秋サケ不漁は、ロシア側の先獲りが原因…?

サケの不漁は、ロシア側の「先獲り」が原因とする記事で、道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場の卜部浩一研究主幹が、「海水温が高い状態が続いたため、日本に戻るサケがロシアの海域に停滞し、その間にロシア側に漁獲されてしまった」というのである。

出典:2022年1月14日北海道新聞web版の見だし部。

また、赤潮の影響という声も聞く。動きの緩慢なウニやカジカなど沿岸地つきの魚介類、逃げることが出来ない定置網のサケに被害があったが、定置網以外でサケが赤潮の影響で大量に浮いたり、浜に打ち上げられたという話しは無い。太平洋側の漁獲低迷は著しいが、日本海南部は2019年、2020年、2021年と3年連続で漁獲が右肩上がりに伸びている。この違いにこそ着目し、卜部浩一研究主幹に説明していただきたいものだ。

北海道水産林務部の秋サケ漁獲尾数旬報に2021年12月20日までのデータを入れ、グラフ化した。

日本海側せたな町、島牧村、乙部町では2010年から治山ダム・砂防ダムのスリット化を手がけ、広めている。

2010年から日本海南部のダムのスリット化をした河川。出典:北海道水産林務部。地図はGoogle mapを加工。

八雲町水産課は、「日本海南部のせたな町の漁獲向上は、サケ稚魚を海中飼育して放流しているので、その効果ではないか」と言う。しかし、サケ稚魚の放流前の海中飼育は、10年も20年も前から取り組まれている。(成長が早まるために、4年で帰るところ3年で帰るので小ぶりになったという事が話題になったことがあった)サケ稚魚の海中飼育が漁獲向上の効果と言うのであるなら、八雲町をはじめ、全道及び全国に広まっている事だろう。

噴火湾に注ぐ川では、サケの自然産卵が見られていた現場のすべてが、河床に砂の堆積が目立つようになってから、産卵に来るサケがいなくなってしまった。つまり、河床に堆積した砂の影響で、産み落とされたサケの卵が育たなくなり、そこで産卵するサケの子孫が絶えたという事だ。産卵場としての機能が萎え、失われてしまった事が原因だ。サケが産卵していた場所が、どのように変わったのか写真を添える。

かつてはたくさんのサケが産卵していた。
同じ場所の今の状況だ。(撮影:2021年12月10日)。川底の石は泥を被り、石は砂に埋もれ、膨大な量の砂が堆積している。産卵場として機能しないから、ここで産卵するサケはほぼいなくなった。

かつては、上流から下流まで支流を含む川の至る所でサケが産卵していた。サケの遡上に合わせて、北方圏からオオワシ・オジロワシが冬を乗り切るために自然産卵後のサケ(ホッチャレ)を食べに飛来する。ワシたちも川の上流から下流まで、支流を含む至る所で見られた。即ち、ワシが見られるポイントは、サケの産卵場と言う事である。しかし、砂が目立つようになってから、サケもワシもすっかり姿を消してしまった。つまり、産卵場が消滅し、サケの資源が消えたという訳だ。川を上ってくる筈もないサケを、ワシたちは待ち続けている。空腹に耐え、じっと川面を見続ける姿は傷ましいものだ。

オジロワシの成鳥。食べるサケの姿もないのに、ただひたすらサケが来るのをまっている。

川で自然産卵するサケが激減、消滅していると言うのに、サケの漁獲低迷の原因を、川に目を向けずに海に求めていることが実に不可解である。サケは、再生産を「川」で行っているのにだ。

サケの卵が育つ「川の仕組み」が壊れてしまった原因が、河川事業にあり、ダムの影響であることは明白だ。しかし、そこを追求すれば、同じ行政機関の利権構造に亀裂が入りかねない。「他国のせい」「赤潮のせい」「温暖化のせい」…と言って目を背けておけば丸く収まる。昨今は実におかしな科学がまかり通っている。専門家・科学者と自負する人たちは、正しい科学を駆使して、川の持つ再生産の力を蘇らせることに智恵を使い、力を注いでいただきたいものだ。自然の再生産の力を蘇らせ、活性化させることが、今、世界が求めるSDG’sではないのか。

餓死したオジロワシ幼鳥の胃袋からはサケの骨ではなく、カラスの羽が出てきた。ワシたちは餓死寸前だ。自然のサケ資源は、決して人間だけのものでは無い。

 

 

北海道ヒグマ管理計画は、住民の安全よりも研究優先。

北海道環境生活部環境局自然環境課の「北海道ヒグマ管理計画(第2期)」素案に対するパブリックコメントが、2022年1月11日に締め切られた。

この第2期計画でも、これまでの計画を踏襲し、ヒグマの出没情報を得ても、出没抑止対策はしないようになっている。つまり、ヒグマの徘徊を放置して、有害性を判別してから対策する手順なのである。有害性を判別する「時間」が設けられているのだ。

ヒグマが出没しているのに出没を抑止せずに、わざわざ有害性を判別するための「時間」をつくる理由は何だろうか…?実際に「有害性を判別する対応」の事例はこうだ。野幌や真駒内では、ヒグマが今まさに出没しているというのに、出没を放置し、そのヒグマを芳香剤で誘引してビデオ撮影している。更に、DNA分析の為にヒグマを餌でおびき出して体毛採取(ヘア・トラップ)している。それは下記の北海道新聞のyoutube版で確認することができる。


住民の安全をないがしろにして、個体識別や家族構成を調べる目的でヒグマの徘徊を放置しているのである。住民の安全・安心な暮らしを守るために、なぜ、ヒグマ出没の抑止を最優先しないのだろうか…?

「有害性を判別する時間」とは「研究用の時間」、つまり、研究者の為の時間のようだ。しかも、このパブリックコメント募集の計画の素案には、最新のICT技術導入が掲げられており、新たなる研究の為の予算まで組めるようになっている。令和2年度(2020年度)、令和3年度(2021年度)の予算を見ると、人里へのヒグマ出没抑止の為の電気柵の費用や設置費用は無し。0⃣円なのである。予算の全てが研究者の研究費になっているのだ。

また、生息頭数調査においては、餌でおびき出して体毛採取(ヘア・トラップ)によるDNA分析などを駆使し、北海道のヒグマ生息頭数が令和2年度(2020年度)では、11,700頭(95%信頼幅6,600頭~19,300頭)としている。誤差は、なんと12,700頭もある。こんな誤差のある調査に税金を使う必要があるのだろうか…?

「北海道ヒグマ管理計画」の目的は、人とヒグマとのあつれきを低減するため、ヒグマとの緊張感のある共存関係の構築を目指し、科学的かつ計画的な保護管理により、「ヒグマによる人身被害の防止、人里への出没の抑制及び農業被害の軽減」並びに「ヒグマ地域個体群の存続」を図るとある。しかし、道民を護る人身被害防止や人里への出没抑制に効果的な電気柵や設置費用は0円なのに対し、調査研究費は2年間で33,000,000円と膨大な額の道民の税金が使用されている。道民の安心・安全な暮らしよりも研究者のための研究費の方が重要だというのだ。

飼い犬の”しつけ”を考えていただきたい。「やってはいけないこと」は、すぐに「ダメ!」と教えるのが鉄則だ。これを繰り返して学習させる。これが”しつけ”だ。もしも、「ダメ!」と言わずに見逃したら、「やってはいけないこと」が解らず、指示に従わなくなる。”しつけ”は初期に迅速にしなければならないものだ。ヒグマも同様に学習能力・判断力がある。人里に出て来たヒグマに「ダメだ!出てくるな!」と教えずに見逃していれば、出没抑止など出来る筈がない。札幌市東区、野幌、真駒内や簾舞、島牧村や標茶町の事例からも分かる。何度も繰り返し夜に出てきては、明るくなった昼間には姿を消している。やってはいけないことを教えないからに他ならない。

北海道議会、令和3年(2021年9月28日)第3回定例会(本会議)において、丸岩浩二道議の質問に対し、鈴木直道知事は「迅速に対応するための体制を構築する」と述べてはいるが、道のヒグマ担当の環境生活部長は電気柵設置をヒグマ出没抑止対策の「有効な手段」と認めながらも、ヒグマの侵入防止を図る為、「総合対策交付金について、必要な予算の確保や交付対象の拡大などを国に要望してきた」と答弁。ヒグマ出没抑止対策用の電気柵の費用や設置費用は「国の予算でやることであって、北海道がやることではない」としているのは、道理に合わない。

この第2期計画の素案が通れば、今後もヒグマ出没騒ぎは拡大していくばかりで収束することは無い。道民の安心・安全な暮らしは遠のき、ヒグマの出没に脅かされ続けることになる。北海道は、この計画を根本から見直し、研究目的の費用を削除し、研究者のための予算ではなく、道民の生命・財産を護るための予算に組み替え、ヒグマ出没抑止対策に徹した計画に方針転換すべきだ。

そのためには、ヒグマ出没情報を得た時点で、現地へ出向き、出没経路を一刻も早く突き止めて、電気柵で出没経路を封鎖することを目的とした専従のチームを作って対応すべきだろう。山林原野の現場を熟知し、ヒグマの行動を読み取れるハンターを核にして、各振興局の職員と市町村の人員で構成し、ヒグマの捕殺を目的にするのでは無く、出没を抑止することを目的にした専従のチームを立ち上げ、各振興局ごとに配属し、地域の実情に応じた迅速な対応ができる仕組みを構築すべきである。

「北海道ヒグマ管理計画」は、研究者の為の計画ではなく、道民の為の計画であるべきものだ。研究者は独力で研究費用を捻出せよ!立派な業績があれば、スポンサーは多い筈だ。肩書を利用して、道民の税金を使ってはいけない!

「北海道ヒグマ問題を考える会」では下記の意見書を出した。