大沼の環境改善に1歩踏み出す「軍川」治山ダム3基のスリット化決まる!

2024年3月13日、大沼に注ぐ「軍川(いくさがわ)」の国有林内の治山ダム3基のスリット化が決まり、2024年度中にも実現することになった。

出典:電子国土地理院
この上流に治山ダムが3基ある。撮影:2019年4月9日。
出典:電子国土地理院

2015年2月6日に、渡島森林管理署に治山ダムスリット化の要望を提出。その後、下流区間管轄の河川管理者である北海道渡島総合振興局函館建設管理部が難色を示し、協議に9年の歳月を要した。

3基の治山ダムの諸元表。出典:渡島森林管理署資料。
一番上流の治山ダム(D-3)。出典:渡島森林管理署資料。
真ん中の治山ダム(D-2)。出典:渡島森林管理署の資料。
一番下流の治山ダム(D-1)。出典:渡島森林管理署の資料。

スリット化の形状は当初、下部を6m、上部を9~10mの「逆台形型」で協議されていたが、函館建設管理部は、”流下する砂利の調節機能を残す”ために、”せき上げ効果”が得られる「垂直型」に変更を求めてきた。

逆台形から垂直型に変更された。間口は6mと広いのでまずまずだ。逆台形型の効果は流木が引っかかりにくく、メンテナンスフリーにある。

せき上げ効果とは、流水を滞留させる効果のことで、流速を小さくし、流れて来た砂利を堆積させる効果がある。しかし、この人為的な流下する砂利の量・質の調節作用が河床低下の原因となっている。河床低下は川岸や山裾の崩壊、川沿い道路の崩壊を発生させ、そこから発生した大量の土砂や流木が流れ出し、堤防の決壊や、橋脚を壊し車の転落など人命財産に深刻な影響を与えているのが現状だ。

河川管理者の責務は、河川環境保全や流域住民の安全・安心な暮らしを護ることにあり、その目的を果たすためのスリット化であるというのに、流下する砂利の調節機能を残せとは、全く理不尽な話しだ。こうした河川管理者の誤った理念を変えなければ、悲惨な水害はいつまでも終わらない。

3基のうち真ん中にある治山ダム(D-2) 撮影:2011年7月7日。
真ん中の治山ダム(D-2)の下流側では、川底の砂利が流されて河床が低下。川岸に河床低下を示す砂利不足の姿が見られる。撮影:2011年7月7日。
一番下流にある治山ダム(D-1)。撮影:2011年7月7日。
下流の治山ダム(D-1)の下流側では、川底が下がり、川岸との落差が開き、川岸から石が転がり落ち、石が抜かれるまでになっている。川岸はオーバーハングの崖化となり、立木もろとも崩壊する。こうして土砂・流木が流れ出す。撮影:2011年7月7日。
同じく、下流の治山ダム(D-1)の下流側では、川に面した山裾が川底の低下に伴い、「砂山崩し」のように基礎の支えを失って、崩れている。やがては大規模にドサッと崩れ落ちる。撮影:2011年7月7日。
農地から水が流れ出して崩れたのではない。河床が低下して基礎が抜かれて、「砂山崩し」のように崩壊が拡大しているのだ。早急に河床低下を食い止める必要がある。撮影:2019年4月9日。
このまま河床の低下を放置していたままだと高台の農地は大規模に崩壊することになる。治山ダムのスリット化で改善が期待できるようになった。撮影:2019年4月9日。

この治山ダムから下流区間管轄の河川管理者である函館建設管理部が、川沿いにあった田んぼを潰して、流下する砂利を受ける「遊砂地」という落差工群(砂防施設)を設けた。

出典:北海道新聞(2022年11月2日付)。

URL:軍川(いくさ) | 流域の自然を考えるネットワーク (protectingecology.org)

函館建設管理部が軍川の中流域の、水田だったところに階段状に「遊砂地施設(落差工群)」を造成した。

この砂利を止める「遊砂地」(落差工群)が今後、どのような作用を発揮していくのか疑問だ。同じ大沼に注ぐ「宿野辺川」では、砂利の流れを調節する目的で砂防ダムが建設されたが、建設後、ひどい泥水が大沼に流れ込み、文吉湾が土砂で埋まった。土砂を流れないようにする目的の砂防ダムが、その下流で新たに土砂を発生させたのだ。

「砂防ダム」”砂防”の言葉に惑わされてはならない。

出典:北海道新聞(2000年8月17日付)。

大沼は、ラムサール条約に登録している国定公園。湖とは異なり、水深の浅い沼や湿地で構成された貴重な自然財産だ。水質の劣化が進む大沼への流入河川からのひどい泥水の抑止は、喫緊の課題なのである。

 

 

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