岩尾別川
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知床世界自然遺産の地を流れる川である。橋の下流にはサケマスふ化場があり、橋の右岸にはユースホステルがある。また、ヒグマが生活している川でもある。
過去に橋やユースホステル、ふ化場が土石流被害にあったことから、川水が流れ易くする為に、川底の砂利を取り除き左右に積み上げ、川筋を直線化させている。その上流にある4基の治山ダムが、砂利を止めているので、これらの対策は一層の河床低下に拍車をかけることになった。
世界自然遺産に登録されてから、ほんの一部の治山ダムがスリット化に着手されたものの、見掛け倒しのスリット化で終わり、ダムがもたらす影響は改善されないままである。
治山ダムの影響は、川を流れ下る砂利の供給を止めるということにあり、ダム下流では砂利不足になって川底が掘られ、低下が急速に進み、それに伴って川岸の崩壊や川に面した山の斜面の崩壊(山脚崩壊)が発生するようになる。山脚崩壊の仕組みは、「砂山崩し」と全く同じ原理である。
川底が下がり、川に面した山の斜面の基礎が抜かれる。抜かれた途端にドサッと山が崩れるわけだ。山が崩れると治山対策が必要として、治山事業が興され、つまり、次々に治山ダムが建設される。そして、また新たに山脚崩壊が発生し、振り出しに戻る。こうして河川の荒廃は益々、酷くなっていく。
岩尾別川は急峻な河川で、互いに噛み合って動くことがない苔むした巨石が多く見られる川だった。川岸は水際まで草木が繁茂し、鬱蒼とした樹林で覆われていたと聞く。しかし現在は、小さな石ばかりが目立ち、川幅は広がり、川の中下流の姿のような河原になっている。この変貌した姿はダムがつくりだした「異常」な姿なのである。
2009年に撮影した山脚崩壊。下の2枚は、その3年後、4年後の同地点での拡大する山脚崩壊。上流に治山ダムがある以上、崩壊が止まることはない。
林野庁・北海道森林管理局が管理する国有林は国民の森であり、山である。国民に託された大きな責任を担う管理者は、さぞ森、山を知り尽くした専門家としての自負があることだろう。地形や林床を読み、河川流域の源である森林の安定に汗を流していただきたい。安易な治山ダム建設よりも、樹林を活かした流域の安定化を図る方向に、大きく舵を切ってほしいと願うばかりだ。