「南富良野町の水害」その後…②

空知川上流のルオマンソラプチ川。上流で被災した南富良野町串内地区の町営育成牧場へ通じる橋は補修され、すぐ上に巨大な治山ダムが建設された。その更に上流にも2基の治山ダムが建設された。

手前が補修された串内育成牧場へ通じる橋。すぐ上に治山ダムが建設された。撮影:2018年5月14日
建設された治山ダム直下に、石積みの床固工が敷設されている(円内)。撮影:2018年5月14日

建設された治山ダム直下に、「石積み床固工」が敷設された。治山ダムは砂利を止める。そのため、その下流では川底の砂利が流されて川底が下がる。石積み床固工もダムと同じ作用があるので、より一層下流の川底を掘り下げることになる。そればかりか、石積み床固工は両岸をも浸食させることは、今や常識になり誰もが知る厄介な構造物である。治山ダムだけでも川を荒廃させるというのに…川底の浸蝕を促進させ両岸をも浸蝕させる石積み床固工を、一体誰が発案し、敷設させたのか?まさか専門家の発案とは思われない。しかも、その先には補修したばかりの橋がある。わざわざ橋を再被災させる為のあり得ない改修方法である。

建設された治山ダムと石積み床固工のすぐ下流には補修されたばかりの橋がある。橋の取り付け部の基礎が岩盤に固定されていない(赤丸)。基礎の砂利が抜かれて再被災する。撮影:2018年5月14日

補修された橋と道路の取り付け部は岩盤に固定されていない。新設したダムと床固工の影響で、河床は必ず下がる。橋と道路の取り付け部は砂利が抜かれて崩落するだろう。

橋のすぐ上に治山ダムを建設したことは大きな間違いである。いくつかの橋が流木で被災したことから、流木を止めるつもりで治山ダムを建設したのなら、大きな過ちだ。治山ダム+石積み床固工で、流木は止められない。むしろ河床低下を促進させて橋を流し、川岸を崩して新たに土砂・流木を生み出すばかりで、災害を拡大させるだけである。

想定を超える増水があっても、河畔の樹林の全部が流されるわけではない。流れてきた流木を捕捉する重要な役割を担っている。撮影:2918年5月15日
流木を捕捉している。撮影:2918年5月15日
河畔林は膨大な量の流木を捕捉しており、流木を捕捉する重要な役割を担っているのがよく分かる。撮影:2018年5月15日
多くの流木を捕捉している。撮影:2918年5月15日

河畔の樹林は、洪水に耐えられなかった立木が流れ下るが、一方では写真のように混み入った樹林が、多くの流木を捕捉する。樹林が捕捉した流木は、水衝部で樹林に張り付き、やがて自然の護岸にもなる。想定を超えた増水で新たな流路ができたが、流木の捕捉能力は維持されている。むやみに治山ダムを建設しないで、川の安定化を見守り、川の復元力に任せるべきだったのではないだろうか。川の仕組みを抑え込む強引なやり方は返って災いを大きくする。

串内の下流では、写真のように岩盤で囲まれた両岸の樹林が押し流された痕跡が落合地区まで至る所で見られた。串内から下流は両岸が岩盤で狭められた回廊のようになっている。増水時にはこの区間で水位が上昇して両岸を浸食し、樹林が流されたと思われる。下流の流木被害は串内で発生した流木ではなく、串内の下流で発生した流木と考えるのが理にかなっている。どのような検証が行われたのか、知りたいところだ。しっかりとした検証がされていれば、串内の治山ダムの建設は不要だっただろう。

右から流れているのがルオマンソラプチ川。串内牧場のずっと下流のトマム川(左手から流れている)との合流点。両岸は岩盤で流路が狭められている。撮影:2018年5月19日
落合の採石場付近のルオマンソラプチ川。両岸が岩盤で囲まれ、狭い回廊となっている。撮影:2018年5月19日

串内の治山ダムは5基建設する計画だが、現在、串内牧場へ続く橋のすぐ上の治山ダムの他1号床固工、2号床固工の合計3基が建設された。

1号床固工。撮影:2018年5月14日
2号床固工。撮影:2018年5月14日

串内の町営育成牧場は森林を皆伐した牧草地となっている。その為、降雨に対する保水能力は著しく低くなっていることは言うまでもない。2016年8月16~31日の総雨量は888㎜だ。それでも、川沿いには樹林が多く残されている。幾度かの洪水の洗礼の後、流木の発生は減り、やがては落ち着く筈だっただろう…しかし、新しい治山ダム建設と樹林を伐採し川幅を広げたことで、むしろ自然の理に反して、浸食を促進させることになったことを危惧する。今後、どのように変遷していくのか、取材を続ける。

 

 

「南富良野町の水害」その後…①

「伝えられない二つの真実。南富良野町幾寅の水害」:(2016年10月10日の当HP記載)甚大な水害から2年を経た。南富良野町幾寅の空知川では堤防が強化された。河畔林を皆伐し、川底の石は大小ともに取り除かれ、河道は大幅に広げられた。

空知川の破堤した堤防は補修された。残った河畔林はすべて伐り払われ、河床の砂利をさらって河道は大幅に広げられた。  撮影:2018年5月20日
川底の砂利をさらって、川幅が広げられた。撮影:2018年5月20日
川底の砂利をさらって川幅が広げられた。撮影:2018年5月20日
川底の砂利をさらって川幅が広げられた。撮影:2018年5月20日

この改修で、気がかりなことがある。確かに川幅を広げると効率よく水が集められ、下流へと送られる。しかし、その先に水を貯める金山ダム湖があり、今よりも一層速く貯水面が上昇するからだ。洪水時にダムは下流の水害防止のために貯水する。貯水面は確実に上昇し、市街地へと迫っていくことになる。北海道開発局では下記のような資料を公表している。

出典・北海道開発局・平成28年8月北海道大雨激甚災害を踏まえた今後の水防災対策のあり方(案)平成29年2月27日
堤防が強化された空知川。幾寅市街、そして金山ダム湖が見える。撮影:2018年5月20日。

図示されているように、金山ダムが洪水を貯め込めば貯め込むほど貯水面が上昇し、幾寅市街地へ迫っていくことが分かる。

水害当時の金山ダム湖の貯水と放流のグラフを見てほしい。

出典・北海道開発局・平成28年8月北海道大雨激甚災害を踏まえた今後の水防災対策のあり方(案)平成29年2月27日

平成29年2月27日に公表されたこのグラフから、8月31日の午前0時過ぎに流入量がピークに達し、貯水量は急激に増加していることが分かる。住民の話では、午前1時30分過ぎには濁水が市街地に流れ込み、押し寄せてきた洪水から逃げたと言う。つまり、午前1時30分にはすでに破堤していたことが伺える。しかし、開発局は破堤した時刻を午前4時40分としており、住民の声とのズレがある。洪水で水位が上昇していた空知川は、金山ダムの貯水面の上昇に伴って水位が一層押し上げられていたと言える。加えて、破堤した場所は右カーブした左岸で、元々そこにあった河畔林は2007年6月に皆伐している。ここから下流側の左岸にある河畔林に夥しい流木が押し寄せ、水位をせり上げたことは間違いない。こうした状況が競合して水位が急上昇し、堤防から溢水したといえる。上の読売新聞社が撮影した濁流写真は、破堤してから8時間後の写真だ。金山ダムの貯水面が、かなり下がってからの写真であることに留意していただきたい。

これに対し、北海道開発局札幌開発建設部は「平成28年度・平成28年台風大10号による南富良野町幾寅築堤の被災状況とその特性・6.被災メカニズム(下流決壊箇所)の(3)ダム貯水位の影響」で、「金山ダムの最高貯水位と幾寅市街地の地盤高の差は4~5m程度あり、かつ、空知川は急勾配であるため、金山ダムの貯水位は幾寅市街地までは及ばない」とし、「堤防の決壊を確認した直後に、大平橋下流で射流が発生していた」という理由で、射流の写真(8月31日AM5時ごろ撮影)を添えて、それを説明している。だが、金山ダム湖の最高貯水位(345m)は市街地に水が押し寄せた8月31日1:30のデータではなく、何故か水が引いた後、約20時間後の21:00のデータを使っている。その上、金山ダム湖の水位データが、遠く離れた流入部のデータと同じであるはずもなく、おかしなデータなのである。

出典:右の文献の一部を拡大したもの・平成28年度・平成28年台風大10号による南富良野町幾寅築堤の被災状況とその特性・6.被災メカニズム(下流決壊箇所)の(3)ダム貯水位の影響北海道開発局札幌開発建設部
出典:平成28年度・平成28年台風大10号による南富良野町幾寅築堤の被災状況とその特性・6.被災メカニズム(下流決壊箇所)の(3)ダム貯水位の影響北海道開発局札幌開発建設部

午前1時30分、金山ダムは下流の洪水被害を防止するために貯め込めるだけ洪水を貯め込んでいた時間だ。洪水調節のための放流は、金山ダムへの流入量がピークを超えた午前5時40分から始めたという。実際は、破堤時刻の午前1時30分には貯め込んでいた金山ダムの貯水面は上昇の一途にあり、幾寅市街地へ迫っていた筈だ。また、「射流」があったという説明も辻褄が合わない。実際に破堤した時刻から約5時間も経過し、貯水面の水位が既に下がっている午前5時頃の確認となっているのである。市街地の冠水や破堤時に貯水面が影響していないという説明に整合性がない。

もう一つ、腑に落ちないことがある。北海道開発局は冠水した幾寅市街地をドローン映像で公表しているが、金山ダムの貯水面が写っている映像・写真は一切ない。金山ダムの貯水面と幾寅市街地が冠水した関連性に関わる映像は、公開できないということだろうか。下流域の水害防止を目的に放流を我慢した。そのためにダムの貯水面の水位が上昇。破堤を誘引し、幾寅市街を水没させ、甚大な被害を発生させたことは拭えない。今後、このような水害を起こさないために、隠すことなく正確な検証が必要である。

 

 

須築川砂防ダムの段階的スリット検証②

せたな町の須築川砂防ダムのスリット化は段階的に行われている。昨年は第一段階として、高さ9mの堤体に間口3m×深さ3.5mのスリットがあけられた。そして、2018年2月に第二段階として、1mを切り下げるという。

須築川は北海道指定の「サクラマス保護河川(禁漁河川)」である。スリット化が終わるまではサクラマスは砂防ダムの上流に上ることは出来ない。サクラマスのライフサイクルは3~4年だ。サクラマス資源の復活を目的にしたスリット化工事に、3年以上かかれば、資源は枯渇することになる。当会は、2018年1月31日に宮崎司代表と河川管理者である渡島総合振興局函館建設管理部今金出張所へ赴き、サクラマス資源復活のため、スリット切り下げ量の増加と3年以内の完成を目指すように申し入れを行った。

第二段階のスリット化工事が終わり、2月16日に現地を視察した。申し入れが聴許されたのだろうか、切り下げ量は1.7mになっており、合計5.2mまで切り下げられた。これで全スリットまで残り3.8mだ。今年度中に切り下げが完了すれば、資源の復活が期待できそうである。

須築川砂防ダムスリット化工事現場の入口看板。漁業資源である「魚が遡上出来るようにしています」と掲げられている。撮影:2018年2月16日
工事関係者から説明を受ける当会代表宮崎司。撮影:2018年2月16日
堤体は3,5m切り下げ後、更に1,7m切り下げられた。撮影:2018年2月16日
スリット化で切り取られたコンクリート塊。撮影:2018年2月16日
これが堤体のコンクリートを切るワイヤーソーだ。太さ2cmほどのワイヤーに小さなダイヤモンド粒子を埋め込んだ鉄のリングがたくさん付いている。このワイヤーを堤体に穿った穴に通し、機械でぐるぐると回し引きしてコンクリートを切る。撮影:2018年2月16日
トラックに乗せられていたワイヤーソーを引き回す機械。意外に小型で簡単な構造をした機械だ。撮影:2018年2月16日

2月18日には、せたな町の漁師と「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の人たちの現地視察に同行し、スリット切り口を確認。須築川砂防ダムは重力式ダムで、コンクリートの塊である堤体の断面は台形型。下にいくほど厚みが増し、今回切り下げた下端のコンクリートの厚みは5mある。

2018年2月18日、ひやま漁協と「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」が現地視察。撮影:2018年2月18日
切り下げられた堤体を視察する、早期のスリット化を願っていた漁師たち。足下の堤体の厚みは5mある。撮影:2018年2月18日

ダム堤体をドローンで上空から撮影した。工事の際に切り替えた水の流れはそのままであることが分かる。

間口3m、深さ3.5m+1.7m=5.2mまでのスリット。サクラマスのライフサイクルを考えれば、今年度に一気に下まで切り下げることを切に願う。撮影:2018年2月24日
堤体の堆砂側から望む。上方が下流側である。工事のために川水の流れが切り替えされている。撮影:2018年2月24日
本来は急峻なV字地形を流れる須築川。砂防ダムは流れて来る砂利を止めてしまう。そのため、砂利は上流へと膨大に溜まり、広い河原が形成される。

流れて来る砂利を止める砂防ダムは、ダムの容積以上に、上流に向かって砂利を溜め続ける。その為、本来は存在しない広い河原が形成される。こうしたダムが止める砂利の量は、計画時のダムの容積で判断することは出来ないことがお分かりいただけるだろう。

漁師は見てきた。「砂防ダムがなかった時代、毎年、須築川は真っ黒に染まるほどサクラマスが上った」。太古から長い年月を経て水と砂利の流れがバランスよく安定した川であった証拠だ。砂防ダムが建設された後、サクラマスは激減した。サクラマスの産卵できる川の仕組みを壊してしまったからだ。漁師が願うサクラマス資源の回復は、砂利が下流へと流れ下るようにしなければ見込めない。一刻も早い全スリット化の実現に誰もが期待している。

 

 

福島県喜多方市の地滑りは、ダム湖の横で発生。

福島民友ニュース(web)によれば、「…1時間に8ミリの地面の動きが観測されるなど危険性が高まっているとして、喜多方市は避難準備の情報を出していた1世帯2人に、29日午後、避難勧告を…」、「…県によると、亀裂は1日6~10センチ広がっており、場所によっては深さ約70センチの亀裂が…」とあります。2018年5月30日:福島民友ニュース⇒URL:http://www.minyu-net.com/news/news/FM20180530-274920.php

また、NHK NEWS WEB(福島)では、「…福島県によりますと、今回の地滑りが起きた地区の近くでは昭和20年ごろから同じような地滑りがたびたび起きていたということです。しかし、40年あまり前の昭和52年度にかけて地滑りの原因となる地下水の排水作業などの対策を行ったところ、その後、地滑りの被害は出ていませんでした。…」とあり、ダム湖の湛水との関わりは触れられていません。2018年5月29日:NHK NEWS WEB(福島)⇒URL:https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20180529/6050001248.html

昭和20年ごろと今回の地滑りが発生しているところは東北電力株式会社の「山郷ダム(山郷発電所)」のダム湖に面した場所となっています。地滑りが発生したのは昭和20年ごろで、山郷ダムの運用開始時期は昭和18年2月となっています。従って、本来なら「地滑り」と「ダムの湛水」との関わりについて触れられるはずなのですが、一切触れられていません。なぜなのでしょうか?山郷ダムの運用開始時期⇒URL:http://www.suiryoku.com/gallery/fukusima/yamasato/yamasato.html

奈良県川上村白屋地区では大滝ダムの湛水に伴い、ダムに面した場所で地滑りが発生し、全村民が移転を余儀なくされて、村が消滅した事例があるのです。「kabuの健康blog」さん参照⇒URL:http://kenkoulife1.blog.jp/archives/3149539.html

また、過去には、1963年のこと、イタリアの「バイオントダム」でダム湖に面した場所で地滑りが発生して土砂がダム湖になだれ込み、その結果、ダム津波が発生して甚大な被害が発生しています。URL:

衝撃の瞬間「ダム津波の脅威」

喜多方市の「地滑り」報道ではダムとの関わりに触れる情報はありませんので、気がかりです。

………

これまでの報道⇒NHK NEWS WEB(福島)とANNニュースを添えます。

2018年5月25日:NHK NEWS WEB(福島)⇒URL:http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20180525/6050001200.html

2018年5月25日のNHK NEWS WEB(福島)の報道によれば「喜多方市西部の高郷町で地滑りが発生し、周辺の地面が1時間あたり数ミリずつ動き続けていることがわかりました。 地滑りでできた地面の亀裂は住宅に近づいていて、喜多方市は(2018年5月)25日午前、災害対策本部を設置し、地盤の変化を観測している県とともに監視を続けています。 県などによりますと、今月2日、喜多方市高郷町の県道367号線で、道路や道路沿いの斜面に10か所ほど地滑りによる亀裂が見つかりました。…」とあります。

2018年5月25日:ANN⇒URL:

さらに、高郷町揚津の中村地区での地滑りは今なお拡大しているとのことです。

2018年5月25日のNHK NEWS WEBでは、地滑りの場所を中村地区の「周辺」や「川に沿った道…」としていますが、Google Earthで確認すると、東北電力株式会社「山郷発電所ダム」のダム湖(湛水域)の横であることが解りました。また、「県が5月20日に地盤の変化を感知する機器を設置し、その観測によると、地面は今も1時間あたり数ミリずつ動いている」とあり、早期の避難が必要となるでしょう。心配です。

 

 

厚沢部川の河道拡幅は、川津波を彷彿とさせる。

出典:平成28年度・第3回公共事業評価専門委員会・議事録から抜粋

事業主体者・北海道渡島総合振興局函館建設管理部による「厚沢部川水系広域河川改修事業」総事業費・国費200億円(道費90億円)は、現在、次々に不具合が生じて、新たなる工事を追加しなければならなくなる「工事のための工事」が見て取れる。公共事業を再評価した専門家たちの追認作業によって事業費は、224億7千万円(道費101億1千1百万円)に膨らんだ。

 

北海道・平成28年度・公共事業再評価総括表
(拡大)北海道・平成28年度・公共事業再評価総括表

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上流からの水は本川にゆっくりと集まる。支流ごとに流れる水の時間差があるからだ。ところが、この厚沢部川改修工事は先ず上流域の各支流の川幅を拡幅したのである。その結果、短時間に大量に本川に一気に水が集まるようになった。本川の下流域では、水位が上昇して堤防から越流する危険性が高まったのである。そこで、河畔林を伐り払い、河原や川岸を掘削して下流域一帯の川幅を大規模に拡げることになった。拡幅された川の様相は一変し、恐ろしささえ感じる。厚沢部川の下流域の海抜は、ゼロに等しい。住宅が密集し水稲栽培が行われている。「川幅が大きく拡がったことで、川を遡ってくる津波は強大なものとなり甚大な被害を被るのではないか」と、住民の不安の声を聞く。

1993年7月12日、奥尻島付近を震源とする北海道南西沖地震で津波が発生し、日本海側の集落が大きな被害を受けた。また、7年前の東日本大震災では津波が川を上流へと遡り、海から遠く離れた上流で堤防から水が溢れ出し家屋を飲み込み、多くの犠牲者を出した。川を遡る「川津波の怖さ」は、2018年3月4日「NHKスペシャル・”川津波”~震災7年 知られざる脅威~」で取りあげられ、その危険性を明らかにしている。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586023/index.html

2012年10月4日に行われた説明会で、「こんなに川幅を広げて直線化したら、津波が一気に川を遡る。海域に近い厚沢部町市街地は、大丈夫なのか?」と質問すると、厚沢部町副町長は、机をドンと叩いて、「そんなことは、河川工事が終わってからの話で、今そんなことを言ってもらっては困る!」と烈火の如く激怒したのである。

伐採前の河畔林。鬱蒼とした河畔林は堤防を浸蝕されないように護る保護帯の重要な役割がある。撮影:2012年5月28日(基栄橋から上流、市街地方向を見る)
河畔林はすべて伐り払われた。更に、川岸を掘削して川幅を広げたことで、水流が堤防に直接当たるようになり、堤防が浸蝕されて決壊する危険性が増した。撮影:2017年11月15日(基栄橋から上流、市街地方向を見る)
厚沢部川の河道は大幅に拡幅された。海に近い市街地に、津波が一気に侵入し易くなった。拡幅工事によって、川津波の危険性が増したと言える。撮影:2018年3月27日(基栄橋から上流の市街地方向を見る)

こうした河道拡幅はインフラにも影響を与える。市街地に架かる松園橋も例外ではない。「松園橋上流一帯の河畔林を皆伐して川岸を掘削し、河道を拡幅すれば、松園橋が崩壊する危険がある。何れ補強しなければならなくなる」と指摘すると、副町長と地区長はガハハハッと笑って踏ん反り返ってこう言った。「そんなこと絶対あり得ないから、ほっといてくれ」

その後、松園橋の上流側の河畔林は皆伐された。そして、川岸を掘削して川幅を拡げるに従い、左岸の浸食が急速に進んだ。松園橋の左岸の高水敷にあった道路は崩壊して無くなり、その崩壊は橋台に迫っていったのである。

URL:http://protectingecology.org/information-2/assabugawa

川岸は河畔林に覆われており、堤防や松園橋の橋台は護られていた。撮影:2011年11月10日
川岸を覆っていた河畔林がすべて伐られ、川岸も削られた。増水時には左岸(右側)を水流が中るようになったので、松園橋の橋台周りが見る見るうちに浸蝕されてしまった。撮影:2014年4月24日
川岸はどんどん浸蝕される。急速に橋台付近まで浸蝕され始める。撮影:2013年3月30日
河畔林を皆伐し、川岸を掘削した後、松園橋の橋台付近がどんどん浸蝕され始めた。とうとう土のうで、橋台を護るまでになった。撮影:2015年4月28日
松園橋の橋台へ向かって浸蝕は続いた。撮影:2017年10月27日

そして、2018年3月22日の厚沢部川取材で目にしたのは、副町長たちが「あり得ない」と言っていた松園橋の左岸の取り付け部(橋台)を保護するための護岸工事が遂に行われていたことである。

松園橋の左岸の取り付け部を保護するための護岸工事。撮影:2018年3月22日
立派なコンクリート護岸が完成した。撮影:2018年3月27日

事業そのものが引き起こす被害が発生するようになり、それがまた、新たな工事を創出している。国費200億円を使い切って、尚も事業費を膨らませる。この河川改修の在り方は、次の工事を生み出すための布石に見えてくる。まるで打ち出の小槌だ。なるほど、だから副町長たちは、危険性の指摘に「津波の話は今するな」、「橋が壊れるわけがない、ほっといてくれ」と言ったのか。

厚沢部川の豊かな餌資源や河畔林をよりどころに野鳥が集う。オジロワシ、ヤマセミ、シマアオジたち……厚沢部川の尺アユ、水産業を支えるサケやサクラマス、風物詩ともいえるカーバイトの明かりで川面が光る夏の夜のカワヤツメ漁やモクズガニ獲り……故郷を愛しんできた住民の楽しみは、北海道が誇れる生き物たちと共に、厚沢部川から消えてしまった。

 

新幹線トンネル工事の排水問題。その2

2017年11月6日の当会のHP記事に対して、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者から、PAC処理した排水を一時的に溜めて、川に放流する水槽なので、「沈殿槽」ではなく、「放流水槽」であること、「有害重金属含有沈澱物」は、含まれていないと連絡があった。その説明がされると言うので、9日にルコツ工区の現場へ赴いた。

しかし、「PAC処理」と「放流水槽」について改めて説明を受けて、トンネル掘削土による関連処理能力が、こんなにも不十分だったことに愕然とする。

トンネルで掘削した有害重金属(ヒ素・セレン)を含んだ土は、行き場が無く山積みにされている。これは、その土に浸透した水を集める沈澱池。ここに溜められた濁水は、PAC処理施設に送られる。
工事敷地内にはもう一つの沈澱池がある。トンネル内からの出水や、トンネル内で作業する車両に付着した粉塵など、洗ったり降雨で発生した濁水を集める。これらの濁水も、PAC処理施設(奥の建物)へ送られる。
2つの沈澱池から送られた濁水は、ここで有機系凝集剤(PAC)を加えて懸濁物を凝集させて沈澱させる。処理中の水槽内は、泥が凝集されて塊になっている。
PACで凝集処理された水は、この装置に送り出され上水だけが選り分けられる。
沈澱物と水とが選り分けられた上水は、一旦、この水槽に集められ、吸着マットで油性分を取り除いてから、PAC処理施設の外にある「放流水槽」に排水される。
これが「放流水槽」。PAC処理施設と繋がっている緑色の管から水槽を経て、2本の白い管で川に放流する。この白い送水管は、ルコツ川の下流にある浄水場へ伸びている。その浄水場の脇で、川に排水される。
浄水場と排水口。浄水場は地下水を汲み上げて、地区住民の水道水源となっている。

つまり、イラストで解説すれば、このようになる。

左側の緑色の管からPAC処理された水がこの水槽に入り、右側の2本の排水管で川に排水される。だから「放流水槽」だと言う。この「入って、出る」管の位置がおかしいと気づきましたか?綺麗な上水を流すには、2本の排水管は、緑の管口よりも上になくてはならない。

「放流水槽」とは名ばかりで、PAC処理しても、これだけの沈澱物が存在し、沈澱機能を有した水槽は、「沈澱槽」と標記しても間違いではない。何より驚いたことに、水中ポンプを装着した2本の排水管で、底に溜まった沈殿物ごと吸い上げて排水していたことである。この沈殿物について、当会が「有害重金属含有沈殿物」と記事で標記したことに対して、鉄道運輸機構の担当者は、「PAC処理後の沈澱物だから問題は無い」と説明したが、その沈殿物に有害性の有無については調べられておらず、「これから検査に出す」と言う。排水は既に6か月以上も続けていたというのにである。

実際の排水。白濁していたのは、放流水槽の沈澱物を吸い上げて排水していた訳だ。撮影・2017年11月4日

北海道新幹線トンネル工事での濁水処理は、現在、稼働させている処理施設では規模が小さく、沈澱物を取り除くことが出来ないことが露呈した。「処理をしている」という事実だけが免罪符になって、事業者自身「何を排水しているのか」、よくわかっていないのかも知れない。

ヒ素は、岩などの固体に付着したものであれば、PAC処理で除去が可能だが、水に溶融した状態のヒ素は、PAC処理では除去できないとの大学教授の指摘がある。PAC処理後の水、つまり「放流水槽」に沈澱した物質がある以上、処理を免れたヒ素・セレンが含まれたままになっている疑いは濃厚にある。このままでは、地方の小さな町の人が、どんな水を飲もうが、環境が悪化しようが、魚が汚染されようが、所詮は他人ごと。そういう意識しか無いと思わざるを得ないこの現状に、事業担当者、現場責任者も真摯に受け止め、早急の対策と改善を行っていただきたい。

 

 

十勝の災害・現場の取材を怠り、専門家任せで真相が見えないNHK記者

2017年9月1日、NHK「北海道クローズアップ 異常気象にどう備えるか~連続台風から1年~」は、大本営発表の広報をしただけの番組だった。記者は、現場で川を知ることから始めていただきたい。

http://www4.nhk.or.jp/P2866/x/2017-09-01/21/53255/8324605/

河川災害のコメンテーター常連である清水康行教授(北海道大学工学院)が、まるでグランドキャニオンのように川底が深く堀下がった芽室川を背景に、「今まで北海道では大雨が少なく、土砂が堆積したままになっていたが、昨年の台風の大雨により川底が削り取られ、大量に掘られた部分が市街地に流れ、川が氾濫し、被害が大きくなった。」と解説している。川底に堆積していた土砂が10~15mも削り取られて流れ出し、その土砂が下流で災害を発生させたと言う。

しかし、すぐ上流に砂防えん堤が見える。そこから堀下がってることに、疑問を感じて取材をするような記者であれば、真相は…川底の地層が既に剥き出しになっていたところに、大水が押し寄せて、川底の地層が浸食されたのではないか…?と疑問を感じる筈である。

砂防えん堤で土砂が止められてるから、えん堤下流では川底の土砂は流されて既に無い。露出した川底の地層はどんどん浸食されていく。これは、芽室川へ注ぐ支流の渋山川を見れば、よく分かる。芽室川と同じように砂防えん堤の下流側で川底が浸食され、グランドキャニオン化しているのが見られる。NHK記者さん、現場に行くのは億劫だと言うのなら、写真を添えるからよ~く観察してほしい。

大規模な砂防えん堤とその直下の様子
砂防えん堤の直下。
砂防えん堤の直下からグランドキャニオン化が続いている。

川底に敷き詰めたコンクリートブロックの下は、どんどん浸食されるから空洞になって、グシャグシャに崩れている。その下流は、川底がどんどん堀下がり見事なグランドキャニオンのようになっている。下の写真は2009年に撮影したものである。

2009年7月1日
2009年7月1日

これが川底が掘り下がる現象「河床低下」である。河床低下が進むと今度は川岸が崩れはじめる。次に砂防えん堤下流の写真を見てほしい。

川底が下がると「砂山くずし」と同じように川岸の下部が浸食されて、川岸が崩れる。川岸が崩れることで土砂と流木が流れ出すわけだ。川岸の木は倒れ込み、写真右側の垂れ下がったコンクリートブロックは川底に敷設していたものだ。砂防えん堤がもたらす河床低下は非常に危険なのだ。
砂防えん堤のず~っと下流にも砂利を止めるえん堤がある。その下流でも同じように川底が下がって、川岸が崩れている。
この砂防えん堤の下流では、車で通れた道まで崩れてしまった。
川底が下がり、川岸が崩れ続けるので、川幅がどんどん広がっている。こうして膨大な土砂と流木が流れ出すことになる。

次の3枚の写真は渋山川のすぐ隣り、同じ芽室川支流の久山川である。砂防えん堤の直下で著しく川底が堀下がっていたところに、大水の後にどうなったのか?このような現場をしっかりと検証していれば、災害の真相のメカニズムが理解できた筈だ。

中央の右奥に砂防えん堤が見える。その下流では著しく川底が堀下がっている。2015年5月15日に撮影したものだ。
2016年8月の大水のあと、ここにあった砂防えん堤は流されて跡形も無く消えた。ご覧の通り、両岸は崩壊して川幅が極端に広がった。2017年5月20日に上の写真と同場所を撮影したものだ。
ドローンで上空から撮影した映像に、被災前の川幅を赤点線で示したものである。右の長方形が砂防えん堤があったところだ。大水後に両岸ともに大規模に崩壊し、川幅が驚くほどに広がった。既に起きていた著しい河床低下で、川岸が崩壊して土砂と流木が下流に流れ出したのである。

既に著しい河床低下で河岸が崩れていたところに、大水が川岸を大規模に崩壊させて、膨大な土砂と流木を流出させたことが分かる。砂防えん堤まで跡形もなく消えたのだ。その結果、下流に大量の土砂と流木が押し寄せ大水は競り上がって破堤させ、被害は起こった。下2枚の写真は清水町のペケレベツ川だが、全く同じメカニズムで土砂災害が起きている。

清水町のペケレベツ川では落差工(砂防えん堤)の直下から川底が下がり、川岸が崩れている。
清水町のペケレベツ川。落差工(砂防えん堤)から市街地に至る下流では川底が下がり、川岸が大規模に崩壊して、膨大な土砂と流木が流れ出したことが伺える。

河床低下は川岸を崩壊させ、川に面した山の斜面も崩壊させて、膨大な土砂と流木を生み出す怖ろしい現象である。これは、砂防えん堤の下流で見られる現象であることを知っていただきたい。

決して、昨年の台風豪雨で起きた現象ではない。NHK記者さん、あなたは、清水教授が「北海道では今まで大雨が少なく、堆積したままになっていた土砂が流れて市街地に災害をもたらせた」という解説を再検証もせず、鵜呑みのまま番組を制作し放映することは、「被災した人たち」を、「異常気象にどう備えるか」を思案する人たちを、欺くようなものと思いませんか?そして、見誤った検証をすることで間違った治水対策が起きてしまうことに責任を感じませんか?取材とは、説明や現象を読み解く仕事ではないのでしょうか?

以下のfacebook「川の自然と治水を考える会」の9月6日と7日の記事でも同じような指摘がされている。

https://www.facebook.com/川の自然と治水を考える会-526473630754362/

 

知床ルシャ川の河床路計画は、IUCNの指導反故に値する。

国際自然保護連合(IUCN)は、知床のルシャ川にあるダムによって壊れた川の改善を強く指導した。

その後2017年6月1日、NHK北海道 NEWS WEB「世界自然遺産登録地・知床 ルシャ川の工事前に視察」の河床路建設の報道があった。

出典:NHK・北海道 NEWS WEB「知床 ルシャ川の工事前に視察」

河床路とは、車が川を渡れる(通行できる)ように、川底を平にならし石を組み上げた道路(人工工作物)のことである。川水が流れる中、車のタイヤが川底の窪みにハマることなく、水をかき分けて川を渡ることが出来る。車の重みで壊れたのでは実用性はないから、河床路は強固に石を組んで造られる。この人工物が問題なのは、河床路から下流側は次第に川底が掘られて段差が出来るので、やがて、その段差は大きくなり河床路は崩壊してしまうことである。

これは、すでに岩尾別川で2012年に全く同じ河床路を設置して翌2013年には壊れていることが分かっている。テレビに映って解説している専門家委員たちが示す図の石組の工作物は、すでに5年前に岩尾別川で石組が維持出来ないことが判明した工作物なのである。モニタリングするまでもなく、産卵場の維持は愚か、河床路そのものを壊してしまうことは実証済みなのである。

岩尾別川に設置された石組・撮影:2012年9月2日

同じ場所を翌2013年10月10日に撮影した。下の写真で分かるように、河床路はすべて流されている。

岩尾別川に設置された石組は影も形も無く、すべて流されて消えた・撮影:2013年10月10日

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループの委員たちが、ルシャ川でこれから実験するというが、すでに結果の分かっていることを繰り返すことはつまり、税金の無駄遣いであり、解説する専門家委員たちの知見の無さ、意識の無さ、探究心の無さまで如実に物語っている。

そして、石組の河床路を壊れないように固定してしまうと、河床路の下流側では砂利が流されて広域で河床変動が激しくなり、サケやカラフトマスの産卵場が破壊されることになる。そればかりか、河床路そのものがダムの役割をするため、河床路の上流側では流速が小さくなり、微細な砂が堆積して、サケマスの産卵に適さない河床となってしまうのである。河床路を固定した為に、下流側で河床低下が発生する事象が各地にある。下の写真で分かるように、河床路の下流側では極端に河床が低下し、河川荒廃が進む。河床が変動するような川底は、サケやカラフトマスの産卵に適さないのである。

固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日
固定された河床路・沙流川水系千呂露川支流三井の沢川・撮影:2017年5月24日

そもそも、河床路は増水した時には車で渡れないのだから、漁民の立場を無視したものである。NHKの報道では、「橋の間口が狭い」ことに原因があるとしているが、それならば「橋の間口を広げる」という発想が、何故出来ないのか?

間口を広げた橋に作り変えれば、川底の砂利移動は自然のままになる。そうなればサケマスの産卵環境は今よりも良くなる。これこそ産卵環境の改善となり、増水時でも漁民が通行できることになる。単純なことだ。橋脚が、河道の中にあるから、川の仕組みがおかしくなる。サケマスの産卵環境を悪化させ、漁師が増水時に通行できないような知床ルシャ川の河床路案は、どう考えても滑稽な計画である。

知床世界自然遺産地域科学委員会の河川工作物ワーキンググループによって進められている「現状よりも悪化する」ことが懸念される自然に似せた「人工工作物」を、わざわざ建設するこの事業報告に、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は疑問を持っていただきたい。漁民の生活と資源の共存出来る「間口を広くした橋梁」にするだけでルシャ川は世界自然遺産に相応しい環境に改善されるのである。

 

山脚崩壊の危険が迫る国道230号線(無意根大橋隧道)

九州地方の豪雨災害で、川に面した斜面が次々に崩壊し、流れ出した土砂・流木が人命財産に及ぶ深刻な大災害をもたらせた。ここで、河川防災の専門家たちの言葉の使い分けが実に巧妙であることに憤る。

「深層崩壊」と、「山脚崩壊」である。

今回のニュースでは、「豪雨によって山斜面の地中深くに雨水が浸透して地表面を浮かせて滑りやすくなった為に、立木もろとも斜面がズリ落ちた「深層崩壊」という現象である」と説明をしている。これまで専門家たちは、川底が下がると川に面した山の斜面が「砂山くずし」のように崩れ落ちる「山脚崩壊」を説いてきた。しかし、それを防止する目的で治山ダムを次々に建設してきたが、そのダム自身が下流の河床を下げることになり、山脚崩壊を連鎖的に多発させ拡大する一途を辿っている。近年の豪雨で起きる災害の真相が次第に見えてきた。そこで専門家たちがあみ出した言葉が「深層崩壊」という言葉である。このまま「山脚崩壊」と解説した場合、河川の「河床低下」が問題視され、その原因を探ることになれば、これまで建設してきた「ダムの影響」が白日に曝されるからである。

2017年8月1日、豊平川上流で山が崩れるメカニズムについて考えさせられる景色が見えた。国道230号線の無意根大橋でトンネルの入口の基礎部が崩壊しているのが目にとまったのだ。

国道230号線・無意根大橋
国道230線の「無意根大橋」と隧道の入口
無意根大橋の隧道の入口。その下部は崩壊寸前。
写真上部の広場のように見えるところに大規模なダムがある。その下流の川岸は崩壊し、川底の浸食が進んだ為に、護岸工事や床固工事が何度も繰り返されてきた。

無意根大橋の上流側には巨大なダムがあり、その下流は川底が掘り下がり、川岸や山斜面が崩れる度に護岸工事が繰り返される。更に階段状にダムを造り、川底が浸食されないようにコンクリートブロックも敷き詰められている。上流にダムがある限りは、ダムの下流の川底の浸食は止まらない。

無意根大橋の下流側の両岸は、鋼鉄製の護岸に川底をコンクリートブロックで敷き詰めている。しかし、敷設後に更に川底が掘り下がり、コンクリートブロックは崩れ落ちている。隧道(トンネル)のある山斜面の下部は浸蝕されて今にも崩落しそうだ。

隧道が付けられた山の基礎が「砂山くずし」のように削られている。
コンクリートブロックを敷設した先では、河床が大きく低下し、ブロックは壊れていく。山裾が浸食されていることがわかる。

子どもの頃に遊んだ「砂山くずし」を思い起こしてほしい。砂山の砂を手で取り払うと、ドサッと砂山が崩れ落ちる。同様に山斜面の基礎を掘り進めばドサッと崩れ落ちることは目に見えている。大雨の洪水は川底を更に掘り下げ、山裾はより崩れやすくなり浸食の規模が拡大することは明白である。もしそうなった時、無意根大橋の隧道(トンネル)の山は、大規模に崩壊して、国道274号線と同じように深刻な災害が発生することになる。

無意根大橋の上流には、沢山のダムがあることが分かる。山脚崩壊の危機回避は、このダムを即刻撤去することである。出典:Google Earth

危険度は増している。即刻、ダムの撤去が必要だ。この写真にあるすべてのダムを撤去して、川底が掘り下がらないように砂利を供給するしかない。河川防災の専門家たちは、「深層崩壊」説を唱えて誤魔化すのではなく、自ずと推奨してきたダムの影響を認め、これまで奪われてきた人命に対して負うところは全くないと言い切れる防災を願いたい。

 

須築川・砂防ダムのスリットは、似非スリットだった。

地元漁業者が嘆願していた須築川砂防ダムの撤去だったが…。スリット化されたダムは、どうなっているのか?2017年6月15日に取材した。

高さ9mの砂防ダムに幅3m×深さ3mに切られたスリット。撮影:2017年6月15日

このダムの規模で、幅3m×深さ3mのスリットでは、流速を早めることになる。河川管理者は、幅3mをこのままにして、今後、更に深く切り下げると言うが、それではまるで滝である。河床低下を改善するために、サクラマスの健全な産卵場を回復させるためのスリットだと言うのに、滝つぼを造ってどうするつもりだ。まして、このように狭い幅のスリットでは、すぐに流木で塞がり、スリットの効果は無い。実際、15mを超える流木が転がっていたが、直ぐにこれらが一塊となってスリットが塞がることは、誰にでも解る。

須築川砂防ダムの下に、ダムから流れた15mを超える流木が転がっていた。撮影:2017年6月15日

須築川砂防ダムの下流は、河床低下で河岸が崖化し、河岸の巨木は土台を失って根っこが剥き出しになっている。豪雨の度に、河岸が崩壊し、土砂・流木が大量に流れ出す。ダム下流へ十分な砂利を供給出来ないような、こんな狭いスリット化では、むしろ災害を喚起させる危険な設計だ。

もう長い年月に亘り、河床低下が進行しており、川岸は崖化。「砂山くずし」同様に川岸が崩壊する状況にある。河岸の巨木が倒れ込めば、洪水を撹乱させ、下流の橋の間口を塞ぐ危険な状況である。撮影:2016年9月2日

河床低下で土台が抜かれた川岸は崩れて脆い。河畔の巨木は増水時に簡単に倒れ込む。その流れる先の下流に国道229号線の橋がある。洪水で巨木が橋脚を塞ぎ、橋が崩壊する危険もある。計画当初、河川管理者は「スリットの設計は上部6m、下部4mの逆台形型だ」と言っていた。「流木が通過できるスリットの幅は、流木長の半分」とも説明している。それが、何故?垂直型スリットになったのか…、しかもその幅は、たったの3mである。全く不可思議なことである。

このスリット化事業には疑問ばかりが募る。治水行政にとって、英知を結集して造り上げた財産ダムを壊すなんてあり得ないのだろう。プライドが許さない訳だ。スリットで川が回復したなんてことになったら、一大事である。これまで築いてきたダムを次々に撤去せざるを得なくなっては困る訳だ。この須築川砂防ダムに、似非なスリットをしておきながら、もしもの災害時には、「スリット化したのが原因だ」とすり替えることは、絶対に止めていただきたい。このようなスリットの仕方をした河川管理者あなた方が、見誤っただけのことである。➡(では、どうすれば良いのか?答えは明白)➡洪水で流される流木は、枝先と根っこでは比重が異なるので、枝先が浮き上がり、根が沈む。従って、上部8m、下部6mの逆台形型のスリットであれば流木は傾いて、スリットをすり抜けることが出来る。これで初めて須築川砂防ダムのスリットは、有効に機能することになる。早急に、垂直型スリットは、逆台形型スリットにする必要がある。

「須築川砂防ダムのスリットする目的」を、河川管理者は、担当者は、今一度よく考えていただきたい。ダムで止めている砂利を下流に流して、➡失った川底の砂利を供給して、➡河床低下を改善して、➡サクラマスが産卵出来る環境を戻して、➡漁師がダムが出来る前の漁獲高を取り戻すこと。➡そして、災害を起こさない元の川の仕組みを取り戻すことである筈だ。