大野川水系子熊の沢川

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函館方面から江差方面を通る国道227号線沿いの大野川の支流である。川幅が2m程の小さな川だ。その川で大規模な工事が行われている。

この川の最上流部に昭和58年(1983年)に建設された砂防ダムがあり、その下流には2基の大きな砂防ダムがある。平成23年(2011年)には4基目の砂防ダムが新設された。その下流は階段状のコンクリート三面張りの流路工に造り変えられた。

2012-07-19・加工済・①アングルダムと流路工

川を流れる砂利は、ダムで止められるので、下流の河床は下がり川岸が崩れる。そして山の斜面もずり落ちる。まるで自作自演の公共工事の現場だ。事業評価委員会はこうしたダム事業を精査するべきだ。

子熊の沢川はごくごく小さな川だ。国道227号線の橋の下流側。
子熊の沢川は小さな川だ。国道227号線の橡木(トチノキ)橋を跨ぐ下流側。
国道227号線の橋のすぐ上流では大規模な工事が行われていた。ここまで工事をしなければならない必要性に疑問を持つ。
国道227号線の橡木橋を跨ぐ、すぐ上流では大規模な工事が行われた。
工事現場から国道227号線橋をごく小さな橋で設計されている。元々、災害が発生しないごく普通の川だったことが分かる。
国道227号線を跨ぐ橋は、小さい。当初、この規模の橋の設計であったということは、川から発生するような災害は無く、安定した川だったことが覗える。

上流域にあるダムが流下する砂利を止めてしまうため、その下流では川底が下がり、巨石が滑り出し、流れ出す。そして増水時には土石流となって下流へ流れ下る。写真のように川の巨石を取り除いて川を固めても、上流にダムがある限り、川底は下がり続け、護岸は再被災することになる。

2011-10-04・加工済・②巨石の除去
川底の巨石を取り除いている。

この巨石がどこから何故、この場所まで流れてきたのか?

河川管理者は、巨石の動向を知っていながら、なぜそうなるのかの原因に触れず、住民を欺いた見せかけの「川づくり」を繰り返している。そこには流域住民の生命・財産を護るというのは名ばかりで、事業を興すことだけが見え隠れしている。

上流に見える堤高8.5m、堤長52mの4号砂防ダムと、そこから始まる単なる水路へ作り変える大規模な工事。工事のための工事だ。
堤高8.5m、堤長52mの4号砂防ダム。そこから下流は、無機質な水路へ作り変える大規模な工事。
4号砂防ダムを上流側から見る。鋼鉄製のアングルが中央に設置されている。小さな川にそぐわない異様な構造物だ。
4号砂防ダムを上流側から見る。鋼鉄製のアングルが中央に設置されている。この小さな川に巨大な構造物が異様な光景を醸し出す。
ごく普通の小さな渓流である。巨石が噛み合い、安定した川だ。しかし、この上流に3基の砂防ダムがある。微細砂・シルトが大量に流れ出せば、これらの巨石は崩れて流れ出し、土石流が発生する。3基の砂防ダムが土石流の発生の起因となっても、誰も言及しないだろう。この上流の大規模な3基のダムは人の目に届かない山中にあるのだから。
建設された4号砂防ダムのすぐ上流側。 小さな渓流河川である。巨石が噛み合い、安定した川だ。しかし、微細砂・シルトが大量に流れ出すと、これらの巨石は滑り崩れ、土石流と化す。河床を安定させている砂利の流下を止めているダムが上流にあるからだ。土石流を発生させる原因となる3基の巨大ダムは人の目に届かない山中にある。

2011-10-07・加工済・③ヒキガエルこの小熊の沢川流域に生息するヒキガエル。

昭和28年に砂防指定地に指定されたという看板。新しく作り直した理由は何か?
昭和28年に砂防指定地に指定。看板は新しく作り直されている。
1号砂防ダムの直下では川底が下がり、川岸の根元が抜かれている。これがダムのある川共通の姿である。
1号砂防ダムの直下は川底が下がり、岸の砂利が抜かれている。これがダムのある川の共通の姿だ。
1号砂防ダム。川底に敷き詰められたコンクリートブロックは砂利に埋まっていたようだが、段差ができて、ブロックはばらばらに壊れている。1号砂防ダムは砂利が満杯に堆積し、堆砂域は鬱蒼とした樹林と化していた。ところが…
1号砂防ダム。川底に敷き詰められたコンクリートブロックは砂利に埋まっているが、段差が出来て、ブロックはバラバラに壊れている。ダムは砂利で満杯に堆積し、堆砂域は鬱蒼とした樹林と化している。ところが…
2014年8月23日、木が切り払われ、巨大なダムの姿が現れた。こんな小さな川に似つかないほどに大規模な堤体である。Google Earthで最新の衛星写真を見ることができるので、是非、確認していただきたい。
上の写真と同じ場所は 2014年8月23日、木は伐り払われ、巨大なダムの姿に。この小さな川に驚く大規模な堤体だ。Google Earthで最新の衛星写真を見ることが出来る。是非、確認していただきたい。

山を削ってまで川幅を拡げて、巨大化にした堤体の中央にスリットを入れている。コンクリートで肉厚にする補強工事も行われている。

2号砂防ダム。ダムには砂利が満杯に堆積し、堆砂域は鬱蒼とした樹林で覆われていた。
2号砂防ダム。ダムは砂利が満杯に堆積し、堆砂域は鬱蒼とした樹林で覆われている。
2号砂防ダムの下流側は川底が下がっていた。
2号砂防ダムの下流側は川底が下がっている。
さらに上流をたどる。鬱蒼とした樹林に覆われた小さな川だ。安定している目安になる苔むした石があまり見当たらない。流れてきた石が積み重なり、砂が目立つ。こんな川を見たら上流にダムがあると思って間違いない。
更に上流を辿る。鬱蒼とした樹林に覆われた小さな川だ。安定の目安となる苔むした石は見当たらない。石は積み重なり、砂が目立つ。こんな川では上流に間違いなくダムがある。
さらに上流へとたどると、川底が下がり気味で、苔の無い石が目立ち、砂が川底や川岸に大量に堆積していた。つまり、泥が流れている証拠であり、川底が下がって、川岸が崩壊したり、山の斜面のずり落ちたりしていることを示している。また、ダムが流れ込んだ土砂から微細砂やシルトを選り分けて流すことでも発生する。
さらに上流へ辿ると、川底は下がり、苔の無い石ばかりで、砂が大量に堆積している。つまり、泥が流れているといことだ。これは、河床低下が起こす河岸崩壊、山腹崩壊をはじめ、ダムが流れ込んだ土砂から微細砂やシルトを選り分けて流すことでも発生する。
2011-10-07・加工済・④ダム直下の壊れた河床ブロック
3号砂防ダムが見える。川底に敷き詰められていたコンクリートブロックは露出し、バラバラに崩れ、川底が下がっているのが分かる。人物の大きさから砂防ダムの大きさが分かる。
堤高14m、堤長62mの3号砂防ダムである。
この川の最上流部にある堤高14m、堤長62mの3号砂防ダム。
3号砂防ダムも砂利で満杯になり、堆砂域は草地化、樹林化し、大きな石は一切流れ出さないようになっている。川の上流の渓谷なのに、川の下流と同じ姿がダムによって現れている。
3号砂防ダムも砂利で満杯になり、堆砂域は草地化、樹林化し、大きな石は一切流れ出さないようになっている。上流の渓谷が、川の下流と同じ姿にダムによって変貌する。
北海道大学の平川一臣氏は、川にダムをつくれば、つくったダムの数だけ、上流から下流の景観をした「新しい川を創出する」というが、まさにその通りである。生物多様性保全を無視する、川を分断するダムづくり事業は、科学者は加担すべきではない。
北海道大学の平川一臣氏は、川にダムを造れば、造ったダムの数だけ、上流は下流の景観をした「新しい川を創出する」と言うが、正にその通りである。

河川災害の真実は現場が教えてくれる。力尽くで押さえ込むダム事業が、川が持つ仕組みを破壊し、川を不安定にさせて、災害が起きやすくしているのが現実なのだ。

河川災害を近年の異常気象による大雨だと決めつけたすり替えや策略は、後世に手痛い「しっぺ返し」を贈ることになるだろう。

河川管理者も行政に寄生する科学者も目を覚まし、直ちに我に返り、川を分断するダムづくり事業や既設のダムを見直し、改善し、川の仕組みを回復させ、多くの命を育む川の再生産の仕組みを蘇生させるべきだ。