太平洋へ注ぐ、八雲町遊楽部川の支流「砂蘭部川」には1基の治山ダム、2基の砂防ダムがあり、著しい河床低下が進行している。川底は深く掘り下がり、川岸が崩れ、山の裾が崩れ、町道崩壊など、災害が多発し災害規模の拡大が止まらない。砂蘭部川の惨状は下記のURLを参照ください。
1980年代後半から河川管理者に砂防ダムの撤去か、改善を求めてきたが、全く聞き入れられずに時間だけが経過した。その後、2013年に「砂蘭部川河床低下対策検討委員会」が、ようやく立ち上げられ、9回もの議論の末、2016年7月4日の会議で2基ある砂防ダムを、「間口を一つにしたスリット化」が決まった。
URL:https://www.oshima.pref.hokkaido.lg.jp/kk/hkk/a0006.html
まず、上流側の1号砂防ダムを間口 7.6 m 、深さ4m のスリット化を2段階で行うことになった。だが、「事前の調査や堤体を抜き取るので、堤体が軽くなるからコンクリートで補強して加重する」という理由の工事が加わり、スリット化は遅々として進まなかった。
そして、スリット化が決まって4年を経た2020年に、ようやく着工。
スリット化に着工したものの、間口 7.6 m だが、切り下げたのはわずかに50 cm だった。
次の段階のスリット部の切り下げも、わずか50㎝に過ぎず、「予算が付かなかったから」と言いながら、堤体を加重するためのコンクリート補強に加えて、流れ出し部の堤体下部が掘られないようにするとしてコンクリートの「叩き台」を設置。岩盤の河床であるにも関わらず事業費を膨らます工事に仕立て上げ、肝心要のスリット化を遅らせた。
次の引き延ばしは、「入札が不発で流れた」として、2022年の工事は1年先送りとなった。更に、2023年には「スリット化の工事が遅れたから、次は下まで切り下げる」と言っていたにもかかわらず、今回もまた、「予算が付かなかった」と言い、1.66 m の切り下げだった。
そして、ようやく、2024年3月までに「1号砂防ダム」の下部まで の4 m の切り下げが終わった。
検討委員会で、2段階で切り下げを終わらせることに決まったのに、フタを開けてみれば、4段階に分けた切り下げになった。スリット化することが決まってから、実に8年も経過していた。
この「1号砂防ダム」の上流には、もう一基「治山ダム」があり、下流には、「2号砂防ダム」がある。スリット化が急がれるのだが…。
ダムが砂利を止める影響は、建設後すぐには表れない。だから、誰も気がつかないで推移する。そして、目に見えるようになって気がついた時には手遅れとなる。
砂蘭部川は清流で、春にはキュウリウオが上り、秋にはサケが上り、カモメが賑わっていたが、今は静かな川となってしまった。
川には多くの生き物を育む仕組みが備わっている。その命育む仕組みに気がつかないでダムを次々に建設してきたために、多くの命を奪い不毛の川にしている。
ダムが果たす役割「せき上げ効果」による「流下する砂利の調節機能」が、流下する砂利の量や大小の石の質に、差分を生じさせるため、川の仕組みを根底から壊していることを知っていただきたい。そして、何よりも、”砂防”の名に騙されないでいただきたい。言葉とは裏腹に、本当は、災害の元凶でもあり、人命・財産を奪う、怖い存在なのだから。