函館方面と江差・厚沢部を結ぶ国道227号線の橡木橋(とちのき橋)を流れる子熊の沢川。
過去に大雨で、子熊の沢川沿いの林道(下写真の茶色波線)から泥水が流れて、橋の間口が閉塞し国道に砂利が飛び散る水害が発生した。
その後、旧河道(黄色波線)を埋めて直線化し、橋の間口を広げ、巨大な4号砂防えん堤が新設されたのである。
この事業の根拠とされる平成19年度・国土交通省河川局砂防部保全課による個別公共事業評価書を添える。
「便益の内訳及び主な根拠」とされる人家:一戸は、工事着手前に移転している。被災を受ける事業所:2施設とは、砂利置き場のことだろうか?重要公共施設:2施設とは、国道200mと橋を示しているのだろうか?何れも現場に見当たるものは無い。
川の周りに人家は一戸もない。しかし、貨幣換算した便益:Bの17億円は見直されることなく工事は着手されている。この川には、既設の砂防ダムが3基ある。その下流に、4号砂防えん堤が新設された。更に、既設の1号砂防ダムを取り壊して、新しいえん堤を建設している。その上、2号砂防ダムまで取り壊して新しいえん堤を新設するという事業だ。
費用便益分析の費用:Cの5.1億円で新設された2つのダムを上空から撮影した。
既設の1号砂防ダムを取り壊し、川幅を広げて大規模な1号砂防えん堤を新設。そのすぐ下流には新設の4号砂防えん堤がある。
子熊の沢川の川幅は狭く、苔むした巨石が噛み合い、河床は安定している。流域は鬱蒼とした樹林で覆われ、土砂・流木が流れ出すような背景はどこにも見られない。被災を受ける人家すら存在しない。懸念される国道への土砂流出は、橡木橋(とちのき橋)の間口を広げただけで、既に解決している。そもそも過去の被災原因は、川ではなく林道から流れた土砂であり、見立て違いもいいところである。
国土交通省は即時、この砂防事業の根拠である平成19年の事業評価を見直すべきだ。公共事業評価委員会に、被害額の内訳の公表と、砂防えん堤新設費用と国道227号線の橡木橋(とちのき橋)の間口を広げる費用とを比較した便益の再検証を求めたい。
※北海道渡島総合振興局函館建設管理部治水課と国土交通省に、国土交通省・平成19年度・個別公共事業の評価書(平成20年3月25日省議決定)にある「直接的被害軽減便益」17億円の内訳と人家(一戸)・事業所(2施設)の所在を問い合わせている。回答があり次第、HP上で公表する。