須築川・砂防ダムのスリットは、似非スリットだった。

地元漁業者が嘆願していた須築川砂防ダムの撤去だったが…。スリット化されたダムは、どうなっているのか?2017年6月15日に取材した。

高さ9mの砂防ダムに幅3m×深さ3mに切られたスリット。撮影:2017年6月15日

このダムの規模で、幅3m×深さ3mのスリットでは、流速を早めることになる。河川管理者は、幅3mをこのままにして、今後、更に深く切り下げると言うが、それではまるで滝である。河床低下を改善するために、サクラマスの健全な産卵場を回復させるためのスリットだと言うのに、滝つぼを造ってどうするつもりだ。まして、このように狭い幅のスリットでは、すぐに流木で塞がり、スリットの効果は無い。実際、15mを超える流木が転がっていたが、直ぐにこれらが一塊となってスリットが塞がることは、誰にでも解る。

須築川砂防ダムの下に、ダムから流れた15mを超える流木が転がっていた。撮影:2017年6月15日

須築川砂防ダムの下流は、河床低下で河岸が崖化し、河岸の巨木は土台を失って根っこが剥き出しになっている。豪雨の度に、河岸が崩壊し、土砂・流木が大量に流れ出す。ダム下流へ十分な砂利を供給出来ないような、こんな狭いスリット化では、むしろ災害を喚起させる危険な設計だ。

もう長い年月に亘り、河床低下が進行しており、川岸は崖化。「砂山くずし」同様に川岸が崩壊する状況にある。河岸の巨木が倒れ込めば、洪水を撹乱させ、下流の橋の間口を塞ぐ危険な状況である。撮影:2016年9月2日

河床低下で土台が抜かれた川岸は崩れて脆い。河畔の巨木は増水時に簡単に倒れ込む。その流れる先の下流に国道229号線の橋がある。洪水で巨木が橋脚を塞ぎ、橋が崩壊する危険もある。計画当初、河川管理者は「スリットの設計は上部6m、下部4mの逆台形型だ」と言っていた。「流木が通過できるスリットの幅は、流木長の半分」とも説明している。それが、何故?垂直型スリットになったのか…、しかもその幅は、たったの3mである。全く不可思議なことである。

このスリット化事業には疑問ばかりが募る。治水行政にとって、英知を結集して造り上げた財産ダムを壊すなんてあり得ないのだろう。プライドが許さない訳だ。スリットで川が回復したなんてことになったら、一大事である。これまで築いてきたダムを次々に撤去せざるを得なくなっては困る訳だ。この須築川砂防ダムに、似非なスリットをしておきながら、もしもの災害時には、「スリット化したのが原因だ」とすり替えることは、絶対に止めていただきたい。このようなスリットの仕方をした河川管理者あなた方が、見誤っただけのことである。➡(では、どうすれば良いのか?答えは明白)➡洪水で流される流木は、枝先と根っこでは比重が異なるので、枝先が浮き上がり、根が沈む。従って、上部8m、下部6mの逆台形型のスリットであれば流木は傾いて、スリットをすり抜けることが出来る。これで初めて須築川砂防ダムのスリットは、有効に機能することになる。早急に、垂直型スリットは、逆台形型スリットにする必要がある。

「須築川砂防ダムのスリットする目的」を、河川管理者は、担当者は、今一度よく考えていただきたい。ダムで止めている砂利を下流に流して、➡失った川底の砂利を供給して、➡河床低下を改善して、➡サクラマスが産卵出来る環境を戻して、➡漁師がダムが出来る前の漁獲高を取り戻すこと。➡そして、災害を起こさない元の川の仕組みを取り戻すことである筈だ。

 

清水町ペケレベツ川の河床低下の恐ろしさ

河床低下(川底が低下する現象)していると、川岸下部が洪水で浸食されるようになり、ちょうど「砂山くずし」と同じで、川岸が立木もろとも大規模にドサッと崩れ落ちる。そして、大量の土砂と流木を発生させる。土砂・流木が流れる先が、勾配の緩い市街地であれば、ひとたまりもない。大量の土砂が堆積して水位は上昇し、堤防や橋を破壊する。ペケレベツ川で起きた災害は、まさにその現場である。

昨年、2016年8月30~31日の台風10号の豪雨で川が増水し、③の落差工の直下から大規模な川岸の崩壊が発生した。異常に川幅は拡大し、大量に発生した土砂と流木は、洪水を暴れさせながら市街地(赤囲み)へ押し寄せ、住宅を押し流し、多くの橋を壊したのである。当時、テレビの報道番組では、専門家が「山間部で発生した土砂や流木による災害だ。山間部の治水対策が不足しているからだ」とコメントしている。③の上流には、図で示すように多くの落差工と大規模な砂防ダムが2基あるが、それでも不足と言う。

川岸崩壊の起点にある③の落差工。河岸が大規模に崩壊しているのが分かる。撮影2017年5月20日
橋脚の基礎のコンクリートブロックは川底に敷設されたもので、補強されているのは川底が低下している証し。③の位置、右手前の落差工直下から大規模な川岸崩壊が始まっている。撮影2017年5月22日
③の橋から下流の様子。川岸が崩れ、川幅は異常に拡大している。大量の土砂・流木が、ここから発生していることが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸が崩れて異常に広がった川幅。ここから大量の土砂・流木が流れ出したことが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸が崩壊し、大量の土砂・流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日
上流にある落差工直下から崩れた土砂は、大量になって押し流れた。(堆積した土砂を河道左右に盛土している)当時、これ程の土砂で下流は河床が上がり、流木は洪水で暴れながら住宅を押し流し、橋を破壊した。撮影:2017年5月20日

市街地に押し寄せた大量の土砂と流木は、③の落差工直下から川岸が崩壊したことで発生していることが、現場を見れば分かる。

橋脚が埋まるほど大量の土砂と流木が押し寄せた。撮影:2017年5月20日
大量の土砂で河床が上がり、流木が洪水を暴れさせて橋の取り付け部を崩壊させた。撮影:2017年5月20日
押し寄せた大量の土砂で河床が上がり、流木が橋の間口を塞ぎ、橋の取り付け部の道路を崩壊させた。撮影:2017年5月20日

図の①にある「2号砂防ダム」は堤長が300m近くもある巨大なダムである。

③の2号砂防ダムは砂利で埋まっている(満砂)。巨大ダムの特徴は、小砂利と大量の砂・シルトしか流れ出してこない。川を流れ下る砂利の粒径(大きさ)を”ふるい”分けるフィルターの役目をする。つまり、小砂利・砂が大量に流れるようになるのだ。元・筑波大学の池田宏氏は川の模型実験で、砂が大量に流れ出すと下流の巨石が転がり出すことを報告している。即ち、「ダムが、ダムの下流で新たなる土石流を発生させる」ということだ。撮影:2017年5月22日

マスコミは、悲惨な現場の立入りや知る権利、報道する権利の主張は立派にするけれども、安易に専門家に意見を求めるだけで、何故こんなことになったのか、自ら現場に入り、足で稼ぐことはしない。その原因を究明することには意識が薄く、大本営発表ばかりである。知る権利・報道の自由という権利は、広報が目的ではないことを自戒するべきだろう。テレビでコメントしている専門家は、まず治水行政に物申せない立場にある。ニュースを見ていると、専門家もマスコミも被災者に対して、どれほど他人ごとで情け容赦無いものかと憤る。現場をしっかりと検証してくれる専門家も記者も、まず居ないのだから

近年、頻繁に起こる土砂・流木災害は、➡これまで治水目的に造られてきた砂防ダムや落差工によって➡「河床低下」が進行した結果、➡川岸が簡単に崩れ易くなって➡増水時に大規模に川岸が崩れ、➡災害を大規模化させている。

水をコントロールする筈の治水が、何を起こしているか?都合の悪い真実から目を背けてはいけない。川は生きている。

 

新得町の土砂災害の元凶は、パンケシントク川の落差工だった。

昨年、2016年台風10号の降雨で、大量の土砂・流木が新得町市街地に流れ込んだ。JR橋の線路が垂れ下がり、国道を跨ぐ橋の取り付け部も流されて車が転落するなど甚大な被害が発生した。この災害をもたらせた土砂・流木は、一体どこから発生したのか知る為に、2017年5月20日にパンケシントク川を取材した。

①の落差工から著しい河床低下を起こしている。そこから下流に沿って河岸崩壊を連鎖的に起こした形跡が見られた。大量の土砂や流木は、ここから発生したことが分かる。

①から上流を見る。撮影:2017年5月20日
①の少し上流から下流方向を見る。撮影:2017年5月20日
①の落差工直下から河床が下がり、川岸が崩れて大量の土砂と流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日

①の落差工の直下から、下流は著しい河床低下が起きている。川岸は大きく崩壊し、ここから大量の土砂・流木が流れ出したことが分かる。下の写真は図の②の橋である。

②の橋脚には、ブロックが敷き詰められているので、根上がり(河床が下がり橋脚の基礎が剥き出しになること)していることが分かる。河床が下がっている為、川岸は「砂山くずし」のごとく、下部が抜かれて崩壊している。撮影:2017年5月20日
②の橋から下流は川底が下がり、連結コンクリートで護岸されたブロックは、基礎が抜かれて垂れ下がって壊れている。川岸は「砂山くずし」のように連鎖して崩れている。撮影:2017年5月20日
河床低下を起こすと、護岸・護床のコンクリートブロックは容易く剥ぎとられる。ガタガタに壊れたブロックは川岸を削り崩しながら、大量の土砂・流木を発生させる。撮影:2017年5月20日
河床低下は「砂山くずし」のように川岸の崩壊を拡大させ、土砂・流木を大量に発生させていることが分かる。撮影:2017年5月20日
川岸の崩壊、大量の土砂・流木の産出は河床低下が引き起こす。どの川にも共通した特徴であり、災害の元凶となる危険な兆候である。撮影:2017年5月20日
河床が低下した為に、川岸のコンクリート護岸の基礎が抜かれて、コンクリートブロックが垂れ下がっている。これは、ダムや堰の下流で起こる「河床低下」の共通した特徴だ。ダムが災害をもたらせると言えよう。撮影:2017年5月20日
河床低下の進行が止まらず、川岸の崩壊が拡大する。川岸は垂直な崖化し、かつ、川幅が広がって行くのが特徴だ。ここからも膨大な量の土砂・流木が発生したことが分かる。撮影:2017年5月20日
大量の土砂・流木が下流域の市街地に押し寄せ、大規模な災害を発生させた。撮影:2017年5月20日
橋の取り付け部の道路は崩壊し、車が転落して犠牲者が出た。撮影:2017年5月20日
JR橋の基礎を破壊し、線路が垂れ下がる被害を発生させた。2017年5月20日

パンケシントク川で起きている河床低下は深刻だ。➡川底が下がり続けている為、➡川岸の崩壊は連鎖しながら大量の土砂・流木を生みだしている。その原因となる河床低下は、落差工を起点にして発生している。つまり、落差工が下流のインフラに甚大な被害を与え、人命まで奪ったことになる。落差工は防災を目的に設置されるものだが、その後の川の仕組みは壊れ、豹変する。防災の言葉とは裏腹な反作用の恐ろしさを知るべきである。

昨年の台風10号による豪雨被害…川の今。

昨年、2016年8月30日から31日にかけて北海道を襲った台風10号がもたらせた豪雨による洪水被害は土砂・流木が流れ出し、甚大な被害を発生させた。新聞・テレビは時々刻々と洪水被害を報道し、専門家たちは山間部に近いところほど被害が大きく、大量の流木・土砂の発生の原因は、山間部の治水対策が不足していると指摘していた。私たちは、流域の自然を知るために、できる限り多くの河川を取材しているが、どの現場でも見えてくることは、「ダムの影響で、河床低下を起こす事よって崩壊を誘発し、災害規模を大きくさせているのではないか」と、思うばかりである。

被害が大きかった河川は、その後、どうなったか?何故、どのようにして災害は起きたのか?2017年5月20から22日に、新得町(パンケシントク川)・清水町(ペケレベツ川)・大樹町(ヌビナイ川)、及び日高町の千呂露川を取材した。

1.新得町のパンケシントク川では、市街地に大量の土砂・流木が流れ込み、橋の取り付け部が崩壊して車が転落するなどの悲惨な被害が発生した。この土砂・流木は一体どこから来たのか?調べるために上流を取材した。それは、一つの落差工によって酷い河床低下が起きているために崩壊した河岸から始まっていることがわかった。

上流の落差工直下。川岸は崩れ、コンクリートブロックはグシャグシャに壊れている。撮影:2017年5月20日
落差工直下から河床低下・河岸崩壊はここから始まっていた。撮影:2017年5月20日
落差工から市街地の方へ下ったところの橋。橋脚がコンクリートブロックで根固めされていることから、河床低下が進行していることが分かる。河床が下がると、川岸の基礎は浸食されるため、「砂山くずし」のように簡単に立木もろとも崩壊する。洪水時に水が溢れ出た痕跡は無く、この「砂山くずし」現象で、川岸が崩壊したことが判る。撮影:2017年5月20日

崩壊した川岸から大量の土砂が発生し、川岸の立木が大量に流れ出したことを示唆する。これらの土砂・流木が市街地に押し寄せたことが推測できる。

 

2.清水町のペケレベツ川でも同様に大量の土砂・流木が市街地に流れ込み、住宅が流されたり、橋の取り付け部が流され、車が転落する悲惨な被害が発生した。土砂・流木はいったいどこから来たのか?調べるために川を辿った。ここでも極端な河岸崩壊が、落差工から始まっていることが分かった。

落差工の直下から大規模な河岸崩壊が見られた。撮影:2017年5月20日
橋脚の回りがコンクリートブロックで根固めされている。河床が低下していることを示唆している。撮影:2017年5月22日
落差工直下から大規模な河岸崩壊が見られ、大量の土砂・流木を産出したことが分かる。撮影:2017年5月22日

市街地のすぐ上流にはたくさんの落差工がある。落差工毎に、崩壊している河岸は土砂流木を産出しながら、まとまって強烈な力で流れ下ったことが推測される。更に最上流には大規模な砂防ダムがある。

川を上って行くとペケレベツ川2号砂防ダム(1993年完成)があった。堤高13m、堤長278mの巨大な砂防ダムだ。この上にも1号砂防ダムがある。撮影:2017年5月22日
ペケレベツ川2号砂防ダム。すでに土砂で満砂となっており、樹林化している。ここから流れ出す土砂の質は写真のような小つぶの砂利か砂やシルトばかりだ。撮影:2017年5月22日

 

3.大樹町を流れる日本一の清流「歴舟川」。その支流のヌビナイ川では大量の土砂・流木が流れ出し、橋の取り付け部が崩壊して車が転落した。被災した住民に話を聞くと、「発電用の古いダムが崩壊し、土砂と流木が押し寄せ、我が家も浸水するのではないかと危険を感じた」と言っていた。

橋の取り付け部が流された上流では、大量の土砂・流木が流れ出した痕跡が残されている。撮影:2017年5月21日

 

4.沙流川支流の千呂露川では、上流の1号砂防ダムの堆砂域で、林道が崩壊し、通行不能となっていた。

沙流川支流千呂露川の満砂の巨大な1号砂防ダム(堤高7.5m、堤長202m)の堆砂域では林道が大規模に崩壊していた。

砂防ダムが満砂になると、堆砂面は平になってその上を流路が変動する。やがて水は山裾にぶつかり、山脚崩壊を起こす。この千呂露川1号砂防ダムで発生した林道崩壊もその顛末である。驚くことに、河川管理者はこのダム堆砂域に堤防を造っていた。

土石流・土砂災害防止を目的とされる「砂防ダム」。

流速を弱めて水流による河床浸食や河岸浸食を防止する「落差工(低ダム)」。

川沿いの山崩れ防止を目的に建設される「治山ダム」。

これらのダムが治水対策を目的に殆どの河川に建設されている。「えっ!こんな場所にも必要なの…?!」と驚くほど多くの場所に建設されているダムだが、それでも専門家たちは治水対策が不足していると言う。原因は不都合な真実として、おざなりである。

ダムは川の水の流れ、つまり、流速を小さくさせるため、➡川本来の砂利の運搬の仕組みを根底から変えてしまう為、➡ダム下流へ必要な砂利が供給されなくなる。➡その結果、ダムの下流域ではどんどん河床が低下していく。➡河床が低下すれば、川岸との落差が開き、増水時には「砂山くずし」のように川岸の基礎が浸食され、➡川岸は立木もろとも崩落して大量の土砂・流木が下流へと流れ出す。

確かに、河床が低ければ増水時の水位が低く押さえ込める。だが、その反動として、こうした大規模な災害の原因となる川岸を崩壊させているのだ。パンケシントク川、ペケレベツ川のいずれも、河岸崩壊を起こした起点である川岸には、水が溢れ出した痕跡は認められなかった。即ち、川岸が崩壊したのは基礎が浸食されたことで起きたことが読み取れる。その結果、下流域の市街地では、河床が上昇して水が溢れ出したことが分かる。そして、河岸崩落で流出した大量の土砂や流木は、家屋や畑をなぎ倒し押し潰す悲惨な被害を拡大させたと見られる。また、ダムが満砂になると、ダム上流は河床が上昇し、広大な平地となる。川水は山の斜面に水流を当てるようになる為、浸食作用によって山は崩壊していく。このメカニズムは、千呂露川1号砂防ダムでも如実に現れている。

管理者の「ダムのおかげで、この程度の災害で済んだ」という常套句は、もはや通じない時期に来ている。近年、頻繁に起きる河川の荒廃は、「ダムの本当の作用」が今になって現れているからではないか。専門家たちが治水対策が不足しているから災害が大きいと指摘しているのは、単なる事業の創出である。被災した人々も、そうしたことに気が付くほど、治水行政は遅れている。

 

 

サクラマス産卵床を破壊する函館建設管理部

砂蘭部川1号砂防ダムのスリット化をする前に、堤体の肉付け工事が始まった。ダムの間口7.6m、深さ4mでスリット化すると、堤体が軽くなるので、その重量分をコンクリートで肉付けて補う必要な工事であると河川管理者は説明している。(下図の赤斜線部分を肉付けする)

砂蘭部川1号砂防ダムのスリット化図・(出典:第8回砂蘭部川河床低下検討委員会)

この砂防ダムの堆砂は樹林化して、もはや陸地となっており、スリット化しても堤体はもともと十分な重量がある。下流側の堤体の基礎が掘られない限りは倒れることなどあり得ない。スリット化後の堆砂は川岸となり、一部は流れ出し、堤体に現状以上の加重はかからない。スリットで水位も大幅に下がり、堤体にかかる水圧は大幅に減少する。従って、堤体の補強は不要であり単なる税金のムダ使いである。

せたな町の「良瑠石川」では、4基の治山ダムの堤体を補強せずにスリット化している。その後、堆砂は樹林化して陸地になり、安定した川岸になっている。川や沿岸は良好に回復し、地元は大きな恩恵を受けている。堤体が倒壊する心配など微塵もない。砂蘭部川河床低下対策検討委員会に於いて、現地視察の申し入れをしたが、拒否された。ダムのスリット化で川が安定した現場を委員に見られたくなかったのだろう。

ダム堤体の強度は過剰なほどに強力なものだ。しかし、函館建設管理部は、「肉付けしなければスリット化はできない」と説明する。堤体の補強の必要性など単なる飾り文句であって、「税金のムダ使いをさせなければ、スリットしてやらないぞ」という町民に対する一種の脅しのようなものである。河床低下がどんどん進んでいる中で、ダムにスリットを入れて砂利を供給する必要があると決断されてから、検討委員会で時間ばかりを稼ぎ、スリット化を1年、また、1年と先送りしてきた。その間にも河床低下は進行し、下流で被害が起きている。その度に支出される国からの災害復旧費は莫大なものだ。ダムのスリットが遅れれば遅れるほど、税金は事業者の采配に委ねられる。

右が町道。河床が下がっているので、巨石水制工で補修した基礎は抜かれて崩れている。ブロック護岸も補修の度に繰り返し崩れている。増水すればひとたまりもなく町道は崩壊する。車が転落する危険性も孕んでいる。撮影:2016年12月23日
道々・八雲~今金線の砂蘭部橋。河床が下がり、袋体床固工はズリ落ち、橋台の基礎が危険にさらされている。道路陥没の危険はないのか。人や車が転落する大事故になりかねない。撮影:2016年12月23日

下流の町道護岸や砂蘭部橋の崩壊の危機が迫る中、何度も補修を繰り返している。これが地方の現実である。公共事業の評価委員会が機能していないから、やりたい放題になっている。砂蘭部川河床低下対策検討委員会には河川学の専門家2人が専門委員として参加している。科学を志す気持ちがあるのなら、真摯に現場を科学してほしいものだ。

河川管理者は、町民の生命財産を脅かし、資源をも奪う。

始まったこのダム堤体肉付け工事を取材すると、サクラマスの産卵床を重機や資材を置いて潰されようとしていた。函館建設管理部は、これまでコンサルにサクラマスの産卵床調査をさせている。にも拘らず、毎度のことのように、調査データを活用しないのである。コンサルに税金でわざわざ調査させた目的は何なのだろうか?現場工事のおじさんが、「着手前に函館建設管理部の責任者が立ち会ったけど、サクラマスの産卵床への配慮は何も言われなかった」と言う。

サクラマスの稚魚が川底から出てくる間に、当該工事で泥が流れれば、川底の石のすき間が泥で塞がる。サクラマスの子どもたちは窒息して全滅である。北海道は生物多様性保全条例を策定し、資源が乏しくなっているサクラマスを危惧しながら、現場では枯渇させるようなことをしている。これから孵化に向けて育まれるサクラマスの卵を潰してまで、この時期の今、工事に着手する判断をした函館建設管理部。こんなことを北海道の河川管理者が繰り返しているから、遊楽部川の南限のシシャモやキュウリウオも、北限の尺鮎も絶滅させてきた。環境破壊を続ける反省無き集団、河川管理者。あなた方の子々孫々の財産をも失っていることをわかっていますか?

1号砂防ダムの上流側にはサクラマス産卵床がある(黄色の円内)。ここを砂利で埋め、重機が通るという。
円内の石の間では、ふ化寸前の卵やふ化したばかりのお腹に栄養をつけたサクラマスの子どもたちがうじゃうじゃいる。それを重機で踏みつぶすのか…。
1号砂防ダムの直下。黄色い円内がサクラマスの産卵床。ここも重機が通るという。これから孵化に向けて育まれる卵を潰してまで、今、工事の着工をする判断をした責任者とは…。

着手された工事に不備があって、その不備を事業者に指摘すれば、工事日程が狂い、業者が困ることになる。河川管理者は、自らの不手際を認めず、「保護団体が口出したからだ」と説明し、業者の不満の矛先を私たちに向けさせる。こうして、私たちは業者から敵視され、悪者にされていく。行政は自らの不手際の責任は取らない。それどころか切羽詰まれば、業者に責任を転嫁して業者を処分するのである。

【参考】もしもあなたが、善意から、事業の不備を行政に指摘したとします。指摘したあなたは、あなたが知らない間に、業者間で悪者にされているかも知れません。あってはならないことですが、行政とはいっても担当者も人間ですから、保身のためにはあなたの個人情報をも業者に漏洩しますので、くれぐれもご注意ください。現場の業者は、工事の発注者の指示通りにしますので、業者側に責任が無い場合が多いのです。行政は指導・監督・検査の責任があるので、問題が生じた場合、適切に業者を指導しなかった行政の手落ちの場合が殆どだと思ってよいでしょう。行政に指摘するだけでなく、業者側の人にも、行政の手落ちや不備を説明した方が、後々によいでしょう。

 

伝えられない二つの真実。南富良野町幾寅の水害。

南富良野町で被災された皆様にはお見舞い申し上げます。

2016年8月31日、南富良野町幾寅市街地で空知川の堤防が決壊した2つの箇所を見て、驚いた。堤防が決壊した2箇所ともが、2007年6月12日に堤防の前にあった河畔林を、すべて伐り払って行われた護岸工事の箇所だったからだ。

今から9年前の2007年6月に行っていた南富良野町空知川の護岸工事は、実に中途半端に終わったまま、次にどこが被災するかが予測できるような工事であった。意図的に、堤防を被災させ、次の工事を生み出すための工事ではないかと疑問を抱いていたことと、河川管理者の自作自演の災害起こしと補修工事興しの事例として取材を行い、記録のために撮影を続けてきた。

2014年6月25日のGoogle Earthの写真・①と②及び③と④の箇所には河畔林が無い。2007年6月12日の護岸工事の際に、河畔林を伐り払った箇所だ。
写真の①②③④で示した箇所には河畔林が無い。2007年6月12日の護岸工事の際に、河畔林を伐り払った箇所だ。※写真内に流域ネットが番号(①②③④)を書き込んでいます。
②から①方向を見る。上流の破堤した堤防で行われていた工事。堤防と澪筋の間にあった河畔林がすべて伐り払われた。
②の位置から①の上流方向を見る。この護岸工事で堤防と流路の間にあった河畔林はすべて伐り払われた。撮影:2007年6月12日
②の破堤した堤防で行われた工事で、堤防と澪筋の間の河畔林が皆伐された。
②の箇所では、堤防と流路の間の河畔林が皆伐された。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間の河畔林をすべて伐り払って護岸工事が行われた。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間の河畔林をすべて伐り払って護岸工事が行われた。撮影:2007年6月12日
堤防と流路の間はすべて河畔林が伐り払われ、護岸工事が行われた。が、大平橋の河畔林は残されている。撮影:2007年6月12日。
堤防と流路の間のすべての河畔林を伐り払って、護岸工事が行われたが、大平橋の河畔林は残されている。撮影:2007年6月12日

堤防と流路の間の河畔林は、堤防に直に水流が当たらないようにクッションとなって、堤防を守る役割がある。その河畔林を皆伐したのだから、増水時には激しい流れが”速い流速のまま”、堤防に押し寄せ、直撃し洗掘させた可能性がある。そして、堤防へ水流を引き込むために、途切れた河畔林の場所で(Google Earthの写真⇒赤点線円)、一気に水位を押し上げることになる。その結果、水は堤防から溢水した可能性が高い。

Google Earth・破堤箇所-002
河畔林を伐採したところに水流が呼び込まれる。その結果、赤線円の河畔林に水流がぶつかり、水位がせり上がる。つまり、河畔林を皆伐したことで破堤の危険が増した。※写真内に流域ネットが図(赤線○)を書き込んでいます。

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2007年当時、北海道開発局石狩川開発建設部は、「壊れた護岸の補修」と「古い護岸の改修」、及び、「流下障害を取り除くために河畔林を伐採」した。河畔林の伐採については、滝川の日本野鳥の会から「繁殖中の鳥はいないので、伐採しても問題はない」というので、影響評価済みの環境に配慮した伐採だと説明していた。

※石狩川開発建設部は平成22年に札幌開発建設部に統合された。

しかし、この2箇所が破堤したのだから、奇異なことだ。

読売新聞・破堤と金山ダム湖
※写真内に流域ネットが数字(①②③④)を書き込んでいます。
Google Earth・破堤箇所-004
破堤した2箇所は護岸工事をした箇所である。上流側は河畔林を伐採したために、堤防側へ水流が直撃するように流れ込む。一方、下流側は堤防へ入り込んだ水が河畔林と大平橋にぶつかって水位がせり上がる。破堤させる「からくり」のように「仕掛け工事」が行われたも同然である。※写真内に流域ネットが図(赤色)を書き込んでいます。

もう一つ重要な証言がある。幾寅在住の知人は、「金山ダム湖から水が空知川の上流へ向かって逆流しているように見えた」と言っている。

Google Earth・金山ダム湖と冠水区域-000・

金山ダム湖から水が空知川上流へと逆流しているように見えたという。空知川の水がダムのためにはけきれず、上流へと水位が上昇していた可能性がある。
凡その冠水区域を図で示す。金山ダム湖から水が空知川上流へと逆流しているように見えたという住民の証言は、水没した市街地と金山ダム湖が一体化していたことを示唆する。金山ダムが空知川の水はけを阻害し、上流へ向かって水位を上昇させたことが破堤の原因と疑われる。※写真内に流域ネットが図(赤色)を書き込んでいます。

読売新聞・破堤と金山ダム湖

時系列で検証すると、この証言と合致するのである。

河川管理者は、破堤の時刻を8月31日午前4時40分と発表。

URLhttp://www.hkd.mlit.go.jp/topics/press/press_h2809/02_gaiyou.pdf

河川管理者は、金山ダムから洪水調節のための放流は、同日午前5時40分から始めたと発表している。

URL: http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/press/press_h2808/31_houdou5.pdf

つまり、破堤した午前4時40分には、金山ダムの水位が上昇していたことになる。空知川の流入部から水位が上流へ向かって、証言の通り目に見えて分かるほど上昇していたということだ。即ち、南富良野町幾寅の水害は、ひとつに「金山ダムの放流操作のタイミングを逸したこと」で空知川の水位を押し上げたこと。もうひとつは「2007年6月12日に行った護岸工事で河畔林を伐採したこと」が、破堤した堤防付近の水位を押し上げるという事実があったからだ。

南富良野町幾寅の水害は、河川管理者である北海道開発局石狩川開発建設部(現・札幌開発建設部)の2つの不手際によって引き起こした「人災」による破堤なのではないか。

北海道開発局石狩川開発建設部(現・札幌開発建設部)は、南富良野町側の防災体制(伝達)の不手際を強調しても、自らが管理するダム操作の不手際や護岸工事の不手際には触れない。そして、メディアも万事のように、河川・防災学者らが「異常気象による水害」という解説に洗脳されたように私たちに映像を提供するだけである。河川・防災の専門家がもしも良識のある科学者であるなら、科学的な原因究明をしなければいけない。住民の証言を検証することもなく、己の驕りに酔いしれた傲慢な科学をしてきたから、同じような災害が多発しているのである。

「人災」を「天災」としておけば、誰の責任も問われることなく平和な解決策なのだろう。しかし、都合の悪い真実を隠せば隠すほど、災害の規模は益々拡大し、今後も更なる被災者、犠牲者を生み出していくだけである。

※ 施工者名を訂正して、お詫びいたします。

誤:「北海道開発局旭川開発建設部」⇒ 正:「北海道開発局石狩川開発建設部」⇒ そして、平成22年に「札幌開発建設部」に統合された。

※読者様の指摘を受けて10月13日に訂正。その後、北海道開発局に確認し、訂正しました。

函館建設管理部は、直ちに現場に急行し、対策せよ!

函館建設管理部は、直ちに現場に急行し、対策せよ!こんな現場を放置したまま、明日からの台風で泥を流出させれば、責任追及は免れないと覚悟せよ。

「砂蘭部川道単改修工事(特対)河道整正業務委託」事業による工事が始まり、本日、2016年8月29日に現場を取材。またしても泥水対策は無い。呆れたことに、川砂利を採取し、掘った池で砂利を洗っているのだ。これまで、何度も泥水を流さないように申し入れてきた。函館建設管理部が、河川工事の度に濁水処理を怠り、河川に泥を流す度にだ。

台風10号が明日襲来し、30日、31日は大雨となり、河川が増水することがテレビやラジオで繰り返し放送されている。それでもこの有様だ。函館建設管理部は直ちに現場に来て対策せよ!このまま、増水することが分かっていながら、泥を出すことは絶対に許されない。

2016-08-29-B・砂蘭部川の川砂利の採取現場-01
重機で川砂利を採取し、水が溜まった池で洗浄している。撮影:2016年8月29日
2016-08-29-B・砂蘭部川の川砂利の採取現場-02
川砂利を重機ですくい上げ、洗浄しているのだ。撮影:2016年8月29日

工事業者は、「川の流れのすぐ脇で砂利洗浄をするこの手法は、函館建設管理部八雲出張所の吉田明史主査の指導で行っている」と言う。

「増水したら、流れ出しますよね?」と聞くと、「流れ出すことは無い」と業者は言う。川面と洗浄池のレベルは同じ高さだ。雨で増水すれば、どうなるか一目瞭然である。

2016-08-29・加工済・砂蘭部川2号砂防ダム堆砂域で砂利採取・酷い濁り水・KAZ_0026
川砂利を掘って造った池の水で砂利を洗浄しているから、濃い泥水が溜まっている。周りには濁水処理施設は無い。業者は、「作業が終わったら、泥は吸い出す」という。処理する前に雨で川が増水したらどうなるのか…という想定が欠落している。撮影:2016年8月29日
河床に溜まっていた泥を洗浄して集めた池なので、大量の泥だ。周りを土嚢で囲っても無い。増水すれば、ひとたまりもなく流れ出す。撮影:2016年8月29日
河床に溜まっていた泥を洗浄して集めた池なので、大量の泥だ。周りを土嚢で囲っても無い。増水すれば、ひとたまりもなく流れ出す。撮影:2016年8月29日
水面と砂利洗浄池とは同レベルで、間に仕切りは無い。増水すれば洗浄池の泥は流れ出す。撮影:2016年8月29日
水面と砂利洗浄池とは同レベルで、間に仕切りは無い。増水すれば洗浄池の泥は流れ出す。撮影:2016年8月29日

これからの時期、サクラマスの産卵が始まるというのに、この有様だ。水産資源への配慮は、これっぽっちも無い。函館建設管理部は、遊楽部川のシシャモ、キュウリウオ、原種のアユをすでに絶滅させている。もはや資源枯渇が危惧されるサクラマスまで絶滅させるつもりなのか。

砂蘭部川改修工事には、魚類専門家の帰山雅秀氏、河川専門家の渡邊康玄教授(北見工業大学)や、柳井清治教授(石川県立大学)が、協議をするために函館建設管理部に雇われてきたが、現場は見にも来ないし、協議が終われば、後はどうなろうが知ったこっちゃない。あなた方が、工学のどんなに難しい話をしようが、現場がこれでは滑稽なだけである。函館建設管理部に上手く利用されていることの恥を知り、専門家や大学教授の肩書きに、泥を塗っていることを自覚されよ。

 

道民納税者のお金を執行する重責を担う、北海道知事・高橋はるみ様へ

砂蘭部川の著しい河床低下の原因は、砂防ダムにあると認めていた函館建設管理部は、スリット化をする方向で、どのようにスリットするかを検討する「砂蘭部川河床低下対策検討委員会」を今から年前に設置した。ところが、当初はスリットの実現に向けて協議を重ねてきた筈が、いつの間にか「川底の被覆」という議論にすり替わることになる。実に長い長い年月をかけてのダムのスリット化実現の話は、河川管理者と専門家に巧みに軌道修正され、工事に着手したいがために委員会を閉会させたのである。河床低下の原因を除かずに、対症療法的に川底を被覆するのでは河床低下は止まらないと解っていながらである。

事業名「砂蘭部川道単改修工事(特対)河道整正業務委託」  発注者「函館建設管理部」

いよいよ税金のムダ遣い事業が始まった
いよいよ税金を川に捨てる川の工事が始まった。
やってみなければ解らない…そんな事業に血税が使われる。効果無いから血税はドブに捨てられる。こんな事業が現実に行われていることを知って欲しい。
「やってみなければ解らない」…そんな無責任な一言で血税が使われる。効果は無い事業だから血税はドブに捨てられるようなものだ。

河川管理者に「砂防ダムが原因して河床低下が進行している川で、川底を被覆して成功した事例があるのか?」と質問したが、答えは無い。河川の専門家として委員会に参加していた北見工業大学の渡邊康玄教授にも質問したが、「やってみなければ解らない」との答えが返ってきた。この教授は、委員会の席で「軟弱な河床に人工的な構造物を作ったら豪いことになる」と発言し、事例も示していた。被覆すればどうなるかを熟知している学者が、何故、今になって嘘をつかなければならなくなったのか?。こちらが異議を唱えても、教授はだんまりを通し、河川管理者もこれについて何も答えない。これはもう、管理者と専門家の典型的な癒着ではないか。かくして、この教授が「うまく行くかどうかの裏付けは無い」ことを認めているにもかかわらず、この事業が着手された。

この欺瞞はすでに川が暴いている。

川底を被覆をしても絶対にうまくいかないことを現場の川が証明している。下のスライドを見ていただきたい。

  • 2005年6月10日・砂蘭部川2号砂防ダム直下

川底をコンクリートブロックで「被覆」したが…砂防ダムによって砂利が止められている条件下では、ブロックで被覆しても基礎は浸食されて、ブロックはベコベコに壊れるのだ。つまり、砂防ダムの影響が及んでいる下流域で、どんなに川底を被覆してもダムの作用を残したままでは、川底の浸食を防ぐことは不可能である。そればかりではない。ブロックで被覆された下流域では、川底の浸食を防いでいた自然石までもが、すっかり流される。

現場が示すように、河床低下を進行させるばかりか、むしろ、事態を悪化させる全く馬鹿げた事業である。浸食を防ぐことは出来ないことを事前に解っていて、あえて被覆するこの事業は着手前から血税のムダ遣いであることが明らかである。知って知らぬ、見て見ぬ振りをしている河川管理者と専門家は道民の血税を何だと思っているのか。委員として協議に参加させていた道民を欺き、目先の事業を着手させた函館建設管理部は、「北海道の川づくり基本計画」注:①及び「水産資源保護法」注:②にも反する重大な責任問題を起こしているという認識がない。そもそも、砂防ダムを建設したことで、砂利を失い、川底が浸食され、災害が多発するようになったことで、ダムをスリット化する協議会を発足させたのは、函館建設管理部そのものである。

納税者のお金を執行する北海道知事は、このスライドを見て、効果が期待できず、税金のムダ遣いとなるこの事業を即刻見直していただきたい。砂利を止めている既存の2つの砂防ダムを、即時スリット化して下流へ砂利を供給させることが唯一の対処法なのです。血税を投入し、「やってみなければ解らない」といった事業を生み出すだけの負の工作物を作ろうとする河川管理者の判断の誤りを是正していただきますよう、ご英断をください。

砂防ダムで留められているから、砂利が流れて来ないというのに、その下流途中に川底を被覆すれば、そこで更に砂利を止めることになる。その下流は更なる砂利不足になるのは明らかである。下流域では農地が崩壊し、町道が崩壊し、道道(八雲・今金線)の橋が危険に曝される事態になっているというのに、砂利を止めようというのだ。まるで河床低下を促進させる呆れた事業である。砂防ダム建設で生み出した”自作自演”の事業を、反省もなく再び、今、繰り返そうとしている。ムダな公共事業のお手本とも言える典型的な事業である。

高台の農地が崩落したのに、専門家らはこの原因を説明もしていないのだ。
高台の農地が崩落した現場を見ても、専門家たちはこの原因を反故にしたまま説明もしない。

町道崩壊など生命財産に及ぶ災害が多発していることに、委員会協議で専門家たちは全く触れない。地域住民の暮らし、生命財産よりも工事を行うことが目的でしかない。

この対策工事で成功した事例は無し。北見工業大学・渡邊康玄教授が「やってみなければ解らない」と言い切った。つまりは、黒いものには触れさせず、無審議で実施する馬鹿げた事業なのである。「”黒いものを白い”と多数決で決める」現在の民主主義的で善良な委員会で採択されたものである。そして、その委員会を設置したのが函館建設管理部である。

どの地域でも、あたかも住民を護るかのような説明をして行われる河川事業。実は、「川の仕組み」を理解すれば、巧みな自作自演型の事業であることが見えてきます。河川流域の近くに住む人、釣りをする人、川や氾濫原・河畔林にやって来る鳥を、植物を、自然を愛でる人も、その環境が失われないように、あなたが大切に思っている、その川をよく見て知っていただきたいと思います。

 

注:①「北海道の川づくり基本計画」 河川は、水鳥や水生動植物の生息・生育地として重要であるばかりでなく、人々がレクリエーションを通じて安らぐ場でもあります。北海道らしい豊かな自然をもった川を、次代に引き継ぐために策定される。具体的には、道民をはじめ、他の機関との連携のもとに、河川を横断している施設への魚道の設置や改善など、河道の連続性を確保するとともに、河畔に植生を施すことや自然に近い河岸づくりに努め、動植物の多様性の高まる川づくりを進めます。~平成22年7月制定:北海道生物多様性保全計画より抜粋。

注:②「水産資源保護法」 水産動物の採捕の禁止措置や工作物の設置を制限することにより、水産動物の保護培養に適した河川の保全にも努めます。~同、抜粋。

 

 

沙流川の今。2016年7月29日

清流であった沙流川のアイヌの聖地を水没させた違法ダム「二風谷ダム」。ダムは満杯に泥で埋まっている。国の膨大な予算を使って計画された当時の役割を、完全に失っているダムである。

雨が降る度に、沙流川は泥水が流れ、今なおダムは泥を溜め続けている。

二風谷ダム流れ込みには貯砂ダムがあり、橋が架かっている。その橋の上から上流を見た。左が沙流川本流、右が支流の額平川である。額平川は平取ダムが建設中である。
二風谷ダム流れ込みには貯砂ダムがあり、橋が架かっている。その橋の上から上流を見る。左が沙流川本流、右が支流の額平川。額平川の上流では平取ダムが建設中である。
貯砂ダム(堰)を越えて流れ込むひどい泥水
貯砂ダム(堰)を越えて、二風谷ダムに流れ込む酷い泥水。
貯砂ダムを越えて二風谷ダムに流れ込むひどい泥水
貯砂ダムを越えて二風谷ダムに流れ込む酷い泥水。

二風谷ダムは膨大な泥を溜め込んで埋まっている。繁茂したヤナギが陸地化していることを教えてくれている。

ほどんと泥で埋まった二風谷ダムの淡水域。ヤナギが繁茂しているのは浅くなっている証拠だ。巨大なダムなのに、あり得ない光景なのである。もはや、治水能力を失ったダムなのだ。
泥で埋まった二風谷ダムの淡水域。ヤナギが繁茂しているのは浅くなっている証拠。巨大なダムなのだが、あり得ない異常な光景である。もはや、治水能力を失ったダムなのだ。

こうして溜まった泥は、極々微細な為に、濁りはなかなか治まらない。ダムの下流域から河口まで泥を被せ、沿岸域まで埋め尽くしている。

清流・沙流川は、鵡川と並んでシシャモの繁殖河川である。この状況で繁殖が出来る筈もない。昨年、かつてないほどの不漁だったという。年々減少し、さらに資源が危機的な状況になっている原因は、この泥水にあり、その泥水を生み出しているのがダムである。専門家たちが、それに全く触れないのは何故なのか、不思議でならない。

そして、支流の額平川には、新たに「平取ダム」が建設中である。

額平川の支流宿主別川の橋の上から平取ダム建設現場を見る。正面の山が神聖な山「チノミシリ」である。
現在、建設中の平取ダムの上流。(額平川の支流・宿主別川の橋上から平取ダム建設現場を見る)正面の山が、神聖な山「チノミシリ」である。そして、この豊かな流域一帯は、水没する運命を辿る。

平取ダム建設中の額平川も、そこへ合流する宿主別川もご覧のように酷い泥水となっている。これでは、清流・沙流川は更に酷い泥川にされてしまう。沙流川からシシャモの姿が消えるカウントダウンが始まった。

正面の山はアイヌの祈りの場といわれる神聖な山「チノミシリ」である。チノミシリに「穴を穿ち、ダム堤体を取り付け、麓を水没させる」平取ダム。

チノミシリの神の胸は、剥がされて杭を打たれた。
チノミシリの神の胸は、剥がされて杭を打たれた。
神が宿る山、チノミシリに群がる魔の手。
神が宿る山、チノミシリに群がる魔の手。現代人の英知の手?
ダム建設でチノミシリに穴を穿つ代替として、アイヌに贈られた神聖?な看板。
ダム建設でチノミシリに穴を穿つ代替として、祈りの象徴の替わりとして、アイヌに贈られた神聖?な看板。
神聖な山「チノミシリ」が崩れていた。平取ダムが完成すれば、さらに山は崩れることだろう。
神聖な山「チノミシリ」が崩れていく。平取ダムが完成すれば、貯水水域が山裾を浸食し、山は崩れ続け、ダムは瞬く間に土砂で埋まる。埋まれば、また上流にダムを造るとでも?負の連鎖は止まらない。

額平川、宿主別川の酷い泥水は、降雨の度に土砂や流木が後を絶たずして沙流川へと流れ下っている。確かに 平取ダムが完成すれば、その土砂・流木をダムが溜め込む。しかし、それは、瞬く間に膨大な量となり、土砂で埋まり、流木が押し寄せ、雨が降らずとも常に下流域一帯を泥川にさせてしまう。そして、大型台風で起こった大災害を招きかねない。あの二風谷ダムと同じように。

泥流と共に放流口に押し寄せた夥しい量の流木で、放水量が絞られ、二風谷ダムは決壊の危機に直面していたのだろう。これだけの流木が押し寄せれば、放流量を知ることも、ゲート操作も不能の状況にあったのだろう。撮影:2003年8月11日
二風谷ダム。泥流と共に、放流口に押し寄せた夥しい量の流木。放水量が絞られて、湛水域の水位が上昇し、二風谷ダムは決壊の危機に直面した。これだけの流木が押し寄せれば、放水量を知ることは出来ず、放水のゲート操作も不能となることを知る。撮影:2003年8月11日。

ダム下流に平取水位観測所があり、この時の水位は放水量に見合う水位よりも低い値を示していたのだ。驚いたことに、その後、北海道開発局は「計算式が間違っていた」として計算式を変更したのである。そして、二風谷ダムを護るために、下流の住宅は水没したままにされていたのだ。ダムは百害あって一利無し。映像をご覧ください。

二風谷ダムから放流し、水位が上昇しているのに、水門が開け放たれていた。逆流して民家は飲み込まれ、大量の泥を被る甚大な被害を受けた。撮影:2003年8月11日
二風谷ダムは、放水し水位が上昇しているのに、水門が開け放たれていた。放流水は水門から逆流して民家は飲み込まれ、大量の泥を被る甚大な被害を受けた。生命財産を護る筈のダムが、ダムを護る目的の放水を行い、下流の住宅が洪水に飲み込まれ、生命、財産の危機に陥り、住民は逃げ惑うことになったのである。撮影:2003年8月11日。
建設中の平取ダム付近にも大量の土砂が押し寄せ、重機を泥で埋めた。重機を埋めるほどの土砂の量は尋常ではない。撮影:2003年8月12日
現在、建設中の平取ダム付近にも大量の土砂が押し寄せ、重機を泥で埋めた。重機を埋めるほどの土砂の量は尋常ではない。降雨の度に、今でも膨大な土砂が流れてきている。撮影:2003年8月12日。

国土交通省及び北海道開発局(室蘭開発建設部)は、完成後、たった5年で満砂になった二風谷ダムに、これ以上、泥を溜め込まさない為に、上流で平取ダムの建設を進めている。しかし、ダムが完成した後の巨大ダムが引き起こす泥と流木の発生メカニズムは把握しているのだろうか?二風谷ダムの教訓は活かされているのだろうか?

そして、何よりアイヌ民族の暮らし、文化、沙流川流域で暮らす人、シシャモ漁師、次代への自然、資源を支えてきた清流・沙流川の「過去」も、「現在」も、「未来」も、失うことになる。平取ダムが抱えている事の重大さを、冷静に、真摯に現場に向き合い、今一度、振り返って考えていただきたい。

 

またしても泥水の垂れ流し…職務怠慢と脅し

函館建設管理部八雲出張所が遊楽部川の河川工事で、濁水を川に垂れ流していた事実を6月5日に報告したばかりだが、今度は八雲町野田追川の巨大砂防ダム工事で、また濁水の垂れ流しがされている。

2015-12-12・濁水を川に垂れ流し-01・野田追川2015-12-12・濁水を川に垂れ流し-02・野田追川

なぜ、こうも同じ事が繰り返されるのだろうか?

工事現場で濁水の垂れ流しについて保護団体や野鳥の会からも、何度も指摘を受けてきたはずの発注者である函館建設管理部八雲出張所の職員が、「二度と無いように」反省し現場を監督、指導していればこのようなことは発生することはない。職責を果たす「指導」から業者も学び、次の工事に活かせるはずだ。現場の状況は、北海道職員の職務怠慢を示しており、恥ずべき醜態である。

河川法が改正され、環境保全への意識が高まった今日、工事請負業者は環境への配慮に手落ちがあると、入札の制限を受け、仕事に支障が生じる。ここが業者の弱みであり、ここに行政がつけいる傲慢な姿が浮かび上がってくる。何度も繰り返される反省無き行政の仕組みが見えてくる。

昨年(2014年5月24日)、遊楽部川の管理用道路に鉄鋼スラグが敷設されている事実が発覚。当会スタッフが、函館建設管理部治水課へ「河川や地下水へ影響のある場所での鉄鋼スラグの持ち込みは不適切ではないのか」と指摘したところ、「契約では自然石となっている」と回答があった。これは「きな臭いことに巻き込まれたな」と感じていた矢先、業者から当会のスタッフが呼び出しを受けた。業者は当会スタッフ個人の名前を知っていたのだ。北海道函館建設管理部八雲出張所の職員が、指摘した個人名を業者に教え、公務員の守秘義務に違反し、個人情報を伝えていたのである。聞けば、「このことで処分されれば今後、入札が制限されてしまう」との切実な訴えであった。八雲出張所の職員から脅され、業者自ら決着させようとしたのだ。行政から「入札できなくなる」と脅されている業者に呼び出されたわけだから、身の危険を感じることとなった。

この事業を情報公開によって開示請求した。公共事業は工事が終了し、”仕様書通り”に工事が行われたかを”確認”した上で決済される。工事の現場では複数の職員が仕様書通りかを「確認」「監督」「指導」、そして、工事終了後にはさらに仕様書通りかどうかを「検査」し、その上で決済となる。これが血税を扱う行政の職務である。ところが、複数の職員が立ち会いながら、どの段階でも、鉄鋼スラグを発見できなかった。工事後の検査でも見落とすという、あってはならないことが起きていたのだ。

では、なぜそんなことが起きたのか?

理由は簡単だ。「職務怠慢」か「業者との癒着」しかない。行政は業者の弱みにつけ込み、職務上の責任を転嫁して逃れたのだ。今回のこの取材報告で、また業者から呼び出されて怖い目に合うかもしれない。公務員の守秘義務に違反し、個人情報を教えて、業者を送りつけるような職員がいることについて、北海道としての見解を聞きたいものだ。

鉄鋼スラグ

「鉄鋼スラグ」は誰が見ても明らかに違いが分かるものだ。見落としたのは「見ていない」のではなく、”出来レース”だから見る必要もなかったということか。(※現在は、函館建設管理部治水課は、指摘を受けて、”業者の責任で”鉄鋼スラグを回収させている)行政は全く責任を取っていない。当然、職員の処分も無い。

行政が守秘義務に違反して利害関係者に個人名を伝えた行為によって、利害関係者から呼び出されるという実害を受けた。このような事件が起きたことは、刑事上も、民事上もその責任は免れない。争い事を避ける地域社会では、こうしたことが恒常的に行われており、住民同志の対立を喚起して、声を封じ込める手法が普通に行われている。

誰しもが環境が壊されるような工事不備を目にすれば、指摘し、是正を求める声を上げられる地域社会でなければならない。それを報復するかのような対応は、絶対にあってはならないはずだ。工事現場の不祥事や不手際についての行政責任を問い、担当職員は処罰されるという明るい仕組みが当たり前にならなければ何も変わらない。地域を見下し、ふてぶてしく居直り、法令を遵守できない、しない職員がいる限り、同じことが繰り返される。行政職員が保身のために地域も環境も壊す行為は絶対に許されない。