沙流川水系額平川
額平川は二風谷ダムの流入部で沙流川に合流している。大量の砂利が流れ続けている川である。
二風谷ダムの流入部には砂利が流れ込まないように砂利止めの「貯砂ダム」があるが、すでに満杯になり、流れてきた砂利は貯砂ダムを乗り越えて二風谷ダムに流れ込み、二風谷ダムをほぼ埋め尽くしている。二風谷ダムには額平川からも大量に砂利が流れ込んでいる。国道237号線の額平川に架かる額平橋から前後を見れば、額平川が大量の砂利で川幅が異常なほどに広がっていることが分かる。異常な光景であることを知っていただきたい。
これだけ砂利移動が激しい額平川の上流に、今、平取ダムの建設が粛々と進められている。移動する砂利の量の多さを河川管理者はどのように評価しているのだろうか。また、平取ダム建設に関わった砂防学や河川工学に長けた大学教授や科学者と称する人たちはどのような判断で平取ダムの建設を認めたのだろうか…?
清流・沙流川は流域にたくさん建設されている大小のダムの影響が強く現れ、それが加速しているのだ。
沙流川はもともとは「清流」だったのだ。それなのになぜ泥川になってしまったのか…? ここをひも解いて行くことで、河川管理のあり方が見えてくるハズなのだが…それをしていないのだ。
この上流の宿主別川と合流する直下に「平取ダム」の建設が進められている。しかし…平取ダム建設に疑問の声も上がっているのだ。
平取ダム建設現場を見る。手前から向こうに水は流れている。2013年11月12日
額平川と宿主別川の合流点。平取ダムはこのすぐ下流に建設される予定。向こうが額平川で、手前が宿主別川。よく見ていただきたい。特に宿主別川から大量の砂利が流れてきているのがお分かりいただけると思う。額平川からも大量の砂利が流れてきている。その砂利が集まるところに、「穴あきダム」を建設するのだ。
平取ダム完成後に流れ込む砂利は、小ぶりの石と微細な砂とシルト分が異常に多くなるだろう。それに加えて、根っこつきの流木を含め、有機物も流れ込む。完成後の暁に大洪水に見舞われた時にはどういうことが起こるのだろうか…?
平取ダムの構造図が下記に公表されていた。
http://www.mr.hkd.mlit.go.jp/mrken_works/chisui/biratoridam_kentou/houkoku/pdf/genan_3.pdf
堤長600m、堤高56.5mの堤体設計図には「非洪水期用常用洪水吐き」ゲート、「洪水期用常用洪水吐き」ゲート、そして、ダムの底に位置に「融雪期用放流設備」ゲートの絵が描かれている。
砂利移動の量が異常に多くなったことを知った上でこの場所に平取ダムを建設しようとしたのだろうか。流れ出してくる砂利の量は2003年8月以降は「異常な量」になっているわけだから、二風谷ダム建設時と同様に少なく見積もっているのではないだろうか。額平川や宿主別川を甘く見ているようで、現場の川を全く読めていないのではなかろうか。
2ダム1事業として平取ダムが認可されたのだから、行政の事情と行政の手順だけで平取ダムの建設が進められてきたとすれば、今後にとんでもない事態を招き、将来に禍根を残すことになるだろう。
学者、技術者、大学教授らは地元で何が起きるかということは全く関係ない立場にある。ダム建設後に何が起きるかは問題ではなく、事態が動き、いろいろなことが起きれば、それが問題だろうが、なかろうが、自分の研究分野の必要なデータは集まるわけだから、それで十分なのだ。データが集まればそれだけ手柄が得られるだけのことだ。そうした視点で学者、技術者、大学教授らが平取ダム着工の裏支えをしていると考えればきっと見えてくるモノがあるだろう。
地元の住民のことなど知ったこっちゃないし、関係ないこと、また、川がどうなろうとも関係ないことなのである。無責任極まる人たちが自分のデータを得るためだけの目的で、人々が暮らしている地元に土足で上がり込んできて利用しているだけなのである。そう、感じてならないのだ。
八雲町の遊楽部川支流砂蘭部川に関わる大学教授らの話しから、そう見えてきた。砂蘭部川の対応から、専門家、技術者、大学教授らは、データを得ることだけを目的にしている人たちであると確信をした。
額平川は河床低下が進行しているので、川岸や川に面した山の斜面の崩壊が続いている。大雨の増水時には大量の土砂とおびただしい量の流木が流れ出してくることが予測できる。平取ダムの着工を容認した専門家や科学者らはこうした現場を読めているのだろうか…?
いやいや、読めていなくても良いのだ。なぜなら、彼らはどうなろうが、新しいデータが得られるので、十分手柄をてにすることができるのだ。
額平川や宿主別川が今までの川とは事情が違ってきていることを読めていなくても、手痛い大災害を被っても、彼らには関係ないことなのだ。困るのは地元であって、専門家や科学者らは、今まで得られなかった新たなデータを得られるから御の字なのである。
このことに地元の人たちは気がつくべきだ。そして、平取ダムの建設は即刻取りやめるように働きかけ、また、沙流川流域の住民が一丸となって二風谷ダムや岩知志ダムを撤去すべきだ。