北海道の広報紙「ほっかいどう」8月号に、ヒグマ関連の記事が掲載された。
北海道に生息するヒグマの頭数の記載には、1990年5,200頭、それが、2022年12,200頭とある。ヒグマの生息頭数の数値は、恣意的に操作されているとの指摘があり、手放しで信用することはできない。科学の世界とは遠くかけ離れたヒグマ対策が行われていると言えよう。
ヒグマの生息頭数を人為的に操作すると、何が得られるのだろうか…?ヒグマの生息頭数を過大にすることで、ヒグマの出没件数の増加や被害の多発化が裏付けられる。→それを公表すれば、社会的な不安を生み出すことができる。→それが研究機関のデータであれば、マスコミが取り上げて報道することになり、ヒグマ出没騒ぎが、ヒグマの生息頭数増加が原因だと、誰もが考えるようになり、あっさりと、社会に受け入れられる。→かくして、過大なヒグマの生息頭数データは、社会不安を煽ることになり、その結果、北海道の住民の安全・安心な暮らしを守る対策の必要性を喚起して、増加したヒグマの生息頭数を減じる対策が打ち立てられ、ヒグマ捕殺対策が急務となる。
だが、ヒグマ捕殺対策を行うには、鳥獣保護法の縛りが障害となる。ここでも過大な生息頭数のデータが、法の縛りを緩和させることが可能となり、実際に、法の縛りから外すことにも成功している。捕殺には銃器の使用が必要になる。障害となるのが銃刀法の規制だ。ところが、実にタイミングよく、銃刀法規制強化の動きが浮上していた。ヒグマの捕殺には、銃器が容易に使用ができるようにしなければならない。銃刀法規制強化の法改正時には、ハーフライフルの使用の緩和措置をヒグマ研究者である大学教授たちが、国会議員や北海道に働きかけ、規制の緩和措置の要望を申し入れている。かくして、銃刀法改正ではハーフライフルの使用の規制が緩和されることになった。
ヒグマの生息頭数の人為的な操作から見えてきた、鳥獣保護法改正、銃刀法改正、そして、2024年8月21日の「北海道ヒグマ保護管理検討会」ではヒグマ捕殺に拍車がかけられた。ヒグマの生息頭数の人為的な操作と一連の流れ、どれもこれも繋がっている。
これまで専門家たちが40年以上にも渡って、ヒグマ対策をしてきているのだが、いまだ、これといった有効な出没抑止対策の手法は確立されていない。この広報紙を読むと、実態が分かってくる。
「科学的なデータの蓄積や個体数などの把握のための調査研究やモニタリングを行っています。」と、40年以上経ても、まだ、モニタリングの段階にある。ふざけているとしか言えない。
しかも、この調査法の一つである「ヘアトラップ法」は、山野にいるヒグマを「誘引物(エゾシカ肉・サケの切り身・クレオソートなど)」で、わざわざおびき出して(誘引して)いるが、どこで行われているのか具体的な場所を示していない。
なぜ公表しないのか?
今年度(令和6年度・2024年度)に、北海道南部の上ノ国町と松前町にかけてヘア・トラップ調査が行われているが、このヘア・トラップ調査が実施されているという広報は、渡島総合振興局のホームページのどこにも無い。かろうじて「”渡島西部森林室” ”ヘア・トラップ”」で検索してやっとたどり着ける有り様だ。しかし、地図が添えられていないから、どこの場所に設置されているのか知ることは出来ない。
https://www.oshima.pref.hokkaido.lg.jp/sr/ssr/138385.html
自治体では上ノ国町だけが、広報紙に記載をしているが、やはり設置場所が判る地図は添えられていない。
この「誘引物」を使用しての「ヘア・トラップ」調査は、北海道南部に限らず、全道で行われており、莫大な数が設置されている。
北海道の広報紙には、「1 ヒグマに出遭わないために」として、「生ゴミ(コンポスト)などを屋外に置かない」ように広報している。
普段は出て来ることが無い場所に、「誘引物」となる「生ゴミ」があれば、ヒグマが誘引されて出て来るので、遭遇する危険性を生み出すから「ダメ!」と広報している。
しかし、一方では、山野にいるヒグマを餌でおびき出す「ヘア・トラップ」を、釣り、登山、山菜採りなどの人たちが入域する林道沿いに設置しているのである。トラップの設置や回収の容易い林道へと臭いで誘引し、山奥に潜むヒグマまでも出没させるような調査を行っている。恐ろしいことだ。
「ヘア・トラップ」調査に従事する人たちへの作業指示書がある。この指示書には、「ヘア・トラップ」設置場所に到着したら、まず、下車する前にはクラクションを鳴らし、周辺にヒグマがいるかどうかを確認するように指示している。そして、”普段から練習を重ねた”「クマスプレー」や「鉈」を携行するようにも指示している。調査員にはヒグマがヘア・トラップにおびき出されていることを前提にした、実に事細かな手順が示されている。つまり、「ヘア・トラップ調査は、そこにおびき出されたヒグマが出て来ていて、ヒグマと遭遇する可能性が極めて高い調査である」ことを前提にした指示書であることがわかる。だが、釣り、登山、山菜採りなどで入域する人たちには、こうした対応が必要な広報は一切無い。そもそも、「ヘア・トラップ」がどこに設置されているのかすら知らされていないのだから…。
ヘア・トラップが設置されているすぐ近くで、蝶のコレクターに会ったが、そんなことは知らずに、一心不乱に蝶を追っていた。蝶のコレクターは蝶の動きの一点に集中しており、辺りへの気配り、注意は及ばない。付近に「ヘア・トラップ」があるし、それに気がついていないのだから、こうした人がヒグマに襲われるかも知れない。怖ろしい調査手法だ。
「100%安全な対応ではありません」とただし書きを添え、ヒグマが襲い掛かってきた時の対処法が掲げられているが、海外の事例で、たまたま助かったという報告を元にしたに過ぎない。鉈など道具を使って徹底して反撃することは記載されていない。現に、大千軒岳では、消防士がヒグマが襲い掛かってきた際に、手持ちのナイフで反撃し、追い払っている。また、道南のせたな町大成区の山林で山菜採りの人が、ヒグマに襲われた際に、”鉈”で反撃して追い払い、助かっている。反撃用の道具を手にしていたから、身を守ることができたわけだ。北海道は、自分たち身内間には”鉈”を携行し、いざという時に使えるように事前に練習するようにも指導しているのに、ヒグマが生息する山林に入る一般人には”鉈”の携行は勧めていない。
クマスプレーさえ携行すれば、さも効果があるように広報しているが、札幌の三角山では、ヒグマの冬眠穴をうっかり覗き込んだヒグマ対策専門業者が冬眠中のヒグマに襲われたことが報道されたが、クマスプレーを噴射していながら、ヒグマに襲われ、2人が受傷している。怒り高ぶったヒグマにはクマスプレーを吹きかけても効果は無かったわけだ。
ヒグマが生息する山林へ入る際には、人の存在を広域に知らせることができる「フォイッスル」を事前に吹きながら入域し、いざという時のために、反撃用「鉈」を携行して、自分の身は自分で守る意識を持つしかない。ヒグマ研究者の門﨑允昭氏は、「アイヌは隣近所へ行く際にも、両腰にナイフを携行していた」と指摘している。
北海道は、ヒグマはどこにでもいる。北海道そのものがヒグマの生息地なのだ。北海道は、国から交付金を得るために個体数が過大になるように操作し、ヒグマの捕殺をどんどん増やそうとしているが、これは絶対にあってはならない。「ヒグマとの共存」を掲げる北海道のやるべきことは、研究者や専門家に翻弄されていないで、人の生活圏にヒグマが出てこないように出没抑止対策を徹底させることだろう。ヒグマは、学習能力に長けた賢い動物であるのだから…。