砂蘭部川で起きている河床低下の原因は、「砂防えん堤(ダム)が砂利を止めている」からであることを北海道渡島総合振興局函館建設管理部が認め、1号と2号砂防ダムをスリット化する決定が2016年の検討委員会によって下された。
「いよいよスリットで川が蘇る」と期待していたら、まず、1号ダムから調査➡設計➡堤体の肉付け➡段階的スリット化➡その後の経過の調査。それから次に、2号ダムも同じ過程を繰り返す。現実にダムをスリットするまで、実に多くの事業が持ち込こまれて事業費は莫大に膨らんでいく。呆れたことに函館建設管理部は、ダムをスリットする必要性を認めておきながら、「スリットから流れる砂利が途中で止まらなければ困る」と言い出して、下流に夥しい数の帯工を建設すると言う。既存のダムをスリットして流れた砂利を止めるために、ダムを新設するという摩訶不思議な論法で屁理屈をこねる。この担当者は人を化かす狸なのかもしれない。
決定した事業に付属事業を添加させて、どこまでも底知れずに膨らんでいく事業費。河川管理者と大学教授の背中にコンサル指南の影が見えてくる。
2014年、スリット化をする前提の実験として9基、その後も更に6基の帯工を建設したが、どれもこれもことごとく失敗した。砂利が流れてこない条件下で実験しているのだから、失敗することは素人にでも分かる。これが呆れたことに、壊れた帯工を補修し、また新規に造るというのだから…公務員の理念をすっかり忘れ、税金を貪る醜い姿を国民に更けている。恥ずかしくないのだろうか?
地質・地形・川の性質など考えずに、規則正しく60m置きに帯工を配置した。柳井清治大学教授、渡辺康玄大学教授も苦笑する程だった。失敗しても失敗しても、もう、どうにも止まらない。その後も、自然石を使って帯工を建設した。勿論、税金を投入してだ。なぜ、こんなことを繰り返すのだろうか…? 訳がわからん! こんなことを大学教授がよもや指南しているとは信じられない。
この冬にも更なる帯工を建設するという。スリット化もしないまま、帯工を建設(下2枚のスライドの赤線で示した所)すれば、その下流は更に深く掘られて川岸が削られてしまうことは明白である。
写真から分かるように、上流から砂利が流れてこないから岩盤が露出し、そこに巨石が挟まり合って川底の浸蝕が始まり、グランドキャニオン化が起きている。帯工を建設すれば、その下流は更に深く掘られて川岸が削られてしまうことは明白である。川底を安定させる仕組みを根底から失わせるので、もう手に負えなくなる。帯工の提案をしている柳井清治大学教授、渡辺康玄大学教授は、川を壊す事態になることを何故、起こそうとしているのか? 実験の失敗を利用して「コンクリートダムを建設するしか無い」と導きたいのか。ストラテジーを企てる間にもその下流域のインフラで、どんなことが起きているのか、彼らは何も見ていない。
下流では、上流から流れてくる砂利は無くなり小石ばかりで、巨石までが流されて川底はどんどん下がっている。崩れやすくなった川岸は増水の度に崩壊を続けている。崩れた川岸を治めるべき砂利が来ないから、川岸は崩壊した崖のままの姿をしている。川岸が崖化する現象は、ダムが砂利を滞らす為に砂利不足した川で見られる典型的な姿である。
砂防ダムで砂利が止められている為に、下流域では河床低下を起こし、施した巨石水制工は増水の度に基礎が抜かれて崩壊し、跡形もなく流されている。しかし、災害復旧工事費でまた巨石水制工が復活する。まるでゾンビ事業である。
下のスライドを見ていただきたい。上の写真と比較すれば川底が下がって行く様子が分かる。
ご覧の通り、もう壊れている。ダムで砂利を止めている以上、何度、護岸工事を繰り返しても無駄だということが分かる。必要な量の砂利が流れてこないから、砂利不足した中で尚、大きな石も失われ川底は低下する。水制工の基礎の砂利が抜かれて、巨石を繋げていた針金はちぎれて崩れ落ち、連結ブロックの裏側は砂利が抜かれて空洞化し、グシャグシャになった。この状況で増水があれば、脇の町道は崩壊し通行車があれば転落する危険もある。
下の写真は道々の砂蘭部橋だ。
砂防ダムが砂利を滞らせるから、➡ダム直下から河床低下が進み、➡至る所で川岸が崩れる。➡増水時には川岸の崩壊で発生した土砂と流木が大量に流れ出し、➡流路を妨げて水の流れを撹乱させる。➡大量の土砂や流木は水流をせり上げ水位を上昇させて、➡民家を浸水させ道路や橋をも破壊する。この砂蘭部橋の橋台も危険な事態になっている。橋台が崩壊すれば道路が陥没し、通行車両が転落して犠牲者が出るかも知れない。スリット化事業を先送りにしている河川管理者が招く人災になることを、前もって指摘しておく。決して、地球温暖化による想定外の大雨や台風が原因と主張するのは許されない。砂蘭部川での災害規模を大規模化させる布石を打っているのは、あなた方なのだから。