須築川

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2013-07-16・加工済・トリム・宮崎司氏と看板・須築川・DSC_0003
ダムがある以上、魚道では資源回復は見込めないことを訴える「流域の自然を考えるネットワーク」代表、宮崎司。どこの河川でも同じ問題を抱えたサクラマス資源の減少は、漁師として決して黙認できない。

この川は、北海道指定のサクラマス保護河川である。今から46年前の1969年に、河口から約3km上流に砂防ダムが建設された。付帯の魚道は、すぐに詰まった。ダムが出来る前は、サクラマスを主に3億円の漁獲高があったが、現在では15分の1にまで落ち込んだ。「川に入ればサクラマスが体にぶつかってきた。抱きかかえてサクラマスが捕れたんだよ」と漁師が語った。砂防ダムが出来てからは、すっかりいなくなったという。川底が掘られて砂利が失くなり、サクラマスは産卵場を失い絶滅しそうなほど川が荒れてきたと話は続いた。

地元の漁師、組合は、北海道渡島総合振興局函館建設管理部(函館土木現業所)に、砂防ダムを撤去して元の川に戻して欲しいと、22年前から何度も申し入れをして来た。しかし、ダムを撤去すると、「下流の橋が危ない」「沿岸に泥が出る」「上流にある山々の谷が崩れてもいいのか」と言われるばかりで全く対応して貰えなかったと言う。ところが、2010年になり、魚道の改築なら応じると函館土木現業所から打診があった。

地元漁師者や組合は、今よりは少しでも資源が増大するのであれば、止むを得ないと魚道改築を一旦同意した。しかし、「魚道改築では川底が掘られ、川が荒れたことは改善せず、サクラマス資源の回復にはスリット化しかない」と魚道改築応諾を撤回し、再検討を求めた。魚道改築で乗り切ろうとした土現は、「1年~3年はスリット化の検討やダム堆砂の成分調査、希少種の移植試験、関係機関との協議でかかり、4年目に堤体を補強、スリット化の施工には、順調に推移しても8年はかかる」と難色を示し乍も、合意した。

何年もの長い現地調査や議論を重ねてきた結果、スリット化が実現することになった。現在、取り付け道路の整備、ダム堤体の補強を進め、2016年度にも着手される見通しとなっている。

国道229号線の橋から下流を見る。2014年9月10日。
国道229号線の橋から下流を見る。2014年9月10日
2014-09-10・加工済・須築川・DSC_0245
国道229号線の橋の上流側。2014年9月10日
2014年6月25日。
川底の砂利が流されて河床が下がった為に、国道229号線の橋脚は基礎が根上がりしている。2014年6月25日
2014年9月10日。
2014年9月10日

2014年6月25日。

川の中央が掘り下がり、川岸は中央に向かって傾斜している。こうして川岸に填まっていた石が転げ出し、崩壊が始まる。2014年6月25日

2014年6月25日。
川底が下がったので、川岸の石が抜かれるように転げ出している。2014年6月25日
2014年6月25日。
川岸の石が抜かれ転げ出す。河岸は空洞となり、河畔林の根が剥き出しぶら下がっている。これらが倒れ込み、流木となる。2014年6月25日
2014年6月25日。
河原には砂が目立つ⇒川岸が崩れ、土砂が流れ出している証し。川歩きをする際には、川岸の砂地に注目。ヒグマの歩いた足跡があることも。事前に知ることが大切。2014年6月25日
砂が目立つ。2014年6月25日。
小ぶりな石や砂が目立つ。川岸や山の斜面が崩壊している証しだ。2014年6月25日
2014年6月25日。
川に面した山の斜面が崩壊し続けている。砂山崩しと同じ原理である。2014年6月25日
2014年6月25日。
急流河川であるのに、小さな石ばかりである。2014年6月25日
2014年6月25日。
川底が下がり、川岸の石が抜かれている。河畔林は倒れ込み、流木となる。2014年6月25日
2013年09月24日
河床低下で河岸が崩壊を始めると、対岸にあった道路は流された。2013年9月24日
同じ場所の6年前の現場である。この取り付け道路が無くなっている。河床低下のすさまじさを知ることができる。2008年8月11日。
上の写真と同じ場所の6年前。この取り付け道路は失くなっている。河床低下の凄まじさを知ることが出来る。2008年8月11日
2014年6月25日。
川底が下がり、川に面した山の斜面が崩れている。2014年6月25日
2014年6月25日。
高さ10mの須築川砂防ダム。2014年6月25日
須築川砂防ダムはすでに満砂状態で、上流へ向かって砂利が溜まり続けている。この砂防ダムから流れ落ちるのは小ぶりの石ばかりである。2014年6月25日。
ダムはすでに満砂状態で、上流へ向かって砂利が溜まり続けている。この砂防ダムから流れ落ちるのは小さな石ばかりだ。2014年6月25日
須築川砂防ダム直下。小ぶりな砂利が目立つ。2014年6月25日。
ダム直下。小さな砂利ばかりだ。2014年6月25日
6年前の須築川砂防ダム直下。2008年8月11日。
6年前のダム直下。2008年8月11日
上流へ向かって溜まり続ける砂利で、V字の渓谷だったところが川幅が広がって平らになっている。2014年6月25日。
上流へ向かって溜まり続ける砂利で、V字の渓谷だったが川幅が広がり平らになっている。2014年6月25日
2014年6月25日。
ダムに溜まった砂利は川底を押し上げ、川幅を拡げる。その上を水が流れるようになり、山の斜面を浸食し始める。2014年6月25日
2014年6月25日。
ダムがあると、有り得る筈のない場所が浸食して、こうして山が崩壊していく。2014年6月25日

函館土現は、2010年3月16日に地元以外の発言と取材撮影を一切禁止した住民説明会で、ダムスリット化の検討結果を報告した。

「ダム上流の堆砂量は11万立方あり、10tトラックで2万台分の搬出が必要である」と説明している。また、「有機質土(汚泥)の課題とし、重金属含有の確認と処理方法の検討も必要である」と言う。そして、「希少植物の扱いについて所管機関の了解が必要であり適地調査と移植後の経過観察も必要である」、「工事期間中は魚道が使えなくなる」などと説明が続いた。

これに対して意見が飛んだ。

「ダム下流域の河床低下分が、計算されていない」「下流の不足分の砂利を補うように川へ流せ」「ダムの無いときは、山から海へ流れていた自然のものだ」「今でも使えない魚道を、今更何を言ってるんだ」「資源回復の為にどれほど、これまで投資して来たことか」「ダムが出来て希少植物が生えたから移植という話ではない。そこに元々あった現状にすることが、するべきことだ」「川を元に戻すには、何を先決させなければいけないのかが大事だ」

すべて、漁業者の切迫した声である。漁師が、豊かな資源を取り戻す為に現場の声を上げ、ダムをスリット化させることを実現させたのだ。