厚沢部町の山中に汚染土。その処理法は他にない粗雑な扱いである。

厚沢部町鶉地区から滝野方向へ右折した山中に、厚沢部川の支流である意養川に注ぐ小さな沢がある。この沢の源流部に新幹線トンネル掘削土の捨て場がある。真っ黒な粉塵にまみれた南鶉工区で掘削している有害な重金属を含んだ掘削土は、ここに運ばれている。

鉄道運輸機構は、有害重金属含有の掘削土を小沢の源流部に捨てても、「①・有害重金属は土中の吸着層に吸着させて外に出さない。②・沈澱池をつくり、有害重金属含有の濁水対策をする。③・モニタリングをして監視する。」から問題は無いと厚沢部町民に説明している。

P14の図には有害重金属含有掘削土の下部に「吸着層」、「基盤排水層」、「明渠(きょ)排水」が描かれ、その下が岩盤になっている。

ここで問題なのが、「吸着層」で説明通りに吸着される裏付けは実験室とは異なる。流れる水は「浸食作用」があるので「基盤排水槽」や「明渠排水」の下部が浸食されて空洞化がすることが考えられ、有害重金属含有掘削土の重みで陥没すれば容易に流れ出すことが想定される。そもそも川の源流部での投棄は、汚染が広範囲に及ぶので下流一帯の居住地域までが汚染されることになる。土壌浸透して地下水が汚染し、有害重金属含有の濁水が流れ出したりした場合、どのような対策が出来るというのか。変事の際は、その時点で汚染されているわけだから、元へは戻せない。

「モニタリングをして監視する」…このモニタリングというのは概ね2年で終了する。八雲町民にはそう説明している。しかし、何故か厚沢部町の住民説明用の資料には期限が書かれていない。機構の対応は、自治体によって相違するようだ。土壌汚染の進行は緩慢なので、汚染が確認されるのは2年よりもず~っと先になる。2年のモニタリングで発見できる筈もなく、住民を欺いているとしか言いようがない。独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は真摯に住民に向き合い、危惧されるリスクを正直に説明するべきである。

捨て場近隣では井戸はないと説明しているが、これはヒ素が検出されるかもしれないと言う事を示唆している。そもそも井戸があろうがなかろうが汚染は許されない。厚沢部町は、メークイン(じゃがいも)やアユの友釣りで知られる。これらには清らかな水資源が不可欠だ。その大切な水の源流部に有害な物質を投棄することを何故、厚沢部町は決断したのだろうか?

有害重金属含有の掘削土はこの場所に置かれたまま、未来永劫雨水にさらされ続けることになる。そして、影響が露呈した場合には被害を被るのは他でもない地元住民である。その時になって声を上げても、「問題無い」とお墨付きを与えた専門家や独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の職員も、責任を負う者はいないのである。

 

渡島トンネル(南鶉)工区で真っ黒な粉塵。

北海道新幹線の長大なトンネルは、一本のトンネルだけではない。本坑から出る大量の掘削土を搬出するために、多くの横抗を掘り進める。その一つ、国道227号線「渡島トンネル(南鶉)工区」での粉塵について疑問を抱く。

この工区の敷地の雪が異様に真っ黒なのだ。粘土状の塊も見える。敷地内の粉塵を無造作に敷地外に投棄したかに見える。

新幹線トンネル工事では、ヒ素や鉛、フッ素など有害重金属含有の地層を掘り進むため、掘削土には環境基準を超えた有害重金属が含まれている。独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、有害重金属含有の掘削土を搬出する際には荷台から粉塵が飛散しないようにシートで覆い、かつ、トラックのタイヤに付着した粉塵(泥)を落として、敷地外に飛散しないように対策を講じると地域住民には説明している。

出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構・地元住民への説明用資料

しかし、敷地傍の雪が真っ黒なのは何故なのか?敷地内の粉塵をそのまま投棄しているとしか考えられない。交通量の多い幹線国道227号線は、函館方面と江差方面を繋ぐ。粉塵は乾燥して周辺に飛散し、通行中の車内、人体に吸引される。この真っ黒な物質が環境基準値を超えた有害重金属含有の粉塵であれば、健康被害も起こり得る。

雪が融けて国道の側溝を経由して大野川に流れ込み、汚染は広がる。流れてしまえば誰も気がつかない。この真っ黒な物質は何だろうか?機構は、粉塵の対策は万全だとしか説明しないが、実際にこのような事象を把握しておらず、検査もしない。機構が調べないのなら、知りたい者が検査するしかないのが実態だ。我々でサンプリングした粉塵は、専門機関で検査し公表する。

掘削土を運搬中のトラックの後ろを走ると、粉塵が飛散しないような対策をしているとは思われない。風でバタバタとはためくシートは粉塵を煽り立て、まき散らして走行している。

掘削土は、バタバタと煽られる。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は現況を確認し、即刻に改善していただきたい。