活動報告 : 北海道新幹線

新幹線トンネル工事の排水問題。その3

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、これまで「濁水に含まれた有害物質は、完全に処理をした上で十分に配慮して排水する」と言ってきた。ところが、記事(その2)のように、放流水槽での不適切な排水どころか、それとは別に「未処理のまま、排水をする」排水管を備えていたことが新たに発覚したのである。

「2本の送水管(白い管)で、PAC処理して放流水槽を経由し、川に排水する」これが、表向きのもの。しかし、その手前の藪の中に、樹脂製のホースと鋼鉄管が別に引かれていたのである。

施工責任者は、「2つの沈澱池が満水になったときに、処理することが出来ないので、そのまま川に排水するために設置した」と言う。ヒ素やセレンなどの有害重金属が混入した濁水を、未処理のまま川に流す行為は犯罪に等しい。追及すると、担当者は慌てて、「まだ流していない…流していない、沈澱池も満水になったことはない…」と、言葉に窮したのである。

排水した先には浄水場があり、直径4m✕深さ6mの井戸から浸透水を汲み上げている。この水を八雲町黒岩地区の住民が、水道水として利用している。

工事敷地内建屋の裏で、沈澱池に溜めきれない濁水を未処理のままルコツ川に排水する送水管口が見える。

排水する場所と浄水場の位置関係を下の写真で示す。

浄水場の脇にある排水口よりも上流から、川は濁っている。赤円はルコツ川からの堆積物。

正規の排水管口よりも、上流から白濁していることが分かる。工事現場があるルコツ川と濁りの無いロコツ川との合流地点では、堆積物が溜まっている。撮影時には、「何故、こんなことが起きているのか?」不思議だったのだが、トンネル工事現場内に「隠し排水管」があった訳である。これまで真摯に対応を行ってきた独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構のルコツ工区担当所長が、この「隠し排水管」で、未処理の排水行為を把握していたとは、よもや信じられない。信じたくはない。

何より、工事を請負う施工業者は、「沈澱池が小さくて溜めきれない」と自らが証明したのだ。「現状の沈澱池の規模では処理しきれない」と言っているのだ。この「隠し排水管」は、発覚した直後に撤去している。では、沈澱池が越水した場合、ヒ素とセレンが含まれる濁水はどうなるのか?更に「放流水槽」に溜まる処理しきれない沈殿物は、あろうことか撹拌して排水しているのである。今の沈殿池規模のままでは、こんな恐ろしい愚行が何年も続くことになる。鉄道運輸機構は、沈殿物をあえて撹拌して排水するような誤魔化しを即刻に中止し、容量不足の沈澱池の拡大増設と、処理施設の能力不足を改善するようにしていただきたい。

北海道新幹線トンネル工事で掘削された有害重金属や排水について、道民の関心は非常に大きい。これまで、私たちのような団体や町民、議員、新聞記者、様々な立場の人たちが現場へ視察に訪れている。誰もが、完璧な処理を行っていると信じてきたのである。そのすべての人々を欺いたのである。道民を、北海道を甚だしく舐めている。

このルコツ工区ひとつでも、このような重大な問題が起きる。北海道新幹線の長大なトンネルの掘削は、トンネル本坑距離の約5km毎に横坑を掘って、本坑に接続して掘り進めている。この横坑だけでも、1km前後もある規模の大きなものなので、有害重金属含有の掘削土は、横坑の分量と本坑の分量を合算した膨大な量になる。例えば、小樽-札幌間の札樽トンネル(約26km)であれば、工区は6工区になり、本坑だけではなく横坑の分量も含めた有害重金属掘削土が産出される。危険な土砂が発生することを事前に分かっていながら、処分の方法も処分場も決まらない。曖昧なままに着手された北海道新幹線札幌延伸工事は、大規模な環境破壊を孕んだ事業であることが分かる。

既に着手された横坑も、これから始まる全ての工区で、有害な重金属を含んだ掘削土が、どのように扱われ処分されるのか?ルコツ工区で露呈した隠し排水管が何を示唆しているのか?道民の皆さんの関心こそが、「北海道の豊かな自然や資源を壊さない新幹線にする」ことが出来るのです。

 

 

新幹線トンネル工事の排水問題。その2

2017年11月6日の当会のHP記事に対して、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者から、PAC処理した排水を一時的に溜めて、川に放流する水槽なので、「沈殿槽」ではなく、「放流水槽」であること、「有害重金属含有沈澱物」は、含まれていないと連絡があった。その説明がされると言うので、9日にルコツ工区の現場へ赴いた。

しかし、「PAC処理」と「放流水槽」について改めて説明を受けて、トンネル掘削土による関連処理能力が、こんなにも不十分だったことに愕然とする。

トンネルで掘削した有害重金属(ヒ素・セレン)を含んだ土は、行き場が無く山積みにされている。これは、その土に浸透した水を集める沈澱池。ここに溜められた濁水は、PAC処理施設に送られる。
工事敷地内にはもう一つの沈澱池がある。トンネル内からの出水や、トンネル内で作業する車両に付着した粉塵など、洗ったり降雨で発生した濁水を集める。これらの濁水も、PAC処理施設(奥の建物)へ送られる。
2つの沈澱池から送られた濁水は、ここで有機系凝集剤(PAC)を加えて懸濁物を凝集させて沈澱させる。処理中の水槽内は、泥が凝集されて塊になっている。
PACで凝集処理された水は、この装置に送り出され上水だけが選り分けられる。
沈澱物と水とが選り分けられた上水は、一旦、この水槽に集められ、吸着マットで油性分を取り除いてから、PAC処理施設の外にある「放流水槽」に排水される。
これが「放流水槽」。PAC処理施設と繋がっている緑色の管から水槽を経て、2本の白い管で川に放流する。この白い送水管は、ルコツ川の下流にある浄水場へ伸びている。その浄水場の脇で、川に排水される。
浄水場と排水口。浄水場は地下水を汲み上げて、地区住民の水道水源となっている。

つまり、イラストで解説すれば、このようになる。

左側の緑色の管からPAC処理された水がこの水槽に入り、右側の2本の排水管で川に排水される。だから「放流水槽」だと言う。この「入って、出る」管の位置がおかしいと気づきましたか?綺麗な上水を流すには、2本の排水管は、緑の管口よりも上になくてはならない。

「放流水槽」とは名ばかりで、PAC処理しても、これだけの沈澱物が存在し、沈澱機能を有した水槽は、「沈澱槽」と標記しても間違いではない。何より驚いたことに、水中ポンプを装着した2本の排水管で、底に溜まった沈殿物ごと吸い上げて排水していたことである。この沈殿物について、当会が「有害重金属含有沈殿物」と記事で標記したことに対して、鉄道運輸機構の担当者は、「PAC処理後の沈澱物だから問題は無い」と説明したが、その沈殿物に有害性の有無については調べられておらず、「これから検査に出す」と言う。排水は既に6か月以上も続けていたというのにである。

実際の排水。白濁していたのは、放流水槽の沈澱物を吸い上げて排水していた訳だ。撮影・2017年11月4日

北海道新幹線トンネル工事での濁水処理は、現在、稼働させている処理施設では規模が小さく、沈澱物を取り除くことが出来ないことが露呈した。「処理をしている」という事実だけが免罪符になって、事業者自身「何を排水しているのか」、よくわかっていないのかも知れない。

ヒ素は、岩などの固体に付着したものであれば、PAC処理で除去が可能だが、水に溶融した状態のヒ素は、PAC処理では除去できないとの大学教授の指摘がある。PAC処理後の水、つまり「放流水槽」に沈澱した物質がある以上、処理を免れたヒ素・セレンが含まれたままになっている疑いは濃厚にある。このままでは、地方の小さな町の人が、どんな水を飲もうが、環境が悪化しようが、魚が汚染されようが、所詮は他人ごと。そういう意識しか無いと思わざるを得ないこの現状に、事業担当者、現場責任者も真摯に受け止め、早急の対策と改善を行っていただきたい。

 

 

鉄道運輸機構の嘘。濁水処理は、見せかけだった。

2017年10月26日、北海道新幹線トンネル工事プラント内の視察で、トンネル掘削で出る有害重金属土を含む排水は、「しっかり、配慮して作業する」と工事責任者の所長から説明を受けていた。しかし、その視察後9日目の今日、信じられない排水が行われていることが明らかになった。

八雲町と長万部町の境界でトンネル工事が進むルコツ工区でも、「ヒ素」や「セレン」などの有害重金属含有の掘削土が、いまだ保管場所が決まらないために、工事現場敷地内に管理され、山積になっている。掘削に伴う出水や雨水によって、この有害重金属は川に流れたり土壌に潜り込む。そこで、沈澱槽で浮遊する有害重金属を沈殿させ、川に流さないように沈澱槽の底に堆積させて、堆積物は厳重に保管処理され「有害重金属が含まれていない上水」を排水する……

ところが、なんと驚くことに、沈澱物が堆積している沈澱槽の底を吸い上げて排水していたのである。少なくとも、この日まで沈澱槽の沈澱物つまり、有害重金属含有沈殿物を川に捨てていたことになる。

白濁した排水は、河床への沈澱が認められた。

黄色円内を見れば、川底に沈澱しているのが分かる。

すぐに排水は絞られたが、こんな事が平然と行われていたとは驚きである。直ちに採水した。

これまで視察の度に、鉄道運輸機構は「排水は十分に配慮して行う」と説明していたが、私たちは騙されていたことになる。

沈殿槽は単なる見せかけであり、上図のように信じられない垂れ流しがされていたのである。この事実は、大変な事態になるだろう。漁業者が懸念しているサケやサクラマス、ホタテなどの水産資源への影響どころか、有害重金属含有掘削土の評価や扱いは、人体への影響の有無を基準にしているが、もはや、それすらも危うい。国土交通省河川局、環境省、北海道は指導するだけではなく、全ての工区の排水について点検しなければならない。

 

札幌市民の皆さん、有害重金属の行方が心配ですね…

新幹線の手稲トンネル予定地 土壌に有害な重金属 対策必要に

出典:北海道新聞web版

2017年6月14日の北海道新聞web版に図入りで報道された記事では、「2030年度開業予定の北海道新幹線札幌延伸の工事で、手稲トンネル(小樽市―札幌市手稲区、全長18・8キロ)予定地の土壌に有害な重金属が含まれ、一部で通常の掘削土と別の処分が必要になる可能性があることが分かった。同トンネルは17年度に着工予定で、建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構の北海道新幹線建設局(札幌)は、地元の札幌市と協力して管理候補地を探すなど対応を急ぐ方針だ。同建設局によると、08年度から複数回行った事前ボーリング調査で、岩盤・土壌から自然由来のヒ素や鉛、水銀などが検出されたケースがあった。普通の残土と分けて処理する「要対策土」が出る公算が大きいとみられる。」とされている。

この工事説明会が、本日、8月23日から9月初旬にかけて、開催されることになった。

             出典:北海道新聞(読者提供)

 

この説明会で、札幌市民の人たちを前にして、トンネル工事で発生する掘削土に含まれる有害重金属の種類や量、処理方法(有害重金属残土の捨て場とその保管方法や汚染流出などの発生時の対応方法)、及び、有害重金属が含有される濁水処理方法などについて、どのようなことが明らかにされて、どのような対策が説明されるのか? また、濁水処理では影響が懸念される発がん性・毒性のある有機系凝集剤(PAC)が使用されるのか?どのような凝集剤が使用されるのか? こうした対策は人への影響を基準にしたものであり、北海道の基幹産業を支えている水産資源(生物)への「影響のあり・なし」については知見も乏しく、安全が確認されていないことばかりである。(過去の記事を参照ください)

機構は、説明会で「住民の質問に答える」と言っています。参加して一人でも多くの関心を示すことが、札幌の、北海道の暮らしと資源を護ることに繋がるのです。

 

森町民ら反発…重金属土処分候補地の説明会を行った鉄道・運輸機構

新幹線トンネル残土処理について、2017年2月22日に関係者限定(農業・漁業者)にした非公開での説明会が開かれた。翌23日の北海道新聞朝刊(道南版)で報道された。

明らかになったのは、八雲町立岩トンネル工事での重金属土の処分候補地が森町の浄水場に隣接し、井戸から地下水を汲み上げ水道水を供給している地区があることから森町住民や農業者が、重金属土の受け入れに断固反対していることなど。また研究者による自然由来の重金属について講演会が開催されたという。この講演がどの様な話だったのかは現時点ではわからないが、これまで事業者や研究者側は、自然由来のという言葉を巧みに利用し、あたかも危険が無いように説明している。しかし、自然由来であっても健康被害への区別の理由がないことから環境省は平成22年に土壌汚染対策法を改正している。

旧法においては、「土壌汚染」は、環境基本法(平成5年法律第91 号)第2条第3項に規定する、人の活動に伴って生ずる土壌の汚染に限定されるものであり、自然的原因により有害物質が含まれる汚染された土壌をその対象としていなかったところである。しかしながら、法第4章において、汚染土壌(法第16 条第1項の汚染土壌をいう。以下同じ。)の搬出及び運搬並びに処理に関する規制が創設されたこと及びかかる規制を及ぼす上で、健康被害の防止の観点からは自然的原因により有害物質が含まれる汚染された土壌をそれ以外の汚染された土壌と区別する理由がないことから、同章の規制を適用するため、自然的原因により有害物質が含まれて汚染された土壌を法の対象とすることとする。(平成22年3月5日付け環境省水・大気環境局長通知「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」から抜粋)

 

 

 

 

 

「有害重金属土の野ざらし」改善の一歩

北海道新幹線トンネル工事による八雲町立岩の工事現場視察(2016年7月12日)で、有害重金属を含む掘削土の不適切な処理について、事業者(鉄道・運輸機構)へ改善を要望。その後、11月23日に、改善状況の現地説明会が行われ、住民や議員、団体が参加した。

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2016-12-06・北海道新幹線・立岩トンネル工事ヤー
トンネル発生土仮置場:遮水シートを敷いた上に、これまで野ざらしだった重金属土(左の黒枠内)を移す。濁水は沈殿池に集められPAC処理した後、国道脇のU字溝に排水される。ピンク:幅50cm×深30cmの土側溝。赤:濁水の送水パイプ。

土側溝及び重金属土仮置き場には厚さ1.5mmの遮水シート(低密度ポリエチレンシート)が敷き詰められている。土嚢の右手が仮置き場。ここに重金属土が積まれる。

これまで野ざらしに山積みされた有害重金属を含む掘削土と、これから発生する掘削土(重金属含有土)は、隣接する農地を買収し、遮水シートを敷いた上に積載するという仮置き場を作った。保管される重金属土の周りは素掘りであるが、遮水シートが敷かれ、ヤード外周の雨水対策にはU字型側溝が設けられた。沈澱池の新設、濁水処理施設を増設するなど、土壌浸透防止や排水への対策に大幅な改善が見られた。

しかし、これも1年間の保管であり、今後8年間続くトンネル掘削で出土する保管については何も決まっていない。また、有害重金属の含有有無のボーリング調査が100m毎であることの不安の声や、U字溝が小さくて近年の降雨量に対応できないという懸念の声も上がった。図面には無いが、汚染土による拡散を監視するべき観測井は、6カ所に設置すると明言しているが、地下水の浸食を防ぐ遮水壁は設置しないと言う。そして濁水処理に添加している薬品の有機凝集剤PAC(神経毒)は、増設により大量使用される懸念も否めない。ミジンコの遊泳阻害を起こし、魚のエラに吸着するこの薬品使用は、水産資源へ、食物連鎖へ、と多大な影響を及ぼすだろう。早急に安全な天然素材の凝集剤への切り替えの要望と共に、排水先となる川の上下流域でのモニタリングを申し入れた。

これまで着工当初、濁水の垂れ流しや重金属土の放置について鉄道・運輸機構八雲鉄道建設所の所長(前任)への改善申し入れは聞き入れられず反故にされてきた。しかし、新しく着任した所長の真摯な対応で最低限は必要な改善の兆しが、ようやく一歩見られた。国策だろうが何であろうが、聞く側の人格、心構えひとつで変えることは出来るということだ。そして、訴える側も諦めずに相手に理解して貰えるまで訴え続けることだ。北海道新幹線の札幌延伸工事は、まだ始まったばかりで未知であり何が起こるか分からない。問題が生じてからでは遅い。「何が問題で何がいけないのか」、住民も事業者も学んで行かなければならない。

 

北海道新聞(道南版・2016年11月25日付)

2016-11-25・北海道新聞・立岩トンネル工事・赤線

 

報道(北海道新幹線トンネル工事による掘削土問題)

北海道新幹線、函館→札幌間の延伸工事によるトンネル掘削中の八雲町立岩。フッ素、鉛、セレンなどの有害重金属含有の掘削土の扱いに関する記事。北海道新聞(2016年11月13日付)

● 2016-11-13・北海道新聞・書き込み

八雲町のみならずトンネル延伸地域は、掘削土による土壌汚染や地下水(井戸水)汚染、水産資源への影響など、将来に禍根を残さぬ処理対応に応えるよう、事業者に対して要望しなければならない。事業者の説明だけで判断せず、現場で行なわれている処理実態を確かめなければならない。適正な処理にはお金がかかるが、事業者に予算はない。無関心でいれば、垂れ流しとなる。あなたの町は、大丈夫ですか?

北海道新幹線トンネル工事で出る有害重金属掘削土の処理実態。2016年7月12日取材。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行っている北海道新幹線の延伸トンネル工事(八雲町立岩)では、掘り出した有害重金属を含む土を農家の地盤材としての有効利用を推奨し、サケの遡上する河川流域への持ち込みを進めていたが、土壌浸透による「地下水汚染」、「河川水汚染」、「沿岸海域汚染」を懸念した住民や漁業関係者たちの声により、工事現場の敷地から外へ持ち出せなくなった。

現在、敷地内には行き場を失った有害重金属含有の掘削土が、どんどん積み上げられている。2016年7月12日、機構の立ち会いの元、工事現場を視察取材した。

立岩トンネル工事現場(八雲町)
左奥がトンネル抗口。道路の左手には濁水処理施設(薬品・PAC凝集剤「神経毒」を使用)がある。その横に濁水再処理用の沈澱池が増設されている。右手の茶色の盛土が無害な掘削土。灰色が有害重金属を含有する掘削土である。立岩トンネル工事現場(八雲町)撮影:2016年7月12日
山積みされ続ける有害重金属を含有する掘削土。撮影:2016年7月12日
敷地に山積みのまま、持ち出せない重金属土。撮影:2016年7月12日
有害重金属含有の掘削土は工事現場敷地所狭しと積み上げられ続けている。撮影:2016年7月12日
重金属土は、敷地内にどんどん溜まり続けている。撮影:2016年7月12日
排水溝にはゴム製の遮水シートが敷かれたが、有害重金属含有の掘削土は防水シートの上にどんどん積み上げられている 撮影:2016年7月12日
重金属が溶出した雨水を流す側溝は、取材前は素掘りだったが、ゴム製の遮水シートが被されていた。この側溝に集まった浸透水は、雨水沈澱池に送られる。撮影:2016年7月12日
こちらは降雨時に敷地内で発生する濁水を処理する雨水沈澱池。撮影:2016年7月12日
雨水沈澱池。(敷地内の濁水をろ過する) 5つの区画に分けて順にろ過し、上澄みが排水されるようになっている。撮影:2016年7月12日

ろ過する役割であるヤシ繊維フィルターは、泥で目詰まりしたまま放置されていた。

2016-07-12・立岩トンネル工事現場敷地内の雨水沈
5つに仕切られた溜めますは、それぞれで濁水をろ過するためのバイオログフィルター(ヤシの繊維)で仕切ってある。バイオログフィルターは繊維が細かく目詰まりしやすく、すぐにろ過が出来なくなる。常時の監視と迅速な交換が必要なのだが、機構は、「交換した記憶がない」と言う。したがって濁水はろ過されることなく排水されていたということだ。撮影:2016年7月12日
雨水沈澱池周りには濁水が溢れ出したような痕跡が見られた。
雨水沈澱池周りは、濁水が溢れ出した痕跡が見られた。敷地内の濁水を処理するには沈澱池の規模が小さすぎる。このような所にこそ、予算を投入して万全な対策が必要であることを求めると、機構は「もっともです」と頷くが。沈殿池そのものさえ、機能していないのだから、濁水は無処理のまま、遊楽部川へ流れ出たことになる。撮影:2016年7月12日
有害重金属含有掘削土から雨水で溶出した水は沈殿槽に集められ、ホースで吸い上げて、PAC処理施設へ送られるようになっていた。撮影:2016年7月12日
重金属土から流れ出た濁水を、機能しない雨水沈澱池に流し込むのは、さすがに「まずい」と判断したのか、新たに沈殿槽を設置していた。ヤシのフィルターではろ過は限界。濁水はホースで吸い上げて、PAC処理施設へ送るようにしたという。しかし、これも規模が小さく、溢れ出すことに違いはない。撮影:2016年7月12日
PAC処理施設で濁水処理しきれなかった濁水を再処理するために仮置きする濁水沈澱池を設置した。撮影:2016年7月12日
想定外の敷地内の濁水まで処理する必要になったPAC凝集剤(神経毒)添加処理施設では、処理能力を超えた為、処理しきれなかった濁水を再処理する為の仮置き用の濁水沈澱池を新たに設置していた。撮影:2016年7月12日

機構は、立岩トンネル工事で発生する濁水処理の方法は、①トンネル坑内で発生する濁水は、PAC処理施設で処理後に遊楽部川へ排水する。②工事現場の敷地内で発生した濁水は、「雨水沈澱池」に集めて、バイオログフィルター(ヤシの繊維フィルター)で、濁水をろ過してから遊楽部川へ排水するという説明をしていた。

ところが、実際に取材で明らかに判ったことは、敷地内の足元はシルト状の泥が堆積し、乾土は埃りになって舞っていた。機構も交換した覚えがないという沈殿池のバイオログフィルターは、目詰まりして機能しておらず、それどころか「雨水沈殿池」は規模が小さすぎて、降雨の度に、「自ら水没」していたということだ。

重金属土から流出した濁水は、側溝から溢れ出した。急ごしらえの鋼鉄製の沈澱槽からも溢れ出した。濁水は未処理のまま、遊楽部川へ垂れ流されていた。そこで機構は、ポンプで、雨水沈澱池や鋼鉄製の沈澱槽からシルト状の泥を吸い上げてPAC凝集剤(神経毒)添加処理施設に送るようにしたと言う。しかし、PAC処理施設は敷地内の濁水や泥の処理を想定したものではない。現に、川に濁水が見られたときの排水は、雨水沈澱池からの排水だけで、PAC処理施設からの排水は無かった。一旦は施設に送り込んだものの、処理能力を超え、雨水沈澱池に戻されて排水していたということだ。そもそも敷地内に重金属土を仮置きすることなど想定していないから、今の事態に甘んじたまま、遊楽部川へ排水され続けていたことになる。

2016-03-17・加工済・北海道新幹線立岩トンネル工事現場からの濁水・KAZ_0057
このような濁水が排水されても、モニタリングはされていない。誰からも指摘を受けなければ、重金属土の濁水は、無処理のまま垂れ流しされ続ける。撮影:2016年3月17日
降雨時に何度も濃い濁り水が排水されていた 撮影:2016年7月2日
降雨の度に、酷く濁った水が遊楽部川へ排水されていた。 撮影:2016年7月2日

機構は年に2回、プラント施設でのPAC凝集剤添加処理後の排水を検査するとしている。これまで有害重金属が含まれるような排水は無かったと説明しているが、雨水沈澱池から排水される濁水についてはモニタリングしていない。

取材時に、雨水沈澱池に残っている濁水と、堆積した泥の成分について問い合わせたところ、濁水と堆積泥の成分が公表された。尚、当会が、2016年6月26日に下記の地点で採取した濁水の分析データも以下に添える。

●モザイク●2016-06-26・写真付き・北海道新幹線
雨水沈澱池からの排水される濁水を採取。撮影:2016年6月26日
立岩トンネル工事現場内の雨水沈澱池の成分表。上欄は濁水1リットルあたりの含有重量、下欄は雨水沈澱池に堆積した泥成分について1kgあたりの含有量を表示している。
立岩トンネル工事現場内の雨水沈澱池の成分表。上欄は濁水1リットルあたりの含有重量、下欄は雨水沈澱池に堆積した泥成分について1kgあたりの含有量を表示。(採水年月日が?になっているのは、採水した日を訪ねても機構が現時点で回答してない為)

機構は、有害重金属はPAC処理水からは検出されないとしていたが、各成分表から雨水沈澱池の濁水及び沈澱土質には有害重金属が含有していることが判明した。工事現場の敷地内に積み上げられているトンネル掘削土から、有害重金属が流出(溶出)していることは明らかである。

機構は、PAC処理施設に送っていた沈澱槽・池の濁水及び沈澱土質をモニタリング(分析)さえしていれば、検出した有害重金属の状況を把握でき、適切な対処が出来た筈である。頻繁に濁水が流れているというのに、年2回の採取で尚且つ、濁水の発生していない条件下で、PAC処理施設だけの排水を分析していた事が、いかに不備であったのか。機構の不適切な対応が浮き彫りになった。

当会は、プラントの設備計画当時から、トンネルで異常出水した際、この施設では規模が小さ過ぎるので、もっと大きな沈澱池を設けて対応するように申し入れていた。これに対して機構は、「国の基準に準じた施設であり、これ以上の規模の施設は、国の基準が不適切だということになり、国を説得することは出来ない」と回答している。しかし、今の現状を鑑みて、再度確認すると、「戸田建設が言ったことだ」と言い、工事請負業者JV責任者の戸田建設による根拠のない説明だと覆した。おかしな話である。計画当初、戸田建設は「機構の指導があれば対応できる」と言っていたのだから。

過日、この当会HPの新幹線トンネル工事関連ニュースをご覧になられた読者より、ご意見や資料を頂戴しましたので、了解のもと、一部記載します。

「記事に大変衝撃を受けました。北海道新幹線で皆様盛り上がっているように見えた裏ではこのような問題が起こっていたとは大変衝撃的でした」

「新幹線村山トンネル工区に於いても掘削された有害重金属を試験盛り土形成し下部からの溶出状況を確認している模様です(機構発注⇒コンサル受注;北大主導です)・羊蹄山・昆布・手稲等新幹線トンネルの殆どが有害重金属が含有され処分地(管理地)が決まっていないようです。(自治体に有害重金属が含むとも説明していない)」

東北新幹線工事では、八甲田山トンネル工事の際に出土した有害重金属含有の掘削土は、ゴム製の遮水シートを敷いた上に置き、完全管理型の保管施設に保管されているという。

では何故、北海道では本州と同じ扱いがされないのだろうか…?

防水シートを重ねた上に、土壌浸透防止のマットを敷いているだけである 撮影:2016年5月1日
北海道での重金属土の対策は、防水シートを重ねた上に、土壌浸透防止のマットを敷いているだけである。 撮影:2016年5月1日

新幹線トンネル工事から出る有害重金属土の扱いについて、北海道が委ねる専門家の言い分はこうだ。「土壌浸透させれば土中で土壌成分に有害重金属が吸着するので地下水や河川水への影響はない」…。

行政も道民も事業主体者、建設会社も、立場は違えど皆同じ「北海道に住む人」である筈。予算に相まった都合のよいことしか言えない(言わさない)専門家が何だと言うのだ。専門家の知見だの、国が決めたのどうのと言う前に、現場で果たせる責任は、自身の意識の中にあることだと問いかけよ。利権のない道民も、せめて自分の暮らす地域で起きているトンネル工事に不安や問題を感じたら、必要なことは、声を上げて意見を伝えるべき。北海道の大地に孔を開け膿を出したまま目を瞑っていては、己に、次代に、「しっぺ返し」を被る。侮ってはいけない。

北海道新幹線 最長トンネルさらに長く 工事計画変更

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は22日、2030年度完成を目指す北海道新幹線新函館北斗―札幌間の工事計画を一部変更すると発表した。国内最長の陸上トンネルとして工事中の渡島トンネル(北斗市―渡島管内八雲町)は村山トンネル(北斗市)と一体化され、全長32・7キロの長大トンネルとなる。地上駅で計画されていた倶知安駅(後志管内倶知安町)は地元の要望を受けて高架駅に変更する。

村山トンネルと渡島トンネルの間(約0・9キロ)は当初、橋と高架橋で結ぶ予定だった。しかし、坑口の地質がもろいことが分かり、線路の勾配を変更して両トンネルを1本につなぐこととした。渡島トンネルは、現在国内最長の東北新幹線八甲田トンネル(青森県)を15メートル上回る長さで計画されていたが、完成後は八甲田トンネルより6・2キロ長くなる。また後志管内ニセコ町と倶知安町にまたがる羊蹄トンネル(9・8キロ)は、地表面近くに位置を変更した。地下水脈を調べた結果、当初計画だと、農業用水の水源に影響が出る可能性が出てきたためだ。

 

「トンネル掘削土に有害重金属が含まれている」…町民に広く知れ渡る

八雲町の立岩トンネル工事現場・撮影:2016年5月23日
八雲町の立岩トンネル工事現場・撮影:2016年5月23日
120mほど掘り進んだと言われる立岩トンネル。酪農の町、八雲町の顔でもある牧場を分断して建設が進められている。撮影:2016年05月23日
120mほど掘り進んだと言われる立岩トンネル。近年、「八雲牛」としてブランド化に熱心な八雲町。放牧された牛たちの前を牧場を分断して掘削は進む。撮影:2016年5月23日

北海道新幹線・函館↔札幌間の立岩工区(八雲町)で、トンネル掘削から出る有害重金属を含む土砂の扱いについて、新しい事実が出てきた。

3年前、独法・鉄道建設運輸施設整備支援機構(以後、機構)は、トンネル工事の掘削土の有効利用を八雲町に働きかけていたが、その際、機構は八雲町に「有害重金属が含まれている」ことを知らせていなかった。そこで、八雲町は、掘削土の受入先を町の広報誌で募集し、数件の応募を得た。

有害重金属を含むという記載はない。むき出しておくのではなく、地中に埋め込み、見えないようにすることが指示されている。八雲町広報誌「やくも」2013年7月号
有害重金属を含むという記載はない。むき出しておくのではなく、地中に埋め込み、見えないようにすることが指示されている。八雲町広報誌「やくも」2013年7月号

ところが、今年(2016年)の3月15日に開催された町民説明会で、機構は、掘削土に「自然由来の環境基準を超える有害重金属が含まれている」ことを明らかにしたのである。掘削土の受入先には、町が誇る自然も資源も豊富な遊楽部川沿いであることも明らかにした。

機構は、「遮水シート無しで敷地に盛土しても、有害重金属は浸透途中で土壌に吸着されて、環境基準値以下にまで希釈され、地下水へ排出されるので安全ですよ」と説明したのである。この発言は、有害重金属であっても自然界にもともと存在する「自然由来」のものなので、あたかも何の問題もないかのように判断を錯誤させる巧みな言い回しを使っていることに、機構への不誠実さ、不信感を否めない。

判断を誤ってはいけない。

誤魔化されてはいけない。

騙されてはいけない。

「有害重金属」そのもの以外の何物でもないのだ。

町民説明会後、井戸水への影響を心配する住民の声や、水産業への影響を懸念する漁業者からの声が上がり、「トンネル掘削土に有害重金属が含まれている」ことが、町民に広く知れ渡ることになった。

機構は、これまで有害重金属を含む掘削土は、遮水シートを敷き詰めた管理型置き場をつくり、そこに盛土し、常に浸透水をモニタリングしながら、適切に対応・管理していくと説明していたのだが、管理型置き場の話は、いつの間にか消えていた。いや、この話はもともと理想理念であり、現実には無かったかのようだ。はなから有害重金属の置き場を、どこにも造っていなかった機構は、町民を騙すことに失敗し、掘削土を持ち出すことが出来なくなってしまった。その結果、写真のように立岩トンネル工事現場の敷地内にどんどん山積みせざるを得なくなっている。

持ち出すこともできず、積み上げ続けられる有害重金属含有の掘削土:撮影:2016年5月23日
工事現場から持ち出すことも出来ず、積み上げ続けられる有害重金属含有の掘削土・撮影:2016年5月23日

有害重金属「フッ素」や「鉛」を含む掘削土から、土壌浸透しないように、「遮水シート」ではなく「防水シート」を敷いていると説明しているが、その実態は、呆れたものだ。

防水シートとは化繊の織物だ。かつ、すき間だらけに置いただけのものだ。有害重金属土壌浸透ダダ漏れだろう。横に流れた水は溝から土壌浸透するし、溢れ出したら、牧草地を汚染する。呆れるばかりだ。
防水シートとは化繊の織物で、すき間だらけのシートであり、これでは有害重金属は、土壌浸透し、地下水を汚染する。牧草地は汚染する一方である。撮影:2016年5月29日
有害重金属含有の掘削土のずさんさが見える。こんな管理をしていたのでは、有害重金属が水に溶出、土壌汚染、さらには地下水汚染へと広がるばかりだ。
いかに新幹線トンネル工事の掘削土処理のずさんさが判る。撮影:2016年5月29日
有害重金属含有の掘削土のずさんな管理をよく見ていただきたい。遮水シートも防水シートもないところに置いている。
有害重金属含有の掘削土のずさんな管理をよく見ていただきたい。遮水も防水シートもない。「適正な管理をします」と言って、見えなければ、こんなずさんな管理しかしない訳だ。撮影:2016年5月29日

土壌汚染、地下水汚染、河川水汚染、沿岸海域汚染へと広がっていき、その影響はとめどもなく大きなものになるだろう。当初の説明通りに、管理型の有害重金属置き場を設置して、次の世代に対して禍根を残さないよう、機構は責任を持って管理と対策をするべきだ。

風の強い日に現場を見て、ぞっとした。ここまで意識が欠けているのかと怒りすら感じる。八雲町の基幹産業である酪農業への配慮すらも微塵もない。

有害重金属が風に煽られて砂塵となって牧草地に降り注がれている。
有害重金属が風に煽られ砂塵となって牧草地にばらまかれる。撮影:2016年5月28日
有害重金属の砂塵がばらまかれる脇の牧草地で牧草を食む乳牛。機構さん、乳牛たちへの影響はないの…?
有害重金属の砂塵がばらまかれる牧草地で牧草を食む乳牛。 撮影:2016年5月28日

新函館農業協同組合八雲基幹支店はこうした事実は知っているのだろうか?機構と各団体とは協議しているから大丈夫という八雲町役場の立場だが、機構は都合の悪い真実は話さない。己の目で、現場を確認するしかないのだ。

有害重金属の粉塵が国道277号線にばらまかれ、汚染が拡大するばかりとなっている。あまりにもずさんな工事現場だ。
有害重金属を含んだ粉塵は、国道277号線にも飛散している。通行車は、窓を開けない方が賢明だ。

機構も、建設会社も有害重金属の扱いの意識が薄く、目に余るずさんな工事現場である。

立岩トンネル工事現場に掲げられた看板。撮影:2016年5月1日

工事施工者:戸田建設㈱が、現場代理を担っている。

機構は、新幹線は国策だから北海道の田舎者なんて、適当にあしらっておけば良いんだとでも思っていたのだろうか?国の天下り企業が、これ程ずさんな計画しか手がないまま、ひたすらトンネルを掘っている様が、滑稽に見えてくる。

独法・鉄道建設運輸施設整備支援機構は、北海道に新幹線を延伸させることに、闇雲に猛進する前に、この地で暮らす北海道民も、食や観光を支える資源の恩恵を受けている、その北海道の自然環境も大事な財産であることを忘れてはならない。これこそに損失を招きかねない事態を及ぼせば、新幹線を「経済の活性化」などと盛り上がる北海道を欺くことになる。さぁ、どんどん掘って、どんどん溜まるこの残土、一体、どこへどのようにして管理するのか?私たちは、真実のみが知りたい。

「函館↔札幌間トンネル掘削土の処理方法の危うさ」    サケ・サクラマスの母川回帰に影響はないのか…?

2016年3月26日に華々しく新幹線が北海道へ上陸。ただ華々しかったのは、開業日だけ。それでも乗車率は61%だった。現在、平日は最低で17%、開業から16日間の平均は27%。この先、年間赤字が約48億円と見込まれ乍ら、函館から札幌まで7割以上がトンネルという「もぐら新幹線」工事が始まっている。

問題なのは、北海道の山々を掘り起こし、土中で眠る有害重金属を放出させた後の処理の危うさである。八雲町立岩トンネル工事ではフッ素・鉛が含まれる掘削土が工事現場に山積みされ、どこか?へ運び出されている。

2016-04-07・加工済・立岩トンネル掘削工事入口・KAZ_0078
八雲町・立岩トンネル工事現場
2016-04-07・加工済・北海道新幹線・立岩トンネル工事現場・右の灰色の盛土がフッ素含む掘削土・KAZ_0077
右の灰色の盛土がトンネル内から掘り出された”自然由来の”フッ素・鉛など有害重金属が含まれるトンネル掘削土。

トンネル工事ではフッ素・鉛・セレンなどの有害重金属を含む掘削土が大量に排出される。この処理について、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構に説明を求めると、「遮水シートを敷いた管理型保管施設で浸透水を確認しながら適切に管理していく」と回答していた。ところが、この掘削土を、地元農家へ土地の地盤材への利用を勧めて募っていたことが発覚した。(住民説明会・2016年3月15日)しかも野生サケが遡上する遊楽部川に隣接する敷地に保管することが決まり、一部でに投棄が始まった。八雲町は酪農と漁業が主幹産業である。

2016-03-15・北海道新幹線・立岩トンネル説明資料
立岩トンネル工区の有害重金属が含まれる地層図。2016年3月15日・八雲町住民説明会で配布された資料(提供・独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構)

機構は、「”自然由来の”有害重金属だから、遮水シート無しでも土壌に浸透させて吸着させるので、敷地から外へ流れ出しても環境基準内に収まるから影響は無いと考えている」と説明している。

北海道の水産業はサケ・サクラマス漁に支えられている。サケ・サクラマスは、母川回帰の習性があり、生まれた川に戻ってくる。この習性が北海道の水産業を支えている。母なる川の水のニオイを嗅ぎ分ける能力を持っているからだ。その能力をつかさどる器官が嗅細胞だ。北大水産学部の時代からサケの母川回帰の習性に着目し、ニオイを感知する嗅細胞の研究に取り組まれてきた北海道大学・上田宏特任教授は、重金属の銅がサケの嗅細胞数を減少させると報告している(2006年)。フッ素、鉛、セレン…その他の有害重金属ではどうなのだろうか。ところが、どのように影響を与えるのかについては現段階では誰も調べていないことが分かった。これらの有害重金属が嗅細胞に影響を与え、母川回帰の能力が失われるようなことがあれば、北海道の水産業は大打撃を被る。

機構の行為は大問題を孕んでいるのだ。

まさか、有害重金属を遮水シート無しで投棄するようなことなど誰も想定していなかっただろう。トンネル工事で発生する有害重金属土について機構は、土壌汚染対策法の規制外と説明し、自主的に対策をしているとの立場だ。(2016年4月5日)

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構からの回答

有害重金属が含まれるトンネル掘削土は規制の対象外ということが露見した。また、フッ素・鉛・セレンなどの有害重金属が含まれた濁水はPAC(神経毒を含む)で添加処理され、処理後の水は遊楽部川へ放流されている。

2016-03-27・加工済・濁水処理水の放水口・立岩トンネル工事現場・KAZ_0283
トンネル内で発生したフッ素・鉛・セレンなどの有害重金属が含まれた濁水はPACによって濁水処理されて、遊楽部川へ流されている。
2016-03-27・加工済・濁水処理水の放水口・立岩トンネル工事現場・KAZ_0287
フッ素や鉛が含まれ、白濁し、泡立っている。
2016-03-27・加工済・PAC濁水処理水は遊楽部川へ排水される・KAZ_0327
フッ素や鉛の濁水がPACで処理された後、サケ・サクラマスなどの母川回帰する魚が棲む川へ放出されている。ホタテのラーバへの影響も未確認のままの放出だ。
2016-03-27・加工済・濁水処理水の放水口・立岩トンネル工事現場・KAZ_0345
フッ素・鉛の有害重金属が含まれる濁水処理後の水は灰色をしている。フッ素や鉛の影響が母川回帰へ影響を与えたらどうなるのだろうか。また、ホタテのラーバ(幼生)への影響についても機構は答えない。重大な危険性を孕んでいるのに不誠実な対応がされている。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構がトンネル工事を始めてから、北海道の自然、資源や暮らしに危機と不安が膨らむ。函館から札幌まで現在、19ものトンネルが掘削中である。

八雲町では、この掘削土を投棄する周辺で、井戸水を利用している農家がある。ところが、機構はそれを把握していなかった。「井戸水を使用している農家に、いつ、どう説明するのか?」と聞くと、「投棄が決まってから知らせる」と言う。 ………あなたの町で行われているトンネル工事による掘削土の処理方法や濁水処理に使用される薬品について、十分な検証と説明を受けていますか?怪しい自然由来と基準内という免罪符つきの有害重金属の汚染を、「環境基準内」という言葉で済ませて大丈夫ですか? (水は?水産資源は?イトウは大丈夫ですか?)重金属含有の残土の保管も、神経毒含有の薬品添加の濁水放出も、環境に影響を与えない対策は出来るのです。それには、事業者任せにしないで、疑問は声にし、正しいことを求める。私たちが関心を示す姿勢こそが大事なのです。

農林水産省、環境省や国土交通省、厚生労働省は、実際の現場での処理の在り方が、こうした機構の自主的な対策、(しかも、ずさんな)でしかないものであることを知っているのだろうか…?新幹線が国策だと言うなら、しっかりと監督・指導をしていただきたい。

 

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