丸平の沢川

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日本海に注ぐ急峻な川。北海道留萌総合振興局(旧・留萌支庁)林務課が設置した沢山の治山ダムがある。

①・2013-11-21・加工済・丸平の沢川・DSC_0268

 

一番上流にある治山ダム
最上流部の治山ダム

 

最上流部の治山ダムのさらに上は苔むした巨石が見られる渓流だ。
最上流部にある治山ダムの上流は、苔むした巨石が見られる渓流だ。

 

最上流部にある治山ダムの上流は巨石が多く、急峻な川だが安定した渓流となっており、苔むした石が多く見られる。山の斜面は土石流が発生するような崩落はない。苔むした石が見られるということはこの川が安定している証拠でもある。巨石が互いに噛み合って動かないのだ。

おもしろいことに、治山ダムから下流では苔むした石は見当たらない。苔が生える時間も無いほど、常に石が動いているということだろう。ダムを作る側は、川底を安定させると言うが現実はそうはなっていないのだ。苔のありなしがそれを教えてくれるのだ。
ここでは、治山ダムのスリット化の実験が行われている。事業名は「丸平の沢森林土木効率化等技術開発モデル工事」

http://http://www1.hus.ac.jp/~yanai/pdf/hisada.pdf

http://http://www.jsece.or.jp/event/conf/abstruct/2010/pdf/O3-19.pdf

http://http://www1.hus.ac.jp/~yanai/pdf/A4104027.pdf

ここで知っていただきたいことは、
治山ダムを間口の広い逆台形型にスリット化しても、ダムに堆積した大小の砂利は全てが一気に抜けることは無いということだ。
また、急峻な川なのに、川底の巨石は動いていない。
スリット化したらダムに貯まっている巨石が流れ出し、土石流災害が発生するなどと説明するけれど、巨石は互いに噛み合っていればしっかりと固定されて動かないのだ。だから、川底が下がることはないし、川底が下がらないから、川岸や川に面した山の斜面がズリ落ちることもないのだ。

北海道の林務課はダムをスリット化する際の形状は「逆台形型」を採用し、スリット化する前に堤体が軽くなった分量だけ加重をかけるためのコンクリート補強(肉付け)は行っていない。つまり、堤体を切り崩しても強度は十分に残されているということだ。

 

北海道南部のせたな町「良瑠石川」のスリット化された治山ダム。堤体はコンクリートで補強されていない。
北海道南部のせたな町「良瑠石川」のスリットされた治山ダム。堤体はコンクリートで肉付け補強されていない。

 

さて、同じ北海道の機関でありながら、建設管理部はダムをスリット化する際、何故か逆台形型のスリット化を採用せず、垂直に切り込みを入れる垂直型スリット化を採用し、複数の切り込みを入れるなどしている。この工法だと堤体が分離されて中央部に残されるから、軽くなった分量だけ加重をかける補強が必要だと言う。写真のように、スリット化の前に、堤体の厚さを倍になるほどにコンクリートを塗りつける「肉付け」をするのだ。

何故、広い間口にしないのか?

担当者は、土石流を食い止める目的で建設された砂防ダムなので、砂利を止める「扞止」機能を持たせなければならないと言う。

しかし、砂防ダムのこの「扞止機能」があることによって、ダム下流で川底が下がり、川岸崩壊や川沿いの道路崩壊、橋脚の崩壊、川に面した山の斜面の崩壊などなどの災害が多発、頻発しているわけだから、そうした災害を防止するためにスリット化するのではなかったのか。スリット化は扞止機能の問題を解消するのが目的なのだから、扞止機能を残してはスリット化は意味をなさない。建設管理部とは不思議な機関である。

世界自然遺産に指定された知床の羅臼川。河川管理者による垂直のスリット化工事。堤体の強度を落としたためにコンクリートが塗りつけられて肉厚にしている。流木が挟まればスリットの機能は失われる。理解のできないスリット化工事である。
世界自然遺産に指定された知床の羅臼川。河川管理者による垂直のスリット化工事が行われた。堤体を分離すると強度が低下するのでコンクリートを使って肉厚にしている。ここに巨木が挟まればスリットの機能は失われ何の意味もない。これでは工事をするためのスリット化工事だ。

 

ここ丸平の沢川では、北海道の林務課による治山ダムのスリット化の実験が行われている。しかし、最上流部のダムはスリット化していない。理由は、ここをスリット化すると、河床が下がって近くの旅館の温泉が涸れるかも知れないから手を加えなかったと言う。そもそも治山ダムのスリット化の目的は、下流に砂利を供給して、河床低下を食い止めて河床を安定させ、災害を防止することにある。最上流部の治山ダムをスリット化せずに温存させた条件では、いくら下流のスリット化を手がけてもその効果や評価はできないと思うのだが…。

とにもかくにもスリット化だけは手がけたので、どのような効果があるのかを見ていただきたい。

写真を見てもわかるようにスリット化しても、砂利移動は目立たない。その理由を聞くと、研究者は、「この川は巨石が多く、互いに噛み合って動かないようになっているからだ」と答えた。。じゃあ、最上流部の治山ダムをスリット化しても、石が動かなければ川底は下がらず、温泉も涸れることはないわけだ。巨石が川底を安定させているという川に、では何故、こんなにも沢山の治山ダムを建設したのだろうか?不思議なことではある。

この研究者は川底が下がれば、温泉水が涸れるとことを懸念して説明した。この言葉はとても重要なことを伝えている。

この研究者の説明に従えば、川底が下がっている川では温泉水(地下水)が減少するというわけだから、温泉水を地下水に置き換えてみると、川底が下がると地下水が抜かれて、水不足になると読み取れる。このことをこの研究者は知っているのだ。

この研究者のこの説明はとても重要だから、覚えておいて欲しい。

河川管理者お抱えの御用研究者の「うっかり」発言なのである。

 

日本海に注く。橋は国道231号線。撮影:2013年11月21日
日本海に注く。橋は国道231号線。

 

川底は巨石が互いに噛み合っており、川底が下がりにくくなっている。それを知ってか、石積みの護岸となっている。撮影:2013年11月21日
巨石が互いに噛み合っているから川底は下がらない。それを知ってか、石積みの護岸にしている。

 

治山ダムに引き込み型の魚道が設置されている。撮影:2013年11月21日
治山ダムに引き込み型の魚道が設置されている。

 

魚道は治山ダムに引き込んでいるだけなので、治山ダムがスリット化されたわけではない。魚道の出口は堤体と同じレベルだ。2013年11月21日
魚道は治山ダムに引き込んでいるだけなので、ダムがスリット化されたわけではない。魚道の出口は堤体と同じ高さなのだから、魚道も含めて砂利を止める扞止機能が残された治山ダムということになる。

 

 

魚道の出口と堤体のレベルが同じなので、砂利は平らに堆積している。
魚道の出口と堤体のレベルが同じなので、砂利は平らに堆積している。

 

 

治山ダムを少しだけ逆台形型にスリット化し、魚道が取り付けられている。
治山ダムを半分くらい切り下げて逆台形型にスリット化し、魚道を取り付けている。

 

治山ダムは逆台形型にスリット化され、川は一つながりになっている。
治山ダムは逆台形型にスリット化され、川は一つながりになっている。

 

治山ダムはドリルで削岩された。堤体の厚みはそのままである。治山ダムに貯まっていた砂利は全部が流れ出したような形跡はない。
治山ダムは高額なダイヤモンドワイヤーカッターを使用せずに、削岩機(ドリル)で削岩された。堤体の厚みはそのままである。治山ダムに貯まっていた砂利が全て流れ出したような形跡はない。

 

スリット化した治山ダムを上流側から見ると、治山ダムに貯まっている砂利は水が流れるところ周辺が流されただけで、全量が流れ出してはいない。
スリット化した治山ダムを上流側から見る。ダムに貯まっている砂利は水が流れているところだけが流れただけで、全量が流れ出してはいない。

 

治山ダムを逆台形型にスリット化。ドリルで削岩している。
治山ダムを逆台形型にスリット化。ドリルで削岩している。

 

逆台形型にスリット化しても、治山ダムに貯まった砂利の大半は残っている。逆台形型にスリット化しても、治山ダムに貯まった砂利の全量が流れ出すことはない。
逆台形型にスリット化しても、ダムに貯まった砂利の大半は残っている。逆台形型にスリット化しても、ダムに貯まった砂利の全量が流れ出すことはない。

 

逆台形型にスリット化されている。
逆台形型にスリット化されている。

 

逆台形型にスリット化されても、治山ダムに貯まっている砂利のほとんどが残っている。
逆台形型にスリット化されても、ダムに貯まっている砂利の殆どが残っている。

 

逆台形型にスリット化されても、水が流れる周辺の砂利が流されるだけで、殆どが残り、全量が流されてはいない。
逆台形型にスリット化されている。

 

逆台形型にスリット化されても、水が流れる周辺の砂利が流されるだけで、ほとんどが残り、全量が流されてはいない。
逆台形型にスリット化されても、水が流れる周辺の砂利が流されるだけで、殆どが残り、全量は流されないことが分かる。

 

逆台形型にスリット化されている。
逆台形型にスリット化されている。

 

水が流れる周辺の砂利が流されるだけで、ほとんどの砂利は残り、全量が流されてはいない。
水が流れる周辺の砂利が流されるだけで、ほとんどの砂利は残り、全量が流されてはいない。

 

鉄格子型の治山ダムである。鉄格子の間口よりも大きな石や流木は止められる。石や流木が止められると、全ての砂利が止められることになり、全面コンクリートの治山ダムと同じになる。
鉄格子型の治山ダムである。鉄格子の間口よりも大きな石や流木が止められる。石や流木が貯まると、何れ砂利で閉塞して全面コンクリートの治山ダムと同じになる。

 

鉄格子型の治山ダムを上流から見る。鉄格子を塞いだ石や流木を取り除き、水が流れるように砂利を左右に振り分けている。メンテナンスが必要な治山ダムである。
鉄格子型の治山ダムを上流から見る。鉄格子を塞いだ石や流木を取り除き、水が流れるように砂利を左右に振り分けている。メンテナンスが必要な治山ダムである。

 

治山ダムの中央に鋼鉄製アングルを入れてある。間口が広く見えるが、巨石や流木で塞がれば、砂利も止められ、全面コンクリートの治山ダムと同じになる。メンテナンスが必要な構造である。
治山ダムの中央に鋼鉄製アングルを入れてある。ここに巨石や流木が塞げば、砂利も止められて全面コンクリートの治山ダムと同じになる。メンテナンスが必要な構造である。

 

鋼鉄製アングルの入った治山ダムを上流側から見たところ。
鋼鉄製アングルの入った治山ダムを上流側から見たところ。

 

一番上の治山ダムは全面コンクリートのダムとなっていた。下流の治山ダムを逆台形型にスリット化しても、上流で砂利の流下を止めている限り、スリット化の効果は得られないだろう。写真右手には魚道が取り付けられているが、効果の程は分からない。【写真-㉔】治山ダムには上端まで一杯に砂利が貯められていた。
最上流部の治山ダムは全面コンクリートのダムだ。下流のダムを逆台形型にスリット化しても、上流で砂利の流下を止めている限り、スリット化の効果は得られないし、実験データも不備となる。写真右手には魚道が取り付けられているが、効果は分からない。

 

治山ダムには上端まで一杯に砂利が貯められていた。
治山ダムには上端まで一杯に砂利が貯まっている。

 

上流から治山ダムを見る。急流河川なのに、治山ダムのところで、勾配が小さくなり、流速が小さくなるので、小石や微細な砂・シルトなどが堆積したり、増水時には大きな石は上流へと貯まり続け、小石や微細な砂・シルトが選り分けられて下流へと流れ出す。治山ダムは川を流れ下る砂利をふるい分けるようになる。
上流から治山ダムを見る。急流河川なのに、ダムで勾配が小さくなり、流速も小さくなるので、小石や微細な砂・シルトなどが堆積する。増水時には大きな石は上流で貯まり続け、小石や微細な砂・シルトが選り分けられて下流へと流れ出す。治山ダムは川を流れ下る砂利を振るい分けるようになる。

 

一番上の治山ダムの上流は、大きな石が目立つ。
最上流部の治山ダムの上流は、大きな石が目立つ。

 

さらに上流へと上ってみると、苔むした石がたくさんあることが分かった。苔むした石があるということは、川が安定している証拠である。増水時には自然の摂理として浸食作用があるため、川に面した山の斜面がずり落ちているが、たいした規模では無い。一番上の治山ダムから下流までの間には苔むした石が見当たらない。治山ダムの建設で川を掘削したりしたこと、また、治山ダムが砂利を止めるため、その影響で川底の石が動いていると考えて良いだろう。治山ダムが建設される前は多くの苔むした石があったことだろう。
さらに上流へ上ると、苔むした石が沢山あることが分かった。苔むした石があるということは、川が安定している証拠である。増水時の浸食作用は自然の摂理としてある。山の斜面がずり落ちても規模は小さい。最上流部の治山ダムから下流までの間には苔むした石が見当たらない。ダム建設で川を掘削したこととダムが砂利を止める影響で、川底の石は動く。ダムが建設される前は、多くの苔むした石があったことだろう。