北海道南部、遊楽部川支流の砂蘭部川にある2基の砂防ダムのスリット化が決まってから11年の歳月を経て、上流側の1基のスリット化が2024年3月に終了した。
2024年7月29日、24時間雨量が70㎜ほどの降雨で、川は増水し、砂蘭部川も酷い泥水が流れ出した。その様子をご覧頂きたい。堤体に開けられたスリットの間口は7.6mだが、堤体部で水位が上昇しており、砂利が正常に流れ出すことを考えれば、間口は狭い。
この砂蘭部川の上流には、さらに国有林内に1基の治山ダムがある。砂利を止める治山ダム・砂防ダムの影響で、V字谷が砂利で埋まり、流路が暴れて山の斜面をズリ落とし、下流では河床を掘り下げて山の斜面がズリ落ちる。そして川岸は崩壊し、根っこ付きの流木が流れ出す。崩れた山や川岸から土砂が流れ出し、このように、ひどい泥水が流れ出すようになるのだ。
河床低下は全国津々浦々の河川で、確実に進行している。それを多くの人たちは知らない。河川管理者や川の専門家には、昔の川、本来の川の姿を知っている人がいるのだろうか?川の現場を見る限り、川を読み解ける専門家は皆無だ。
川のそばで暮らし、時には川からひどい目に遭わされながらも、それでも、川の恵みを知り、川の生理を読み解き、川に助けられ、川と共に生きてきた人は、今ではすっかりいなくなってしまった。
「雨が降れば濁るのがあたりまえ…」…すっかり洗脳され、誰もがそう思い込んでしまった。この”事実誤認”が、極めて危険な時代に突入していると言えよう。