後志利別川

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後志利別(しりべしとしべつ)川の上流の美利河地区に、堤高40m、堤長は約1500mもある巨大な美利河(ピリカ)ダムがある。ピリカダムと魚道入口付近。

高さ40m、長さが1500mもある巨大なピリカダム。砂利は一切流れてこない。このダムの下流では川底が浸食される。ご覧のように川底はコンクリートで固められている。そうしないと侵食されて堀下がり、川岸が崩れるばかりか、ダムそのものが崩壊してしまう。

http://www.hk.hkd.mlit.go.jp/water/pirika/

北海道開発局函館開発建設部の上記のホームページがあるので見ていただきたい。

 

ピリカダム魚道入口の看板。2005年11月02日

ピリカダム魚道入口の看板。2005年11月02日

2005-11-02・加工済・後志利別川・ピリカダム・魚道・143923
落差40mのダムを乗り越えるために建設された魚道はまずチュウシベツ川まで2.4kmが建設された。養殖場の池ではなく、自然の川をつぶして、人工の川をつくったということだ。

 

2005-11-02・加工済・後志利別川・ピリカダム・魚道・143515
魚道の入口はダムの正面、左側にある。魚道は人工の川、つまり、コンクリートの水路なのだ。

 

2005-11-02・加工済・ピリカダム魚道・141153
落差40mもある巨大なダムを回り込むように人工の水路が建設された。

 

落差40mの壁が立ちはだかるために、サクラマスは上流に産卵に行くことができない。そこで、取り付けられたのが長大な魚道である。ダムの上流の後志利別川までは総延長が約6kmとあり、現在は途中の支流である忠志別川までの2.4kmが完成している。

魚道とは行く手を遮るダム(障害)を乗り越えるために考え出された人工水路である。上りやすいように段差をつけ、魚が休めるようにと階段の踊り場的な池も突いている。

ホームページには魚道にカメラをつけて上る魚を確認し、上った魚の数が掲げられ、魚道の効果が宣伝されている。

●考えていただきたい…

魚道の入口は上記ダムの正面の左側にある。ここまでたどり着いたサクラマスの総数は確認されていない。そのうちのどれだけの数が魚道の入口から入ったのかは分からないのだ。たとえ上流の出口を出たものがいたとしても、総数のうちのどれだけの数なのかは全く分かっていないのだ。

2013-05-18・加工済・二風谷ダム魚道・DSC_0153
日高地方の沙流川のアイヌの聖地を水没させて建設された北海道開発局室蘭開発建設部が担当する二風谷ダム。ダムの水位によって上下できるエレベーター式魚道がある。約50段あるが、23段目のところで、上るのを止めてすべて下ってしまった。

 

さて、魚道の効果だが…沙流川には二風谷ダムが建設され、ダムの水位によって上げ下げできるようになったエレベーター式魚道がある。魚道の階段は約50段ある。ちょうどサケが魚道を上っていたので、観察したところ、23段まで来ていたサケはすべて上るのを止めて下ってしまった。上るサケがいたとしても、上らないサケがいるわけだから、魚道の効果は分からないのだ。

サクラマスは例えば100上ってきて、100が産卵するからサクラマス資源が減らないで維持されている。ところがダムができるとどうなるのだろうか…?

ちょっと乱暴だが、資源がどうなるのかを計算をしてみよう。

ダムがない場合、100上ってきたサクラマスが100上流にたどり着いてすべて産卵し、サクラマス資源100が維持されてきた。計算式は…

100/100=1 となる。次回に上ってくる資源も100から生まれた資源だから100上ってくるので、100/100=1となる。次の世代も100となり、資源が維持されている。計算式は…

1✕1✕1✕1…=1

ところが、ダムが建設されると変わる。

魚道まで100上ってきて、魚道を100上ったのならいいが、実際には100上っていない。したがって、魚道を上って上流で産卵するサクラマスは100よりも少い。そうして生まれたサクラマスの数はダムの無い時よりも少なくなる。この少ない数が次回の産卵にのぼってくる。この数をSとすれば、昨年よりもサクラマスの数が減ったわけだから、Sは100よりも少ない。

S<100 となる。

昨年に比べて産卵したサクラマスの数は100よりも小さいから、計算すれば1よりも小さくなる。

S/100<1…⇒ つまり、0.***<1となる。次の世代、その次の世代…と調べて行けば…

0.***✕0.***✕0.***<1 ⇒ 限りなく0に近づいていく。

つまり、資源が減少するということだろう。

こうした視点に立てば、魚道の入口にたどり着いた数を確認することがいかに重要かが分かる。そして、そのうちの100%が上ったのかを確認しなければ、魚道の効果は判断できないのだ。

魚道の入口にたどり着いたサクラマスの数を確認しないまま、魚道を上った「魚がいた」というだけで、「魚道の効果あり」とされているので、魚道づくりが目白押しとなっている。水産資源を失う危険な事態が放置されているのだ。

魚類の専門家が科学的裏付けのないままに魚道づくりに励んでいるから、驚くほかない。さらに問題があるのだ…

【写真-③】延々と続く魚道。奥にピリカダム本体が見える。
【写真-③】延々と続く魚道。奥にピリカダム本体が見える。

 

2005-11-02・加工済・ピリカダム魚道・141426

 

ピリカダム湖水沿いに続く魚道。
ピリカダム湖沿いに続く魚道。天日にさらされた水路だ。

 

道路をくぐり抜けて、チュウシベツ川の出口へと続く。
道路をくぐり抜けて、チュウシベツ川の出口へと続く。

 

魚道施設に砂利が流れ込まないようにするため、上流には落差工が設けられ、両岸は浸食されないようにご覧の通りに、コンクリートブロックを敷き詰めて押さえ込んでいる。
魚道施設に砂利が流れ込まないようにするため、上流には落差工が設けられ、両岸は浸食されないようにご覧の通りに、コンクリートブロックを敷き詰めて押さえ込んでいる。魚道建設のために砂防ダムが建設され、この砂防ダムの影響で川底が掘られるので、コンクリートブロックでガチガチに固めてある。自然の川も人工の水路にされてしまうのだ。

サクラマスは卵からふ化して1年あまりを川で生活する。そして、海に下る習性の魚だ。ところが、途中にダムがあると、ダムを海に見立ててダムに下り、そこで生活し、成熟してしまうのだ。

道内ではサクラマスが定着した湖がいくつかある。本州では奥只見川の銀山湖が知られている。

このピリカダムでも、ダム湖で育ち、産卵期にダムに注ぐ川に上るサクラマスがいるという情報も聞かれている。

もしも、そうであれば、海へ下る数がさらに減少していることになる。魚道で数が減り、ダム湖で選別されて数が減り、その結果、海へ下るサクラマスの数が減少するということだ。すなわち水産資源が減少するということになる。

これに追い打ちをかけるのが、ピリカダムそのものが砂利を止めてしまうため、ピリカダムの下流で河床の砂利が流されてしまい、下流で産卵していたサクラマスやサケ、アユ、ウグイ、カワヤツメなどなど、多くの魚種が産卵場を失い、資源を減らすのだ。

さらには川底が下がるために、川岸が崩れ、川に面した山の斜面が崩れるから土砂の流出が増加し、沿岸の海を泥の海にしてしまう。その結果、磯焼けが広がることになる。実際、日本海側では磯焼けが拡大し、不毛の海が広がってきている。

国が管理する一級河川で、水質の良さは日本一と賞賛された川である。それもそのはず、川を汚染させるような施設が無いことが背景だろう。また、平野部が広いのできっとわき水の豊富な川、人々には恵みの川に違いないのだが…ピリカダムが完成後、カワヤツメが激減したという。カワヤツメの漁業権が設定され、川漁師がいたのだが…今はどうなったのだろうか…?