茂辺地川サケ獲れず…「サケ祭り」中止。

函館近郊の北斗市上磯地区にある「茂辺地(もへじ)川」では、サケの遡上を見に多くの人が訪れ、観光名所になっている。北海道で民間のサケのふ化場がつくられた川としても知られている。

URL:茂辺地川 | 流域の自然を考えるネットワーク

2025年4月28日、国道228号線を走行中、茂辺地川に架かる橋から、根っこ付きの流木が大量に河原に散乱しているのが見られた。

2025年4月28日撮影
国道228号線茂辺地橋の橋脚には根っこ付き流木がまといついていた。撮影:2025年4月28日

当然、海にも流れ込み、茂辺地川河口の浜辺は、大量の根っこ付きの流木が打ち寄せられていた。

右の道路が国道228号線。
茂辺地川河口の砂浜には根っこ付きの流木が散乱していた。撮影:2025年4月28日

これだけの根っこ付き流木が沿岸に流れ出しているのだから、漁具被害、船舶への影響も少なからず発生していることだろう。

流木で被害が発生すれば、報道は「流木被害」という表記になるのだが、この「流木」という言葉について、意識していただきたいことがある。この流木が単なる流木ではなく、「根っこ付き流木」であることだ。つまり、「根っこ付き流木」は、山や川岸の立木が土台もろとも流れ出した証拠で、川岸の崩壊や川に面した山の斜面の崩壊が発生していることを物語っている。

この「根っこ付き流木」が、どこから発生したのか?上流の状況を見ていただきたい。

川岸が崩れ落ち、立木が川に倒れ込んでいる。

着目点は、川岸の状況だ。川岸が崩れ落ちて垂直に崖化している。川底が下がり、水流が下部を浸食すれば、ちょうど「砂山くずし」のように、上部が立木もろともにドサッと崩れ落ちる。まさに、川岸が崩れ、立木が倒れ込んでいる現場である。

根っこ付き流木が河原に散乱している。
根っこ付き流木が多数見られる。
連結ブロック護岸も、川底が下がったために、基礎部の砂利が抜かれ、ブロック護岸の裏側の砂利・土壌までが抜かれて、壊れてベコベコになっている。
連結ブロック護岸も裏側の砂利・土壌が抜かれ、ベコベコになって、水流によって剥ぎ取られている。川底が下がっていなければ、基礎の砂利も抜かれず、裏側からも砂利や土壌が抜かれることも無い…即ち護岸する必要も無い。
河原のあちこちに、根っこ付きの流木が散乱している。
まさに、河床低下のなせる技、「砂山くずし」同様の崩壊だ。この川岸は本来河原だったと思われるが、河床低下と共に陸地化し樹林化した川岸のようになっている。
川底が下がり、川岸は下部の砂利が抜かれて、立木の根っこがむき出しになっている。立木は倒れ込む寸前となっている。

この立木のある川岸は、本来は水に浸るような河原だったのだろう。しかし、河床低下に伴い、陸地化し、樹林化してしまい、見た目には川岸のように見えるようになったと思われる。

多くの河川で、川底が下がり、本来河原だったところが、水に浸からなくなって陸地化し、樹林化していることを知っていただきたい。

茂辺地川支流湯ノ沢川の上流には大規模な砂防ダムがある。その下流では川底が下がり、川岸の崩れがあちこちで見られている。

上記の写真は、茂辺地川支流湯ノ沢川で、上流には巨大な砂防ダムがある。ダムの下流一帯では川底が下がり、川岸の崩壊が各所で発生している。河床低下は、道路の崩壊をも発生させる。

湯ノ沢川沿いの道路では河床低下によって下部が浸食され、川岸が崩れ落ち、道路崩壊の危機を迎える事態になっている。

「川底が下がったらどうなるのか…?」

これを意識して、川を観察していただきたい。

川岸の崩壊は、土砂が川に流れ込み、ひどい泥水を発生させる。その泥水は、川底に砂・微細な砂・シルトを沈澱堆積させ、河口から海域に流れ出し、海底に砂・微細な砂・シルトが沈澱堆積する。

その結果、川では、川底の透水性が失われて、魚類の繁殖がうまく行かなくなり、サケやサクラマスなど、多くの魚が減少し、あるいは絶滅する。茂辺地川の「サケ祭り」が中止されたのも、至極当然のことだろう。一方、海域では、晴れた日でも、波によって沈澱・堆積している砂・微細な砂・シルトが巻き上げられて、海は濁り、透明で透き通るような青い海が見られなくなる。海底の石や岩肌はうっすらと埃を被ったように、砂・微細な砂・シルトで覆われ、海藻の胞子は砂・微細な砂・シルトに付着しても、根を張ることができず、生育不能となる。いわゆる磯焼け現象だと言えよう。

茂辺地川の河口海域の状況を見て知るために、ドローンで撮影した写真を見ていただきたい。(国土交通省及び函館空港事務所ドローン飛行に関する「調整」済

茂辺地川河口
茂辺地川河口の東側、函館側には岩礁が広がっている。
茂辺地川河口
茂辺地川河口の西側海岸。

晴れた日である。なのに、海は砂・微細な砂・シルトが波で舞い上がり、濁っている。透明で透き通って当たり前の青い海は見られなくなっている。川から海に流れ込んだ砂・微細な砂・シルトが、海を濁りの海に変えている。河口海域の環境が変えられているということは、水産資源の魚介類への影響もあることだろう。

「サケ祭り」が中止になるほどにサケが減少したこと、その原因について、地元の漁師さんたちは、サケでひしめき合っていた頃の茂辺地川を思い浮かべて、「どこが、どう変わってしまったのか?」しっかりと思い起こし、検証していただきたいものだ。

川には「命育む」仕組みがある。この仕組みが壊れたのではもともこもない。