磯焼けを起こす泥水は、ダムから~せたな町大成区「小川」。

北海道南部渡島半島の日本海側せたな町大成区にある「小川」という河川から、2022年6月29日に酷い泥水が沿岸に流れ出していたことから、2024年7月24日に、「小川」の現地取材を行った。

ひどい泥水が沿岸に流れ出していた。撮影:2022年6月29日。
ひどい泥水が流れ出していた。撮影:2022年6月29日。
ひどい泥水が流れ出していた。撮影:2022年6月29日。
行く手に姿を現した大きな「小川(大成)砂防ダム」。堤高10.5m、堤長56.0m。完成:昭和48年(1973年)1月。
堤体への入口には看板が掲げられている。
この砂防ダムには対岸側に魚道が取り付けられている。水は濁っている。
建設から51年を経ても尚、水を満々と湛えていることから、砂利移動の少ない川であり土石流災害など発生することは無いと言えるだろう。岩質の川なので、砂礫の流れ出しが少ないことを物語っている。
満々と水を湛えてていた。

現地取材で、この小川には砂防ダムが2基建設されていることが分かった。

小川(大成)砂防ダムから上流へ進むと、もう一つの砂防ダムが姿を現した。
こちらも堆砂は多くないようだ。

川相は岩質であり、苔や草が生えている川石が多く見られた。濃い泥水が発生するような原因となる兆候を見ることは無かった。

では、泥水が流れ出す理由は何か…?

砂防ダムに溜まった水がダム湖に流れ込み、泥がダム湖の底にゆっくりと沈澱する。ダム湖の底に沈澱した大量に集積された泥は、大雨で増水した際に激しい流れで攪拌され、砂防ダムの堤体から下流へと流れ出したと考えられる。つまり、このダム湖は、普段から、ちまちまと泥成分を集めており、増水時に貯め込んでいた泥水を一気に吐き出しているという訳だ。ダム湖のこの”濁り”は、シルト分や水質劣化を司る有機質の分解成分だ。通常では発生しないような濃い泥水が、ここから流れ出し、沿岸を泥海にしているのだ。

7月24日の現地取材後、5日後の7月29日に24時間雨量70㎜程の雨が降り、川は増水し酷い泥水が流れ出した。すぐ隣の臼別川から流れ出す泥水と共に沿岸は泥海と化した。上空からドローン撮影した翌日もこの有様だ。

2024年7月29日の雨で、泥水が流れ出していた。撮影:2024年7月30日。
2024年7月29日の雨で、泥水が流れ出していた。翌7月30日上空から撮影した。撮影:2024年7月30日。

小川の2基の砂防ダムは、51年の歳月を経ても堆砂で埋まること無く、湛えた水中にシルト泥や腐敗泥が溜まっている。明らかに不要な砂防ダムである。健全な「小川」を取り戻すためにも、また、沿岸の磯焼けを解消するためにも、こうした濃い泥水を発生させている2基の砂防ダムは早急に撤去なり、スリット化の改善をすべきだ。

小川と臼別川の2河川から河口海域に流れ出した泥水は、磯焼けが発生している岩礁地帯に漂っている。こうした泥水が磯焼けに関わっている可能性が濃厚であると考えるべきだ。

漁業者は水産資源を失い、地域の過疎化が進むばかりとなる。これまで行政任せ、専門家任せにして来た結果が、今ある磯焼けであり、水産資源の枯渇の姿なのだ。

漁業資源を蘇らせるためには…

豊かな大成の前浜を取り戻すためには…

漁業者自らが、「ダムの撤去・スリット化の改善」の声を上げる必要があるだろう。