十勝川

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大雪山から始まり、広大な十勝平野を流れ、太平洋へ注ぐ大河だ。流域には多くのダムがある。下流域では河床低下を起こしている。河床低下の進行は地下水を抜き、地下水位を下げ、川の水を減少させる。

昔は水が多かったという話を聞くが、流域の保水能力の低下に加えて、河床低下による地下水の減少が水を消失させているのだ。

http://eprints2008.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/14384/1/40_p23-30.pdf

十勝川には温泉も多く、肌がスベスベになるモール温泉の十勝川温泉郷はよく知られている。この地には大きな千代田堰堤がある。毎年、秋には十勝川をサケがそ上してくるのだが、この堰で行く手を遮られ、人工採卵用に捕獲されてしまう。

この大きな堰では、この堰を乗り越えようとするサケのジャンプが見られ、多くの観光客が訪れる。サケには乗り越えられない堰だが、ジャンプして跳ね返され、跳ね返されてはまたジャンプする姿は痛々しく哀れである。

2009-09-08・加工済・十勝川・千代田堰堤・053
巨大な千代田堰堤。秋になると沢山のサケのジャンプが見られる。
2009-09-08・加工済・十勝川・千代田堰堤・059
千代田堰堤の下流に新たに橋が建設されていた。川の水は泥水となっている。

20年ほど前になるが、大雨の増水で千代田堰堤の川岸が大きく崩れることがあった。洪水を飲み込めないということで、その後、広い河川敷を掘削して、放水路が建設された。

2006-10-10-B・加工済・十勝川・千代田堰堤・放水路工事・158
千代田堰堤に平行して放水路が開削されている。2006年10月10日。
2006-10-10-B・加工済・十勝川・千代田堰堤・放水路工事・161
開削したところでは伏流水が湧きだしている。ここをコンクリートブロックで埋めてしまうのだ。開放していればサケが産卵するようになるだろうに…もったいないことだ。
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氾濫原を掘削する工事が、湧き水を地表に出すことになる。その為、コンクリートで固め覆われる。サケたちの命を支えている、この湧き水の仕組みが失われる。
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川底には川底が下がらないように膨大な量のコンクリートブロックが敷き詰められている。十勝川のこの辺りはサケが産卵出来る湧き水が多いところである。
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千代田堰堤に平行して開削された放水路が完成した。わき水が浸み出しているのだから、サケが産卵できるようにすればよかったのに…2010年10月2日。
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放水路の水門の橋。2010年10月2日。
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放水路でサケが産卵できるようにすれば、サケの観察できる公園がつくれただろう。

ここ十勝川源流域には巨大なダムが複数ある。岩松付近から取材を始めた。

北海道電力の岩松ダム
北海道電力の岩松ダム
2015-05-13・加工済・十勝川・北海道電力・岩松ダム・KAZ_0594
岩松ダムから下流を見る
2015-05-13・加工済・十勝川・北海道電力・岩松ダム・KAZ_0583
岩松ダム
岩松ダムの湛水域
岩松ダムの湛水域

さらに上流へたどると、巨大なロックフィルダムの十勝ダムがあった。

2015-05-13・加工済・十勝川・十勝ダム・KAZ_0646
ロックフィルダムの十勝ダム。放水口
十勝ダムの下流
十勝ダムの下流
十勝ダム
十勝ダム

碑文

碑文

建設記念碑。立派な石碑に刻まれる名前は?よく知事の名前を見ることはあるが、「帯広開発建設部長 稲垣 浩司」とある。そして、碑文字は「前北海道開発局長 舘谷 清氏の筆による」そうだが、とても違和感を感じる。部長が自費で作ったのだろうか?

十勝ダム
十勝ダム
十勝ダムの湛水域
十勝ダムの湛水域
十勝ダムの堤体
十勝ダムの堤体
十勝ダムの湛水域
十勝ダムの湛水域
遙かに十勝ダムの堤体が見える。
遙かに十勝ダムの堤体が見える。
十勝ダムの湛水域
十勝ダムの湛水域
十勝ダムの湛水域。山裾が浸食され、ちょうど「砂山崩し」のような姿になっている。こうしてダムの湛水に面した山の斜面がズリ落ち、地すべりや山腹崩壊が誘引されるのだ。地質を選ばなければ大規模な地すべりや崩壊が発生することになるのだ。
十勝ダムの湛水域。山裾が浸食され、ちょうど「砂山崩し」のような姿になっている。こうしてダムの湛水に面した山の斜面がズリ落ち、地すべりや山腹崩壊が誘引される。地質を選ばなければ大規模な地すべりや崩壊が発生することになる。
湛水域に面した山の斜面は浸食され続ける。
湛水域に面した山の斜面は浸食され続ける。

十勝ダムから更に上流を取材する。

川底の砂利の大きさが小ぶりだし、川底も下がり、川岸が崩れて川幅が広がっている。
川底の砂利の大きさは小さい。川底も下がり、岸が崩れて川幅が広がっている。
川岸に注目すると、川岸が垂直に崩れているのが分かる。また、異常に小ぶりな砂利が目立ち、川幅が広がっている。上流にダムがあることを示唆している。
川岸に注目すると、垂直に崩れているのが分かる。また、極端に小ぶりな砂利が目立ち、川幅が広がっている。上流にダムがあることを示唆している。

その上流に、北海道電力の上岩松ダムがあった。

上岩松ダム
上岩松ダム
2015-05-13・加工済・十勝川・上岩松ダム・KAZ_0773
上岩松ダムの看板
上岩松ダムに流れ込む十勝川支流二ペソツ川
上岩松ダムに流れ込む十勝川支流二ペソツ川
この川の上流に富村ダムがある。
十勝川支流トムラウシ川。この上流に、ほぼ砂利で埋まった北海道電力の富村ダムがある。
川岸の砂利は小ぶりで、砂が目立つ。
川岸の砂利は小さく、砂が目立つ。
トムラウシ登山口。治山ダムが当然のように建設されている。
トムラウシ登山口。治山ダムが、どこも当然のように建設されている。
トムラウシ登山口
トムラウシ登山口
トムラウシ登山口に行く間にも、小沢にたくさんの治山ダムがあった。
トムラウシ登山口に向かう僅かな道のりで、ほぼ全ての小沢に治山ダムがある。
階段状に治山ダムが建設されていた。
階段状に治山ダムが建設されている。

川底の石は、掘られないように川底を護っている。その砂利の供給を本流のダムが止め、支流から細々と流れ込む砂利ですら、何重にも治山ダムで止めている。十勝川の河床の砂利は、どんどん失われていく。川底を安定させていた大きな石も失ったので、川底は、今後も急速に下がり続けて行く。

河床が下がれば、川岸が崩れる。川岸が崩れたら、コンクリートで護岸する。その護岸も、川底が下がればまた基礎が抜かれて壊れる。護岸が壊れたら補修する。補修した護岸が、また基礎が抜かれて壊れる。壊れたら補修する…延々と河川事業が続くのだ。

科学は歪になっている。生きものたちの暮らしを支えている自然界の仕組みをことごとく破壊し続けている。川の仕組みがあってこそ、生まれてくる生命がある。悠久の時を紡いで来た生き物たちの終末は、人間の暮らしにも必ず反映されることになる。やがて大混乱の時代を迎え、もはや後世に自然資源は残せないだろう。