河床低下の「原因はダムにある」と認めた河川管理者の抵抗。

砂蘭部川で起きている河床低下の原因は、「砂防えん堤(ダム)が砂利を止めている」からであることを北海道渡島総合振興局函館建設管理部が認め、1号と2号砂防ダムをスリット化する決定が2016年の検討委員会によって下された。

砂蘭部川2号砂防えん堤。砂利が流れてこないので、河床の砂利はすっかり流されて消失した。えん堤直下では護床ブロックの下の岩盤が浸蝕されて空洞ができて壊れ、岩盤も掘り下がっている。撮影:2017年9月10日
砂防えん堤の下流全域で川底の石が不足。岩盤が露出してしまった。グランドキャニオン化が始まっている。膨大な量の砂利が失われたことが分かる。撮影:2017年9月17日
浅瀬は、莫大な量の砂利が流されてしまい、岩盤が露出し、グランドキャニオン化は下流へと広がっている。撮影:2017年9月13日

「いよいよスリットで川が蘇る」と期待していたら、まず、1号ダムから調査➡設計➡堤体の肉付け➡段階的スリット化➡その後の経過の調査。それから次に、2号ダムも同じ過程を繰り返す。現実にダムをスリットするまで、実に多くの事業が持ち込こまれて事業費は莫大に膨らんでいく。呆れたことに函館建設管理部は、ダムをスリットする必要性を認めておきながら、「スリットから流れる砂利が途中で止まらなければ困る」と言い出して、下流に夥しい数の帯工を建設すると言う。既存のダムをスリットして流れた砂利を止めるために、ダムを新設するという摩訶不思議な論法で屁理屈をこねる。この担当者は人を化かす狸なのかもしれない。

出典:第8回砂蘭部川河床低下対策検討委員会・渡島総合振興局函館建設管理部

決定した事業に付属事業を添加させて、どこまでも底知れずに膨らんでいく事業費。河川管理者と大学教授の背中にコンサル指南の影が見えてくる。

2014年、スリット化をする前提の実験として9基、その後も更に6基の帯工を建設したが、どれもこれもことごとく失敗した。砂利が流れてこない条件下で実験しているのだから、失敗することは素人にでも分かる。これが呆れたことに、壊れた帯工を補修し、また新規に造るというのだから…公務員の理念をすっかり忘れ、税金を貪る醜い姿を国民に更けている。恥ずかしくないのだろうか?

何が目的なのか見え見えのムダな実験ばかり。この他にも6基を建設したが、それらも全て失敗している。

地質・地形・川の性質など考えずに、規則正しく60m置きに帯工を配置した。柳井清治大学教授、渡辺康玄大学教授も苦笑する程だった。失敗しても失敗しても、もう、どうにも止まらない。その後も、自然石を使って帯工を建設した。勿論、税金を投入してだ。なぜ、こんなことを繰り返すのだろうか…? 訳がわからん! こんなことを大学教授がよもや指南しているとは信じられない。

  • 撮影:2016年4月10日

この冬にも更なる帯工を建設するという。スリット化もしないまま、帯工を建設(下2枚のスライドの赤線で示した所)すれば、その下流は更に深く掘られて川岸が削られてしまうことは明白である。

写真から分かるように、上流から砂利が流れてこないから岩盤が露出し、そこに巨石が挟まり合って川底の浸蝕が始まり、グランドキャニオン化が起きている。帯工を建設すれば、その下流は更に深く掘られて川岸が削られてしまうことは明白である。川底を安定させる仕組みを根底から失わせるので、もう手に負えなくなる。帯工の提案をしている柳井清治大学教授、渡辺康玄大学教授は、川を壊す事態になることを何故、起こそうとしているのか? 実験の失敗を利用して「コンクリートダムを建設するしか無い」と導きたいのか。ストラテジーを企てる間にもその下流域のインフラで、どんなことが起きているのか、彼らは何も見ていない。

  • 撮影:2005年4月14日

下流では、上流から流れてくる砂利は無くなり小石ばかりで、巨石までが流されて川底はどんどん下がっている。崩れやすくなった川岸は増水の度に崩壊を続けている。崩れた川岸を治めるべき砂利が来ないから、川岸は崩壊した崖のままの姿をしている。川岸が崖化する現象は、ダムが砂利を滞らす為に砂利不足した川で見られる典型的な姿である。

  • 撮影:2007年4月19日

砂防ダムで砂利が止められている為に、下流域では河床低下を起こし、施した巨石水制工は増水の度に基礎が抜かれて崩壊し、跡形もなく流されている。しかし、災害復旧工事費でまた巨石水制工が復活する。まるでゾンビ事業である。

撮影:2012年3月2日

下のスライドを見ていただきたい。上の写真と比較すれば川底が下がって行く様子が分かる。

  • 撮影:2013年8月21日

ご覧の通り、もう壊れている。ダムで砂利を止めている以上、何度、護岸工事を繰り返しても無駄だということが分かる。必要な量の砂利が流れてこないから、砂利不足した中で尚、大きな石も失われ川底は低下する。水制工基礎の砂利が抜かれて、巨石を繋げていた針金はちぎれて崩れ落ち、連結ブロックの裏側は砂利が抜かれて空洞化し、グシャグシャになった。この状況で増水があれば、脇の町道は崩壊し通行車があれば転落する危険もある。

下の写真は道々の砂蘭部橋だ。

砂蘭部川に架かる道々・八雲今金線の砂蘭部橋。橋と道路の取り付け部(橋台)が崩壊している。撮影:2017年8月28日

砂防ダムが砂利を滞らせるから、➡ダム直下から河床低下が進み、➡至る所で川岸が崩れる。➡増水時には川岸の崩壊で発生した土砂と流木が大量に流れ出し、➡流路を妨げて水の流れを撹乱させる。➡大量の土砂や流木は水流をせり上げ水位を上昇させて、➡民家を浸水させ道路や橋をも破壊する。この砂蘭部橋の橋台も危険な事態になっている。橋台が崩壊すれば道路が陥没し、通行車両が転落して犠牲者が出るかも知れない。スリット化事業を先送りにしている河川管理者が招人災になることを、前もって指摘しておく。決して、地球温暖化による想定外の大雨や台風が原因と主張するのは許されない。砂蘭部川での災害規模を大規模化させる布石を打っているのは、あなた方なのだから。

 

 

十勝の災害・現場の取材を怠り、専門家任せで真相が見えないNHK記者

2017年9月1日、NHK「北海道クローズアップ 異常気象にどう備えるか~連続台風から1年~」は、大本営発表の広報をしただけの番組だった。記者は、現場で川を知ることから始めていただきたい。

http://www4.nhk.or.jp/P2866/x/2017-09-01/21/53255/8324605/

河川災害のコメンテーター常連である清水康行教授(北海道大学工学院)が、まるでグランドキャニオンのように川底が深く堀下がった芽室川を背景に、「今まで北海道では大雨が少なく、土砂が堆積したままになっていたが、昨年の台風の大雨により川底が削り取られ、大量に掘られた部分が市街地に流れ、川が氾濫し、被害が大きくなった。」と解説している。川底に堆積していた土砂が10~15mも削り取られて流れ出し、その土砂が下流で災害を発生させたと言う。

しかし、すぐ上流に砂防えん堤が見える。そこから堀下がってることに、疑問を感じて取材をするような記者であれば、真相は…川底の地層が既に剥き出しになっていたところに、大水が押し寄せて、川底の地層が浸食されたのではないか…?と疑問を感じる筈である。

砂防えん堤で土砂が止められてるから、えん堤下流では川底の土砂は流されて既に無い。露出した川底の地層はどんどん浸食されていく。これは、芽室川へ注ぐ支流の渋山川を見れば、よく分かる。芽室川と同じように砂防えん堤の下流側で川底が浸食され、グランドキャニオン化しているのが見られる。NHK記者さん、現場に行くのは億劫だと言うのなら、写真を添えるからよ~く観察してほしい。

大規模な砂防えん堤とその直下の様子
砂防えん堤の直下。
砂防えん堤の直下からグランドキャニオン化が続いている。

川底に敷き詰めたコンクリートブロックの下は、どんどん浸食されるから空洞になって、グシャグシャに崩れている。その下流は、川底がどんどん堀下がり見事なグランドキャニオンのようになっている。下の写真は2009年に撮影したものである。

2009年7月1日
2009年7月1日

これが川底が掘り下がる現象「河床低下」である。河床低下が進むと今度は川岸が崩れはじめる。次に砂防えん堤下流の写真を見てほしい。

川底が下がると「砂山くずし」と同じように川岸の下部が浸食されて、川岸が崩れる。川岸が崩れることで土砂と流木が流れ出すわけだ。川岸の木は倒れ込み、写真右側の垂れ下がったコンクリートブロックは川底に敷設していたものだ。砂防えん堤がもたらす河床低下は非常に危険なのだ。
砂防えん堤のず~っと下流にも砂利を止めるえん堤がある。その下流でも同じように川底が下がって、川岸が崩れている。
この砂防えん堤の下流では、車で通れた道まで崩れてしまった。
川底が下がり、川岸が崩れ続けるので、川幅がどんどん広がっている。こうして膨大な土砂と流木が流れ出すことになる。

次の3枚の写真は渋山川のすぐ隣り、同じ芽室川支流の久山川である。砂防えん堤の直下で著しく川底が堀下がっていたところに、大水の後にどうなったのか?このような現場をしっかりと検証していれば、災害の真相のメカニズムが理解できた筈だ。

中央の右奥に砂防えん堤が見える。その下流では著しく川底が堀下がっている。2015年5月15日に撮影したものだ。
2016年8月の大水のあと、ここにあった砂防えん堤は流されて跡形も無く消えた。ご覧の通り、両岸は崩壊して川幅が極端に広がった。2017年5月20日に上の写真と同場所を撮影したものだ。
ドローンで上空から撮影した映像に、被災前の川幅を赤点線で示したものである。右の長方形が砂防えん堤があったところだ。大水後に両岸ともに大規模に崩壊し、川幅が驚くほどに広がった。既に起きていた著しい河床低下で、川岸が崩壊して土砂と流木が下流に流れ出したのである。

既に著しい河床低下で河岸が崩れていたところに、大水が川岸を大規模に崩壊させて、膨大な土砂と流木を流出させたことが分かる。砂防えん堤まで跡形もなく消えたのだ。その結果、下流に大量の土砂と流木が押し寄せ大水は競り上がって破堤させ、被害は起こった。下2枚の写真は清水町のペケレベツ川だが、全く同じメカニズムで土砂災害が起きている。

清水町のペケレベツ川では落差工(砂防えん堤)の直下から川底が下がり、川岸が崩れている。
清水町のペケレベツ川。落差工(砂防えん堤)から市街地に至る下流では川底が下がり、川岸が大規模に崩壊して、膨大な土砂と流木が流れ出したことが伺える。

河床低下は川岸を崩壊させ、川に面した山の斜面も崩壊させて、膨大な土砂と流木を生み出す怖ろしい現象である。これは、砂防えん堤の下流で見られる現象であることを知っていただきたい。

決して、昨年の台風豪雨で起きた現象ではない。NHK記者さん、あなたは、清水教授が「北海道では今まで大雨が少なく、堆積したままになっていた土砂が流れて市街地に災害をもたらせた」という解説を再検証もせず、鵜呑みのまま番組を制作し放映することは、「被災した人たち」を、「異常気象にどう備えるか」を思案する人たちを、欺くようなものと思いませんか?そして、見誤った検証をすることで間違った治水対策が起きてしまうことに責任を感じませんか?取材とは、説明や現象を読み解く仕事ではないのでしょうか?

以下のfacebook「川の自然と治水を考える会」の9月6日と7日の記事でも同じような指摘がされている。

https://www.facebook.com/川の自然と治水を考える会-526473630754362/

 

サンルダムに7kmもの魚道。これでサクラマス資源は残る?

2017年7月30日の夜、下川町サンルダム工事現場に到着。闇の中に照らし出された巨大な建造物。一瞬、言葉を失い、目を疑った。サンルダムが本当に出来てしまったのだ。

サンルダムの下流側 撮影:2017年7月30日
サンルダムの上流側 撮影:2017年7月30日

サクラマスが群れを成して自然産卵し、産卵環境として申し分のないサンル川だった。次の世代に受け渡して行く遺産でもあった清流サンルの川が、何故、こんなことになってしまったのか? 無念としか言いようがない。夜が明けてからの現場を見るのは辛いが、その行く末を見届け、こんなバカげた事業が二度と起きないように現場から声を上げなければならない。

ぜひ、ご覧いただきたい。呆れた魚道を…。

サンルダムの下流側…左の下の方に見える階段状の魚道が堤体に続いている 撮影:2017年7月31日
サンルダムの上流側…中央下の方に堤体から上流に伸びる魚道が見える 撮影:2017年7月31日
技術屋好みの直線形の水路が魚道である 撮影:2017年7月31日
サクラマスが上るサンル川と単なる水路(魚道) 撮影:2017年7月31日

7kmも延々と続く水路(魚道)を、サクラマスが上るとでもいうのか…?今金町にある北海道電力のピリカダムは当初6kmの魚道が計画されたが、何故か2.4kmを建設したままである。そこに地元の児童を集めてはサクラマスの稚魚の放流を繰り返しているので、魚道の効果はわからないという始末である。また、ピリカダムの湛水湖を海に見立てて生活する降海型のサクラマスが出現しており、生態系への攪乱を招いていることは言うまでもない。

そもそも、るもい漁協が、7kmの魚道をサクラマスがそ上し、資源が保全されると説得されてサンルダム建設を容認したのであれば、そ上する裏付けが全くないまま、前例にない長大な魚道を提案した専門家の責任は重大である。

このサンルダム魚道を提案した専門家の一人、妹尾優二氏は、数年前に桧山の厚沢部川水系小鶉川で中村太士大学教授が、川に負荷を与えない魚道構造についての進言をしていたが、それを振り切って大袈裟で大掛かりな魚道を提案し推し進めた人物である。その結果、サクラマスの産卵場は破壊してしまい、サクラマス資源を減少させている。魚道の影響で川の仕組みがどう変わるのか分からないような先の読めない専門家であった訳だ。それでも反省もなく失態を恥ずかしく思わず、他所で同じ提案だけをするような暴君である。このような愚行を見逃していたのでは、現場の漁師、るもい漁協は次の世代の糧まで失うことになるだろう。日本海側の八雲町熊石地区では、サクラマスの水揚げが減少し、磯焼けが広がり、水産業が衰退し、寂れてしまい、温泉宿の客足が遠のいたという。サクラマス資源は、漁師の生計を支える大事な糧なのだから、サンルダムは要らないと声を上げ続けていただきたかった。本当に残念だ。勿体無いことである。

 

知床ルシャ川の河床路計画は、IUCNの指導反故に値する。

国際自然保護連合(IUCN)は、知床のルシャ川にあるダムによって壊れた川の改善を強く指導した。

その後2017年6月1日、NHK北海道 NEWS WEB「世界自然遺産登録地・知床 ルシャ川の工事前に視察」の河床路建設の報道があった。

出典:NHK・北海道 NEWS WEB「知床 ルシャ川の工事前に視察」

河床路とは、車が川を渡れる(通行できる)ように、川底を平にならし石を組み上げた道路(人工工作物)のことである。川水が流れる中、車のタイヤが川底の窪みにハマることなく、水をかき分けて川を渡ることが出来る。車の重みで壊れたのでは実用性はないから、河床路は強固に石を組んで造られる。この人工物が問題なのは、河床路から下流側は次第に川底が掘られて段差が出来るので、やがて、その段差は大きくなり河床路は崩壊してしまうことである。

これは、すでに岩尾別川で2012年に全く同じ河床路を設置して翌2013年には壊れていることが分かっている。テレビに映って解説している専門家委員たちが示す図の石組の工作物は、すでに5年前に岩尾別川で石組が維持出来ないことが判明した工作物なのである。モニタリングするまでもなく、産卵場の維持は愚か、河床路そのものを壊してしまうことは実証済みなのである。

岩尾別川に設置された石組・撮影:2012年9月2日

同じ場所を翌2013年10月10日に撮影した。下の写真で分かるように、河床路はすべて流されている。

岩尾別川に設置された石組は影も形も無く、すべて流されて消えた・撮影:2013年10月10日

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループの委員たちが、ルシャ川でこれから実験するというが、すでに結果の分かっていることを繰り返すことはつまり、税金の無駄遣いであり、解説する専門家委員たちの知見の無さ、意識の無さ、探究心の無さまで如実に物語っている。

そして、石組の河床路を壊れないように固定してしまうと、河床路の下流側では砂利が流されて広域で河床変動が激しくなり、サケやカラフトマスの産卵場が破壊されることになる。そればかりか、河床路そのものがダムの役割をするため、河床路の上流側では流速が小さくなり、微細な砂が堆積して、サケマスの産卵に適さない河床となってしまうのである。河床路を固定した為に、下流側で河床低下が発生する事象が各地にある。下の写真で分かるように、河床路の下流側では極端に河床が低下し、河川荒廃が進む。河床が変動するような川底は、サケやカラフトマスの産卵に適さないのである。

固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日
固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日

そもそも、河床路は増水した時には車で渡れないのだから、漁民の立場を無視したものである。NHKの報道では、「橋の間口が狭い」ことに原因があるとしているが、それならば「橋の間口を広げる」という発想が、何故出来ないのか?

間口を広げた橋に作り変えれば、川底の砂利移動は自然のままになる。そうなればサケマスの産卵環境は今よりも良くなる。これこそ産卵環境の改善となり、増水時でも漁民が通行できることになる。単純なことだ。橋脚が、河道の中にあるから、川の仕組みがおかしくなる。サケマスの産卵環境を悪化させ、漁師が増水時に通行できないような知床ルシャ川の河床路案は、どう考えても滑稽な計画である。

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループによって進められている「現状よりも悪化する」ことが懸念される自然に似せた「人工工作物」を、わざわざ建設するこの事業報告に、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は疑問を持っていただきたい。漁民の生活と資源の共存出来る「間口を広くした橋梁」にするだけでルシャ川は世界自然遺産に相応しい環境に改善されるのである。

 

須築川・砂防ダムのスリットは、似非スリットだった。

地元漁業者が嘆願していた須築川砂防ダムの撤去だったが…。スリット化されたダムは、どうなっているのか?2017年6月15日に取材した。

高さ9mの砂防ダムに幅3m×深さ3mに切られたスリット。撮影:2017年6月15日

このダムの規模で、幅3m×深さ3mのスリットでは、流速を早めることになる。河川管理者は、幅3mをこのままにして、今後、更に深く切り下げると言うが、それではまるで滝である。河床低下を改善するために、サクラマスの健全な産卵場を回復させるためのスリットだと言うのに、滝つぼを造ってどうするつもりだ。まして、このように狭い幅のスリットでは、すぐに流木で塞がり、スリットの効果は無い。実際、15mを超える流木が転がっていたが、直ぐにこれらが一塊となってスリットが塞がることは、誰にでも解る。

須築川砂防ダムの下に、ダムから流れた15mを超える流木が転がっていた。撮影:2017年6月15日

須築川砂防ダムの下流は、河床低下で河岸が崖化し、河岸の巨木は土台を失って根っこが剥き出しになっている。豪雨の度に、河岸が崩壊し、土砂・流木が大量に流れ出す。ダム下流へ十分な砂利を供給出来ないような、こんな狭いスリット化では、むしろ災害を喚起させる危険な設計だ。

もう長い年月に亘り、河床低下が進行しており、川岸は崖化。「砂山くずし」同様に川岸が崩壊する状況にある。河岸の巨木が倒れ込めば、洪水を撹乱させ、下流の橋の間口を塞ぐ危険な状況である。撮影:2016年9月2日

河床低下で土台が抜かれた川岸は崩れて脆い。河畔の巨木は増水時に簡単に倒れ込む。その流れる先の下流に国道229号線の橋がある。洪水で巨木が橋脚を塞ぎ、橋が崩壊する危険もある。計画当初、河川管理者は「スリットの設計は上部6m、下部4mの逆台形型だ」と言っていた。「流木が通過できるスリットの幅は、流木長の半分」とも説明している。それが、何故?垂直型スリットになったのか…、しかもその幅は、たったの3mである。全く不可思議なことである。

このスリット化事業には疑問ばかりが募る。治水行政にとって、英知を結集して造り上げた財産ダムを壊すなんてあり得ないのだろう。プライドが許さない訳だ。スリットで川が回復したなんてことになったら、一大事である。これまで築いてきたダムを次々に撤去せざるを得なくなっては困る訳だ。この須築川砂防ダムに、似非なスリットをしておきながら、もしもの災害時には、「スリット化したのが原因だ」とすり替えることは、絶対に止めていただきたい。このようなスリットの仕方をした河川管理者あなた方が、見誤っただけのことである。➡(では、どうすれば良いのか?答えは明白)➡洪水で流される流木は、枝先と根っこでは比重が異なるので、枝先が浮き上がり、根が沈む。従って、上部8m、下部6mの逆台形型のスリットであれば流木は傾いて、スリットをすり抜けることが出来る。これで初めて須築川砂防ダムのスリットは、有効に機能することになる。早急に、垂直型スリットは、逆台形型スリットにする必要がある。

「須築川砂防ダムのスリットする目的」を、河川管理者は、担当者は、今一度よく考えていただきたい。ダムで止めている砂利を下流に流して、➡失った川底の砂利を供給して、➡河床低下を改善して、➡サクラマスが産卵出来る環境を戻して、➡漁師がダムが出来る前の漁獲高を取り戻すこと。➡そして、災害を起こさない元の川の仕組みを取り戻すことである筈だ。

 

清水町ペケレベツ川の河床低下の恐ろしさ

河床低下(川底が低下する現象)していると、川岸下部が洪水で浸食されるようになり、ちょうど「砂山くずし」と同じで、川岸が立木もろとも大規模にドサッと崩れ落ちる。そして、大量の土砂と流木を発生させる。土砂・流木が流れる先が、勾配の緩い市街地であれば、ひとたまりもない。大量の土砂が堆積して水位は上昇し、堤防や橋を破壊する。ペケレベツ川で起きた災害は、まさにその現場である。

昨年、2016年8月30~31日の台風10号の豪雨で川が増水し、③の落差工の直下から大規模な川岸の崩壊が発生した。異常に川幅は拡大し、大量に発生した土砂と流木は、洪水を暴れさせながら市街地(赤囲み)へ押し寄せ、住宅を押し流し、多くの橋を壊したのである。当時、テレビの報道番組では、専門家が「山間部で発生した土砂や流木による災害だ。山間部の治水対策が不足しているからだ」とコメントしている。③の上流には、図で示すように多くの落差工と大規模な砂防ダムが2基あるが、それでも不足と言う。

川岸崩壊の起点にある③の落差工。河岸が大規模に崩壊しているのが分かる。撮影2017年5月20日
橋脚の基礎のコンクリートブロックは川底に敷設されたもので、補強されているのは川底が低下している証し。③の位置、右手前の落差工直下から大規模な川岸崩壊が始まっている。撮影2017年5月22日
③の橋から下流の様子。川岸が崩れ、川幅は異常に拡大している。大量の土砂・流木が、ここから発生していることが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸が崩れて異常に広がった川幅。ここから大量の土砂・流木が流れ出したことが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸が崩壊し、大量の土砂・流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日
上流にある落差工直下から崩れた土砂は、大量になって押し流れた。(堆積した土砂を河道左右に盛土している)当時、これ程の土砂で下流は河床が上がり、流木は洪水で暴れながら住宅を押し流し、橋を破壊した。撮影:2017年5月20日

市街地に押し寄せた大量の土砂と流木は、③の落差工直下から川岸が崩壊したことで発生していることが、現場を見れば分かる。

橋脚が埋まるほど大量の土砂と流木が押し寄せた。撮影:2017年5月20日
大量の土砂で河床が上がり、流木が洪水を暴れさせて橋の取り付け部を崩壊させた。撮影:2017年5月20日
押し寄せた大量の土砂で河床が上がり、流木が橋の間口を塞ぎ、橋の取り付け部の道路を崩壊させた。撮影:2017年5月20日

図の①にある「2号砂防ダム」は堤長が300m近くもある巨大なダムである。

③の2号砂防ダムは砂利で埋まっている(満砂)。巨大ダムの特徴は、小砂利と大量の砂・シルトしか流れ出してこない。川を流れ下る砂利の粒径(大きさ)を”ふるい”分けるフィルターの役目をする。つまり、小砂利・砂が大量に流れるようになるのだ。元・筑波大学の池田宏氏は川の模型実験で、砂が大量に流れ出すと下流の巨石が転がり出すことを報告している。即ち、「ダムが、ダムの下流で新たなる土石流を発生させる」ということだ。撮影:2017年5月22日

マスコミは、悲惨な現場の立入りや知る権利、報道する権利の主張は立派にするけれども、安易に専門家に意見を求めるだけで、何故こんなことになったのか、自ら現場に入り、足で稼ぐことはしない。その原因を究明することには意識が薄く、大本営発表ばかりである。知る権利・報道の自由という権利は、広報が目的ではないことを自戒するべきだろう。テレビでコメントしている専門家は、まず治水行政に物申せない立場にある。ニュースを見ていると、専門家もマスコミも被災者に対して、どれほど他人ごとで情け容赦無いものかと憤る。現場をしっかりと検証してくれる専門家も記者も、まず居ないのだから

近年、頻繁に起こる土砂・流木災害は、➡これまで治水目的に造られてきた砂防ダムや落差工によって➡「河床低下」が進行した結果、➡川岸が簡単に崩れ易くなって➡増水時に大規模に川岸が崩れ、➡災害を大規模化させている。

水をコントロールする筈の治水が、何を起こしているか?都合の悪い真実から目を背けてはいけない。川は生きている。

 

新得町の土砂災害の元凶は、パンケシントク川の落差工だった。

昨年、2016年台風10号の降雨で、大量の土砂・流木が新得町市街地に流れ込んだ。JR橋の線路が垂れ下がり、国道を跨ぐ橋の取り付け部も流されて車が転落するなど甚大な被害が発生した。この災害をもたらせた土砂・流木は、一体どこから発生したのか知る為に、2017年5月20日にパンケシントク川を取材した。

①の落差工から著しい河床低下を起こしている。そこから下流に沿って河岸崩壊を連鎖的に起こした形跡が見られた。大量の土砂や流木は、ここから発生したことが分かる。

①から上流を見る。撮影:2017年5月20日
①の少し上流から下流方向を見る。撮影:2017年5月20日
①の落差工直下から河床が下がり、川岸が崩れて大量の土砂と流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日

①の落差工の直下から、下流は著しい河床低下が起きている。川岸は大きく崩壊し、ここから大量の土砂・流木が流れ出したことが分かる。下の写真は図の②の橋である。

②の橋脚には、ブロックが敷き詰められているので、根上がり(河床が下がり橋脚の基礎が剥き出しになること)していることが分かる。河床が下がっている為、川岸は「砂山くずし」のごとく、下部が抜かれて崩壊している。撮影:2017年5月20日
②の橋から下流は川底が下がり、連結コンクリートで護岸されたブロックは、基礎が抜かれて垂れ下がって壊れている。川岸は「砂山くずし」のように連鎖して崩れている。撮影:2017年5月20日
河床低下を起こすと、護岸・護床のコンクリートブロックは容易く剥ぎとられる。ガタガタに壊れたブロックは川岸を削り崩しながら、大量の土砂・流木を発生させる。撮影:2017年5月20日
河床低下は「砂山くずし」のように川岸の崩壊を拡大させ、土砂・流木を大量に発生させていることが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸の崩壊、大量の土砂・流木の産出は河床低下が引き起こす。どの川にも共通した特徴であり、災害の元凶となる危険な兆候である。撮影:2017年5月20日
河床が低下した為に、川岸のコンクリート護岸の基礎が抜かれて、コンクリートブロックが垂れ下がっている。これは、ダムや堰の下流で起こる「河床低下」の共通した特徴だ。ダムが災害をもたらせると言えよう。撮影:2017年5月20日
河床低下の進行が止まらず、川岸の崩壊が拡大する。川岸は垂直な崖化し、かつ、川幅が広がって行くのが特徴だ。ここからも膨大な量の土砂・流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日
大量の土砂・流木が下流域の市街地に押し寄せ、大規模な災害を発生させた。撮影:2017年5月20日
橋の取り付け部の道路は崩壊し、車が転落して犠牲者が出た。撮影:2017年5月20日
JR橋の基礎を破壊し、線路が垂れ下がる被害を発生させた。2017年5月20日

パンケシントク川で起きている河床低下は深刻だ。➡川底が下がり続けている為、➡川岸の崩壊は連鎖しながら大量の土砂・流木を生みだしている。その原因となる河床低下は、落差工を起点にして発生している。つまり、落差工が下流のインフラに甚大な被害を与え、人命まで奪ったことになる。落差工は防災を目的に設置されるものだが、その後の川の仕組みは壊れ、豹変する。防災の言葉とは裏腹な反作用の恐ろしさを知るべきである。

昨年の台風10号による豪雨被害…川の今。

昨年、2016年8月30日から31日にかけて北海道を襲った台風10号がもたらせた豪雨による洪水被害は土砂・流木が流れ出し、甚大な被害を発生させた。新聞・テレビは時々刻々と洪水被害を報道し、専門家たちは山間部に近いところほど被害が大きく、大量の流木・土砂の発生の原因は、山間部の治水対策が不足していると指摘していた。私たちは、流域の自然を知るために、できる限り多くの河川を取材しているが、どの現場でも見えてくることは、「ダムの影響で、河床低下を起こす事よって崩壊を誘発し、災害規模を大きくさせているのではないか」と、思うばかりである。

被害が大きかった河川は、その後、どうなったか?何故、どのようにして災害は起きたのか?2017年5月20から22日に、新得町(パンケシントク川)・清水町(ペケレベツ川)・大樹町(ヌビナイ川)、及び日高町の千呂露川を取材した。

1.新得町のパンケシントク川では、市街地に大量の土砂・流木が流れ込み、橋の取り付け部が崩壊して車が転落するなどの悲惨な被害が発生した。この土砂・流木は一体どこから来たのか?調べるために上流を取材した。それは、一つの落差工によって酷い河床低下が起きているために崩壊した河岸から始まっていることがわかった。

上流の落差工直下。川岸は崩れ、コンクリートブロックはグシャグシャに壊れている。撮影:2017年5月20日
落差工直下から河床低下・河岸崩壊はここから始まっていた。撮影:2017年5月20日
落差工から市街地の方へ下ったところの橋。橋脚がコンクリートブロックで根固めされていることから、河床低下が進行していることが分かる。河床が下がると、川岸の基礎は浸食されるため、「砂山くずし」のように簡単に立木もろとも崩壊する。洪水時に水が溢れ出た痕跡は無く、この「砂山くずし」現象で、川岸が崩壊したことが判る。撮影:2017年5月20日

崩壊した川岸から大量の土砂が発生し、川岸の立木が大量に流れ出したことを示唆する。これらの土砂・流木が市街地に押し寄せたことが推測できる。

 

2.清水町のペケレベツ川でも同様に大量の土砂・流木が市街地に流れ込み、住宅が流されたり、橋の取り付け部が流され、車が転落する悲惨な被害が発生した。土砂・流木はいったいどこから来たのか?調べるために川を辿った。ここでも極端な河岸崩壊が、落差工から始まっていることが分かった。

落差工の直下から大規模な河岸崩壊が見られた。撮影:2017年5月20日
橋脚の回りがコンクリートブロックで根固めされている。河床が低下していることを示唆している。撮影:2017年5月22日
落差工直下から大規模な河岸崩壊が見られ、大量の土砂・流木を産出したことが分かる。撮影:2017年5月22日

市街地のすぐ上流にはたくさんの落差工がある。落差工毎に、崩壊している河岸は土砂流木を産出しながら、まとまって強烈な力で流れ下ったことが推測される。更に最上流には大規模な砂防ダムがある。

川を上って行くとペケレベツ川2号砂防ダム(1993年完成)があった。堤高13m、堤長278mの巨大な砂防ダムだ。この上にも1号砂防ダムがある。撮影:2017年5月22日
ペケレベツ川2号砂防ダム。すでに土砂で満砂となっており、樹林化している。ここから流れ出す土砂の質は写真のような小つぶの砂利か砂やシルトばかりだ。撮影:2017年5月22日

 

3.大樹町を流れる日本一の清流「歴舟川」。その支流のヌビナイ川では大量の土砂・流木が流れ出し、橋の取り付け部が崩壊して車が転落した。被災した住民に話を聞くと、「発電用の古いダムが崩壊し、土砂と流木が押し寄せ、我が家も浸水するのではないかと危険を感じた」と言っていた。

橋の取り付け部が流された上流では、大量の土砂・流木が流れ出した痕跡が残されている。撮影:2017年5月21日

 

4.沙流川支流の千呂露川では、上流の1号砂防ダムの堆砂域で、林道が崩壊し、通行不能となっていた。

沙流川支流千呂露川の満砂の巨大な1号砂防ダム(堤高7.5m、堤長202m)の堆砂域では林道が大規模に崩壊していた。

砂防ダムが満砂になると、堆砂面は平になってその上を流路が変動する。やがて水は山裾にぶつかり、山脚崩壊を起こす。この千呂露川1号砂防ダムで発生した林道崩壊もその顛末である。驚くことに、河川管理者はこのダム堆砂域に堤防を造っていた。

土石流・土砂災害防止を目的とされる「砂防ダム」。

流速を弱めて水流による河床浸食や河岸浸食を防止する「落差工(低ダム)」。

川沿いの山崩れ防止を目的に建設される「治山ダム」。

これらのダムが治水対策を目的に殆どの河川に建設されている。「えっ!こんな場所にも必要なの…?!」と驚くほど多くの場所に建設されているダムだが、それでも専門家たちは治水対策が不足していると言う。原因は不都合な真実として、おざなりである。

ダムは川の水の流れ、つまり、流速を小さくさせるため、➡川本来の砂利の運搬の仕組みを根底から変えてしまう為、➡ダム下流へ必要な砂利が供給されなくなる。➡その結果、ダムの下流域ではどんどん河床が低下していく。➡河床が低下すれば、川岸との落差が開き、増水時には「砂山くずし」のように川岸の基礎が浸食され、➡川岸は立木もろとも崩落して大量の土砂・流木が下流へと流れ出す。

確かに、河床が低ければ増水時の水位が低く押さえ込める。だが、その反動として、こうした大規模な災害の原因となる川岸を崩壊させているのだ。パンケシントク川、ペケレベツ川のいずれも、河岸崩壊を起こした起点である川岸には、水が溢れ出した痕跡は認められなかった。即ち、川岸が崩壊したのは基礎が浸食されたことで起きたことが読み取れる。その結果、下流域の市街地では、河床が上昇して水が溢れ出したことが分かる。そして、河岸崩落で流出した大量の土砂や流木は、家屋や畑をなぎ倒し押し潰す悲惨な被害を拡大させたと見られる。また、ダムが満砂になると、ダム上流は河床が上昇し、広大な平地となる。川水は山の斜面に水流を当てるようになる為、浸食作用によって山は崩壊していく。このメカニズムは、千呂露川1号砂防ダムでも如実に現れている。

管理者の「ダムのおかげで、この程度の災害で済んだ」という常套句は、もはや通じない時期に来ている。近年、頻繁に起きる河川の荒廃は、「ダムの本当の作用」が今になって現れているからではないか。専門家たちが治水対策が不足しているから災害が大きいと指摘しているのは、単なる事業の創出である。被災した人々も、そうしたことに気が付くほど、治水行政は遅れている。

 

 

サクラマス産卵床を破壊する函館建設管理部

砂蘭部川1号砂防ダムのスリット化をする前に、堤体の肉付け工事が始まった。ダムの間口7.6m、深さ4mでスリット化すると、堤体が軽くなるので、その重量分をコンクリートで肉付けて補う必要な工事であると河川管理者は説明している。(下図の赤斜線部分を肉付けする)

砂蘭部川1号砂防ダムのスリット化図・(出典:第8回砂蘭部川河床低下検討委員会)

この砂防ダムの堆砂は樹林化して、もはや陸地となっており、スリット化しても堤体はもともと十分な重量がある。下流側の堤体の基礎が掘られない限りは倒れることなどあり得ない。スリット化後の堆砂は川岸となり、一部は流れ出し、堤体に現状以上の加重はかからない。スリットで水位も大幅に下がり、堤体にかかる水圧は大幅に減少する。従って、堤体の補強は不要であり単なる税金のムダ使いである。

せたな町の「良瑠石川」では、4基の治山ダムの堤体を補強せずにスリット化している。その後、堆砂は樹林化して陸地になり、安定した川岸になっている。川や沿岸は良好に回復し、地元は大きな恩恵を受けている。堤体が倒壊する心配など微塵もない。砂蘭部川河床低下対策検討委員会に於いて、現地視察の申し入れをしたが、拒否された。ダムのスリット化で川が安定した現場を委員に見られたくなかったのだろう。

ダム堤体の強度は過剰なほどに強力なものだ。しかし、函館建設管理部は、「肉付けしなければスリット化はできない」と説明する。堤体の補強の必要性など単なる飾り文句であって、「税金のムダ使いをさせなければ、スリットしてやらないぞ」という町民に対する一種の脅しのようなものである。河床低下がどんどん進んでいる中で、ダムにスリットを入れて砂利を供給する必要があると決断されてから、検討委員会で時間ばかりを稼ぎ、スリット化を1年、また、1年と先送りしてきた。その間にも河床低下は進行し、下流で被害が起きている。その度に支出される国からの災害復旧費は莫大なものだ。ダムのスリットが遅れれば遅れるほど、税金は事業者の采配に委ねられる。

右が町道。河床が下がっているので、巨石水制工で補修した基礎は抜かれて崩れている。ブロック護岸も補修の度に繰り返し崩れている。増水すればひとたまりもなく町道は崩壊する。車が転落する危険性も孕んでいる。撮影:2016年12月23日
道々・八雲~今金線の砂蘭部橋。河床が下がり、袋体床固工はズリ落ち、橋台の基礎が危険にさらされている。道路陥没の危険はないのか。人や車が転落する大事故になりかねない。撮影:2016年12月23日

下流の町道護岸や砂蘭部橋の崩壊の危機が迫る中、何度も補修を繰り返している。これが地方の現実である。公共事業の評価委員会が機能していないから、やりたい放題になっている。砂蘭部川河床低下対策検討委員会には河川学の専門家2人が専門委員として参加している。科学を志す気持ちがあるのなら、真摯に現場を科学してほしいものだ。

河川管理者は、町民の生命財産を脅かし、資源をも奪う。

始まったこのダム堤体肉付け工事を取材すると、サクラマスの産卵床を重機や資材を置いて潰されようとしていた。函館建設管理部は、これまでコンサルにサクラマスの産卵床調査をさせている。にも拘らず、毎度のことのように、調査データを活用しないのである。コンサルに税金でわざわざ調査させた目的は何なのだろうか?現場工事のおじさんが、「着手前に函館建設管理部の責任者が立ち会ったけど、サクラマスの産卵床への配慮は何も言われなかった」と言う。

サクラマスの稚魚が川底から出てくる間に、当該工事で泥が流れれば、川底の石のすき間が泥で塞がる。サクラマスの子どもたちは窒息して全滅である。北海道は生物多様性保全条例を策定し、資源が乏しくなっているサクラマスを危惧しながら、現場では枯渇させるようなことをしている。これから孵化に向けて育まれるサクラマスの卵を潰してまで、この時期の今、工事に着手する判断をした函館建設管理部。こんなことを北海道の河川管理者が繰り返しているから、遊楽部川の南限のシシャモやキュウリウオも、北限の尺鮎も絶滅させてきた。環境破壊を続ける反省無き集団、河川管理者。あなた方の子々孫々の財産をも失っていることをわかっていますか?

1号砂防ダムの上流側にはサクラマス産卵床がある(黄色の円内)。ここを砂利で埋め、重機が通るという。
円内の石の間では、ふ化寸前の卵やふ化したばかりのお腹に栄養をつけたサクラマスの子どもたちがうじゃうじゃいる。それを重機で踏みつぶすのか…。
1号砂防ダムの直下。黄色い円内がサクラマスの産卵床。ここも重機が通るという。これから孵化に向けて育まれる卵を潰してまで、今、工事の着工をする判断をした責任者とは…。

着手された工事に不備があって、その不備を事業者に指摘すれば、工事日程が狂い、業者が困ることになる。河川管理者は、自らの不手際を認めず、「保護団体が口出したからだ」と説明し、業者の不満の矛先を私たちに向けさせる。こうして、私たちは業者から敵視され、悪者にされていく。行政は自らの不手際の責任は取らない。それどころか切羽詰まれば、業者に責任を転嫁して業者を処分するのである。

【参考】もしもあなたが、善意から、事業の不備を行政に指摘したとします。指摘したあなたは、あなたが知らない間に、業者間で悪者にされているかも知れません。あってはならないことですが、行政とはいっても担当者も人間ですから、保身のためにはあなたの個人情報をも業者に漏洩しますので、くれぐれもご注意ください。現場の業者は、工事の発注者の指示通りにしますので、業者側に責任が無い場合が多いのです。行政は指導・監督・検査の責任があるので、問題が生じた場合、適切に業者を指導しなかった行政の手落ちの場合が殆どだと思ってよいでしょう。行政に指摘するだけでなく、業者側の人にも、行政の手落ちや不備を説明した方が、後々によいでしょう。

 

伝えられない二つの真実。南富良野町幾寅の水害。

南富良野町で被災された皆様にはお見舞い申し上げます。

2016年8月31日、南富良野町幾寅市街地で空知川の堤防が決壊した2つの箇所を見て、驚いた。堤防が決壊した2箇所ともが、2007年6月12日に堤防の前にあった河畔林を、すべて伐り払って行われた護岸工事の箇所だったからだ。

今から9年前の2007年6月に行っていた南富良野町空知川の護岸工事は、実に中途半端に終わったまま、次にどこが被災するかが予測できるような工事であった。意図的に、堤防を被災させ、次の工事を生み出すための工事ではないかと疑問を抱いていたことと、河川管理者の自作自演の災害起こしと補修工事興しの事例として取材を行い、記録のために撮影を続けてきた。

2014年6月25日のGoogle Earthの写真・①と②及び③と④の箇所には河畔林が無い。2007年6月12日の護岸工事の際に、河畔林を伐り払った箇所だ。
写真の①②③④で示した箇所には河畔林が無い。2007年6月12日の護岸工事の際に、河畔林を伐り払った箇所だ。※写真内に流域ネットが番号(①②③④)を書き込んでいます。
②から①方向を見る。上流の破堤した堤防で行われていた工事。堤防と澪筋の間にあった河畔林がすべて伐り払われた。
②の位置から①の上流方向を見る。この護岸工事で堤防と流路の間にあった河畔林はすべて伐り払われた。撮影:2007年6月12日
②の破堤した堤防で行われた工事で、堤防と澪筋の間の河畔林が皆伐された。
②の箇所では、堤防と流路の間の河畔林が皆伐された。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間の河畔林をすべて伐り払って護岸工事が行われた。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間の河畔林をすべて伐り払って護岸工事が行われた。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間はすべて河畔林が伐り払われ、護岸工事が行われた。が、大平橋の河畔林は残されている。撮影:2007年6月12日。
堤防と流路の間のすべての河畔林を伐り払って、護岸工事が行われたが、大平橋の河畔林は残されている。撮影:2007年6月12日

堤防と流路の間の河畔林は、堤防に直に水流が当たらないようにクッションとなって、堤防を守る役割がある。その河畔林を皆伐したのだから、増水時には激しい流れが”速い流速のまま”、堤防に押し寄せ、直撃し洗掘させた可能性がある。そして、堤防へ水流を引き込むために、途切れた河畔林の場所で(Google Earthの写真⇒赤点線円)、一気に水位を押し上げることになる。その結果、水は堤防から溢水した可能性が高い。

Google Earth・破堤箇所-002
河畔林を伐採したところに水流が呼び込まれる。その結果、赤線円の河畔林に水流がぶつかり、水位がせり上がる。つまり、河畔林を皆伐したことで破堤の危険が増した。※写真内に流域ネットが図(赤線○)を書き込んでいます。

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2007年当時、北海道開発局石狩川開発建設部は、「壊れた護岸の補修」と「古い護岸の改修」、及び、「流下障害を取り除くために河畔林を伐採」した。河畔林の伐採については、滝川の日本野鳥の会から「繁殖中の鳥はいないので、伐採しても問題はない」というので、影響評価済みの環境に配慮した伐採だと説明していた。

※石狩川開発建設部は平成22年に札幌開発建設部に統合された。

しかし、この2箇所が破堤したのだから、奇異なことだ。

読売新聞・破堤と金山ダム湖
※写真内に流域ネットが数字(①②③④)を書き込んでいます。
Google Earth・破堤箇所-004
破堤した2箇所は護岸工事をした箇所である。上流側は河畔林を伐採したために、堤防側へ水流が直撃するように流れ込む。一方、下流側は堤防へ入り込んだ水が河畔林と大平橋にぶつかって水位がせり上がる。破堤させる「からくり」のように「仕掛け工事」が行われたも同然である。※写真内に流域ネットが図(赤色)を書き込んでいます。

もう一つ重要な証言がある。幾寅在住の知人は、「金山ダム湖から水が空知川の上流へ向かって逆流しているように見えた」と言っている。

Google Earth・金山ダム湖と冠水区域-000・

金山ダム湖から水が空知川上流へと逆流しているように見えたという。空知川の水がダムのためにはけきれず、上流へと水位が上昇していた可能性がある。
凡その冠水区域を図で示す。金山ダム湖から水が空知川上流へと逆流しているように見えたという住民の証言は、水没した市街地と金山ダム湖が一体化していたことを示唆する。金山ダムが空知川の水はけを阻害し、上流へ向かって水位を上昇させたことが破堤の原因と疑われる。※写真内に流域ネットが図(赤色)を書き込んでいます。

読売新聞・破堤と金山ダム湖

時系列で検証すると、この証言と合致するのである。

河川管理者は、破堤の時刻を8月31日午前4時40分と発表。

URLhttp://www.hkd.mlit.go.jp/topics/press/press_h2809/02_gaiyou.pdf

河川管理者は、金山ダムから洪水調節のための放流は、同日午前5時40分から始めたと発表している。

URL: http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/press/press_h2808/31_houdou5.pdf

つまり、破堤した午前4時40分には、金山ダムの水位が上昇していたことになる。空知川の流入部から水位が上流へ向かって、証言の通り目に見えて分かるほど上昇していたということだ。即ち、南富良野町幾寅の水害は、ひとつに「金山ダムの放流操作のタイミングを逸したこと」で空知川の水位を押し上げたこと。もうひとつは「2007年6月12日に行った護岸工事で河畔林を伐採したこと」が、破堤した堤防付近の水位を押し上げるという事実があったからだ。

南富良野町幾寅の水害は、河川管理者である北海道開発局石狩川開発建設部(現・札幌開発建設部)の2つの不手際によって引き起こした「人災」による破堤なのではないか。

北海道開発局石狩川開発建設部(現・札幌開発建設部)は、南富良野町側の防災体制(伝達)の不手際を強調しても、自らが管理するダム操作の不手際や護岸工事の不手際には触れない。そして、メディアも万事のように、河川・防災学者らが「異常気象による水害」という解説に洗脳されたように私たちに映像を提供するだけである。河川・防災の専門家がもしも良識のある科学者であるなら、科学的な原因究明をしなければいけない。住民の証言を検証することもなく、己の驕りに酔いしれた傲慢な科学をしてきたから、同じような災害が多発しているのである。

「人災」を「天災」としておけば、誰の責任も問われることなく平和な解決策なのだろう。しかし、都合の悪い真実を隠せば隠すほど、災害の規模は益々拡大し、今後も更なる被災者、犠牲者を生み出していくだけである。

※ 施工者名を訂正して、お詫びいたします。

誤:「北海道開発局旭川開発建設部」⇒ 正:「北海道開発局石狩川開発建設部」⇒ そして、平成22年に「札幌開発建設部」に統合された。

※読者様の指摘を受けて10月13日に訂正。その後、北海道開発局に確認し、訂正しました。