完成したサンルダム。サンル川は?サクラマスは?どうなるか。

2018年6月29日に試験湛水を開始、2019年2月11日に試験湛水が終了し、3月17日に竣工、4月から運用開始。サンルダムは完成したのである。

サンル川をせき止めたサンルダム。これでもう上流から砂利は流れて来ない。流れて来るのは泥ばかりになる。
  • 2013年11月18日

日本有数のサクラマス産卵河川として有名なサンル川に、巨大なダムが建設された。そのサクラマス資源を保全しようという魚道は、高さ46mのダム堤体に長さ440m、段差が25cmの階段が、ざっと数えて126段。更にサクラマスがダム湖に迷入しないようにダム湖を大きく迂回させて上流まで幅が3.7m、深さが1.4mの長さ7kmに及ぶ長大なバイパス水路(魚道)なのである。

サンルダム堤体からサンル川上流の魚道施設までは、延々7kmのバイパス水路(魚道)が敷設されている。
サンルダムの湛水域は広大だ。その湛水域を迂回するようにバイパス水路(魚道)が敷設されている。
サクラマスが産卵のために遡上していた支流はダム湖に水没し、その支流の上をバイパス水路(魚道)が跨いでいる。

ダム湖に注ぐ複数のサンル川支流の沢は、橋を架けてその上にバイパス水路を通しているので、サクラマスはこれらの支流で産卵することは出来なくなった。

サクラマスが産卵のために遡上していた支流の上をバイパス水路(魚道)が跨いでいる。
かつてサクラマスが産卵に上っていた多くの支流はサンルダムに水没した。つまり、本流と支流の産卵場所の多くを失ったのである。
バイパス水路(魚道)の水は、サンル川の川水を上流から取り入れた水のみだ。7kmを流れる間に水温の変動は避けられない。既に水路の底の石は泥を被っているので、水質劣化も進むだろう。魚たちは微妙な水温変化や水の臭いをかぎ分ける。この魚道を魚たちはどう判断するのか。
延長約7kmのバイパス水路(魚道)
バイパス水路(魚道)の底に敷き詰められた石。泥を被り、苔が生えている様から、水温は高いようだ。

バイパス水路(魚道)は、サンル川の上流に出口が設けられている。水路を上ってきたサクラマスは、ここからサンル川本流に入り、それぞれに産卵場へと移動して行くというシナリオだ。卵から孵化して春先に泳ぎ出し、1年の間、川で育ったサクラマス幼魚は降海するために春に川を下る。しかし、サクラマス幼魚がダム湖に入れば、ダム湖を海に見立てて、降湖型のサクラマスになってしまうのである。そこで、ダム湖に入れないようにサクラマス幼魚のすべてをバイパス水路(魚道)に導く仕掛けがされている。それは、サンル川本流の流れを堰で止め、その流れを施設に呼び込んで回転するドラムを通して、再びサンル川本流へと戻すというものだ。この回転するドラム仕掛けに、サクラマス幼魚が驚いて寄りつかないようにしているらしい。つまり、回転ドラムによって、サクラマス幼魚をふるいにかけ、バイパス水路に導くというのだ。果たして、そう上手くいくのか…?

サンル川から魚道施設に水を導くために設置された堰。上流側では、堆砂が上流に向かって溜まり始めている。増水したら容易に堰を越流するだろう。サクラマス幼魚も越流と共にダム湖に向かい、やがて湖沼型のサクラマスが出現することは目に見えている。

2019年11月2日に、この施設のすぐ上手の橋の上から観察したが、サクラマス幼魚をえり分ける施設へ本流の水を送り込むために造られた堰が、あまりにも低いもので驚いた。

サンル川上流の魚道施設に本流の水を呼び込み口。本流の水をせき止める堰の高さを見ていただきたい。低い!そして、堰の手前には堆砂が溜まっている。増水時には簡単に越流するだろうから、サクラマス幼魚は容易にダム湖に流れ込み、湖沼型サクラマスが出現することになるだろう。十分な検討がなされた施設とは思われない。

莫大な税金を投入したサクラマス資源の保全策の問題点。

1.サクラマス幼魚がバイパス水路(魚道)施設の堰を越えて、ダム湖に流れ込むことは免れない。何故ならサンル川の流れをバイパス水路(魚道)施設に呼び込むための堰には、既に堆砂が溜まっていて増水すれば、ひとたまりも無くこの堰を越流するからだ。サンルダム管理所長は「堆砂は取り除き、工事等で使用する」と言っているが、砂利を取り除くのは平水時である。だが、砂利が流れついて堆積するのは増水の時であるから、越流は免れない。サクラマス幼魚はダム湖へ流れ込むことになり、やがて降湖型のサクラマスが誕生してしまって漁獲は激減するだろう。

2.サクラマス幼魚は、1年の間、川に残り厳冬期を過ごす。越冬場所が随所に多くあったのだが、ダムの湛水によって悉く失われた。越冬環境に関する配慮はされていないのである。

左がサンル川。右に見えるのがバイパス水路(魚道)。サンル川の川岸にはアシヨシが張り出し、魚の越冬場所がたくさん見られていた。また、沼地や湿地があり、湧き水が多いことから、サクラマス幼魚の一大越冬場所になっていた。そこが水没してしまった(下の写真)のである。
良好な越冬場所(上の写真)が湛水域になり、水没してしまった。もっとも、サクラマス幼魚はこの場所への立入が禁止されている訳で、入ることは出来ない。
  • 撮影:2017年7月31日

3.サンルダムの126段もの階段魚道をどのくらいの数のサクラマスが上るのだろうか。魚道の下に100きたものが、100上がれば魚道の効果ありと言えるだろうが、それは誰も確認出来ない。魚道を上れなかったサクラマスや上らなかったサクラマスが、ダム直下にある一の沢川に押し寄せて産卵することになるだろう。そこには太古から繰り返し産卵を営むサクラマスがいるのに、新参者と競合し重複産卵し、互いに減らし合う事になるから資源は減少することになる。共にダム下の本流で産卵しているサクラマスも、重複産卵によって減少することになるだろう。

サンルダム直下。魚道の入口は左側の隅っこにある水路だ。サクラマスが100来たものが100上るという裏付けは全くない。1尾でも上れば効果有りと容認されるのだ。おかしな科学がまかり通る今流行の「忖度」魚道そのものである。上らない、上れないサクラマスは、やむを得ず付近で産卵する。他のサクラマスと産卵が競合し、互いに減らし合うことになる。大きな問題なのだが、何故か誰からも声が上がらない。
橋から見た一の沢川。水辺はなだらかで、石は苔むしている。しかし、ダムの影響で川底の砂利が流れ出すようになり、川底は下がり、川岸に段差が出来て崩れるようになっていくことだろう。ここもサクラマスの産卵場所は不安定になり、資源は減少することになるだろう。
水面までなだらかな水辺の一の沢川。サンル川の川底の砂利の減少と共に、河床の砂利が失われ、段差が出来てくるだろう。また、苔むした石もなくなる。こうした変化はダムの影響の特徴なので、ぜひ着目していただきたい。
サンル川と一の沢川の合流点。一の沢川の河床の砂利が流れ出すようになると橋と道路の取り付け部にある「橋台」の基礎部が次第に剥き出しになってくる。また、川岸にも段差が表れてくる。河床低下を視覚的に捉えることができるので、ぜひ、着目していただきたい。

サンル川は濁りの少ない川である。岩盤の上の砂利がサクラマス資源を支える要になっている。ダムによって下流に流れる砂利は、完全に止められてしまった。しかし、ダム下流の流れは砂利を運ぶ「掃流力」があるので、ダム下流の本流の川底の砂利が持ち去られることになる。岩盤の川であれば、露盤化し、そこに支流があれば、支流の砂利まで抜かれていくことになる。ダム管理者が「堰に溜まった堆砂は取り除き、工事等で使用する」と言っていることは、川の砂利がサンル川の河床を安定させる役割を担っていることに気が付いていないと言う事である。こうした意識でいる限り、やがてサンル川には、続々とコンクリート構造物が造られることになり、川は壊されていくだろう。

サンル川が注ぐ名寄川の合流点付近の川岸に堆砂している礫は、微細な砂やシルト分が見られず、粗い礫になっている。

サンルダムの下流、名寄川との合流点付近。サンル川の方には大小の砂利が多く見られるが、合流地点の名寄川は岩盤が露出しているところが多い。
サンル川と名寄川の合流点から100mほど下流の名寄川の右岸。学生がいる側がサンル川の流れが強く影響し、ここにある砂礫はサンル川から流れてきたものと思われる。
水辺の砂を一握り採取してみた。微細な砂やシルト分は全くない。粗い礫砂で、さらっとしている。
近くの川で、水辺の砂を見てほしい。こんなにもさらっとした礫砂はどこにもないだろう。微細な砂やシルト分が見られない良質な川だ。
流れる水にはうっすらとお醤油を薄めたような色が。流域の林床土壌を抜けてきた栄養分豊富な水。川の幸、海の幸を支える大切な水質だ。

サンル川の良さは、微細な砂やシルト分が少なく、森林土壌を抜けてきた栄養豊かな水が流れているところにある。サンル川が育むサクラマスは豊穣な川の証でもある。そこにサンルダムを建設してしまったことは、取り返しがつかぬ失政である。サクラマスが減少するばかりか、巨大なダムの底には膨大な泥が溜まり続け、ひいては名寄川から天塩川、沿岸に至るまで広域に影響を与え、不毛の川に変えてしまうことだろう。近年、毎年のように想定を超える豪雨があり、各ダムは「異常洪水時防災操作」による緊急放流を行い、その下流を水没させて人命財産を奪っている。川の水は集めず分散させればエネルギーは小さく被害は軽微で済むが、その水のエネルギーを膨大に集めて、わざわざ破壊力を高めてから緊急放流する。すなわち「異常洪水時防災操作」によって流入量と同じ量を短時間に放流するため、下流では水位が急激に上がるので、破壊力が増大するのだ。ダムは、まさに百害あって一利無しのやっかいな代物である。

 

進む農地への残土投棄…看板すら無い。

北海道新幹線トンネル工事で排出される掘削土は、すでに農地に投棄され始めている。機構が独自に有害重金属の有り・無しを判定するボーリング調査は、直径が僅か6.6cmのコアを抜き取る判定法であり、含有層を外す可能性がある。これを指摘したところ、「現場の職員が目視で判定している」と言う。科学を逸した嘘のような主観的な判別が行われている。こうして搬出される残土の投棄場所には工事標識の看板が置かれていないので、何を投棄しているのかすら分からない。

残土が投棄されている場所の出入口には何を持ち込んでいるのか、看板もないので、誰も知ることはできない。国道227号線(厚沢部町鶉の農地)
農地の表土を剥がして、そこに掘削土を投棄。
農地の表土を剥がして、その上に掘削土を直に投棄。
投棄されている掘削土は重機で踏みつぶされて粉塵化されている。

そこで北海道のホームページから質問し、下記の回答を得た。

北海道渡島総合振興局保健環境部環境生活課としての   見解について下記のとおりお応えいたします。

質問1.当該掘削土に環境基準を超える有害重金属が含有されていても当該掘削土の投棄場所には有害物が投棄されている旨の看板等の表示は不要ということでよろしいでしょうか…?

【回答1】当課所管法令において、掘削土の堆積場に係る看板の設置・表示に関しての規定はございません。

質問2.環境基準を超える有害重金属を含有する掘削土を投棄した場所には、その掘削土の出所(履歴)や所属先(持ち主・責任者の所在・連絡先など)の表示をしなくても、法的な問題は発生しないのでしょうか…?

【回答2】質問1と同様の回答となりますが、当課所管法令において、掘削土の堆積場に係る看板の設置・表示に関する規定はございません。

質問3.環境基準を超える有害重金属を含有した当該掘削土を運搬するトラックにはそのような看板等の表示がありません。これは表示しなくてもよいのでしょうか…?。周辺に粉塵が飛び散っているので、土壌汚染や人体への吸引による健康被害が心配なので、教えてください。環境基準を超えた有害重金属物質が土壌浸透して汚染が広がる可能性や粉塵として周辺地域にばらまかれている可能性がありますので、上記のことについて確認したいので、北海道としてのご判断をご回答ください。

【回答3】当課所管法令において、掘削土を運ぶトラックへの積載物の表示に関する規定はございません。

北海道の河川や道路などの工事では残土が発生したら、その発生の理由と共に、看板を掲げているのに、膨大に出てくる掘削土については何らの表記がされないことは奇異である。そして、粉塵は飛散し放題となっている。

残土を運び込むトラックが入るたびに、写真のように粉塵が舞い上がる。
残土は農地に直置きであり、重機で踏み固めて平にならしているので、膨大な量が粉塵化している。強風で煽られるだけでも飛散する。
投棄された残土。粉塵化しているのが分かる。
投棄された残土。粉塵化されている。
運搬しているトラックから降ろされると、重機で前後に踏みつぶして、平にならされていく。こうして粉塵が生成され、粉塵の量は膨大になっていく。
農地に膨大に投棄される掘削土。強風にさらされるだけで膨大な量の粉塵が舞い上がる。本流に支川が合流するところにある農地。扇状地であり、地下水が豊富なところだ。有害重金属含有掘削土が含まれていれば、土壌浸透して土壌成分に吸着される間もなく、有害重金属成分は地下水に流れ出すことになるだろう。そもそも学識経験者等の第三者による委員会が言う有害成分が土壌成分に吸着されるから問題無いとする条件は、どのような成分の土壌で、土壌の厚みがどのくらいあって成り立つのか、全く説明されていないのである。

粉塵が飛散する現場を目撃し、大気汚染防止法の観点から、現地を管轄している檜山振興局環境生活課にも問い合わせた。

【回答】土の置き場につきましては、大気汚染防止法に基づく一般粉じん発生施設(土石の堆積場)に該当することから、当振興局で届出を受けており、***から提供いただきました情報につきましては、今後の監視業務の参考にさせていただきます。施設の種類等を掲載した届出書類については、ホームページ等で公表しておりませんが、情報公開条例による手続きをしていただければ、閲覧(無料)やコピー(有料)ができますので、ご希望される場合は、御手数をおかけしますが申請願います。

つまり、「”大気汚染防止法”に基づく一般粉じん発生施設に該当する」として、届けを受けておりながら、現場に工事看板が無いのだから、粉塵の飛散を危惧しても、どこに訴えてよいのかすら分からないようになっている。また、粉塵飛散防止の為の対策がどのように行われているのかすら誰も知ることは出来ないのだから、おかしな話である。

有害重金属含有の掘削土の運搬や投棄場所についても、「大気汚染防止法」や「土壌汚染対策法」がありながら、看板の設置が義務づけられていないのだから、一般人は知る必要が無いとでも言うのだろうか。直接被害を受けるのは粉塵を吸い込みながら暮らしている現場地域の人たちである。

大気汚染や土壌汚染によって住民(国民)の健康が損なわれることが無いように、住民(国民)の健康を守る目的で作られた国の法律でありながら、こんな扱いをするのなら、絵に描いた餅と同じで「掲げておくだけのアリバイ法律」同然である。

北斗市の村山工区の出入口。粉塵がついたまま運搬トラックが出入りするので、道路は粉塵で真っ白になっている。大野新道の路面も真っ白だ。粉塵が広域に飛散し、住民や通行車両のドライバーはこの粉塵を吸い込んでいることになる。大気汚染防止法は全く機能していない。

有害重金属含有の粉塵を否応なしに吸わされている恐ろしい状況にある。

 

 

映画「ARTIFISHAL」上映会のお知らせ

ダムネーションに次ぐパタゴニア映画の秀逸作!

「 ARTIFISHAL 」上映会

主催:88プロジェクト(八雲) 協力:パタゴニア日本支社

日時:2019年11月30日 開場:16:30

場所:カミヤクモ321(二海郡八雲町上八雲321)

予約・お問い合わせ:090-6201-9144

  定員:30

【道路地図】

写真展とサイエンスカフェのお知らせ・羽幌町「北海道海鳥センター」

羽幌町「北海道海鳥センター」に於いて、第二弾「漁師と釣り人と活動家たちが川を蘇らせる~ダム撤去までの道のり」の写真展を開催します。初日の9月10日には、サイエンスカフェで「サクラマス資源を蘇らせる」と題した講演会を行います。

写真展の開催期間:2019年9月10日(火)15:00~ 10月31日(木)まで

 

はぼろ「サイエンスカフェ」:2019年9月10日(火)18:30~20:00

 

 

「良い渓流なのに残念です…」小鶉川の今。

2019年6月19日、当会のHPに以下の投稿が寄せられた。

「先日,厚沢部の小鶉川に行ったところ,取水堰堤の下流でグランドキャニオン化が進んでいて驚きました。今後どうなっていくのか不安です。良い渓流なのに残念です…」

頭首工の魚道建設から10年。厚沢部町の鶉川支流「小鶉川」の今を取材した。

撮影:2006年10月4日 
砂利がたくさんあったのに、すっかり流されて岩盤が露出した。撮影:2019年6月26日
撮影:2006年8月1日  ↓
魚道とダム(プール)で砂利が止められると、見事に砂利が流され、岩盤が露出してしまった。撮影:2019年6月26日
撮影:2006年10月4日 ↓
「ここにあった砂利ないよ~。これじゃサクラマス産卵できねぇじゃん」小作ブツブツ…。撮影:2019年6月26日

当時、魚道建設の検討会で砂防学の中村太士・大学教授は、「河道に張り出すような魚道建設は止めよう」と発言していたが、魚類の専門家と称する妹尾優二氏が、砂利が溜まらないという安田式台形断面型魚道と、その魚道に上らせるためのダム(プール)建設が必要だと提案し、北海道檜山振興局はそれを採用して2009年に建設した。

厚沢部川水系小鶉川

 

砂防学の専門の大学教授が提案した河道に張り出さないコの字型魚道がすでに取り付けられてあるのに、魚の専門家はそれでは不足としてダムを2つも建設させたのだ。

役に立たない魚道が残り、その魚道に上らせるために必要として建設されたダム(プール)は、砂利を止めてしまった。その結果、下流側では川底の砂利が失われ岩盤の露出は広がり、サケもサクラマスも産卵する砂利も場所も失ってしまった。

この石が下流で必要とされるのに、魚道で止められた。撮影:2019年6月26日
流れ下っていた砂利が、さらに下流のダム(プール)で止められてしまった。撮影:2019年6月26日

サクラマス資源の保護目的の魚道に加え、ダムを建設したのだから、他の川同様に、ダムの下流で砂利が失われて岩盤が露出することは目に見えていた。それを知らない筈は無いと思うのだが、見事に岩盤を露出させ、産卵場を消滅させた魚の専門家と称する妹尾優二氏。魚の産卵の仕組みや魚の産卵場を形成する川の仕組みを知っているとは到底思われない。多くの川でダムの下流を観察していれば、こうなることは事前に予測できることだ。行政に”忖度”する専門家恐るべしだ。このままではサクラマスはいなくなるし、川岸が崩壊し、土砂・流木災害発生の兆しすら見える。サクラマスや川からしっぺ返しを受けるのは魚の専門家ではなく、他でもない地元の人たちなのだ。

川底の砂利が失われ、岩盤が露出している。ご覧のように水流を受ければ、基礎が抜かれ「砂山くずし」のように川岸が崩れることになる。大雨が降れば土砂流木が流れ出し。災害が発生することになる。こんな現場があちらこちらの川で見られる。撮影:2019年6月26日

露盤化してサクラマスが産卵できなくなったばかりではない。川底が掘り下がり、左右岸から砂利が転がり出しはじめている。このままでは大雨の時には川岸が「砂山くずし」のように崩壊するのは目に見えている。サクラマス資源を減らすばかりか、土砂・流木がこうして流れ出し、土石流災害や流木災害を発生させることになり、流域の住民の生命財産を脅かすことになるのだ。

ではどうすればよいのか?魚道に魚を上らせるとして建設したダム(プール)が砂利を止めているのだから、この2つのダムを撤去することが必要だ。小さな構造物だと思われるかも知れないが、写真で見てお分かりのように、小さな作用が「チリも積もれば山となる」の例え通り、下流側の砂利を一掃し、岩盤を露出させた。今後は河岸が崩壊し、土砂流木が流れ出す。災害を起こす前に一刻の猶予もない。

まずは事業者による現地確認が必要である。そのために北海道檜山振興局に現地調査を申し入れたが、「事業が終了し、厚沢部町に移管されており、現地調査することなど出来ない」と回答。こんな対応では道民の生命財産を守ることなど出来ないし、基幹産業の水産資源すら守ることも出来ない。北海道としてこうした対応が適切かどうかについて更に説明を求めたが、「当方が行う事業では、譲与後においては、構造物などに関する全ての権限が譲与先に移りますため、道には現地調査の要否判断を含め、一切の権限がないことをご理解いただきたいと存じます」と言う事だ。しかし、構造物の所有・管理の面ではなく、構造物の影響によって下流で発生している「河床低下」及び「路盤化」については別事象である。構造物との因果関係の面から調査するべきではないか。

 

ダム下流で繰り返される補修工事…現地からの報告

天塩川支流のオカホナイ川に関する情報が、ダムの問題に取り組んでいる長谷部真さんから届いた。この工事は「河床低下が原因して、川岸が崩壊するようになり、河床が掘り下がって橋脚の基礎が剥き出しになるようになったための補修工事ではないか」との見解だ。

工事標識には国道275号線の工事「…常盤橋補修外一連工事」となっている。しかし、…一連工事とは何処の工事なのか?、工事発注者である旭川開発建設部へ問い合わせたところ、天塩川に注ぐ小さな支流「オカホナイ川」に架かる国道40号線の「岡穂内橋」の補修工事であることが解った。この標識では、一般の人には支流の橋の工事だとは分からない。どこの工事なのか解りやすい丁寧な表記をして頂きたいものだ。

長谷部さんから送られてきた岡穂内橋の写真では、橋脚の基礎が剥き出しになっていることが解る。河床低下が進行し、これまでにも補強工事がされていたことが伺える。

河床(川底)が掘り下がり、上流にある護岸の基礎は、水面から出て剥き出しになっている。水面は護岸より遙か下にあり、河床低下が進行していることが読み取れる。こうした川の上流には必ずダムがある。Google Earthで見ると、川幅が広がった所がある。

Google Earthでは解らないが、国土地理院の古い空中写真で見ると、ダムがあることを確認することができる。

1974年~1978年に撮影されたこの空中写真では2基のダムが写っている。Google Earthの写真の堆砂が見える場所は、この2基のダムより上流であることから、更に上流にもダムがあることは間違いない。

ダムの下流では河床低下が進行し、河岸崩壊、山脚崩壊(山崩れ)、道路崩壊、橋梁崩壊などの災害が数多く発生している。ダムが砂利を止める影響によるものだ。道路管理者は河川管理者と協議し、根本から災害を防ぐために、その原因となる河床低下を引き起こすダムの見直しを考える必要がある。縦割り行政で互いの権益に触れないような対応をしていたのでは、人の命はいくつあっても足りない。人命財産を守るという大義名分があるのだから、現場をしっかりと検証して、真摯に取り組んでいただきたい。

 

 

 

「農業を守る!」住民が猛反対

2019年2月19日に八雲町落部地区で、落部川上流域の未利用農地へ新幹線トンネル工事による有害重金属含有掘削土を投棄する計画について、鉄道運輸機構から住民説明会が行われた。

住民は、機構に対して「有害な重金属の汚染土を投棄する計画についての説明は不要」「調査をしようがしまいが絶対に受け入れない」と、猛反対をした。

通常なら、事業者が「調査してみなければ分からない」と説明した上で、住民側が反対しにくい雰囲気をつくり出し、つい調査を受入れる方向になってしまう。ここをよく考えてほしい。調査にはお金がかかる。事業者がダメな調査にムダにお金をかける訳がない。つまり、押しきるための調査にしか過ぎないのである。かつて、リゾート開発事業全盛の頃、環境アセスメント(環境影響評価)調査は事業実施のための「合わせすメント」と揶揄されたことは名高い。「調査しようがしまいが絶対に受け入れない」という声は、地元を必死に守ろうとする住民の心の叫びだ。住民が声を上げなければ地元は将来に取り返しがつかない禍根を残す羽目になる。地域の良さを失いかねない。地元を守るのは住民にしか出来ない。落部地区の住民はそれを貫いたのだ。

落部川流域の有害重金属含有掘削土を投棄しようとする場所は、以下に示した道立地下資源調査所が作成した八雲町の地質・地層図によると、地層は礫質や砂岩質である。地中の地層は亀裂あり、ズレあり、曲がりあり、盛り上がりあり、窪みあり、複雑な形で存在していると思った方がよい。

釜別林道沿いの赤点線の円内付近が投棄計画場所。銀婚湯の近付近。出典:八雲町の地層図・道立地下資源調査所
出典:八雲町の地層図・道立地下資源調査所

一方で機構が住民説明会で配布した資料は、地中の地層が均一になっている以下のようなお粗末な絵だ。地熱発電事業者でさえ、「地中のことは一寸先は闇だ」とこぼしているし、道立地下資源調査所の職員も、井戸に塩を入れて地下水の動向を調べたが、わずか1m離れたところでも検出されず、地下水の流れは不明と言っている。即ち、こんな絵に惑わされてはいけない。

住民説明会で配られた資料。出典:住民説明会資料・独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局

落部川は、周辺から浸み流れ出した水を集め、流域の田畑を潤し農業が営まれている。そして、カキやホタテ養殖が行われている漁場である噴火湾へと注いでいる。農水産業は八雲町の基幹産業だ。八雲町の基幹産業を守り育てるのは八雲町役場の仕事ではないのか。国策の北海道新幹線札幌延伸工事に惑わされて、役場としてやるべき理念をどこかに置き忘れてしまったのではないか。国は住民を見ていない、ましてや助けてもくれない。自分たちで自分たちの暮らしを守り、地域を守るしかないのだ。

以下の北海道新聞記事は、この落部地区の住民説明会の顛末が報道されている。

出典:2019年2月21日朝刊(地方版)・北海道新聞

 

出典:2019年3月14日朝刊(地方版)・北海道新聞

 

 

 

 

何故、こんな配管をするのか?

立岩工区での排水の為に新設された配管は、全く不可解である。

これまで立岩工区の排水は、国道277号線の側溝に流して遊楽部川へ出しているのだが、機構は排水量を増やす計画で写真のように配管を敷設した。わざわざ遠く離れた支流へ山を越えてまで配管を延ばす必要があるのだろうか?しかも、サクラマス幼魚が越冬する支流にだ。生物多様性保全・自然資源を損なわないように、プラント現場から国道277号線の下を潜らせて遊楽部川へ排水する私たちの提案は何故、受け入れられないのだろうか?

トンネル工事現場の立岩工区から遊楽部川へ配管すれば良いだろうに…。2本の鋼管を山の上に配置し、その先の農地を掘り起こし鋼管を埋めて、町道の下を潜らせて支流まで引っ張るという遠い道のりだ。
立岩工区から山の方へ延びる2本の配管。わざわざ山越えさせる理由がわからない。

鋼管を山に上げてしまうと、排水にはポンプが必要になるばかりか、農地を掘り起こして鋼管2本を埋設しアスファルト舗装の道路の下を潜らせる大がかりな工事だ。使われる大量の鋼管にも費用が膨らむのは誰が見ても分かる。

排水を遠くの支流河川に送るための2本の配管。山越えさせている。
2本の配管は農地を掘り返して埋められ、アスファルト舗装の町道下を潜らせて、その先の小さな川に…。
立岩工区から遠くの小川まで配管する資材は、大量に必要になる。私たちの税金が、必要性のよく分からないこうした工事で使用されている。
町道の下を潜らせて、小川まで配管している。
立岩工区から遠く離れたこの小さな川に、PAC処理後の排水が流される。この川には多くのスジエビが生息し、小さな淵がいくつもあり、それぞれの淵には越冬に集まっているサクラマス幼魚(ヤマメ)が50尾前後身を寄せ合っている。多様な生物が生息している良好な川に、PAC処理後の排水をするのだから、影響は大きいことは間違いない。PAC:注(凝集剤)は、神経毒など生物に与える影響が懸念されていることから大手の建設会社は使用を止めている。しかし、PACは安価であり北海道では常用されている。                                                             注:【濁水処理にはPAC(ポリ塩化アルミニウム)と発がん性のある有機系凝集剤と共に使用される。神経毒、蓄積毒であるアクリルアミドのモノマーは魚のエラに吸着する。ヒメダカは48時間で50%が死亡、粉末凝集剤では100%死亡するという毒性が認められているものだ。プランクトンであるミジンコでは、100%が遊泳阻害を受けることも解っている。噴火湾に注ぐ川にはサケやサクラマスが遡上している。川底に産み落とされた卵、ふ化したばかりの稚魚はメダカ以上に影響を受ける可能性がある。しかし、トンネル掘削工事の濁水処理に添加されるPAC凝集剤の8年にも及び使用し続けることによる影響については、鉄道・運輸機構も建設会社も「わからない」と言う。噴火湾は沖合5,000mまでホタテのケタを吊り下げた大養殖場でもある。ホタテの子どもはプランクトンである。ホタテが食べる餌もプランクトンである。そのホタテは北海道の大事な産業であり、学校給食の献立にも推奨されている。神経毒、蓄積毒、発がん性があるPAC凝集剤を長期使用することに、北海道は黙っているのだろうか?どうしても解せないのが、なぜ、このPAC凝集剤を使用しなければならないのかだ。本州では、既に大手建設会社は環境保全・生態系保全の観点からダムやトンネル工事で使用してきた有機系凝集剤を、現在では天然素材に転換している。しかし、北海道でトンネル工事に着手している建設会社は、「コストがかかる」「既に薬剤を購入している」「作業効率が悪い」という理由で代替はしないと結論している。そして、鉄道・運輸機構は、「環境基準を満たしていれば、咎めない」と言う。有機系凝集剤の環境基準値は「国交省」と「環境省」が設定しているが、基準値の甘い方の「環境省」基準に基づいている】
2018年12月16日に大学教授の指導の下、私たちが行った調査。ちょっとすくってみただけで、こんなにもたくさんの魚が採れた。この川にはサクラマス幼魚がたくさん集まっていた。如何に、この小さな川を越冬に利用しているかが伺える。他に多くのスジエビ、ウグイ、ウキゴリが生息していた。特にサクラマス資源は激減している状況にあるので、このように多様性ある川は、北海道として生物多様性保全条例を適用し、機構に対して資源の保護・保全を訴え、排水の見直しを指導するべきである。
調査後には全員無事に元の川に戻しました。
2本の送水管から、こんな水量の極僅かな小さな川にPAC処理水が排水される。国が掲げる生物多様性保全戦略は、現場では全く機能していない。身を寄せ合って厳冬を生き抜いているたくさんのサクラマス幼魚やスジエビたちに影響が無いハズは無い。PAC処理水の排水は見直すべきだ。

国道管理者・函館開発建設部八雲道路維持事務所と側溝への「排水の増量」について協議したという。だが、側溝の容量が足りないため断られたという。しかし、国道管理者とは国道の下をくぐらせる「配管案」について協議していないことが分かっている。

立岩工区の脇は国道277号線があり、その傍に遊楽部川が流れている。既設の側溝の排水は、国道下を潜って遊楽部川へ流されている。

機構は、「今までの側溝の利用が出来なくなったので、山を越えさせて遠くの川まで配管することになった」と説明する。本当にそうなのだろうか…?。

国道脇の既設の側溝に集められた水はこの排水溝から遊楽部川へ排水されている。
遊楽部川への排水口には「逆止弁」が取り付けられている。

落合洋則課長補佐は「既設の排水溝には”逆止弁”があり、遊楽部川が増水した場合、逆流しない仕組みになっている。増水時にはPAC処理水の排水ができない」と説明する。これはおかしな説明だ。国道下をくぐらせる配管には逆止弁は不要である。何故なら、立岩工区内の濁水処理施設は濁水を高い位置(水槽)まで押し上げてPAC処理し、この高低差を利用して排水しているからである。これは内水氾濫防止用に設けられた揚水場(ポンプ場)と同じ仕組みと言える。つまり、遊楽部川が増水しても排水は可能ということになる。それでも排水できないと言うのであれば、送水用のポンプを取り付ければ良いことである。機構の説明は意味不明で、不可解である。

小さな川への排水についても、「サクラマスの産卵が終わったころに調査を予定していたので、10月30日に実施した」と言う。しかし、樋口所長は「(10月19日の問い合わせの時点で)指摘を受けて現在魚類調査を行っている。都市のどぶ川と同じ認識でいたので魚がいるという認識はなかった」と説明している。そもそも、既に配管が終わってからの調査、サクラマスの産卵が終わってからする調査とは、いったい何を目的にしたものだったのか?国民の税金を使った調査なのだから、専門家の指導を受けて行わなければならない筈だ。この不可解な工事は、税金の使途としても問題だと思う。当該工事に関わる一切の開示請求に必要な文書名(工事名)の再三にわたる請求にも、今だに返事はない。このような経緯を2019年2月19日に独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び国に告げ、指導を求めたところ、2019年3月1日に以下(大略)のように国土交通省と機構コンプライアンス担当から回答があった。

国土交通省鉄道局施設課「北海道新幹線新函館北斗・札幌間の事業では詳細な構造及び施工計画の検討に際し、専門家等の意見を踏まえ、必要とされる調査を実施し、生息・生育環境に対する影響が最小限になるように適切な保全策を講じるよう機構に意見をしている。また、事業費管理では、関係機関等との協議や現地状況等を踏まえ、事業費管理を徹底するように機構を指導する国土交通省としては事業の推進にあたっては、地域住民の方等に、工事実施に関する情報提供を十分に行い、理解を得るよう最善の努力を行うよう、機構を指導している

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構コンプライアンス窓口当機構では、北海道新幹線の建設にあたり、様々な形で地域住民の方等へのご説明や意見交換等を行っており、今後とも丁寧な対応を行うよう努めてまいります」

しかし、こんなご丁寧な回答だけを頂戴したところで、現在においても現場の八雲建設所の樋口哲哉所長及び落合洋則課長補佐からは、回答も無ければ説明も無い。サクラマス幼魚の越冬河川への排水に関わる扱いがどうなるのかすら解らないままである。

 

 

 

サクラマス幼魚の越冬河川に汚染水。

北海道新幹線トンネル工事によるPAC処理後の有害重金属を含む水を、サクラマス幼魚が越冬する小さな川に排水する計画について、私たちは事業担当者に見直しを求めており、2018年12月26日に札幌工事第三課課長補佐・落合洋則氏と、八雲建設所長の樋口哲哉氏ほか数名の職員と面談することになった。

サクラマス幼魚の越冬河川にPAC処理排水管は既に敷設されていた。撮影:2018年10月17日

これまで真摯に対応されてきた担当者が転勤された後、機構の対応はガラリと変わり、報道関係者の同席を毎回拒否し、求める資料を示すこともなく面談の度に、「問題は無い」を繰り返すだけで実に不誠実な対応しかない。

前任の浦川所長は、環境負荷を軽減するために出来ることは配慮を実践し、住民や環境団体、議員や報道関係者に至るまで、嫌な顔一つせず具体的な資料を揃えて、厭わず実に丁寧な対応をされてきた。ところが、人事が変わるだけでこうも簡単に環境が危うくなる…現場人の裁量次第だということを思い知らされる。

それどころか、この侮蔑な対応しかしない樋口所長と落合課長補佐は、面談とは関係の無い話題を持ち出し、我々のホームページに発言の責任の所在として名前を表記したことについて、名前の公表は「人の命に関わる問題がある」と切り出した。「人の命は何よりも重たい」と言う。全く理解できず、意味不明だ。独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は現場の職員の命を危険にさらすような説明を住民にするように強要しているのだろうか?呆れた話である。国税を使った事業についての説明に、その説明の責任の所在を表記することがなぜ命に関わることなのか…? (国は「誰と話したのか?担当者の名前もわからないような相手と話したのか?」と言うから、表記したまでだ)莫大な血税を使用した北海道新幹線だが、地域貢献を一つの目標に掲げているのであれば、地域の基幹産業を損ない、住民生活や住民の生命を脅かすことがあってはならない筈だとこちらが言いたくなる。見直しや改善を求めて、面談を申し入れているのである。その面談を公表することが職員の命に関わるとはいったいどういうことなのだろうか…?独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、落合洋則課長補佐が命の危機にさらされているというのだから、現場を適切に指導すべきではないだろうか。

くような内容で、貶める粉飾文言を交えたメールが届いた。以下(青字)は、当会「流域の自然を考えるネットワーク」の問い合わせメールに届いた機構職員の実際の文言である。

八雲建設所 樋口です。ご質問いただいた件に関して下記のとおり回答致します。

当方が専門家へ環境調査結果やその結果を踏まえた対処などについて説明を行う際、調査や対処に関することのほか、当該調査に関して関係機関や住民の方からの意見や提言がある場合は、必要に応じてそのことも含めて説明し、意見を聞くことがあります。環境調査結果やその結果を踏まえた対処について、専門家と打合せを行う一環で説明を行っていることであり、その内容を公表するものではなく、個人情報や守秘義務に関して問題となることではありません。

宮崎氏と稗田氏がネット上に弊社職員の氏名や所属部署を記載したことについて、そのことによる計り知れない悪影響や不測の事態を引き起こすおそれがあることを伝えたが、被害妄想、自業自得と言語道断で理不尽な発言を行った。さらに他の弊社職員の氏名をネット上に記載すると平然と発言した。計り知れない悪影響や取り返しがつかない事態が引き起こすおそれがあるにも関わらず、しかも、笑いながら、人を陥れようとしていると思われる発言を行うこと自体、恫喝の何物でもない卑劣な行為。

自分の名前を他の方に言われるとなると、保身なのか身勝手なのかわからないが、個人情報守れとか、守秘義務違反だと言う。甚だ矛盾している。しかしながら、当方は他の方に悪影響や不測の事態を引き起こすおそれがあると考えられることは行いません。上記の回答に対して弊社に質問された場合、弊社が回答しても堂々巡りになると判断したら、回答を行わないことを含み置きください。

機構は私たちの指摘を受けて10月30日に調査を行ったという。「魚影は薄く、ヤマメ(サクラマス幼魚)は数尾」で、すでに、漁業関係者及び魚類等に関する専門家に説明し、排水が認められたという。排水先に生息する魚類について助言した専門家が誰であるのか尋ねると、個人情報なので教えられないという一方で、「専門家は、あんたの名前を知っていた」と答えたのだ。明らかな矛盾である。

サクラマス幼魚を多数観察していた私たちは、この調査に疑問を持ち、12月16日に魚類調査を行った。その結果、機構のデータと大きく異なり、50尾前後のサクラマス幼魚の越冬集団を確認することができた。本来なら、縄張りを持ち分散して生息しているのに、冬場に水量の少ない小さな川淵にサクラマス幼魚が50尾いる事実は、越冬河川であることを示していることを説明した。すると、落合課長補佐は「違法な漁具を使用したのではないのか」と、揚げ足取りをする呆れた始末。機構の調査方法は「目視」だ。排水の温度は11~18℃、水位は10cm上昇し、水温は4℃上昇すると言う。排水先の川の水温・水量の季節変動を含め、説明を裏付けるデータや資料の提示は無い。開示請求の問い合わせにも今だ無視である。

撮影:2018年12月16日・田中邦明氏

サクラマス資源は今や希少種になるほどに激減している。そのサクラマス幼魚が越冬している河川を保全するために、当河川への排水は避けるように、私たちは2つの代案を提案した。最善は立岩工区から国道の下をくぐらせて遊楽部川本流へ排水する案。もう一つは、サクラマス幼魚の越冬河川への排水管をさらに延長させて、コンクリートブロックが敷設された堤防から排水する案である。

今、八雲町遊楽部川はダムの影響で河床低下が進行しており、地下水の水位が低下して、冬でも凍らない細流が失われつつある。即ち、サクラマス幼魚が越冬できる場所が無くなってきている。機構が重金属汚染水を排水しようとしているサクラマス幼魚の越冬河川は非常に貴重な場なのである。この事実を漁業関係者や魚類専門家に伝えなければ、「排水が認められた」という機構側の解釈だけで判断を誤ることになる。私たちは再調査と、この川への排水の見直しを求めている。

サクラマス資源保護・保全のために、越冬河川を失うような事業は避けてほしいと願うばかりである。

 

 

 

良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

2019年1月18日、ひやま漁協の漁師と釣り人、住民で結成された「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の総会が、せたな町で開催された。道・町議会議員、桧山振興局、函館建設管理部今金町出張所、せたな町役場の職員が出席した。

総会の代表から「須築川砂防ダムの魚道改築の要望に対し、「流域の自然を考えるネットワーク」の宮崎代表から、魚道の改築ではサクラマス資源の回復は見込めないと指摘があり、魚道改築ではなくスリット化を求めることになった。その結果、良瑠石川の4基の治山ダムでもスリット化が実現し、管内のサケ定置網8ヶ統ある中、一番悪い漁場だった良瑠石川地区の2ヶ統が、2015年から昨年に至るまでの4年間、管内で漁獲量が1~2位になった」と報告があった。

2011年2月22日には良瑠石川の本流の下の治山ダムのスリット化工事が行われた。

2011年2月に本流下の治山ダムがスリット化されたので、この年の秋にはサクラマスとサケの産卵場が大幅に拡大した。その後、2012年3月までに全4基の治山ダムがスリット化された。従って、2011年の秋に産み落とされたサケの子どもたちは翌春、海に下り、四年後の2015年に大きく育ったサケたちがこの川に戻って来たわけだ。このサケたちが良瑠石川地区のサケ定置網で漁獲されて、漁獲増をもたらしたと言える。

2017年9月13日良瑠石川を視察。サケがそ上していた。

2017年9月13日、良瑠石川本流のスリット化した下の治山ダムの魚道を上るサケのペア。

スリット化された治山ダムの上流へ上ってきたサケ。右の円内は産卵行動中のサケ。

本流のスリット化された上の治山ダム・逆台形型のスリット化は流木が挟まることもないので、メンテナンスフリーだ。スリット化後、川は上流と下流の川石の大きさが同じになり、川が蘇ったことがよく分かる。これが逆台形型のスリット化の効果だ。

当初、治山ダムの管理者である道林務課は、ダムをスリット化すれば、「土砂・流木が流れ出し、橋が壊され、その先の集落が陸の孤島になる」として、スリット化に難色を示していた。しかし、スリット化してみれば、災害を引き起こすような土砂も流木も流れ出すことはなかった。むしろスリット化で川は蘇えり、その効果は期待以上のもので、総会では、沿岸の海藻の育ちが良くなったことが報告された。良質のコンブ・ワカメが採れるようになり、ウニが大型に育つようになったとも言う。ダムのスリット化で海藻が育つようになれば、磯焼けも解消され、やがてはニシンの群来も見られるようになることだろう。

土石流と流木が押し寄せて壊れると説明されていた橋は何らの被害もなく、健在。河床はきれいな砂利で覆われ、多くの魚の繁殖に適した河床に蘇った。

橋の下流はすぐに日本海だ。

橋をくぐればそこは日本海だ。泥水が出なくなれば、海藻の育ちもよくなる。

良瑠石川が注ぐ日本海。泥の流れ出しが減少すれば海藻が蘇る。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川河口。海中の黒く見えるのはコンブにワカメ、ホンダワラなどの海藻だ。

全道でサケの漁獲が減少している最中に、サケの漁獲を増加させ、沿岸海藻の育ちが良くなり、ウニを大型に成長させるというスリット化の効用を目の当たりにした漁師たちの総会は、漁業復活の明るい兆しが見えたダムのスリット化に盛り上がり、熱気に沸いた。