松倉川
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1992年、北海道は松倉川下流域の洪水被害の防止と水不足解消の目的で、上流に治水・利水の多目的ダムを建設する計画を発表した。しかし、このダム建設計画の根拠に疑問を持った市民が、反対運動を展開。当時の公共事業見直しの機運が後押しし、北海道の「時のアセス」により事業の見直しがなされ、この松倉ダム建設計画は中止された。この運動の要は、函館市民が松倉川を徹底して調べたことにある。洪水被害は、松倉川が水を飲み込めず溢れ出して発生したのではなく、市街地の水路にゴミが詰まって溢れ出た内水氾濫だったことや、水需要の予測にメスを入れ、計画の根拠が曖昧だったことをあぶり出した。
自然環境に詳しい専門家や数値解析に長けた活動家たち、何よりも松倉川の良さを知り尽くし、松倉川をこよなく愛する函館市民たちの情熱が川を護り、今もみんなの憩いの川として残されている。
松倉ダム建設計画のことや中止に至る経緯については、下記の北海道淡水魚保護ネットワークのサイトに詳しく書かれているので、是非、参考にされてください。
北海道の淡水魚保護ネットワーク
URL:http://www.hokkaidofreshwaterfishconservation.net/forums/2nd/nakao002.html
松倉川は、函館市の東側に位置する函館空港寄りを流れる。下流域には湯の川温泉街がある。市街地を流れる川でありながら、鬱蒼とした河畔林とアシヨシが密生し、両岸には植栽された遊歩道があり、木陰で暑さをしのいだり、散歩やジョギングが出来る。函館市民の憩いの川となっている。都市部にあって、これほどの河畔林やアシヨシが密生する環境が残されているのは現代では非常に珍しいことだ。
河川管理者は、両岸の樹林帯を、幹も枝葉の先までの全てを「壁」として見立て、川の断面を狭める障害物として扱う。
以下に河川管理者の説明を図解したので、参考にしてください。
管理者は、実際の河畔林内はスカスカで、増水時には水が入り込むことを知っていながら、水が通り抜けられない「壁」と同じ扱いにする。こうして川は障害物だらけのように操作されるため、流量計算上は河積が小さくなり、川から水が溢れることになる。
しかし、松倉川の河畔林は今なお健在である。
河畔林が邪魔だから伐る。一方では河畔林を残す。この判断の違いはいったい何なのだろうか…?まずは、松倉川を見ていただきたい。
市街地にある松倉橋下流側の川底は、アユやウグイの産卵に適した環境ではあるが微細な砂やシルトが目立つ。繁殖が可能な川の仕組みが残されていれば、橋からアユやウグイの姿を見ることが出来る筈だ。復活の取り組みを行えば、たくさんの魚が棲む環境を蘇生させる可能性の十分に備わった川である。
魚巣ブロック。誰が考案したのだろうか…この魚巣ブロックのために、ヌマチチブが産卵場所を失った。魚には迷惑千万。不要な工作物だ。
ウグイの産卵には適した場所なのだが…細かい砂やシルトが目立つので、繁殖が可能かどうかは不明。勿体無いことだ。
上流に河川横断工作物があると予測。流域をたどってみた。
とても良い川に見えるが…しかし、苔むした石は少い。何故、少ないのだろうか?上流に河川横断工作物がある為に、川底が下がり、砂利移動が激しくなって、苔むした石も流されていることを示している。
ここからすぐ先に治山ダムがある。小沢からは水が溢れて林道に砂利が乗ったのか、小沢を掘削して新たな治山ダムが建設されていた。道路の下流側を見たが、小沢が特に荒れているようには見えない。道路下のカルバートが塞がって、水が道路に溢れ出し砂利が飛び散った程度だったようだ。「森の匠…」と自負するのであれば、こうした小沢は力尽くで押さえ込むのではなく、植林による木の力を借りて治山を行うことが本業ではないのだろうか。外国製の大型重機を使った力尽くで押さえ込む手法を、決して「匠」とは言わない。「森の匠…」とは、東洋医学のような、森のもつ力を知り尽くした人が、森の力を借りて山を治める「智恵」を駆使する人のことを指すのではないだろうか。益々、安っぽい看板に見えてくる。
流域山塊は岩山のようで、微細な砂やシルトの流れ出しが少ないようだ。治山ダムの下流には取水堰などがあるが、取水方法を改良するなどすれば、本来の川に蘇ることだろう。こうした治山ダムは即、撤去することが望ましい。むしろダムがあることで、川底は下がり続けるから、川岸が崩れ、川に面した山の斜面が崩壊し、土石も流木も多くなっていく。大きな災害を生み出すことになる。
しかし、ここ松倉川は、自然河川への取り組みを一歩づつでも行えば行うほど、顕著に川も答えてくれる、そんなやり取りが可能な川である。それだけ、川の仕組みがまだまだ残されている素晴らしい川なのである。