新幹線トンネル工事の排水問題。その2

2017年11月6日の当会のHP記事に対して、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者から、PAC処理した排水を一時的に溜めて、川に放流する水槽なので、「沈殿槽」ではなく、「放流水槽」であること、「有害重金属含有沈澱物」は、含まれていないと連絡があった。その説明がされると言うので、9日にルコツ工区の現場へ赴いた。

しかし、「PAC処理」と「放流水槽」について改めて説明を受けて、トンネル掘削土による関連処理能力が、こんなにも不十分だったことに愕然とする。

トンネルで掘削した有害重金属(ヒ素・セレン)を含んだ土は、行き場が無く山積みにされている。これは、その土に浸透した水を集める沈澱池。ここに溜められた濁水は、PAC処理施設に送られる。
工事敷地内にはもう一つの沈澱池がある。トンネル内からの出水や、トンネル内で作業する車両に付着した粉塵など、洗ったり降雨で発生した濁水を集める。これらの濁水も、PAC処理施設(奥の建物)へ送られる。
2つの沈澱池から送られた濁水は、ここで有機系凝集剤(PAC)を加えて懸濁物を凝集させて沈澱させる。処理中の水槽内は、泥が凝集されて塊になっている。
PACで凝集処理された水は、この装置に送り出され上水だけが選り分けられる。
沈澱物と水とが選り分けられた上水は、一旦、この水槽に集められ、吸着マットで油性分を取り除いてから、PAC処理施設の外にある「放流水槽」に排水される。
これが「放流水槽」。PAC処理施設と繋がっている緑色の管から水槽を経て、2本の白い管で川に放流する。この白い送水管は、ルコツ川の下流にある浄水場へ伸びている。その浄水場の脇で、川に排水される。
浄水場と排水口。浄水場は地下水を汲み上げて、地区住民の水道水源となっている。

つまり、イラストで解説すれば、このようになる。

左側の緑色の管からPAC処理された水がこの水槽に入り、右側の2本の排水管で川に排水される。だから「放流水槽」だと言う。この「入って、出る」管の位置がおかしいと気づきましたか?綺麗な上水を流すには、2本の排水管は、緑の管口よりも上になくてはならない。

「放流水槽」とは名ばかりで、PAC処理しても、これだけの沈澱物が存在し、沈澱機能を有した水槽は、「沈澱槽」と標記しても間違いではない。何より驚いたことに、水中ポンプを装着した2本の排水管で、底に溜まった沈殿物ごと吸い上げて排水していたことである。この沈殿物について、当会が「有害重金属含有沈殿物」と記事で標記したことに対して、鉄道運輸機構の担当者は、「PAC処理後の沈澱物だから問題は無い」と説明したが、その沈殿物に有害性の有無については調べられておらず、「これから検査に出す」と言う。排水は既に6か月以上も続けていたというのにである。

実際の排水。白濁していたのは、放流水槽の沈澱物を吸い上げて排水していた訳だ。撮影・2017年11月4日

北海道新幹線トンネル工事での濁水処理は、現在、稼働させている処理施設では規模が小さく、沈澱物を取り除くことが出来ないことが露呈した。「処理をしている」という事実だけが免罪符になって、事業者自身「何を排水しているのか」、よくわかっていないのかも知れない。

ヒ素は、岩などの固体に付着したものであれば、PAC処理で除去が可能だが、水に溶融した状態のヒ素は、PAC処理では除去できないとの大学教授の指摘がある。PAC処理後の水、つまり「放流水槽」に沈澱した物質がある以上、処理を免れたヒ素・セレンが含まれたままになっている疑いは濃厚にある。このままでは、地方の小さな町の人が、どんな水を飲もうが、環境が悪化しようが、魚が汚染されようが、所詮は他人ごと。そういう意識しか無いと思わざるを得ないこの現状に、事業担当者、現場責任者も真摯に受け止め、早急の対策と改善を行っていただきたい。

 

 

鉄道運輸機構の嘘。濁水処理は、見せかけだった。

2017年10月26日、北海道新幹線トンネル工事プラント内の視察で、トンネル掘削で出る有害重金属土を含む排水は、「しっかり、配慮して作業する」と工事責任者の所長から説明を受けていた。しかし、その視察後9日目の今日、信じられない排水が行われていることが明らかになった。

八雲町と長万部町の境界でトンネル工事が進むルコツ工区でも、「ヒ素」や「セレン」などの有害重金属含有の掘削土が、いまだ保管場所が決まらないために、工事現場敷地内に管理され、山積になっている。掘削に伴う出水や雨水によって、この有害重金属は川に流れたり土壌に潜り込む。そこで、沈澱槽で浮遊する有害重金属を沈殿させ、川に流さないように沈澱槽の底に堆積させて、堆積物は厳重に保管処理され「有害重金属が含まれていない上水」を排水する……

ところが、なんと驚くことに、沈澱物が堆積している沈澱槽の底を吸い上げて排水していたのである。少なくとも、この日まで沈澱槽の沈澱物つまり、有害重金属含有沈殿物を川に捨てていたことになる。

白濁した排水は、河床への沈澱が認められた。

黄色円内を見れば、川底に沈澱しているのが分かる。

すぐに排水は絞られたが、こんな事が平然と行われていたとは驚きである。直ちに採水した。

これまで視察の度に、鉄道運輸機構は「排水は十分に配慮して行う」と説明していたが、私たちは騙されていたことになる。

沈殿槽は単なる見せかけであり、上図のように信じられない垂れ流しがされていたのである。この事実は、大変な事態になるだろう。漁業者が懸念しているサケやサクラマス、ホタテなどの水産資源への影響どころか、有害重金属含有掘削土の評価や扱いは、人体への影響の有無を基準にしているが、もはや、それすらも危うい。国土交通省河川局、環境省、北海道は指導するだけではなく、全ての工区の排水について点検しなければならない。