人と共存しているヒグマまで捕殺。北海道の「人材育成捕獲」
11月8日付けの北海道新聞に「人材育成捕獲」来春拡充の見だしで、北海道がヒグマの捕獲頭数を増やすことが報道された。主たる目的はハンター不足の歯止めにあるようだが、目的の一つとして「冬眠明けのクマに人への警戒感を植え付ければ、人里に出没しにくくなる」という理由が掲げられている。つまり、こうした捕獲を行えば、ヒグマは警戒心を持ち、人里に出没しにくくなるというのだ。

捕獲拡充目的に「ヒグマに人への警戒心を持たす…」と掲げながら、「人への警戒心を持ったヒグマたち」まで次から次に捕獲するのだから、北海道の理念は、もうメチャクチャだ。
北海道のヒグマ対策は驚くほどに、おかしなことだらけだ。
出没中のヒグマの「個体識別が必要だ」として、芳香剤でヒグマを誘引してビデオ撮影している。更に、餌でおびき寄せて体毛採取し、DNA分析することを最優先している。
ここが重要な問題点だ。
これらのデータを収集している間、ヒグマは人里周辺で自由に徘徊できる状態にある。ヒグマは学習能力に優れているから、その間に様々なことを学習して居座るようになる。その結果、手の施しようが無くなり、真駒内や野幌の事例にように、捕殺される。捕殺したヒグマは、画像データやDNAデータに現物と添えて、学術データとして収集される。こうして得たデータがヒグマ出没抑止に役立つのか…?役立っているのか…?個体識別を優先し、のさばらせた挙句に、手に負えなくなって捕殺した際、「あの時に出没していたヒグマだ」と確認する程度で、その他は研究者の成果品となる。こうした視点で北海道のヒグマ対策を読み解けば、道民の安心安全な暮らしそっちのけで、研究目的や学位論文作成のために莫大な道民の血税を使い、データ収集している姿が見えてくる。

標茶町の「OSO18」と名付けられたヒグマの対応についても、未だビデオ撮影して個体を確認することに奔走している。ビデオ撮影できるくらいなのだから、凡その予測された行動範囲や出没経路で、出没抑止できる筈だ。即ち、出没を抑止する対策を最優先させることこそが、適切なヒグマ対策というものであろう。そうした適切な対応を行わず、今なお放置したままで、ビデオ撮影を続けているのだから、おかしなことだ。
ヒグマ対策の実績は、30年も40年もある。それなのに、未だにヒグマ騒ぎは終息しない。道民の暮らしは危険にさらされ続けている。それはつまり、ヒグマ出没対策の名の下に、調査研究ばかりを行ってきたからに他ならない。頭数を減らせば出没件数が減少するという安易な引き算で、無差別捕殺に踏みきり、誤魔化しているに過ぎない。
人里へ出没させないようにするには、まず、人里への出没情報を得た時点で、ハンターなどヒグマをよく知る熟練者が、「即時に現地へ出向き」➡「出没経路周辺を”電気柵で一時的に”封鎖し」➡「出没抑止の対策をやる」ことだ。これを繰り返せば良いだけのことである。ヒグマに「この辺りは居てはいけない」ことを学習させるまで、出没状況に合わせて電気柵の設置と撤去を繰り返し、人里との境界線をヒグマに教えればよいのだ。電気柵は草が生えるので、維持するのが大変だという意見もあるが、常設させる訳ではないので、草刈りは不要だ。そもそも、どんなに手間暇がかかろうが、ヒグマを殺さないようにする為の予算も取らず、出没抑止の為に労力を惜しまない専門家がいないとは情けない話だ。
北海道にはどこにでもヒグマがいる。そこで暮らしている人たちは、回りにいるヒグマが特に悪さをしなければ捕殺しない。むしろ、悪さをしないヒグマがいた方が、「流れ者のヒグマを寄せ付けないので安全だ」という考え方だ。言い換えれば、毒には毒をもって制す。つまり、人間の暮らしをヒグマから守るために、気心知れたヒグマをガードマンに雇っているということだ。
知床半島ルシャ地区の漁師の番屋では、番屋の回りに沢山のヒグマが徘徊している。ヒグマたちは悪さをすることもなく、番屋の暮らしに何らの支障はない。ここのヒグマたちは何をすれば人が嫌がるかをわきまえ、人との軋轢を避けている。このようなヒグマを北海道の方針通りに次々に捕殺したらどうなるだろう…?縄張りが空き、そこに得体のしれない新参者のヒグマが入り込んでくる。そうなれば、番屋の暮らしはどうなるだろうか…?番屋の暮らしも知らない新参者のヒグマが入り込めば、漁師は危険にさらされることは目に見えている。安泰な番屋の暮らしは一気に崩れ、毎日が不安の日々となる。
言わばこれと同じようなことを、北海道は来春から全道で行おうとしている。この計画の危険性と問題点は、「人への警戒心を持ち、人里に出没しないようにしているヒグマまで捕獲して、人への警戒心を持たない、人里に出没するヒグマの出現を生み出す」ことにあるのだ。「人への警戒心を持ち、人里へ出没しないようにしているヒグマを残し、そうした個体を増やして行く」というのが、本当のヒグマ対策であり、北海道がよく言う「共存」というものであろう。
今回の北海道の「人材育成捕獲」は、道民の暮らしを危険にさらし続けるだけのものである。「人材育成」にかこつけ、善良なヒグマまで撲殺するような行為は見直すべきだ。即刻に、計画を白紙に戻し、ヒグマという動物がどんな動物なのか、今一度考えていただきたい。学位を持つ専門家がいながら、基礎的な知識に欠けているのでは、恥ずかしいし、学位が泣くというものだ。30年も、40年も、莫大な道民の血税を費やして、いったい何を調査研究してきたというのか。人里に出没してはいけない事を学習したヒグマかどうかを見極めることは簡単だ。もし、それは難しいと言う専門家がいるとすれば、基本中の基本、ヒグマとはどういう動物なのかを読み解く目と心が欠如しているからである。せめて、テクノロジーに一切頼らず自力で山に入り、ヒグマを見つけ、自分の目で目の前のヒグマをじっくりと観察するべきだ。
ヒグマを撃つ「人材育成」ではなくて、ヒグマの行動を読み取れる人材育成をこそ考えることが、最も必要な方針だろう。
オンラインシンポジウム:未来の交通インフラが環境破壊!? ~リニア・北海道新幹線・北陸新幹線の現場から~
気候危機、生物多様性の喪失、頻発する自然災害等に直面する今日、持続可能な社会を実現させるための抜本的な社会経済システムの転換が急がれます。交通体系もまた、都市計画や地域づくりと密接に関係しており、環境社会への配慮や誰もが安心・安全に移動できることが求められます。しかしながら、現在、政府が進める「未来の交通」とは、数十年も前に経済成長のみを優先して計画された環境破壊や地域社会の分断を招くような大型開発事業ばかりです。
今回のオンラインシンポジウムでは、リニア中央新幹線、北海道新幹線、北陸新幹線の開発影響の事例から、政府や地方行政が進める未来の交通インフラの問題を明らかにしていくことで、私たちが未来に求める移動のあり方について考えます。
【日時】 2022年6月27日(月)19:00~21:30
【開催方法】 オンライン会議システム zoomを利用
【参加費】 無料
【申込み】 登録は以下のフォームから(自動的に参加可能なリンクが送られます)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_BH-s2OTaSOawT513pGNfGw
<プログラム>
1.「リニア中央新幹線計画」は「未来の交通インフラ」と成りえるのか? 建部 由美子 氏(リニア新幹線を考える相模原連絡会)
2.北海道新幹線延伸の問題(仮) 稗田 一俊 氏 (フリーカメラマン/流域の自然を考えるネットワーク)
3.恐ろしく杜撰な北陸新幹線延伸計画 長野 宇規 氏(田歌区北陸新幹線問題対策委員長、神戸大学農学研究科准教授)
4.問題整理 樫田 秀樹 氏(ジャーナリスト)
5.パネルディスカッション(コーディネーター:樫田 秀樹 氏)
6.質疑応答
※当日のプログラム内容は一部変更になる場合もございます。
【主催・問合せ】 国際環境NGO FoE Japan( https://foejapan.org/contact/)
ヒグマ対策について北海道知事に質問書を提出
「北海道の羆問題を考える会」(共同代表:門﨑允昭ほか)は、3月24日に、北海道知事・鈴木直道氏宛に、北海道のヒグマ対策(管理計画)についての疑問8項目の質問書を提出した。
ヒグマは学習能力があり、”しつけ”が可能な動物である。ヒグマの出没情報を得た時点で、迅速に出没経路を特定することに専念し、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖することを繰り返し行い、ヒグマに「そこから先には立ち入れない」ことを学習させればよいことだ。ところが、このヒグマ管理計画は、研究者が芳香剤でヒグマを誘引してビデオ撮影することや、餌でおびき出しての体毛採取によるDNA分析、また、AI技術最新のICT技術を導入することとなっている。これらのすべては、つまりは、研究者たちのデータ収集であり、調査研究を目的としたもので、出没抑止対策とは全くの無関係な構成なのである。このような管理計画では、今後もヒグマ出没騒ぎは繰り返される。
北海道には、33年間のヒグマ対策の実績がありながら、出没抑止対策がいまだ確立されておらず、ヒグマの出没が繰り返されている。この現状を、ヒグマの生息頭数の増加に原因があると責任を転嫁しており、生息頭数を減らすために、あろうことか捕殺頭数を増大させる計画にしているのだ。
この「捕殺頭数を増大させる計画」とはどういうものか?…生息頭数が減れば出没確率(頻度)は下がる…当然である。出没確率(頻度)が下がれば、莫大な予算のほとんどを研究データの収集用に確保していても、「現に、出没確率(頻度)が下がった」と、批判をかわす「見せかけ」の効果を狙うことができる。それはまた、人目を忍び、人に関わらないように、健気に生きている無実のヒグマたちの大量殺戮劇を示唆する。

ヒグマは、知れば知るほどに賢い動物だ。むやみやたらに殺してよい動物ではない。ハイテク機器を駆使することに邁進し、ヒグマの観察を疎かにしている専門家・研究者達にはそうしたヒグマたちの健気に生きる姿が理解できるはずもない。まるでゲーム感覚で、機械的に次から次にヒグマを殺せてしまうのだろう。
2021年6月18日の札幌市東区のヒグマ出没騒ぎは、如何に北海道のヒグマ対策が役に立たないものであるかを如実に表している。無用にヒグマを追い回し「窮鼠猫を噛む」までに追い詰め、その結果、ヒグマをパニックに陥らせ、4人が負傷される事態を招いたのである。驚くことに、この騒ぎの渦中、ヒグマの専門家は現場にも現れず、ヒグマを知らない警察官が対処していたが、いったい誰が陣頭指揮を執っていたのだろうか…?これは調査研究に関わっている専門家・研究者らが、いかにヒグマの習性を知らなさすぎるのかを如実に示す事件と言えよう。このヒグマをマスコミは「凶暴なヒグマ」と表現している。それは「窮鼠猫を噛む」ネズミのことを「凶暴なネズミ」と表現するがごとしである。33年間もの調査研究の実績があるという北海道のヒグマ対策専門家・研究者らの”無知”が招いた、ごく初歩的なミスである。警察による検証が必要な事件でもあった筈だ。マスコミは、こうした真相(深層)にこそ、掘り下げて取材し、二度と繰り返さないためにも検証してほしいものである。
ヒグマ出没抑止の草刈りに3,500万円…!?
2022年1月30日、北海道新聞及びweb版記事。札幌市は新年度、ヒグマ対策の草刈りを行う事業費に3,500万円の見込みだという。

2021年6月18日に札幌市東区で男女4人がヒグマに襲われて負傷されたことが記されている。この出来事については、行政側の初期対応に不手際があった。徘徊を放置したが為に行動範囲を拡大させ、ヒグマを追い回した結果、「窮鼠猫を噛む」状況までにヒグマを追い詰め、ヒグマをパニックに陥らせたために発生したものである。追い回しさえしなければ、住民は襲われることも、負傷されることも無かった。この騒ぎの中、ヒグマの専門家は誰一人として現場にはおらず、ヒグマを追い回せば危険になることすら伝えず、追い回すことを止める指示もしなかった。専門家が唯一したことは、このヒグマを銃殺するように要請したことだ。
記事の草刈りを行う方針について、①のような効果は、一時的なもので永続はしない。草刈り中は、騒音と人の出入りでヒグマがそばに寄りつかなくなるが、草刈りが終われば振出しである。ヒグマの出没を抑止するのであれば、③に出没と移動経路が示されているように、そこに電気柵を設置し、出没経路を封鎖すれば、市街地への侵入を防ぐことで、②の不意に出くわすことも無くなる。酪農地帯のように草刈りした草地にヒグマは出てくるのだから、出てくるものは出てくるのだ。住民の安全・安心な暮らしを本気で護るつもりなら、その場しのぎと気休めでしかない草刈りではなく、ヒグマの出没・移動経路に電気柵を設置して、出て来られなくすれば良いのだ。
これまで「ヒグマ出没騒動」は、なぜ繰り返し、繰り返し起きているのでしょうか?
その経緯を調べればどの場合も「ヒグマの出没を抑止していない」ことがすべてにあります。ヒグマは夜に現れ、昼には姿を消しています。つまり、出没経路があるからヒグマは出て来るのです。野幌地区や真駒内地区、簾舞地区のヒグマ出没騒ぎでも、全く同様に、電気柵で出没経路を封鎖するような対策はしていません。島牧村のヒグマ出没騒ぎは、広く報道されているので、より顕著に分かります。裏山から海岸沿いの住宅地に夜に出てきては昼間に姿をくらましているのが分かっていながら、ヒグマの出没を抑止するために出没経路を封じる電気柵の設置はしなかったのです。これでは繰り返しヒグマが出てくるのは当然です。
では何故、札幌市は「出没抑止に効果のある対策」をしたがらないのでしょうか?
それは、調査研究を優先させ、研究者の為のデータ収集を目的にしているからです。ヒグマ関連費という、まるで、ヒグマ出没抑止対策費であるかのように見せかけた予算の中身は、実はこうした研究者用の事業予算であったわけです。「北海道ヒグマ管理計画」の予算の内訳を見れば一目瞭然です。予算のほとんどが調査研究費となっており、電気柵費や電気柵設置費は計上されていないことからも明白です。
ヒグマ出没情報を知り得たその時、行政に関わる北海道のヒグマの専門家たちは一体何をしていたのでしょうか…?調べてみてください。そう、芳香剤でヒグマを誘引してビデオ撮影したり、DNAを取得するためにヒグマを餌でおびき出して体毛採取することをしていたのです。住民のためではなく、自分たちの研究データを取得するためにヒグマの出没を抑止することをせずに、徘徊を放置していたのです。youtube版の北海道新聞NEWSのビデオを見れば一目瞭然です。
札幌市議会の議員方は、「市民の安全・安心な暮らしをヒグマから護る」ために、「ヒグマに棲み分けの学習のチャンスを与える」ためにも、効果不明の草刈り費(3,500万円)や、抑止効果に無縁なビデオカメラ導入費(1,500万円)を見直しさせ、ムダな対策に歯止めを打ち、計上された総額5,000万円の全額を電気柵購入費と電気柵設置費に宛てるように札幌市に求めていただきたいと願います。
ヒグマは犬猫と同じ学習能力のある動物です。”しつけ”すれば良いのです。即ち、ヒグマの出没経路に電気柵を繰り返し設置して、「この先には行けない」ことをヒグマに教えればよいのです。この「しつける」ことには、草刈りも、ビデオカメラも、DNAデータも、すべて必要無いものです。ひたすら電気柵を設置して、出没抑止の対策を繰り返せば良いのです。
同じ蝦夷の地に棲む人とヒグマの未来のために。
北海道ヒグマ管理計画は、住民の安全よりも研究優先。
北海道環境生活部環境局自然環境課の「北海道ヒグマ管理計画(第2期)」素案に対するパブリックコメントが、2022年1月11日に締め切られた。
この第2期計画でも、これまでの計画を踏襲し、ヒグマの出没情報を得ても、出没抑止対策はしないようになっている。つまり、ヒグマの徘徊を放置して、有害性を判別してから対策する手順なのである。有害性を判別する「時間」が設けられているのだ。
ヒグマが出没しているのに出没を抑止せずに、わざわざ有害性を判別するための「時間」をつくる理由は何だろうか…?実際に「有害性を判別する対応」の事例はこうだ。野幌や真駒内では、ヒグマが今まさに出没しているというのに、出没を放置し、そのヒグマを芳香剤で誘引してビデオ撮影している。更に、DNA分析の為にヒグマを餌でおびき出して体毛採取(ヘア・トラップ)している。それは下記の北海道新聞のyoutube版で確認することができる。
住民の安全をないがしろにして、個体識別や家族構成を調べる目的でヒグマの徘徊を放置しているのである。住民の安全・安心な暮らしを守るために、なぜ、ヒグマ出没の抑止を最優先しないのだろうか…?
「有害性を判別する時間」とは「研究用の時間」、つまり、研究者の為の時間のようだ。しかも、このパブリックコメント募集の計画の素案には、最新のICT技術導入が掲げられており、新たなる研究の為の予算まで組めるようになっている。令和2年度(2020年度)、令和3年度(2021年度)の予算を見ると、人里へのヒグマ出没抑止の為の電気柵の費用や設置費用は無し。0⃣円なのである。予算の全てが研究者の研究費になっているのだ。
また、生息頭数調査においては、餌でおびき出して体毛採取(ヘア・トラップ)によるDNA分析などを駆使し、北海道のヒグマ生息頭数が令和2年度(2020年度)では、11,700頭(95%信頼幅6,600頭~19,300頭)としている。誤差は、なんと12,700頭もある。こんな誤差のある調査に税金を使う必要があるのだろうか…?
「北海道ヒグマ管理計画」の目的は、人とヒグマとのあつれきを低減するため、ヒグマとの緊張感のある共存関係の構築を目指し、科学的かつ計画的な保護管理により、「ヒグマによる人身被害の防止、人里への出没の抑制及び農業被害の軽減」並びに「ヒグマ地域個体群の存続」を図るとある。しかし、道民を護る人身被害防止や人里への出没抑制に効果的な電気柵や設置費用は0円なのに対し、調査研究費は2年間で33,000,000円と膨大な額の道民の税金が使用されている。道民の安心・安全な暮らしよりも研究者のための研究費の方が重要だというのだ。
飼い犬の”しつけ”を考えていただきたい。「やってはいけないこと」は、すぐに「ダメ!」と教えるのが鉄則だ。これを繰り返して学習させる。これが”しつけ”だ。もしも、「ダメ!」と言わずに見逃したら、「やってはいけないこと」が解らず、指示に従わなくなる。”しつけ”は初期に迅速にしなければならないものだ。ヒグマも同様に学習能力・判断力がある。人里に出て来たヒグマに「ダメだ!出てくるな!」と教えずに見逃していれば、出没抑止など出来る筈がない。札幌市東区、野幌、真駒内や簾舞、島牧村や標茶町の事例からも分かる。何度も繰り返し夜に出てきては、明るくなった昼間には姿を消している。やってはいけないことを教えないからに他ならない。
北海道議会、令和3年(2021年9月28日)第3回定例会(本会議)において、丸岩浩二道議の質問に対し、鈴木直道知事は「迅速に対応するための体制を構築する」と述べてはいるが、道のヒグマ担当の環境生活部長は電気柵設置をヒグマ出没抑止対策の「有効な手段」と認めながらも、ヒグマの侵入防止を図る為、「総合対策交付金について、必要な予算の確保や交付対象の拡大などを国に要望してきた」と答弁。ヒグマ出没抑止対策用の電気柵の費用や設置費用は「国の予算でやることであって、北海道がやることではない」としているのは、道理に合わない。
この第2期計画の素案が通れば、今後もヒグマ出没騒ぎは拡大していくばかりで収束することは無い。道民の安心・安全な暮らしは遠のき、ヒグマの出没に脅かされ続けることになる。北海道は、この計画を根本から見直し、研究目的の費用を削除し、研究者のための予算ではなく、道民の生命・財産を護るための予算に組み替え、ヒグマ出没抑止対策に徹した計画に方針転換すべきだ。
そのためには、ヒグマ出没情報を得た時点で、現地へ出向き、出没経路を一刻も早く突き止めて、電気柵で出没経路を封鎖することを目的とした専従のチームを作って対応すべきだろう。山林原野の現場を熟知し、ヒグマの行動を読み取れるハンターを核にして、各振興局の職員と市町村の人員で構成し、ヒグマの捕殺を目的にするのでは無く、出没を抑止することを目的にした専従のチームを立ち上げ、各振興局ごとに配属し、地域の実情に応じた迅速な対応ができる仕組みを構築すべきである。
「北海道ヒグマ管理計画」は、研究者の為の計画ではなく、道民の為の計画であるべきものだ。研究者は独力で研究費用を捻出せよ!立派な業績があれば、スポンサーは多い筈だ。肩書を利用して、道民の税金を使ってはいけない!
「北海道ヒグマ問題を考える会」では下記の意見書を出した。
北海道のヒグマ対策質問書への回答から見えてくる、札幌市東区で発生したヒグマによる人身事故
北海道のヒグマ対策について、2021年4月5日に知事宛に提出した現行の「ヒグマ関連予算」と、ヒグマ対策のあり方の見直しに関する質問書への回答が、4月26日付けで、知事からではなく担当部署から届いた。
道民の血税で行う事業を担う担当部署からは、質問に対してまともに答える姿勢が見られず、再度、回答を求めたところ、5月10日付けで回答が届いた。
この回答を得た後の6月18日、札幌市東区で市街地をヒグマが徘徊し、人的被害が発生した。北海道からの回答を読み解けば、東区の人的被害は起こるべくして起きた人災被害であることがお分かりいただけると思う。
ヒグマが、今まさに出没している時には、北海道は関わらないということだ。それを裏付けるように高額な北海道の「ヒグマ関連予算」令和2年度1,760万円、令和3年度1,950万円の内訳には、ヒグマ出没時の予算は組まれていない。
出没しているヒグマを抑止するのではなく、ヒグマの識別や資料の入手を目的にした予算であることが分かる。また、徘徊を放置しているとヒグマの行動がどうなるのか?についての答えは無い。
ヒグマの出没抑止は市町村がやることであって、北海道は「ヒグマ出没対策事業費」とは「技術開発」を目的にした予算だという。
同様に、「ヒグマ出没対策事業費」は「技術開発を総合的に行う」ことを目的している予算だという。
ここでも「ヒグマ出没対策事業費」は、「調査事業(費)」と回答している。30年以上もヒグマ出没対策をして来ていながら、今さら基礎資料が必要だという可笑しな話だ。
ヒグマを芳香剤で誘引し、餌でおびき出す行為は「餌付け」行為には当たらないという。学習能力のあるヒグマが、芳香剤の臭いや餌の味を覚えれば、同様な臭いが人里にあれば出て来るようになるではないか。ヒグマのこうした行動拡大の可能性については答えていない。
毎年、約2,000万円もの高額な予算を組んで、30年以上の実績を経てしても、いまだ「事故防止」や「普及啓発」、「体制整備」についての知見が足りないという信じ難い話だ。
30年以上も調査・研究していながら、今なお「基本的なデータを収集する」という。今まで何をやって来たのだろうか…?
約300万円はICT等の活用を検討・検証する予算だという。ICTを活用しなければ、ヒグマの出没を抑止することが出来ないらしい。
札幌市東区でヒグマが出没し、人的被害が発生したが、「市街地周辺ヒグマ出没対策事業費」として計上された約1,100万円は、こうしたヒグマの出没を抑止する予算ではなく、「ヒグマの体毛を採取する」予算だった。
以上のように、北海道の「ヒグマ関連予算」は調査・研究が目的の予算であって、道民をヒグマの危険から守る目的には使われない予算であることが分かった。こんな対策だから、札幌市野幌、藤野、簾舞、真駒内でヒグマの出没が繰り返されて来た訳だ。ヒグマの出没の「抑止」が、されていないのだから当然である。その当然の流れとして、また東区でヒグマが出没し受傷する人的被害が発生した。出没騒ぎの現場に「ヒグマ関連予算」に関わる専門家は見えず、警察官らがヒグマを追い回していた。追い回され、追い詰められたヒグマはパニックに陥り、何をするか分からなくなり危険になることくらいは誰でも想定できることだ。挙げ句は、ハンターを動員して追い詰めての銃殺処分となった。追い詰められ、逃げ場を失い、怖くて怖くて怯えきったヒグマの哀れな表情が目に焼き付いている。初期対応が適切であれば、住民が受傷することもなかったし、このヒグマも殺されることは無かった。人目を忍び、夜間に徘徊し、明るくなる前には戻るような智恵を持った賢いヒグマだったのにである。「ヒグマ関連予算」からは、ヒグマ出没騒ぎが繰り返される理由が読み解ける。このままでは、今後も東区のように、ヒグマが市街地を徘徊することが続くだろう。ヒグマ関連予算が見直しされない限り、人的被害は絶対に解消されることはない。現行の北海道のヒグマ対策は、「ヒグマ出没抑止を目的とした予算では無い」ことを、「北海道のヒグマに関する調査・研究のあり方は間違っている」ことを、ヒグマの棲む地に暮らす私たち道民、札幌市民はよく理解しておく必要がある。
この東区のヒグマ出没騒動から、図らずもヒグマの出没抑止対策には研究者や専門家は不要ということが明確になった。研究者や専門家は、市街地を徘徊するヒグマを自分の調査・研究目的で放置し、餌付けをし、手に負えない危険なヒグマに仕立てあげ、挙げ句は檻罠で他個体のヒグマをも巻き添えにして、無差別に捕獲して銃殺処分しているのが実態である。本気で道民の生命・財産を守るのであれば、ヒグマの出没情報を得た時点で、即時に現地調査に入り、出没経路を特定して、迅速に出没経路を電気柵で封鎖して、ヒグマの出没を抑止することが北海道として執るべき策だ。現場の指揮は、ヒグマ追跡のエキスパートであるハンターに任せれば良いのだ。ヒグマの行動を読み取れる経験と多くの知見を持ったハンターにこそ、この「ヒグマ対策予算」を充てて、スピーディで的を射たヒグマ出没抑止対策を担ってもらうことの方が、よほど私たち道民の生命・財産を守るに相応しい。無益な殺生をも起こさない真のヒグマ出没対策が確立出来るだろう。
改めて北海道知事に「ヒグマ関連予算」の見直しと、真のヒグマ出没抑止対策への転換を早急に願い求める。
北海道知事へ質問書の資料…「北海道ヒグマ管理計画」と「参考資料」
北海道のヒグマ対策について…知事へ質問書提出。
北海道は、人とヒグマの共存する社会やヒグマの地域個体群の保護を目途に、30年以上に亘りヒグマ対策に取り組んでいる。しかし、札幌市近郊の住宅地にヒグマが出没する度に、檻罠を設置して問題グマ以外も含めた無差別な捕獲を行い、容赦なく猟銃で殺処分している。この現状について、「北海道の羆問題を考える会(ヒグマ研究者の門﨑允昭氏らで構成)」は、北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)が、本年度中に改正されるのを機に、2021年4月5日に、北海道知事宛に質問書を提出した。

驚くことに、現行のヒグマ管理計画では、情報を得た時点での出没を抑止する対策がされていない。この管理計画は、ヒグマの出没情報を得ると、まず「出没個体の有害性判断フロー」の手順に従って、出没しているヒグマを抑止ではなく徘徊させたままにし、その間に「経過観察」や「調査研究」を行い、その結果をもって、どのような対策にするのかの選別をする手順になっている。つまり、ヒグマの出没を迅速に抑止することよりも、「出没個体の有害性判断」を目的にしたものなのである。こんな対策では、いつまで経っても人とヒグマとの共存は確立できない。ヒグマの地域個体群の保護もままならず、ヒグマの出没騒ぎが収束する気配は無い。
このような計画では、同一個体が徘徊を繰り返すと出没情報が増えるため、あたかもヒグマの生息数が増えたかのように錯覚させる。研究者や専門家ですら、「ヒグマは確実に増えている」と豪語する始末である。判断能力や学習能力などヒグマの習性の考慮に欠けた無知な研究者や専門家の提言を鵜呑みにしているとヒグマは絶滅に導かれてしまう。



ヒグマの徘徊を放置していれば、その間にヒグマは身に危険が無いことを学び行動範囲を広げ、食べ物があれば食し、居心地がよければ居座るようになっていく。ヒグマに限らず、エゾシカ、キタキツネ、エゾタヌキなど学習能力のある野生動物に共通したごく普通の習性である。
札幌市南区のヒグマ出没騒ぎの報道では出没時間帯は夜で、昼間はどこかに身を潜めているという。それならば、一刻も早く出没経路を特定し、ヒグマが人里で諸々のことを体験する前に、学習する前に、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖して出没を抑止しなければならなかった。それを怠った為に、ヒグマは徘徊を続け、住宅地を歩き回り、警察官やハンターが出動したもののヒグマを目の前にして、手も足も出せない状況を作ってしまったのである。北海道が、「人とヒグマとの共存」を目指しているのであれば、野生のヒグマを初期に「しつける」。「やっていいこと、悪いこと」を学ばせる。つまり、電気柵を活用して、そこから先は「人間のなわばり」という境界線をヒグマに学ばせることが”要”となる。
最近では、「人を見ても逃げない、人を恐れない”新世代ベアー”が出現するようになった」とヒグマの研究者や専門家たちが苦言しているが、己の無知さに気付くことなく、手に負えなくなると、新たな習性を持ったヒグマが出現するようになったと言い訳しているに過ぎない。この”新世代ベアー”なる新語の発祥の地は、世界自然遺産登録の知床ウトロである。管理する知床財団は、ヒグマが現れたら人が引き下がるように指導し、推奨している。

知床五湖の遊歩道ではヒグマが現れたら、案内人がヒグマの目の前で観光客を引き下がらせ、遊歩道をヒグマに明け渡す。その後、遊歩道は閉鎖にする。この対応は、ヒグマの習性に基づいた、正しい対応と言えるだろうか?

「人は引き下がり、道を譲ってくれる」と学んだヒグマは、次に人に出会った時、逃げるどころか人を見ても恐れもしない。やがて、彼ら研究者や専門家の言う”新世代ベアー”に仕立て上げられていく。この誤った対応によって、ヒグマは知床五湖の遊歩道を自分の「なわばり」と認知する。その結果、世界遺産登録後の知床五湖の遊歩道は、人は自由に利用することが出来なくなった。野生動物の習性を知っていれば、誰もが読み解ける流れである。
では、管理計画の出没を抑止しない理由は何故なのか?それは、学術調査が目的になっているからである。下記の表、北海道のヒグマ関連予算を見れば一目瞭然である。

ヒグマの研究者や専門家たちは、人里に出没したヒグマを個体識別する目的で、ビデオ撮影やDNA分析用に体毛採取をしている。その目的のために、「芳香剤」や「餌」でヒグマを誘引する「餌付け」をしているのである。この「餌付け」行為は、調査や研究が目的なら良いと言う事は断じてあってはならない。

道新NEWS:https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/6050307841001
北海道や知床財団は、食べ物などでヒグマを誘引すれば、人と食べ物を関係づけるようになるので、食べ物などで誘引しないように指導している。一般人には「餌付けはするな。誘引するような物は置くな。」と指導していながら、研究者・専門家たちが、調査の為にやる「餌付け」行為は、容認しているのだから、呆れた話である。2021年4月、第204回国会に提出された自然公園法の改正案には、ヒグマの「餌付け」行為を厳罰化する目的で、国立公園や国定公園の中の「特別地域」などの範囲に限って野生動物への「餌付け」行為を規制し、30万円以下の罰金を科すとしている。地域限定とはなっているが、国立公園であろうがなかろうがヒグマはヒグマなのだから、調査や研究目的で芳香剤や餌で誘引する「餌付け」行為が招く問題も同じなのだ。調査、研究目的においても「餌付け」行為は即刻禁止すべきである。

そして、芳香剤や餌で誘引する「餌付け」調査は止めさせることだ。「餌付け」行為により、問題が発生し、何よりも人とヒグマとの関係が歪められてしまう。よって、現状のような調査が続く限りは、いつまでも人とヒグマの軋轢は低減することもなければ、人的被害の危険性はますます高まるばかりとなる。今のままでは、「人とヒグマとの共存」など到底実現し得ず、地域個体群の保護も出来る筈もない。
現在のヒグマの調査・研究は、芳香剤や餌でヒグマをおびき出す「餌付け」や、GPS発信器の首輪をつけたり、家畜の牛につける耳タグを付けたりしての調査を続けているが、こうした、うわべだけの、こぎれいで、安直な調査を繰り返している限りは、ヒグマという動物を理解し得ることは出来ない。自らが山に入り、汗をかき、踏査して野生のヒグマにたどり着き、ヒグマと長く対峙してこそ、ヒグマという動物がどういう動物なのかが見えてくるものだ。判断力や学習能力のある動物の気持ちまで読み取れるようにならなければ、相手を理解することなど出来るはずもない。手早く成果を挙げたいがために、短絡的に研究対象として扱っていれば、ヒグマ対策は根拠の無いものになってしまい、いつまで経っても功を奏しない。


現行のヒグマ管理計画は、ヒグマの徘徊を抑止しておらず、その間にヒグマは諸々のことを学び、徘徊を繰り返している。その結果、手に負えなくなったという理由で、檻罠で捕獲して殺処分する…という流れになっている。北海道は、現行の計画がこうした流れになっていることに早く気がついて欲しい。もうこれ以上、無意味で無差別なヒグマ惨殺劇は止めるべきだ。よって、現行の「北海道ヒグマ管理計画」は、ヒグマの習性を考えた計画に練り直し、何よりも真っ先に出没を抑止する対策に変更した新しい計画を立案して欲しい。ヒグマが人里を体験し、学習する前に、すみやかに出没経路を特定し、人里への出入口に間髪を入れずに電気柵を設置して封鎖する「抑止」対策を行えば出没騒ぎは解決するのである。
以下に「ヒグマ出没抑止策の概念図」と北海道知事宛てに提出した質問書を添える。
「桜鱒の棲む川」水口憲哉:著(フライの雑誌社刊)
「ダムをやめ、川を川として活かす。乱獲はしない。何もしなければサクラマスは増える」
フライの雑誌社から気になる本が出版されましたのでご紹介します。著者は水口憲哉さんで、東京水産大学時代から原子力発電建設に関わる環境問題を長く手がけて来られた方です。

水口 憲哉(みずぐ ちけんや)
1941年生。原発建設や開発から漁民を守る「ボランティアの用心棒」として全国を行脚し続けている。著書に『釣りと魚の科学』、『反生態学』、『魚をまるごと食べたい』、『海と魚と原子力発電所』、『魔魚狩り ブラックバスはなぜ殺されるのか』、『放射能がクラゲとやってくる 放射能を海に捨てるってほんと?』など多数。千葉県いすみ市岬町在住。夷隅東部漁協組合員。資源維持研究所主宰。農学博士。東京海洋大学名誉教授。「『桜鱒の棲む川』は、今までに書いた本の中でもっとも気持ちの入った一冊です」(水口憲哉)