せたな町の秋サケ、昨年に引き続き漁獲好調1.8倍。

北海道南部の日本海側ひやま漁業協同組合管内のせたな町では、昨年に続き、今年も秋サケの漁獲は好調という。漁期途中ながら、昨年の1.8倍と報道された。

渡島・桧山「ローカル版」誌面で報道されたのみだが、全道版、全国版で報道していただきたいものである。

地球温暖化の影響で秋サケの来遊数が減少し、漁獲が低迷していると専門家が解説している中、せたな町では2019年、2020年、2021年と連続で右肩上がりで増加し、2022年の今季は途中経過ながら、昨年の1.8倍と好調だ。

ひやま漁業協同組合は「せたな町・八雲町・乙部町・上ノ国町」の各漁協(支部)で構成されているが、驚くことに全量の8割が、せたな町での漁獲なのである。

何故、せたな町だけで漁獲量が多いのか?

せたな町が他町と違う点は、せたな町の2河川で、2010年から治山ダムと砂防ダムのスリット化を行ってきたことである。

北海道の保護河川「須築川」のスリット化した砂防ダム。撮影:2022年10月20日。
この川では4基の治山ダムをスリット化した。撮影:2022年10月24日。
スリット化した4基の治山ダムのうちの一つ。上流と下流がきれいにつながっている。撮影:2022年10月24日。

治山・砂防ダムのスリット化で砂利が流れ出し、河床低下が緩和され、川岸の崩壊のリスクが減少した。つまり、ダムの影響が取り除かれて、酷い泥水が抑止、低減されたのである。

サケ稚魚は酷い泥水の中で生きてはいけない。ふ化場の池に泥水が流れ込むと、サケ稚魚は壊滅的な被害を受けることからも、お分かりいただけるだろう。泥水が流れ続けているような河川では、放流サケ稚魚も自然産卵由来のサケ稚魚も、人知れず、多くが命を落としている。つまりは、生残率が低下しているので、サケの漁獲が減少するのである。

ダムのスリット化後、年々、川底に堆積している砂が粗めの砂礫に変わり、石と石のすき間ができ、川底を水が通り抜ける透水性が回復している。こうなれば、魚の繁殖できる場所がどんどん増えていく。益々、自然産卵するサケやサクラマスが増加していくことだろう。せたな町では秋サケ以外にも、サクラマスの漁獲が2021年、2022年と好調という。これは、繁殖環境の回復を示唆していることに違いない。その上、河口周辺の海域では、背丈の高いワカメが林のように繁茂するようになり、岩のりが採れるようになり、ウニが大型に育ち、数もたくさん採れるようになった。これはシルトや微細砂の酷い泥水が低減され、粗い砂礫に代わり、海藻の胞子が育つようになってきたからだ。粗い砂礫が岩礁を洗い、海藻の胞子が付着し易くなったり、岩礁の表面を覆っていたシルトや微細砂が無くなり、胞子が発芽しやすくなったためと考えられる。

一方、治山・砂防ダムの影響で、川底が下がり、川岸が崩れ、災害が多発するなど、相変わらず酷い泥水が流れ続けている太平洋側八雲町の遊楽部川では、本流、支流共に自然産卵するサケが殆ど見られなくなっている。自然産卵するサケがいないことは、ホッチャレサケを食べに飛来するオオワシ・オジロワシが激減していることからも明らかである。

2022年4月12日の遊楽部川。この酷い泥水の中に、ふ化場からサケ稚魚が放流されている。小さなサケの子どもたちは生きていけるのだろうか…?

春先、遊楽部川はこんな酷い泥水が流れている。この泥水に孵化場は、サケ稚魚を放流しているのである。泥水の中に放り込まれたサケ稚魚たちは、口からシルト分や微細な砂粒を吸い込んで、繊細なエラ組織を通して吐き出し、エラ呼吸している。繊細なエラ組織を傷つけ、エラ組織のすき間に付着したらどうなるかなど、サケ稚魚の身を案じもしない。孵化事業とは、命を紡ぐ仕事でもあるのではないのか。

こうした酷い泥水を発生させるダムの影響は、深刻なものなのである。

この現実に、サケ専門家たちは言及せず、サケ資源が減少したのは、「地球温暖化で海水温が上昇したからだ」とか、「海流の流れが変わったからだ」とか、はたまた、「北太平洋のどこかで異変が起きており、そこで若いサケが死んでいるのではないか」などと、もっぱら海洋での異変について解説している。しかし、現場を見れば、川から海へ降海する前の段階、つまり、川にいる段階で生残率が低下しているのが真実ではないのか。海洋異変の話に転嫁する前に、まずはサケとはどんな魚なのか、基本的知識に立ち返り、ご自分の足で現場に出向き、再生産の場である川をしっかりと観察され検証し、恥ずかしくない解説をしていただきたいものだ。

 

檜山管内でサケ漁獲高が、1958年以来最高を記録

2022年2月8日、北海道新聞「渡島檜山版」に、檜山管内のサケ漁獲好調、統計を取り始めた1958年以来「最高を記録」したと報道された。北海道南部・日本海側にある治山ダム・砂防ダムのスリット化が進む中でのニュースである。

出典:北海道新聞:サケの漁獲尾数減少している中で、真逆のことが起きている。

北海道の研究機関が発表している2021年度の全道へのサケの来遊尾数予測と実績値をグラフ化したところ、日本海南部だけが予測に反して、実績値が上回っていた。これが何を意味するのか?

出典:北海道立総合研究機構さけます内水面水産試験場さけます資源部

専門家は、サケの漁獲尾数減少の理由を「地球温暖化で海水温の上昇や海流の変動によってサケが戻って来れない」とか、「北太平洋で何かが起きてサケが生活できなくなっているのではないか」、挙句は「ロシアが日本近海で横取り漁獲している」などと減少の見解を述べている中で、日本海南部だけが、真逆のことが起きているのはどうしたことか?

専門家の説明に反して摩訶不思議なことが起きているが、専門家たちは、サケやサクラマスが河川で再生産するという肝要な事を、忘れたとでも言うのだろうか?私たちは、檜山管内で進むダムのスリット化後のサクラマス稚魚0+の分布調査で、産卵域が拡大していることを確認している。サケの来遊尾数が増加していることは、ダムのスリット化による河川環境の改善で産卵域が拡大し、再生産の仕組みが蘇った効果であると言えるのではないだろうか。

 

 

日本海サケ漁獲増加…川の泥を抑止で稚魚生残率向上か…

せたな町、島牧村、乙部町で、2010年から次々に砂防ダム・治山ダムのスリット化が行われてきた日本海側のサケの漁獲好調の続報だ。

出典:2021年10月29日・北海道新聞(渡島・檜山版)

 

出典:北海道水産林務部・北海道サケ定置網の漁場区分図を加工、加筆した。砂防ダム・治山ダムのスリット化した5河川の位置(青矢印)。
出典:北海道立総合研究機構・さけます・内水面水産試験場のデータをグラフ化。

日本海と太平洋側(えりも以西)のサケの漁獲量の比較。太平洋側は減少。日本海側は2019年から増加に転じている。

出典:北海道水産林務部・サケ漁獲旬報から、2016年と2021年の9月10日~10月20日までのデータをグラフ化。

5河川で砂防ダム・治山ダムのスリット化を行った日本海側南部のサケ漁獲量の変動グラフ。漁獲量が格段に増加していることを示している。

出典:北海道水産林務部・サケ漁獲旬報から、2016年と2021年の9月10日~10月20日までのデータをグラフ化。

一方、太平洋側のえりも以西の噴火湾のサケの漁獲量は減少していることが読み取れる。

全道のサケの漁獲量は減少傾向にある。

出典:北海道立総合研究機構・さけます・内水面水産試験場のデータをグラフ化。

サケ漁獲量減少の原因をサケの専門家たちは挙って、地球温暖化による海水温の上昇や海流の変動、また、北太平洋の異変などによる影響でサケ資源が減少し、漁獲量が減じていると説明している。しかし、日本海側のサケ漁獲量は増加しているのである。

ここで注目していただきたいのは、オホーツクと日本海の漁獲量だ。オホーツクでは海産のホタテは垂下式のカゴ養殖ではなく、海底に稚貝を放流する「地撒き増殖」が行われている。そのため、海底環境が損なわれないように、沿岸に泥水が流れ出さないように河川の流域環境保全が徹底されている。一方、日本海では、5河川の砂防ダム・治山ダムのスリット化後に、河口海域での海藻の育ちが良くなり、ウニが大型に育つようになったと言う声がある。つまり、泥水の流れ出しが抑止または低減されたことの証であろう。

また、泥水がサケ稚魚に与える影響を考えてみよう。

春先、自然産卵由来のサケ稚魚は浮出して泳ぎ出してくる。また、ふ化場からはサケ稚魚が放流される。そこに泥水が流れると、サケ稚魚は体から粘液を分泌して泥水から身を守る。口から吸い込んだ泥はエラから吐き出すが、エラは「鰓耙」、「鰓葉」という微細な構造をした組織から成り、この微細な組織のすき間に砂粒が入り込むとエラは傷つき炎症を起こす。ただでさえ粘液を分泌して体力を消耗している上にエラの炎症が重なれば、多くのサケ稚魚が命を落とすだろう。サケ稚魚の生残率が低下していると考えれば、そもそも回帰率云々というよりも、命育む川で何が起きているかが重要な課題なのではないだろうか。

砂防ダム・治山ダムのスリット化により泥水が抑止、低減されれば、サケ稚魚たちは体力を消耗することなく、エラの炎症もなく、丈夫なサケ稚魚として育つだろう。実際、日本海側のサケの漁獲増加は、ダムのスリット化による泥水の抑止効果でサケ稚魚の生残率が向上し、丈夫な種苗となって育った結果、回帰率が向上したのではないかと思われるのだ。(日本海側の北部、中部の漁獲増は、南部の増加した資源が途中で漁獲されたからであろう)かつて、北海道南部八雲町の北海道さけますふ化場・渡島支場長の石川嘉郎さんは、「サケの回帰率を上げるためには丈夫な稚魚を育てる必要がある」と話されていた。

 

ダムのスリット後にサケの漁獲が昨年の3.7倍増

せたな町管内8ヶ統あるサケ定置網のうち、漁獲量が最低だった良瑠石川近海定置網で、4基の治山ダムのスリット化後に漁獲量が1位、2位になった。せたな町管内では、昨年(2020年)の漁獲量は前年の1.8倍増。本年(2021年)は10月5日現在で昨年の3.7倍増と報道された。

せたな町では2010年から良瑠石川の治山ダムをスリット化。これを皮切りに、須築川の砂防ダムは2020年にスリット化が完了。また、同町付近では島牧村の千走川支流九助川の治山ダム、折川の砂防ダムがそれぞれスリット化され、南部の乙部町でもスリット化が行われている。

出典:2021年10月7日・北海道新聞(渡島檜山版)

北海道水産林務部・令和3年秋サケ沿岸漁獲速報10月10日:URL:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/4/3/3/8/3/8/5/_/031010-1.pdf

漁獲増はダムのスリット化と関連しているのか?!

治山ダム・砂防ダムの下流では砂利が供給されない。そのために河床低下が進行し、河岸崩壊・山脚崩壊が多発するようになる。上流でもダムの堆砂が満砂になれば流れが蛇行するようになって、山裾を浸食し、山脚崩壊を発生させる。こうして、ダムの上下流から大量の土砂が流れ出し、雨のたびに濃い泥水が流れるようになる。サケ稚魚やサクラマス稚魚が浮出する春先の雪どけ増水の泥水は酷いものだ。春先、濃い泥水が流れる川でサケ稚魚を観察したことがある。泥水を避け、川岸や細流に入り込み、身を寄せ合っている。よく見ると、体から粘液を出して身を包んでいる。粘液を体から出すには相当な体力を消耗することだろう。また、口から吸い込んだ泥は、エラから吐き出す際に微細な砂粒でエラを傷つけ炎症を起こす。体力を消耗した上に、エラの炎症で稚魚の負担は相当な筈だ。誰も知らないところで多くの稚魚が命を落としているのではないか。

ダムをスリット化すると、砂利が流れ出すので河床低下が緩和され、河岸崩壊・山脚崩壊が止まり、濃い泥水の流れ出しが抑止、低減される効果がある。春先の雪どけ増水から濃い泥水が無くなれば、サケやサクラマスの稚魚は体力を消耗すること無く、健康に育つことが出来る。つまり、生残率が向上し、元気な稚魚たちが海に下るわけで、その結果、回帰率も向上することだろう。北海道さけますふ化場は回帰率を向上させるために、丈夫な稚魚を育てることを一つの目標にしていたのだから、十分その理に適う。

昨年は前年比で1.8倍、本年は前年比で3.7倍だから、このまま3.7倍増で終漁まで続けば、1.8倍×3.7倍=6.66倍となり、2019年に比べれば、なんと6.66倍増にもなる。急激な漁獲増だ。これがダムのスリット化と関連しているかどうか、今後の推移を見守りたい。

 

良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

2019年1月18日、ひやま漁協の漁師と釣り人、住民で結成された「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の総会が、せたな町で開催された。道・町議会議員、桧山振興局、函館建設管理部今金町出張所、せたな町役場の職員が出席した。

総会の代表から「須築川砂防ダムの魚道改築の要望に対し、「流域の自然を考えるネットワーク」の宮崎代表から、魚道の改築ではサクラマス資源の回復は見込めないと指摘があり、魚道改築ではなくスリット化を求めることになった。その結果、良瑠石川の4基の治山ダムでもスリット化が実現し、管内のサケ定置網8ヶ統ある中、一番悪い漁場だった良瑠石川地区の2ヶ統が、2015年から昨年に至るまでの4年間、管内で漁獲量が1~2位になった」と報告があった。

2011年2月22日には良瑠石川の本流の下の治山ダムのスリット化工事が行われた。

2011年2月に本流下の治山ダムがスリット化されたので、この年の秋にはサクラマスとサケの産卵場が大幅に拡大した。その後、2012年3月までに全4基の治山ダムがスリット化された。従って、2011年の秋に産み落とされたサケの子どもたちは翌春、海に下り、四年後の2015年に大きく育ったサケたちがこの川に戻って来たわけだ。このサケたちが良瑠石川地区のサケ定置網で漁獲されて、漁獲増をもたらしたと言える。

2017年9月13日良瑠石川を視察。サケがそ上していた。
2017年9月13日、良瑠石川本流のスリット化した下の治山ダムの魚道を上るサケのペア。
スリット化された治山ダムの上流へ上ってきたサケ。右の円内は産卵行動中のサケ。
本流のスリット化された上の治山ダム・逆台形型のスリット化は流木が挟まることもないので、メンテナンスフリーだ。スリット化後、川は上流と下流の川石の大きさが同じになり、川が蘇ったことがよく分かる。これが逆台形型のスリット化の効果だ。

当初、治山ダムの管理者である道林務課は、ダムをスリット化すれば、「土砂・流木が流れ出し、橋が壊され、その先の集落が陸の孤島になる」として、スリット化に難色を示していた。しかし、スリット化してみれば、災害を引き起こすような土砂も流木も流れ出すことはなかった。むしろスリット化で川は蘇えり、その効果は期待以上のもので、総会では、沿岸の海藻の育ちが良くなったことが報告された。良質のコンブ・ワカメが採れるようになり、ウニが大型に育つようになったとも言う。ダムのスリット化で海藻が育つようになれば、磯焼けも解消され、やがてはニシンの群来も見られるようになることだろう。

土石流と流木が押し寄せて壊れると説明されていた橋は何らの被害もなく、健在。河床はきれいな砂利で覆われ、多くの魚の繁殖に適した河床に蘇った。

橋の下流はすぐに日本海だ。

橋をくぐればそこは日本海だ。泥水が出なくなれば、海藻の育ちもよくなる。

良瑠石川が注ぐ日本海。泥の流れ出しが減少すれば海藻が蘇る。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。
良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川河口。海中の黒く見えるのはコンブにワカメ、ホンダワラなどの海藻だ。

全道でサケの漁獲が減少している最中に、サケの漁獲を増加させ、沿岸海藻の育ちが良くなり、ウニを大型に成長させるというスリット化の効用を目の当たりにした漁師たちの総会は、漁業復活の明るい兆しが見えたダムのスリット化に盛り上がり、熱気に沸いた。

 

 

良瑠石川・ダムのスリットで川はどうなった?

2018年8月8日、治山ダム4基をスリットした良瑠石(ラル石)川が、その後どうなったのか?パタゴニア札幌スタッフと現地を踏査した。河川管理者は、ダムをスリット化すれば、流れ出した土砂や流木で下流の橋が被災し、その先の集落が孤立する危険があると説明していたが、本当にそうなったのか?

まず、2基の治山ダムをスリット化した支流へ入った。小さな砂利が目立つ程度で、川が荒れた痕跡は無い。巨石が挟まり合って川底を安定させていた。

2基の治山ダムのスリット化後、小さな砂利が増えてはいるが、土石流が流れ出したような痕跡は無い。
支流のスリット化した下の治山ダム。削岩機で削っただけだが、倒壊するような危険は無い。
左右の草が生えた土壁はダムの堆砂だ。ダムの堆砂の大半は、流れ出さずに残って草木が生え山と同化していた。「堆砂の全量が流れ出すから危険」という管理者の説明は根拠の無いもののようだ。
支流のスリット化した上の治山ダムが上流に見えてきた。辺りは小さな砂利が多少は増えたようだが、川が荒れたような痕跡は見られない。
スリット化した上の治山ダムの前で、パタゴニア・スタッフへスリット化の効果を説明する宮崎司代表。
支流のスリット化した上の治山ダムと上流側の堆砂。堆砂の大半が残っており、増水時に僅かに分散して流れ出し、草木が生えて地山と同化している。大規模に流れ出すとは考えられない。(川筋の左右の草が生えたところ全部がダムの堆砂)

支流の川は急峻だが、スリット化後にダムに貯まっていた堆砂の全量が流れ出すような事態にはなっていなかった。増水時に流れている堆砂の量は少なく、大半がそのままに残っていた。

次に本流へ入った。

本流のスリット化した下の治山ダム。砂利の流れが安定してきたところ、魚道が砂利の流下を阻害し始め、魚道下流で僅かだが河床が下がってきていた。魚道は不要だ。

砂利の流下が安定してきたところで、今度は魚道が砂利の流下を妨げるようになり、直下では僅かに河床が下がり始めている。魚道がある区間ではサケは産卵できない。撤去すればここにも産卵できるのだから、蘇った川には無用の長物である。

スリット化したダムの直下に魚道が見える。魚道がまるでダムのようである。今後は魚道による影響が現れてくるだろう。
本流のスリット化した上の治山ダム。上流と下流が繋がり、川は蘇った。
流木がすぐに詰まって役立たずの斬新な螺旋型魚道は、やはり役立たずのまま一生を終えた。
スリット化によって川が蘇り、資源が回復することを説明する宮崎司代表。
堤体で分断されていた河床は、スリット化で上流と下流が綺麗に繋がり、川が蘇っていた。
堤体天端まであった堆砂は、ちまちまと流れ出しており、全量が流れ出すようなことにはなっていない。削岩機で削った堤体も強度は保持したまま残されていた。
スリット化で上流と下流が一つに繋がった。
川を分断していたダムを切れば、上流と下流が繋がって本来のごくありふれた川の姿に蘇るのだ。

河川管理者は、ダムをスリット化すれば「堆砂の全量が流れ出すから危険だ」、「流木が橋を壊す」と説明していたが、橋を壊すような流木も無ければ、土砂災害を発生させるような土砂も流れてきていない。むしろ、砂利が流れるようになって川は安定し、元の自然の川に蘇っていた。

ダムのスリット化で川が蘇ったことで、サケやサクラマスの産卵域が広がり、水産資源が増大している。地元の漁師は「サケの漁獲が落ち込んでいるのに、この地区では漁獲量が増えた」と言う。そして「泥水が流れなくなったので、海藻の育ちがよく、良質なコンブが採れ、ウニが大ぶりになって実入りがよい」と言う。現場の漁師が実感しているスリット化の効果は絶大だ。この川にあった砂利の流れる仕組みが蘇るだけで、サケ・サクラマスの再生産の仕組みが復活し、沿岸の海藻も育ちがよくなり、水産資源が増大することが証明された。ダムのスリット実現まで苦悩した漁師や釣り人の功績である。この川が教えてくれることは絶大だ。

良瑠石川河口・微細な砂よりも礫が多く見られるようになった。
河口付近に打ち上げられた海藻は、泥が被らなくなったので綺麗だ。ただし、漁業権無き者は拾ってはいけない。ご注意を!
下流域は、まだダムに溜まっていた堆砂が流れているが、次第に砂利の量は減り、安定してきた。
良瑠石川の河口を望む。スリット化後に荒れた様子は見られない。
本流2基と支流2基の治山ダムをスリット化した後。川が荒れたような痕跡は無い。