天塩川水系サンル川
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サンル川は天塩川の支流名寄川のさらに支流の川だ。北海道が指定するサクラマス保護河川は、どこもサクラマス資源が枯渇している。そんな状況にある中で、このサンル川は、全くの自然状態で、これほど多くのサクラマス資源が残ったものだと驚く。
サンル川は「奇蹟」の川といえるだろう。
道内の保護河川では釣り人が強制的に排除され、禁を破れば警察に突き出されて逮捕される。あげくは新聞に名前が載り、罰金刑に処される。厳しい縛りでサクラマス資源は保護されている筈なのだが、その保護河川からサクラマス資源が激減しているのだから、摩訶不思議なことである。一方、サンル川は何の手立てもされず、むしろ行政に見向きもされなかった。行政が保護河川という手当をしなかったからこそ、サクラマス資源が残ったといえるのではないか。釣り人が釣りをした程度ではサクラマス資源は枯れないということも証明したようなものだ。サクラマス資源が枯渇したのは保護河川であるわけだから、まずは保護河川の管理者として北海道の水産部は猛省し、保護河川のサクラマス資源がなぜ枯渇してしまったかをしっかりと検証し、是正していただきたいものだ。禁を破った釣り人を警察に突き出して来たのはサクラマス資源の保護策にあったわけだから、それが達成できなかったことはもっと罪が重いからだ。
さて、サンル川のサクラマス資源はなぜ豊富なのか。
この川の特徴は、「サンル12線川」を除いて治山ダムや砂防ダムが無いこと、そして、川の勾配の緩い流域が広く、サクラマスの産卵に適した川底が広域に亘っていることにある。そして、治山ダムや砂防ダムがないから、サクラマスの再生産を支える仕組みが壊されずに機能しているのが特徴だ。
これが豊富なサクラマス資源を支えてきた背景だ。
サクラマス資源が枯渇した保護河川の特徴はたくさんの治山ダムや砂防ダムが建設され、川底が下がり、サクラマスが産卵しても石ごろ流されたり、川岸崩壊や山脚崩壊が頻発して泥水が流れ、サクラマスの繁殖を支える川底の仕組みが失われたところにあるのだ。
北海道が本気でサクラマス資源を回復させようとするのであれば、まずはこの自然河川のサンル川を保全した上で、このサンル川のサクラマスの再生産の仕組みを解明し、その解明したことをもってサクラマス資源が枯渇してしまった保護河川の復活に役立てるべきではないのか。
豊富なサクラマス資源が保全されているサンル川の仕組みを解明しないままに、この川が壊されようとしていることが、私には全く理解できないことだ。サクラマス資源を失わせた保護河川の管理者には憤りを感じる。
このサンル川に、堤高46mの台形CSGダムが計画された。現在、工事が着手されている。
http://thesis.ceri.go.jp/db/files/62340839654601850538d6.pdf
そのダムの堤体には、高さ46mを繋ぐ全長約7kmの規模な魚道が付帯される。果たして、そんな長大な魚道が機能するのだろうか…?
長大な魚道の例が、後志管内の利別川、美利河ダムにあるので、この魚道を紹介しよう。美利河ダムは堤高40mで、ダムから上流のチュウシベツ川から後志利別川まで、全長6kmの魚道が計画された。現在、後志利別川までの3.6kmを残し、チュウシベツ川までの全長2.4kmが完成している。
http://www.hk.hkd.mlit.go.jp/water/pirika/gyodou_01.html
http://thesis.ceri.go.jp/db/files/GR0003000085.pdf
ピリカダム魚道入口の看板。ダムの堤高は40m。2005年11月02日
ピリカダムと魚道入口付近。
延々と続く魚道。奥にピリカダム本体が見える。
道路をくぐり、山側に続く魚道。
再び道路をくぐり、ピリカダム湖側に出て湖水沿いに続く魚道。
更に道路を潜り抜けて、チュウシベツ川の出口へと続く。
チュウシベツ川に堰を設けて水を取り入れ、サクラマスの幼魚が湖水へ流れていかない工夫をしているという。魚道施設が壊されないように川はコンクリートブロックで強固に固められている。
魚道の下流側は河床が下がり、川岸の崩壊が進んでいる。魚道のために川が壊れていく。お分かりのように、魚道建設は魚が棲む川を壊す事業となっている。
サンル川でも同じことになるだろう。
魚道の効果を科学的に判定することは極めて難しい。そもそも魚道の効果には何らの裏付けもないのである。
魚道の入口に魚が100辿り着いて、出口から100出て来たのなら、効果の判断は容易だ。しかし、その魚道の入口に辿り着く数が不明なのだから、効果の判定など出来る訳がないのだ。「魚道を上った」、たった一尾の魚を指して、「ほうら、魚道の効果はあるじゃないか」と自慢してみせる専門家もいるが。
美利河ダムでは、度々、地元の子どもたちを招き、サクラマスの幼魚(ヤマメ)を魚道に放流しているから、野生サクラマスの幼魚が果たしてどの程度いるのかすら、知ることはできない。魚類の専門家や大学教授たちが、長大な魚道に何の疑問も挟まないことは科学全盛の時代にあって摩訶不思議なことだ。その摩訶不思議な科学をする専門家や科学者たちが美利河ダムの6kmの魚道を容認し、サンル川の約7kmの魚道をも容認したのだから、もう滅茶苦茶である。
補足するならば、道南の厚沢部川水系小鶉川で魚道を建設させて、その下流一帯を露盤化させ、産卵していたサケやサクラマスすら産卵できなくしてしまった専門家がこのサンルダムの魚道計画に参加しているのだから、効果を信じることなどできるはずがない。
サクラマスにはおもしろい習性がある。川で生まれたサクラマスは、自然の湖水や人工的なダムを海に見立て、降海ならぬ降湖し、湖で成長して、再び川に遡上して産卵するものが現れる。降湖型サクラマスと呼ばれ、北海道や本州の湖やダム湖で知られている。降湖型サクラマスは海へ下らないから、漁業資源にはならない。つまり、降湖型が出現したら漁業資源は消滅する。ピリカダムには、既に降湖型の情報があり、調査が必要である。また、巨大ダムが建設されるとその後、必ず川は荒廃する。そして護岸工事が目白押しとなる。その結果、サクラマスに適した川底が失われ、産卵を支える川の仕組みも失われる。サクラマス資源が種の段階で失われることになるから、致命的なことだ。このことはサクラマスの保護河川で資源が枯れたことで誰もが解っていることだ。
サクラマス資源の減衰と共に、変わりゆくサンル川の姿も、しっかりと見届けていただきたい。
二風谷ダムでは完成後、各所で護岸工事が目白押しだ。当別ダムは完成したばかりだが、既にダム下流の住民を集めて、ダムから青山橋までの全区間を護岸工事する説明がされている。
サンル川のダムが出来る前の、今の良さをしっかりと記録に残しておこう。ダム、魚道建設に携わった専門家や大学教授たちも、しっかりと見届けていただきたい。最後の生命育む清流「サンル川」とこの川に息づくサクラマスたちの姿をしっかりと目に、心に焼き付けていただきたい。
そうなる前に、本気でこのサンルダム建設計画を見直しさせてほしいと願うばかりだ。
http://www.as.hkd.mlit.go.jp/teshio_kai/teshio/pdf/10iken0084.pdf
一級河川天塩川水系サンル川の看板。
サンル川。岩盤に薄く砂利が乗っかっている川底を持つ。ダムが建設されれば、砂利は流され岩盤が露出するだろう。
ダムの堤体が設置される付近は、水際まで草木が生え、細流がある多様な岸辺となっている。こうした所がサクラマスなどの幼魚の安住の場であり、生育場所である。漁業資源であるサクラマスを保全するには、こうした場所を残し、保全することが大事である。専門家からの指摘はないのだろうか。専門家らのサクラマス資源の保全対策、魚道付帯は単なるダム建設のための言葉遊びに過ぎない。
ダム堤体が設置される付近で、堤体に取り付ける魚道の実験が行われた。魚道よりも、幼魚の生育場所の保全が重要なのだが、ダム建設在りきで、損なわれるものの真実を見失っている。
傾らかな岸辺がサクラマスの養魚の隠れ家であり、生活場所だ。この姿からサンル川の良さがよく分かる。
魚道実験した場所から先は通行止めに。その先で、ダム堤体の基礎の建設が始まっていた。
右岸側のダム堤体の取り付け用の基礎工事が始まった。
左岸側のダム堤体の取り付け用の基礎工事現場。ダム建設は山をも失う力尽くの事業だ。
ダムで水没する川。川岸の多様な環境がサクラマス幼魚たちの生活、生育の場だ。これが完全に失われる。こうした環境が養う数を支えている。ダムはサクラマス資源を必ず枯渇させる。
水没する川を眺めていると、サクラマス幼魚を養育する仕組みが悠久と残されてきたのだと思う。それを消滅させるのだから、魚類の専門家たちはしっかりと行く末を見届け、後世に謝罪しなければならない。
サクラマス資源が保全されることはないだろう。水没地点こそ、サクラマス幼魚の生育する場であり、サンル川の主たる再生産の場となっているからだ。
遠くに代替え道路の橋梁が見える。この辺りはすべて水没する。小沢や細流があり、サクラマスの産卵場や幼魚の生育場所の全てが失われる。
7kmに及ぶ魚道建設が進められている。
関係者以外は工事地点に近づくことができない。
水が流れる際まで草木で覆われている素晴らしい川だ。
サクラマスの産卵に適した川底である。
水際まで草木が繁茂している。産卵環境もよし、幼稚魚の生活環境もよし、サクラマスには申し分のない川だ。
川底の砂利はサクラマスの産卵に適している。
水際まで草木に覆われている。昆虫が多く、魚の餌が豊富だ。
川面が鬱蒼とした樹林で覆われている。真夏の太陽に照らされても水温の上昇を抑えることが出来る。冷水を好むサクラマスの幼魚にとっては最適な生育の場となっている。昆虫も多いから餌も豊富である。
砂利には微細な砂やシルトが少ない。泥水が出ない川であることを示している。
サンル川は、サクラマスの産卵に適した河床が非常に広くあり、幼稚魚が食べる餌も豊富で、身を隠す場所、越冬する場所など、サクラマスを育むに相応しい環境がすべて揃っている。その価値を知らない人たちが、サンルダムを計画したのだろう。莫大な建設費が投入されるダム建設に群がる者たちだけで、この川を壊す工事を決めてしまって良いのだろうか。悠久の時を紡いで来たサクラマスを消滅させてしまうのは罪深いことではないのか。
サンル川は世代を超えた人たちのかけがえのない川であり財産である。
勾配の緩いところにサンルダムが建設されてしまえば、パタゴニア社が制作した映画「ダムネーション」のダムを爆破するシーンで見られるように「膨大な量のヘドロ」が堆積するわけだ。ヘドロが堆積する場所は、サンル川のサクラマスの大半が産卵し、夥しい数の稚魚・幼魚が暮らす良好な場所のほとんどになるから、その影響は計り知れないのだ。
パタゴニア社制作「ダムネーション」
映画「ダムネーション」が教えてくれる「膨大な量のヘドロ」はサンルダムの問題点を明確に示している。
今からでも遅くない、即刻サンルダムの建設は見直していただきたい。
一人の力では止めることができない。多くの人たちが声を上げていただきたい。