1997年10月に完成した二風谷ダムは、2024年で27年になる。完成当時に設置された看板やパンフレットには、青々とした水をたたえたダム湖が描かれ、魚は湖面を跳ね回り、水鳥が繁殖する豊かな自然の風景となっている。
だが、現実は、二風谷ダム管理所に置かれた二風谷ダムのパンフレットや看板とは、まったく異なる姿になっている。ダム湖は土砂で埋まり、草木が繁茂した陸地になってしまった。平らな高台の上を水が流れる川、「天井(てんじょう)川」のようになっている。
二風谷ダムは、もはや当初の目的を失い、湛水も、治水対応も出来ないダムになっている。沙流川の無用の長物、弊害満載のダムと言えよう。二風谷ダムには二風谷発電所が付属し、3,000kwの発電をしているという。だが、発電用の取水口が流木や土砂で塞がり、たびたびの流木除去や堆砂の浚渫をしていると聞く。わずか3,000kwの発電のためのメンテナンスに、莫大なエネルギーとお金を浪費してまで運営する必要があるのだろうか?
勾配の緩い地形に建設され、シルト・微細砂や落ち葉などの有機質が大量に溜まり、腐敗し、水質は劣化。ドブ臭さが漂う川になった。住民からは、川が臭いという声が聞かれる。
二風谷ダムは、ダム底に溜まったシルト・微細砂やヘドロ化した有機質の泥を、堤体下部の「オリフィスゲート」から大量に排水するので、ダムの下流はたまったものではない。
二風谷ダム上流の額平川や宿主別川、貫気別川の流域は、海底地層が隆起した粘土質の地質構造をしており、ちょっとした増水で、灰色から赤味のかかった粘土質のシルト分が流れ出し、川水は白濁する。その白濁した水を二風谷ダムが溜め込み、濃縮した泥水を下流へ流しているので写真のように、白濁した異様な濁り水の川となっている。
こんなドブ川に魚が棲めるというのだろうか?
2024年5月、沙流川の魚類の生息状況について、河川管理者である北海道開発局へ問い合わせた。北海道開発局は、「沙流川に生息する本来の魚種すべて確認されている」と回答してきた。
二風谷ダムの下流には、川岸に「船着き場」が設けられ、アイヌ民族の文化伝承の儀式について解説された看板が掲げられている。沙流川の”清流”で執り行われてきたアイヌ民族の神聖な儀式の場が、二風谷ダムが出来てから、ご覧の通りの有り様だ。北海道開発局は、沙流川の現状を確認し、アイヌ民族の尊厳と文化伝承を尊重してほしいものだ。
二風谷ダムはアイヌ民族の尊厳を踏みにじり、違法に建設されたダムである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%A2%A8%E8%B0%B7%E3%83%80%E3%83%A0
二風谷ダムは、2003年8月10日の台風10号による大雨で、「ダム決壊の危機」に直面し、ダムがあることで下流の住民が危険に曝されることを教えてくれたダムでもある。~平取町の消防は、市街地の住民に対して「二風谷ダム決壊の恐れが出てきましたので、住民の皆さんは高台に避難してください」と広報車で避難勧告のアナウンスをがなり立てた~(詳細:以下記事)
二風谷ダム上流の額平川と宿主別川との合流点に、2022年11月26日に「平取ダム」が竣工した。額平川と宿主別川から流れ込む粘土状のシルトや微細砂を平取ダムがため込み、これを下流に流すことになるのだから、下流一帯の河床はシルト・微細砂で覆われる。川底の石は泥で埋まり、川の魚たちは繁殖できなくなり、水生昆虫すらも生息不能となる。ダムが多くの命を育む自然豊かな川を不毛の川にする。沙流川の畔にシシャモ寿司を考案した「西陣」寿司店があったが、シシャモが獲れなくなり、廃業に追い込まれ名物が一つ消えた。北海道開発局は、シシャモの人工産卵場を税金で造成しているが、流木が押し寄せ、川底は泥だらけ。シシャモが産卵するような場所にはなっていない。もはやシシャモは絶滅同然だ。
だが、北海道開発局は”清流”沙流川時代のように、「多様な魚が生息している」と言うのである。国土交通省や環境省の全国の河川の清流コンテストでは、今でも沙流川は清流日本一になったり、上位にランクされている摩訶不思議なことが起きている。いかに国は変遷する現場を見ていないということが分かる。国が提唱する「SDG’s」に照らせば、二風谷ダムは、明らかに自然界の再生産の仕組みを壊し、不毛の川にした持続可能な開発とは言えない明らかにSDG’sに反したダムである。
二風谷ダムを建設したことで、”清流”沙流川を不毛の川にした北海道開発局は、現場を把握して反省していただき、即刻に、二風谷ダムを撤去して魚が溢れかえるシシャモの産地である沙流川、アイヌの聖地であり、アイヌ民族の自然文化財”清流”の沙流川を、元のような川に蘇らせていただきたい。沙流川のおぞましい現状を見れば、二風谷ダム「撤去」「改善」する時が来ているはずでしょう。