2024年2月14日付けで掲載された北海道新聞の「檜山 漁獲量44%減2050トン」の見出し。昨年はサケの漁獲量が少なく、全体の漁獲量を減じたという。原因として、猛暑の影響で海水温が高かったことなどから不漁につながったと報じられているが…?!
真相は、檜山のせたな町で、漁期早々に高波でサケ定置網が壊されたことから、早期に網を切り上げ、サケの漁獲量が減じた。ひやま漁協管内のサケの水揚げ量の70~80%が、せたな町の水揚げ量で占めているので、せたな町のサケの漁獲量が減ずれば、檜山全体の漁獲量が大幅に落ち込むのは当然のことである。
せたな町では、良留石川の4基の治山ダムと須築川の1基の砂防ダムをスリット化をすでに終えているから、河川の再生産の仕組みが蘇りつつある。今期に漁獲できなかったサケは、定置網にかかることなく河川に遡上して自然産卵しているとみられ、従って、サケ資源への影響は考えなくてもよいだろう。むしろ、定着性の良いサケ資源が増えると思えば、歓迎すべきことである。
一方で、太平洋側でのさけ漁獲量は依然、減少のままだ。同日の北海道新聞の記事では、「秋サケ回復へ検討会 道、8月末までに具体策」という見出しで、放流時期の見直しや海洋環境の変動に強い稚魚の育成などの対策を決めたが、その後も漁獲量の減少傾向に歯止めがかかっておらず新たな取り組みを検討するという。
八雲町民とともに、春先にふ化場近くの川で「サケの稚魚の観察会」を40年ほど続けてきたが、当初はたくさん見られたサケの稚魚が、20年以上前から、秋にたくさんのサケが産卵しているにもかかわらず、サケ稚魚の数が少なくなってきて、10年くらい前からは、探さなければ見つからないほどにいなくなってきた。つまり、産み落とされた卵が育っていないとみられる。サケ資源の70~80%は自然産卵由来の資源と言われている。自然産卵由来のサケがいなくなってきているのだから、サケの漁獲量が激減するのは当然のことだろう。サケの専門家という大学教授が「川を歩いて、サケの産卵床調査をしっかりとやっている」と言うのだが、産卵床から生まれたサケ稚魚が、どのくらいいるのか?については全く調べられていない。
ふ化場からのサケ稚魚の放流は、春の雪どけ増水期に行われている。春先の雪どけ増水は、今では、過去にはあり得なかったような「ひどい泥水」が流れる。
このひどい泥水の中に、ふ化場からサケ稚魚が放流されている。
放流されたサケ稚魚は生きていけるのだろうか…?
泥水は、川から沿岸海域まで広がるので、放流されたサケ稚魚はこの「ひどい泥水」から逃れることはできない。この「ひどい泥水」が、ふ化場のサケ稚魚がいる池に流れ込んだら、職員は大慌てだ。サケ稚魚は全滅するからだ。それなのに、この「ひどい泥水」の川に、ふ化放流事業では、おかまいなしにサケ稚魚を放流している。
放流されたサケ稚魚はこの「ひどい泥水」を口から吸い込み、エラから吐き出す。エラから吐き出す際に、微細な砂が繊細なエラ組織に入りこみ、傷つけることになる。その結果、エラに炎症を起こし、多くが命を落としていると考えられる。放流サケ稚魚の生残率が低下するのは当然だ。だから、放流効果は得られないのである。どんなに強い稚魚を育成して対策しても、春の雪解け増水で川が泥水を出す限り、自然産卵しても卵は育たず、放流サケ稚魚も生き残れない。その結果、サケ資源が枯渇するのが、現在の状況と言えよう。しかし、不思議なことに、この「ひどい泥水」の影響について、サケの専門家である大学教授や研究者ですら、誰一人として触れることはないのである。この「ひどい泥水」の影響について問えば、「泥水は自然物であり、やがては沈澱して、川も海もきれいになるのだから、問題は無い」と言う。
新たな取り組みを検討するという「何らかの新しい事業作り」を企ててばかりいないで、今こそ、「本来の自然の再生産の力」を蘇らせることに尽力してほしいものだ。雪解け増水期に産まれる稚魚を、昔のように命育む川の水に戻せば、なんの画策もなくサケたちは、健康に育ち、大きくなって帰ってくるのです。