須築川・砂防ダムのスリットは、似非スリットだった。

地元漁業者が嘆願していた須築川砂防ダムの撤去だったが…。スリット化されたダムは、どうなっているのか?2017年6月15日に取材した。

高さ8mの砂防ダムに幅3.5m×深さ3mに切られたスリット。撮影:2017年6月15日

このダムの規模で、幅3.5m×深さ3mのスリットでは、流速を早めることになる。河川管理者は、幅3.5mをこのままにして、今後、更に深く切り下げると言うが、それではまるで滝である。河床低下を改善するために、サクラマスの健全な産卵場を回復させるためのスリットだと言うのに、滝つぼを造ってどうするつもりだ。まして、このように狭い幅のスリットでは、すぐに流木で塞がり、スリットの効果は無い。実際、15mを超える流木が転がっていたが、直ぐにこれらが一塊となってスリットが塞がることは、誰にでも解る。

須築川砂防ダムの下に、ダムから流れた15mを超える流木が転がっていた。撮影:2017年6月15日

須築川砂防ダムの下流は、河床低下で河岸が崖化し、河岸の巨木は土台を失って根っこが剥き出しになっている。豪雨の度に、河岸が崩壊し、土砂・流木が大量に流れ出す。ダム下流へ十分な砂利を供給出来ないような、こんな狭いスリット化では、むしろ災害を喚起させる危険な設計だ。

もう長い年月に亘り、河床低下が進行しており、川岸は崖化。「砂山くずし」同様に川岸が崩壊する状況にある。河岸の巨木が倒れ込めば、洪水を撹乱させ、下流の橋の間口を塞ぐ危険な状況である。撮影:2016年9月2日

河床低下で土台が抜かれた川岸は崩れて脆い。河畔の巨木は増水時に簡単に倒れ込む。その流れる先の下流に国道229号線の橋がある。洪水で巨木が橋脚を塞ぎ、橋が崩壊する危険もある。計画当初、河川管理者は「スリットの設計は上部8m、下部6mの逆台形型だ」と言っていた。「流木が通過できるスリットの幅は、流木長の半分」とも説明している。それが、何故?垂直型スリットになったのか…、しかもその幅は、たったの3.5mである。全く不可思議なことである。

このスリット化事業には疑問ばかりが募る。治水行政にとって、英知を結集して造り上げた財産ダムを壊すなんてあり得ないのだろう。プライドが許さない訳だ。スリットで川が回復したなんてことになったら、一大事である。これまで築いてきたダムを次々に撤去せざるを得なくなっては困る訳だ。この須築川砂防ダムに、似非なスリットをしておきながら、もしもの災害時には、「スリット化したのが原因だ」とすり替えることは、絶対に止めていただきたい。このようなスリットの仕方をした河川管理者あなた方が、見誤っただけのことである。➡(では、どうすれば良いのか?答えは明白)➡洪水で流される流木は、枝先と根っこでは比重が異なるので、枝先が浮き上がり、根が沈む。従って、上部8m、下部6mの逆台形型のスリットであれば流木は傾き、回転しながら、スリットをすり抜けることが出来る。これで初めて須築川砂防ダムのスリットは、有効に機能することになる。早急に、垂直型スリットは、逆台形型スリットにする必要がある。

「須築川砂防ダムのスリットする目的」を、河川管理者は、担当者は、今一度よく考えていただきたい。ダムで止めている砂利を下流に流して、➡失った川底の砂利を供給して、➡河床低下を改善して、➡サクラマスが産卵出来る環境を戻して、➡漁師がダムが出来る前の漁獲高を取り戻すこと。➡そして、災害を起こさない元の川の仕組みを取り戻すことである筈だ。

 

産廃ガレキの放射線量データ

ダムのスリットは「堆砂物に含む泥や有機物が沿岸に流れ出すから、漁場を汚染させる」と言った事業者が、その川に「産廃ガレキ」を持ち込み、増水時に大半を沿岸に流出させた。

産廃ガレキを川に持ち込んだ事業者:北海道渡島総合振興局函館建設管理部八雲出張所及び今金町出張所

産廃ガレキを持ち込まれた川:須築川。北海道指定のサクラマス保護河川。

漁師の念願だった須築川砂防ダムのスリット化が決まり、その工事に着手しはじめた矢先のことだ。作業用道路が造成されたが、流水が当たる水衝部だった為、春の増水で大半が流された。その大量に流出した材料が、何と「産廃ガレキ」だったのである。

河川管理者は、砂防ダムをスリット化すると、堆砂物が沿岸に流れ込み、漁場が損なわれ、隣りの島牧村の沿岸へも影響を与えると説明し、スリット化に難色を示していた。ダム堆砂物にはヘドロがあり、産廃だからそのまま海に流せず、その処分に莫大な費用がかかるとも説明していた。その本人が、自ら産廃ガレキを海に流したのである。

写真のように産廃ガレキは細かく砕かれたものが使用されている。水衝部だから、増水すれば浸食されて流されるのは自明の理。河川管理者がそんなことも分からない筈がない。長年、難色を示していたダムのスリットが、漁師の願いで、ようやく実現しようとする中で、スリットの準備にかかる作業の矢先がこれでは、産廃ガレキを増水に乗じて海に投棄処分した「嫌がらせ」としか思わざるを得ない。管理者がこの程度の認識でしかないから、保護河川からも海からも、自然資源は消えていくばかりだ。

2015-06-07・須築川・工事用道路に産廃がれきが使

2015年7月6日、産廃ガレキの線量を計測した。

2015-07-06・加工済・須築川・国道橋付近・産廃の無いところ・0.09マイクロシーベルト・KAZ_0046
比較の為、須築川の国道229号線橋付近の産廃ガレキの無いところで計測。
2015-07-06・加工済・トリム・須築川・国道橋付近・産廃の無いところ・0.09マイクロシーベルト・KAZ_0046
産廃ガレキの無いところは、0.09マイクロシーベルト。
2015-07-06・加工済・須築川・産廃・0.14マイクロシーベルト・KAZ_0238
国道229号線から上流、須築川砂防ダムまでの産廃ガレキの作業用道路で計測。
2015-07-06・加工済・トリム・須築川・産廃・0.14マイクロシーベルト・KAZ_0242
産廃ガレキの有るところは、0.14マイクロシーベルト。

取材で移動中、比較の参考に線量の値を計測した。

八雲町市街地では0.04マイクロシーベルト。

八雲町から北桧山へ抜ける「日進峠」では0.09マイクロシーベルト。

北桧山市街地やせなた町市街地では0.09マイクロシーベルト。

須築川の国道229号線橋の産廃ガレキの無いところでは、0.09マイクロシーベルト。

須築川の上流、須築川砂防ダムまでの間の産廃ガレキの作業用道路では0.14マイクロシーベルト。

産廃ガレキの有り、無しで、同じ河川内の線量に大きな違いが見られた。この違いは、何を意味するのかお分かりだろうか。