サンルダムに7kmもの魚道。これでサクラマス資源は残る?

2017年7月30日の夜、下川町サンルダム工事現場に到着。闇の中に照らし出された巨大な建造物。一瞬、言葉を失い、目を疑った。サンルダムが本当に出来てしまったのだ。

サンルダムの下流側 撮影:2017年7月30日
サンルダムの上流側 撮影:2017年7月30日

サクラマスが群れを成して自然産卵し、産卵環境として申し分のないサンル川だった。次の世代に受け渡して行く遺産でもあった清流サンルの川が、何故、こんなことになってしまったのか? 無念としか言いようがない。夜が明けてからの現場を見るのは辛いが、その行く末を見届け、こんなバカげた事業が二度と起きないように現場から声を上げなければならない。

ぜひ、ご覧いただきたい。呆れた魚道を…。

サンルダムの下流側…左の下の方に見える階段状の魚道が堤体に続いている 撮影:2017年7月31日
サンルダムの上流側…中央下の方に堤体から上流に伸びる魚道が見える 撮影:2017年7月31日
技術屋好みの直線形の水路が魚道である 撮影:2017年7月31日
サクラマスが上るサンル川と単なる水路(魚道) 撮影:2017年7月31日

7kmも延々と続く水路(魚道)を、サクラマスが上るとでもいうのか…?今金町にある北海道電力のピリカダムは当初6kmの魚道が計画されたが、何故か2.4kmを建設したままである。そこに地元の児童を集めてはサクラマスの稚魚の放流を繰り返しているので、魚道の効果はわからないという始末である。また、ピリカダムの湛水湖を海に見立てて生活する降海型のサクラマスが出現しており、生態系への攪乱を招いていることは言うまでもない。

そもそも、るもい漁協が、7kmの魚道をサクラマスがそ上し、資源が保全されると説得されてサンルダム建設を容認したのであれば、そ上する裏付けが全くないまま、前例にない長大な魚道を提案した専門家の責任は重大である。

このサンルダム魚道を提案した専門家の一人、妹尾優二氏は、数年前に桧山の厚沢部川水系小鶉川で中村太士大学教授が、川に負荷を与えない魚道構造についての進言をしていたが、それを振り切って大袈裟で大掛かりな魚道を提案し推し進めた人物である。その結果、サクラマスの産卵場は破壊してしまい、サクラマス資源を減少させている。魚道の影響で川の仕組みがどう変わるのか分からないような先の読めない専門家であった訳だ。それでも反省もなく失態を恥ずかしく思わず、他所で同じ提案だけをするような暴君である。このような愚行を見逃していたのでは、現場の漁師、るもい漁協は次の世代の糧まで失うことになるだろう。日本海側の八雲町熊石地区では、サクラマスの水揚げが減少し、磯焼けが広がり、水産業が衰退し、寂れてしまい、温泉宿の客足が遠のいたという。サクラマス資源は、漁師の生計を支える大事な糧なのだから、サンルダムは要らないと声を上げ続けていただきたかった。本当に残念だ。勿体無いことである。

 

知床ルシャ川の河床路計画は、IUCNの指導反故に値する。

国際自然保護連合(IUCN)は、知床のルシャ川にあるダムによって壊れた川の改善を強く指導した。

その後2017年6月1日、NHK北海道 NEWS WEB「世界自然遺産登録地・知床 ルシャ川の工事前に視察」の河床路建設の報道があった。

出典:NHK・北海道 NEWS WEB「知床 ルシャ川の工事前に視察」

河床路とは、車が川を渡れる(通行できる)ように、川底を平にならし石を組み上げた道路(人工工作物)のことである。川水が流れる中、車のタイヤが川底の窪みにハマることなく、水をかき分けて川を渡ることが出来る。車の重みで壊れたのでは実用性はないから、河床路は強固に石を組んで造られる。この人工物が問題なのは、河床路から下流側は次第に川底が掘られて段差が出来るので、やがて、その段差は大きくなり河床路は崩壊してしまうことである。

これは、すでに岩尾別川で2012年に全く同じ河床路を設置して翌2013年には壊れていることが分かっている。テレビに映って解説している専門家委員たちが示す図の石組の工作物は、すでに5年前に岩尾別川で石組が維持出来ないことが判明した工作物なのである。モニタリングするまでもなく、産卵場の維持は愚か、河床路そのものを壊してしまうことは実証済みなのである。

岩尾別川に設置された石組・撮影:2012年9月2日

同じ場所を翌2013年10月10日に撮影した。下の写真で分かるように、河床路はすべて流されている。

岩尾別川に設置された石組は影も形も無く、すべて流されて消えた・撮影:2013年10月10日

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループの委員たちが、ルシャ川でこれから実験するというが、すでに結果の分かっていることを繰り返すことはつまり、税金の無駄遣いであり、解説する専門家委員たちの知見の無さ、意識の無さ、探究心の無さまで如実に物語っている。

そして、石組の河床路を壊れないように固定してしまうと、河床路の下流側では砂利が流されて広域で河床変動が激しくなり、サケやカラフトマスの産卵場が破壊されることになる。そればかりか、河床路そのものがダムの役割をするため、河床路の上流側では流速が小さくなり、微細な砂が堆積して、サケマスの産卵に適さない河床となってしまうのである。河床路を固定した為に、下流側で河床低下が発生する事象が各地にある。下の写真で分かるように、河床路の下流側では極端に河床が低下し、河川荒廃が進む。河床が変動するような川底は、サケやカラフトマスの産卵に適さないのである。

固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日
固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日

そもそも、河床路は増水した時には車で渡れないのだから、漁民の立場を無視したものである。NHKの報道では、「橋の間口が狭い」ことに原因があるとしているが、それならば「橋の間口を広げる」という発想が、何故出来ないのか?

間口を広げた橋に作り変えれば、川底の砂利移動は自然のままになる。そうなればサケマスの産卵環境は今よりも良くなる。これこそ産卵環境の改善となり、増水時でも漁民が通行できることになる。単純なことだ。橋脚が、河道の中にあるから、川の仕組みがおかしくなる。サケマスの産卵環境を悪化させ、漁師が増水時に通行できないような知床ルシャ川の河床路案は、どう考えても滑稽な計画である。

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループによって進められている「現状よりも悪化する」ことが懸念される自然に似せた「人工工作物」を、わざわざ建設するこの事業報告に、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は疑問を持っていただきたい。漁民の生活と資源の共存出来る「間口を広くした橋梁」にするだけでルシャ川は世界自然遺産に相応しい環境に改善されるのである。

 

札幌市民の皆さん、有害重金属の行方が心配ですね…

新幹線の手稲トンネル予定地 土壌に有害な重金属 対策必要に

出典:北海道新聞web版

2017年6月14日の北海道新聞web版に図入りで報道された記事では、「2030年度開業予定の北海道新幹線札幌延伸の工事で、手稲トンネル(小樽市―札幌市手稲区、全長18・8キロ)予定地の土壌に有害な重金属が含まれ、一部で通常の掘削土と別の処分が必要になる可能性があることが分かった。同トンネルは17年度に着工予定で、建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構の北海道新幹線建設局(札幌)は、地元の札幌市と協力して管理候補地を探すなど対応を急ぐ方針だ。同建設局によると、08年度から複数回行った事前ボーリング調査で、岩盤・土壌から自然由来のヒ素や鉛、水銀などが検出されたケースがあった。普通の残土と分けて処理する「要対策土」が出る公算が大きいとみられる。」とされている。

この工事説明会が、本日、8月23日から9月初旬にかけて、開催されることになった。

             出典:北海道新聞(読者提供)

 

この説明会で、札幌市民の人たちを前にして、トンネル工事で発生する掘削土に含まれる有害重金属の種類や量、処理方法(有害重金属残土の捨て場とその保管方法や汚染流出などの発生時の対応方法)、及び、有害重金属が含有される濁水処理方法などについて、どのようなことが明らかにされて、どのような対策が説明されるのか? また、濁水処理では影響が懸念される発がん性・毒性のある有機系凝集剤(PAC)が使用されるのか?どのような凝集剤が使用されるのか? こうした対策は人への影響を基準にしたものであり、北海道の基幹産業を支えている水産資源(生物)への「影響のあり・なし」については知見も乏しく、安全が確認されていないことばかりである。(過去の記事を参照ください)

機構は、説明会で「住民の質問に答える」と言っています。参加して一人でも多くの関心を示すことが、札幌の、北海道の暮らしと資源を護ることに繋がるのです。

 

山脚崩壊の危険が迫る国道230号線(無意根大橋隧道)

九州地方の豪雨災害で、川に面した斜面が次々に崩壊し、流れ出した土砂・流木が人命財産に及ぶ深刻な大災害をもたらせた。ここで、河川防災の専門家たちの言葉の使い分けが実に巧妙であることに憤る。

「深層崩壊」と、「山脚崩壊」である。

今回のニュースでは、「豪雨によって山斜面の地中深くに雨水が浸透して地表面を浮かせて滑りやすくなった為に、立木もろとも斜面がズリ落ちた「深層崩壊」という現象である」と説明をしている。これまで専門家たちは、川底が下がると川に面した山の斜面が「砂山くずし」のように崩れ落ちる「山脚崩壊」を説いてきた。しかし、それを防止する目的で治山ダムを次々に建設してきたが、そのダム自身が下流の河床を下げることになり、山脚崩壊を連鎖的に多発させ拡大する一途を辿っている。近年の豪雨で起きる災害の真相が次第に見えてきた。そこで専門家たちがあみ出した言葉が「深層崩壊」という言葉である。このまま「山脚崩壊」と解説した場合、河川の「河床低下」が問題視され、その原因を探ることになれば、これまで建設してきた「ダムの影響」が白日に曝されるからである。

2017年8月1日、豊平川上流で山が崩れるメカニズムについて考えさせられる景色が見えた。国道230号線の無意根大橋でトンネルの入口の基礎部が崩壊しているのが目にとまったのだ。

国道230号線・無意根大橋
国道230線の「無意根大橋」と隧道の入口
無意根大橋の隧道の入口。その下部は崩壊寸前。
写真上部の広場のように見えるところに大規模なダムがある。その下流の川岸は崩壊し、川底の浸食が進んだ為に、護岸工事や床固工事が何度も繰り返されてきた。

無意根大橋の上流側には巨大なダムがあり、その下流は川底が掘り下がり、川岸や山斜面が崩れる度に護岸工事が繰り返される。更に階段状にダムを造り、川底が浸食されないようにコンクリートブロックも敷き詰められている。上流にダムがある限りは、ダムの下流の川底の浸食は止まらない。

無意根大橋の下流側の両岸は、鋼鉄製の護岸に川底をコンクリートブロックで敷き詰めている。しかし、敷設後に更に川底が掘り下がり、コンクリートブロックは崩れ落ちている。隧道(トンネル)のある山斜面の下部は浸蝕されて今にも崩落しそうだ。

隧道が付けられた山の基礎が「砂山くずし」のように削られている。
コンクリートブロックを敷設した先では、河床が大きく低下し、ブロックは壊れていく。山裾が浸食されていることがわかる。

子どもの頃に遊んだ「砂山くずし」を思い起こしてほしい。砂山の砂を手で取り払うと、ドサッと砂山が崩れ落ちる。同様に山斜面の基礎を掘り進めばドサッと崩れ落ちることは目に見えている。大雨の洪水は川底を更に掘り下げ、山裾はより崩れやすくなり浸食の規模が拡大することは明白である。もしそうなった時、無意根大橋の隧道(トンネル)の山は、大規模に崩壊して、国道274号線と同じように深刻な災害が発生することになる。

無意根大橋の上流には、沢山のダムがあることが分かる。山脚崩壊の危機回避は、このダムを即刻撤去することである。出典:Google Earth

危険度は増している。即刻、ダムの撤去が必要だ。この写真にあるすべてのダムを撤去して、川底が掘り下がらないように砂利を供給するしかない。河川防災の専門家たちは、「深層崩壊」説を唱えて誤魔化すのではなく、自ずと推奨してきたダムの影響を認め、これまで奪われてきた人命に対して負うところは全くないと言い切れる防災を願いたい。