壊させて土砂と流木を発生させる。砂利は小ぶりなものや砂、シルトばかりだ。

川底の砂利が流されると、川底が下がり、山斜面が水流で浸食され崩壊する。それを防ぐ為に、治山ダムが建設される。川底の砂利が流れ出さないように砂利を止める目的である。

しかし、現場で実際に起きているのは、治山ダムそのものが下流域の川底を低下させ山を崩壊させている。更に上流域ではダムに貯まった砂利が川底を上昇させ、広い河原を形成し、その上を川水が蛇行して流れ、その水流が山の斜面を侵食して、新たなる山崩れを引き起こしている。

山が崩壊しないように建設した治山ダムが、実際には上流でも下流でも山崩れを発生させ、増加させている。ダムがある限り、ダムが引き起こす負の連鎖は止まらない。

見市川砂防ダム。急峻なV字谷に建設されている。
見市川砂防ダム。急峻なV字谷に建設されている。
見市川砂防ダムは砂利が堆積して満杯になり、計画貯砂量を遙かに超えた砂利が上流へと貯まり続けている。堆砂の石は小さく微細差やシルト(泥)がほとんどである。
見市川砂防ダムは砂利が堆積して満杯。計画貯砂量を遙かに超えた砂利が上流へと貯まり続けている。堆砂の石は小さく微細差やシルト(泥)が殆どである。
建設当時は深いV字谷だったわけだから、深淵な湖ができていたが、現在はグラウンドのようにだだっ広い堆砂域となっている。大きな石は一つもない。
建設前の当時は深いV字谷で、深淵な湖が出来ていたが、現在はグラウンドのように広い堆砂域となっている。大きな石は一つもない。
かつて水が溜まっていた頃の写真。この頃でもすでにかなりの砂利が溜まっている。
かつては水が溜まっていた。左寄りの黒くなったところが湖面。上流へと堆砂域が広がり、川幅が極端に広がっている。

左手の黄土色の所は、かつて水が溜まっていた所だ。現在は、全て微細な砂・シルトで埋め尽くされてしまった。そればかりか上流へと、どんどん堆砂域が広がり、深いV字の谷は川底が上昇し、川幅が広がり続けている。自然河川では有り得ない、異常な姿だ。

深いV字谷だったはずだが、平らな広い河原になっている。
深いV字だった谷は、平らな広い河原になった。
見市川砂防ダムは砂利を止め続け、とめどもなく上流へと堆砂域を広げ続けている。
見市川砂防ダムは砂利を止め、上流へと堆砂域を広がり続けている。この異常な状態に、専門家からは声が全く上がらない。砂防学・河川工学が生み出した現場である。
見市川砂防ダム下流の支流浄瑠璃川の治山ダム。サクラマス保護河川でありながら、上流へ遡上することはできない。かつてはたくさんのサクラマスやアメマスがこの治山ダムの下流で産卵していたが、今では壊滅状態。
見市川砂防ダム下流にある支流の浄瑠璃川の治山ダム。サクラマス保護河川でありながら、上流へ遡上することは出来ない。それでも、かつてはたくさんのサクラマスやアメマスが、この治山ダムの下流で産卵していた。それも今では壊滅状態。
北海道電力の古い発電ダムが放棄されたまま。ここでも砂利は止まるので、下流は川底が下がり続けている。
北海道電力の放置されたままの古い発電ダム。ここでも砂利は止まるので、下流の川底は下がり続けている。
同ダムの堆砂域は上流へと広がっている。V字の谷だったところに砂利がたまり、川底が上昇してその上を水が流れ、山の斜面を浸食して山の斜面を崩壊させている。
北電ダムの堆砂域も上流へと広がっている。V字の谷だった所は砂利が溜まり、川底が上昇し、その上を水が流れ、山の斜面を浸食し崩壊させている。
北電ダムの下流では河床低下が急速に進行しており、川岸の護岸が基礎を抜かれて崩壊している。
北電ダムの下流では、河床低下が急速に進行し、護岸は基礎を抜かれて崩壊している。
⑨の下流の国道277号線のコンクリート擁護壁付近でも、川底が深く下がって、川岸を崩壊させている。増水して水流が当たれば、砂山崩しのように川岸が崩れる。
その下流の国道277号線を支える擁護壁付近でも、川底が深く下がり、崩壊させている。増水して水流が当たれば、砂山崩しのように川岸は崩れ、道路は陥没する。ダムによって災害がいつ起きてもおかしくない状況にまで、川は壊れている。
】⑩の下流の駐車帯では、川岸の護岸を補強するために川底に敷設した護床工が水面から露出し、さらに前のめりに崩れている。上流からは砂利の供給が断たれているので、残っていた砂利が流され、護床工の下にあった砂利が吸い出されたので、前のめりに倒れているわけだ。
その下流の駐車帯では、護岸を補強する為に川底に敷設した護床工が水面から露出した。更に前のめりに崩れている。護床工の下にあった砂利が吸い出されたからだ。
⑪の下流の道路のコンクリート擁護壁を護るための護床工が、水面から露出するようになり、護床工の下の砂利が吸い出されるまでに川底が下がった。
その下流も道路の擁護壁を護るための護床工が、水面から露出するようになった。護床工の下の砂利が吸い出されるまでに川底が下がった。撮影:2011年09月15日
急速に川底が下がっているので、護床工は前のめりに崩れ始めている。
上の写真と同じ場所。川底は下がり続け、ここでも川底にあった筈の護床工までもが崩れ始めている。撮影:2014年06月24日

どの川も、増水すればひとたまりもなく崩れ、壊れていく状況にある。河川を管理する事業が、川を壊す。

この見市川は、道路との間に小高い盛土があって川と道路は離れていたが、いつの間にか道路際まで浸食が進み、小高い盛土は姿を消し、ついに道路は決壊した。こうした災害を引き起こす、起こさないは、河川管理の在り方次第である。もはや、災害復旧工事が「創出」されていると言われてもおかしくはない。北海道の産業は、災害関連の河川事業が主力となっていると言われても仕方ないだろう。

治山ダムという元凶を無視したままでは、被災した国道の補修をしても、さらに崩壊の規模は拡大していくことになるだろう。
8月の雨で川が増水し、国道277号線が被災した。国道と川との間には木が密生した小高い山があったが、一気に消失した。考えられないような大規模な浸食は、いかに河床低下が凄まじい影響を与えることかを物語っている。撮影:2013年08月22日
2013年08月22日
治山ダム、砂防ダムという病根を残したままの対策では、国道を補修をしても、被災を繰り返すだけである。そして被災規模は拡大していくことになる。撮影:2013年08月22日

考えられないような道路崩壊である。川底の砂利がどんどん失われ、川底が下がり続けているのだから、補修しても崩れ、何度も被災することになる。その都度、国からの災害復旧工事費を費やす。まるで自分の体を傷つけて、保険金を貰っているようなものである。これを繰り返している間に、体は壊れていく。北海道の河川管理は、まさに川(地域)を壊して、貪る既得者にお金を与えているとしか言い様がない。こうした災害興しのような河川管理を無くし、私たちが共有する自然環境や資源を保ち回復させる為には、私たち道民が、しっかり見て関心を持つことが必要なのだと思う。