活動を支える調査
「流域の自然を考えるネットワーク」は、主に以下の調査活動に取り組んでいます。
オオワシ・オジロワシの越冬数カウント調査
国際保護鳥であるオオワシ・オジロワシの越冬を支えているのは野生サケ資源であり、その野生サケ資源は、川の健康状態に支えられています。20年を超えた調査は、川の健康状態を知る重要な手掛かりとなっています。
サケの産卵床調査
野生サケが産卵する状況を知ることで、地下水の噴出箇所や噴出量を知ることが出来ます。つまり、河床低下を起こしている川は、地下水が抜かれ、地下水位が低下するという状態を知ることが出来るのです。サケの産卵場所の変化や水温など適宜調査を行い、川の健康状態を知ることに努めています。
野生サケは多くの生きものたちの生活を支えているので、野生サケがどのように利用されているのかを裏付ける調査もしています。
河畔林調査
河畔林をGPSデータで記録することで、河床低下で起きる河岸崩壊や、河道の変化を確認することが出来ます。消失した河畔林は、止まり木に利用しているオオワシ・オジロワシにも影響を与えています。河畔林の役割を総合的に知るための調査でもあります。
ダムの位置と河川事業の位置情報
ダムの下流では河床低下が発生し、河岸崩壊・道路崩壊・農地崩壊・山脚崩壊などが発生することから、災害復旧工事が行われることになります。そして、ダムの上流では堆砂が膨大に増え、川幅が広がる為、林道崩壊・山脚崩壊などの災害復旧工事が行われることになります。従って、ダム建設後から起きた災害と、復旧工事の情報を集めることで、ダムの影響(問題)が見えてくるようになります。
ダムの上下流の追跡記録
ダムの上流では砂利の堆砂で川幅が広がり、ダムの下流では河床が低下し、砂利の大きさの構成が変わるなどの変化が見られます。ダムの上流側と下流側での違いや、河床の石の状況を記録することで、ダムの影響について良く分かるようになります。
ダムを境にして、上流も下流も川岸が崩れ、山が崩れるようになり、濃い泥水が流れ出すようになります。
こうして、いろいろなダムを記録していくと見えてくるものがあります。
川底に何気なく転がっている石や砂利は、川を安定させる重要な役割を担っていることが見えてきます。また、高い方から低い方へと、只々流れているだけの水ですが、実は、そこには多くの生命を育んでいる仕組みがあることも見えてくるのです。
河川生物と河床の砂礫調査
河床の砂利の大小や砂・シルトなど、河床の礫と、そこに棲む生物の種類(生物相)を知ることで、川の健康状態を知ることが出来ます。
森林伐採現場や林道開削現場の調査
川の水は、森林源流域の広範囲から集まって来ます。森林は「緑のダム」といわれるように、雨水の貯水能力があります。しかし、伐採地の作業道や集材路、林道の開削で、表土が掘削される為、腐葉土層・腐植土層が失なわれます。これらへ染み込んで地中をゆっくりと流れていた水は、作業道、集材路、林道に流れ出し、川と見まごうほどの水量となって流れ出しています。
こうした現場の調査は、川の保全を考える上でも大切な調査です。実際に管理担当者に現場を見て貰うことで、流域の自然を損なわない施業手法の陳情を行うことも出来ます。大事な流域は、施業される(入札)前に、森林計画について知ることが必要です。