落部川から大量の流木が落部漁港を埋めた。

2025年8月19日、北海道南部、渡島半島大平洋側の八雲町では、時間雨量最大26㎜、日雨量49㎜の雨が降り、落部地区の「落部川」はひどい泥水と化し、夥しい量の流木が海に流れ出て、漁港を埋めた。

2025年8月19日の八雲町の降雨量の変遷       出典:日本気象協会・tenki.jp
落部川から海に流れ込むひどい泥水と帯状に漂う流木。
夥しい量の流木が、落部漁港へ流れ込んだ。
落部漁港
漁師たちは総出で、網で流木を引き寄せて重機ですくい上げて取り除いていた。
漁船でも、流木を引き上げている。
網で寄せ集めた流木を重機ですくい上げて、取り除いている。
かなり大きな流木も多い。
大きな流木はチェーンソーで玉切りしたものを山積みにしていた。
落部漁港を埋めた流木の山…

取り除いた流木は、枯れた木が目立つ。

落部川の上流には砂防ダムや治山ダムがたくさんあり、下流一帯で川底が下がる「河床低下」が進行している。川底が下がると川岸との落差が開き、川岸が崩れるようになり、多くの場所で、垂直な崖化が見られている。

川岸の下部が水流で浸食されると、川岸が「砂山くずし」と同じ原理で立木もろともに、次々に崩れていく。

この状況をよく考えていただきたい。たいした増水でなくても崖化した川岸の下部に水流が当たり、下部の土砂を舐めるように浸食する。すると、上部はちょうど「砂山くずし」のように、ドサッと、立木もろともに崩れ落ちる。

河原に転がっている根っこ付きの流木
河畔林が捉えた夥しい量の流木。

普段のちょっとした増水で、川岸が立木もろとも崩れている。倒れ込んだ根っこ付きの流木があちこちの河原に散乱している。こうした流木は、やがて枯れていく。そして、今回のような大きな増水があれば、河原に転がっていた流木が海に流れ出すというわけである。

あちこちに、根っこ付きの流木が転がっている。

ダムで河床低下を引き起こした結果、川岸が崩れて流木を生み出している上に、新幹線工事による配慮のない破壊行為で生み出された流木も加算されている。河原には第2…第3…第4…の流木が、次々に控えている。大きな増水が発生する度に、下流から河口、沿岸に至るまで、被災が繰り返されることになる。

人の立入を制限して、現場を見せない北海道新幹線工事現場では、川岸の河畔林をなぎ倒し、放置状態にしている。このような工事の不手際で更なる流木が生み出され、増水の度に、下流の漁港も漁具も被害を受けることになる。

また、河川管理者は流下障害になるとして、落部川の河畔林の伐採を進めている。

落部川の河畔林は伐採されているので、流木を捉える仕組みが失われた。

写真をよく見ていただきたい。河畔林が伐採されて草地になったところの草は、水流でなぎ倒されたような痕跡は無い。増水量はそれほど多くは無かったと言うことだ。なのに、川はこのひどい泥水だ。まるで災害級の大雨、大増水で発生するようなひどい泥水である。

上流から泥水が流れ示すことは、河床低下に伴って、落部川のあちこちで河岸が崩壊しているということだ。河川管理者が、まず最初にやるべきことは、「ひどい泥水が発生する起因」と「流木が発生する原因」を検証して改善することであろう。その上で、河畔林の伐採計画に取り組むというのならまだしも、場当たり的に河畔林伐採の事業を進めるだけでは、このような被災は繰り返し続くことになる。

河川管理者は、このひどい泥に染まった沿岸一帯と、落部漁港に流れ込んだ大量の流木をよく見て、しっかり考えていただきたい。