活動報告 : 2020年

「道民は猛毒のヒ素に…」機構の怖いまやかし。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の住民説明用資料には、ヒ素、鉛、ふっ素、セレンを摂取しても排泄されるから問題無いと解説されている。

出典:2016年4月14日の八雲町民用説明資料:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構
出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構(ホームページ)

機構のホームページでは載せていない「人が摂取するヒ素の量(基準値)」が、住民に配布された資料には示されている。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構が考える「きわめて安全なレベル」の基準値とは、6gの魚の致死量0.01mg/Lとある。0.01mg/Lのヒ素の量で6gの魚が死ぬのだから、腸内細菌はひとたまりもなく死ぬ。0.01mg/Lのヒ素を1日2リットル飲み続けるとは、毎日0.02mgのヒ素を食べて腸内に送り込み、70年間にわたり腸内細菌を殺し続けることでもある。それなのに、機構は健康に対する有害な影響は無いと説明している。

NHKスペシャル「人体」の「万病撃退!”腸”が免疫の鍵だった」では、人間の健康をつかさどる免疫機能は腸内細菌に支えられていることが分かってきたと解説されている。腸内細菌がつかさどる人体の免疫機能という知見から0.02mgを毎日食べ続けても安全だとする機構の考え方は極めて危険な暴挙と言える。

https://www.nhk.or.jp/kenko/special/jintai/sp_6.html

機構は、ヒ素を「自然由来のヒ素」と強調し、ヒジキなどの食品にも含まれるものとして、さも安全であるかのように、道民にヒ素の危険性の核心をつかませないように、言葉巧みに扇動している。まるで「霊感商法」そのものだ。猛毒物質は厳重に保管して管理しなければならない。猛毒物質を扱う以上は、毒物取扱の資格を持った責任者を立て、厳重に管理する義務がある。

北海道新幹線工事の現状は、猛毒物質は粉塵となって舞い散り、雨ざらし、垂れ流し状態になっている。こんなずさんな工事が、毎日あちらこちらで行われているのに、国からも、北海道からも、問題視する声が上がらないのはおかしくないだろうか…?現に、水道水の水質検査では、じわりじわり…とヒ素が検出され始めているというのに…。北海道の良質な水を猛毒のヒ素で汚染させる北海道新幹線工事。近い将来、新幹線と引き換えに流域一帯のヒ素検出に道民は苦しむことになるだろう。

 

ヒ素・環境基準270倍超え!受け入れは柳沢に。

出典:北海道新聞(渡島・檜山版)2020年11月26日。
出典:北海道新聞(渡島・檜山版)2020年11月13日。

2020年11月12日に、機構は北斗市議会調査特別委員会に「条件不適土」の正体を「現在の受入地の基準値の100倍超えのヒ素を含み、溶出量は環境基準の270倍超えという残土(溶出の仕方も異なる貫入岩)」であることを明かし、2年も前から掘り出していたことを認めた。

出典:北海道新聞(全道版)2020年11月26日

11月26日の北海道新聞全道版では、重大な問題でありながら、こんな小さな記事で、ヒ素の溶出量が270倍にもなる残土には一切触れられていない。

そして、この高濃度ヒ素を含む残土の新たな仮置き場を、北斗市と機構とで決定し、その結果を調査特別委員会において機構が明らかにした。こんな大事なことを市議会にも市民にも知らせずに決定したのである。新たな仮置き場の柳沢地区は、茂辺地川に近い上磯の海岸近くであり、サケが自然産卵している流渓川に注ぐ万太郎沢川の傍に選定された。

出典:Google Earth
条件不適土の仮置き場横を流れる万太郎沢川。
出典:Google map

万太郎沢川が注いでいる流渓川。
万太郎沢川が注ぐ本流の流渓川では自然産卵し、一生を終えたサケが見られる。川でふ化したサケの子どもたちへの影響が心配だ。

条件不適土の下部に敷いた「遮水シート」から流れ出したヒ素などの毒物は、濁水処理施設で処理するとある。しかし!機構がこれまで使用している「遮水シート」は、厚さが僅か1.5㎜の樹脂製なのである。でこぼこに尖った岩石が10mも20mもこのシートに積み上げられる。「遮水シート」の行く末は明らかである。

出典:Google Earth・独法鉄道建設運輸施設整備支援機構資料

南鶉工区からは、仮置き場まで約28kmある。ダンプカー20台が一日5往復で運搬するという。一日に、(5往復=20×5×2)200回も同じ場所(下のルート図)を通過するのである。運搬経路付近の保育所から幼稚園、小学校や高校の通学通園路、住宅地、農地、憩いの場(八郎潟や温泉など)が、猛毒であるヒ素の粉塵に包まれることになる。

条件不適土の運搬経路図
残土の搬送出入口は粉塵で真っ白だ。村山残土捨て場出入口。国道227号線。
全工区において、残土の搬送路は粉塵で真っ白になっている。こうした粉塵を搬送路周辺の人たちは、否応なく吸い込まされる。八雲町熱田。

北斗市、八雲町、長万部町、黒松内町の各工区からの残土の搬送路では、猛毒のヒ素やセレンが入った粉塵が舞い散っている。

搬送路の周辺に住む人たちは、この粉塵が、猛毒で汚染されたものであることを知っていただき、粉塵が舞い散らないように厳重な運搬をさせる必要があるだろう。

 

ヒ素・環境基準270倍超え!2年も隠蔽。

不都合な真実を隠し続けた「独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が、遂に認めた北海道新幹線トンネル残土の恐ろしい事実。機構は環境基準の270倍を超える溶出量の猛毒のヒ素が含まれる掘削土を2年も前から掘り出していながら、市民には教えず、知らせず、隠していたのである。

南鶉工区、天狗工区、台場山工区の3工区から出た「条件不適土」とは、ヒ素の含有量が84mg/kgで、ヒ素の溶出量は環境基準値0.01mg/Lを、なんと270倍も超える2.7mg/Lの残土であることを、市民に追究されて、ようやく認めた。

公表された天狗工区に山積みされたヒ素の量のうち、溶出量が環境基準をはるかに超えていてもヒ素含有量が<15mg/kgの残土の数値は公表されていないので、公表された数値のみを使用して算出したところ、ヒ素の全重量(最大値)= 867.25kg = 約0.87トンとなった。(ただし、残土1㎥=2.5tとし、ヒ素含有量は公表の最大値を使用)

驚くべき量である。ヒ素は空気に触れ、雨水にさらされると、僅か0.1gで人が死ぬ猛毒の「亜ヒ酸」になって流れ出す。ヒ素だけでも800万人以上が死ぬ量の猛毒のヒ素が天狗工区の狭い敷地に置かれているのだ

国道227号線沿いにある「天狗」工区。青いシートで覆われているのが、溶出量270倍のヒ素が含まれている掘削土の山。

※機構は、定量下限値(<15mg/kg)の場合はヒ素含有量は算出できないという。つまり、機構は捨てた残土が膨大であっても含まれるヒ素の全量を把握していない。捨てたヒ素の全量も分からないのに、安全だとする科学的な根拠は一体どこにあるというのだろうか…?

「改正案」とは言え、すでに、地下水へ流れ出す時には「0.01mg/L以下」になると記されている。

溶出量が環境基準をはるかに超える270倍のヒ素含有の残土の処分先も処分方法も決まっていないのに、公表された資料には「改正案」と記してはいるものの、出端から溶出量が「0.01mg/L以下」という環境基準値が示されている新幹線のためなら、人が麻痺しようが死のうが、農産物や海産物がどうなろうが知ったこっちゃないらしい。

「新幹線トンネル有害残土を考える北斗市民の会」による現地調査。

機構が、2年も前から隠し続けた高濃度ヒ素を、公表せざるを得なくなった背景には、地場産業と郷土を守るために市民が声を上げ、「新幹線トンネル有害残土を考える北斗市民の会」を立ち上げて活動を開始し、村山有害残土捨て場から環境基準の1.5倍を超える0.015mg/Lのヒ素が漏れ出ている事実を突き止めるなど、市民の関心が高く、追究したことにある。

同じく南鶉工区でも「条件不適土」の残土が、狭い工事敷地内から谷側へ崩れ落ちるように、無造作に積み上げられている。

夏には散水車で粉塵を流し、積雪期には粉塵ごと雪を谷側に押し出して捨てている。国道227号線の斜面の雪を真っ黒に染めた。黒い雪は、春には側溝に流れ出し、川に流れ込んだ。2年前、私たちが指摘していた黒い雪について、機構は無視し続けた。それから2年も垂れ流しは続き、2020年11月12日の北斗市議会の調査特別委員会で、機構担当者が工事を中断していることを報告した。

国道227号線沿い「南鶉」工区。雪を覆う黒い粉塵。
国道227号線沿い「南鶉」工区。雪は真っ黒だ。

機構は、北海道民を舐め切っている。これまで、まったく不愉快極まりない不誠実な対応ばかりして来た。専門家や数字、絵空事の資料を使っては、各自治の説明会などで平気で住民を騙し、結局のところ自治のトップと有益者だけで決済された事業が、この有様だ。ろくなことが無い。私たちの暮らし、郷土を守るには、地域住民のみんなで、しっかりと現場を見て、説明を求め、改善を求め、声を上げていくしか術はない

 

魚道では得られないスリット化の効果

須築川砂防ダムのスリット化した間口は3.5mと狭く、流木で塞がるリスクがあるものの、2020年2月末までに8mの切り下げが完了した。そして8か月後の2020年11月6日、パタゴニア札幌スタッフたちと現地調査を行った。

堤高8mの砂防ダムの下部までスリット化を終えた須築川砂防ダム。撮影:2020年2月27日
間口は3.5mと狭いながらも8m切り下げた。今後は流木で塞がるかどうかをしっかりと見極める必要がある。撮影:2020年2月27日。

川底が掘り下がり巨石がゴロゴロしていたところは、スリットから流れ出してきた大小の石で覆われていた。自然の河床、河原が蘇ってきたのだ。

スリット化された須築川砂防ダムから流れ出した砂利が河床を覆い始めていた。川岸の落差も緩和されてきた。撮影:2020年11月6日。
大きな石ばかりで、掘り下がっていた河床は、ほぼ砂利で埋まって自然な瀬になっていた。撮影:2020年11月6日。
大きな石だけがゴロゴロしていた瀬は、砂利で埋まって歩きやすくなっていた。撮影:2020年11月6日

スリット直下のコンクリートの盤(叩き台)に穴が空き、良い深みができていたが、2月に行われた最後の切り下げの際に、この穴を塞ぎ、平らにされてしまった。

スリット化した堤体直下のコンクリート盤が露出していれば、サクラマスやサケの遡上は困難になることが気がかりであったが、現場は、スリットから流れ出した大量の砂利で、腰までの深さの淵になっていた。

堤体8m下部までスリット化が終わった直後。流れ出す水の下はコンクリートの盤だった。左右の穴よりもずっと下に水面がある。撮影:2020年2月27日。
スリットから流れ出した砂利でコンクリート盤は埋まり、深い淵が出来ていた。左右の穴まで砂利が堆積している。撮影:2020年11月6日。

スリット部は腰までの深さの淵になっていた。この淵で3尾のサケを見た。撮影:2020年11月6日。

堤高8mの堤体のスリット部は近づいて見ればその大きさが分かる。撮影:2020年11月6日。
堤体のスリット部の深い淵と自然な流れが戻った上流が見える。撮影:2020年11月6日。

スリット部の淵に3尾のサケがいた。多くのサクラマスやサケがスリットを通り抜けて上流で産卵したことだろう。産卵域が上流へと広範囲に拡大したばかりか、砂利が下流に供給されるようになったことから、ダム下流でも産卵域が蘇えった。ダムで分断されていた川の流れが一つの流れに繋がり、下流でも上流でも広い範囲でサクラマスやサケが産卵できるようになったのである。

サクラマスやサケは、1尾のメスが3,000粒前後の卵を産み落とす。スリット化によって産卵場が拡大したことから、3,4年後には爆発的に増えることが期待される。また、スリットから流れ出した砂利は、アユの産卵場も蘇らせた。地元の漁師も「見たことが無いほどの数が産卵していた」と言う。「河口の海岸は大きな石ばかりで歩きにくかったが、スリット化されてから小石化し、今ではサンダルで歩けるようになり、昔の砂浜が蘇った」「河口周辺では茎が太く背丈の高いワカメが、ヤナギの林のように密生するようになった」とも聞いた。

函館の土建業者とコンサルタント会社が立ち上げた「道南魚道研究会(現在は北海道魚道研究会と改称)」が、提案した日本大学の安田陽一教授が考案した魚道改築案を受け入れていたら、こうはならなかっただろう。そこには「ダムを撤去するしか川は蘇らず、漁獲高も望めない」という漁師たちの英断があったからだ。今後も、地元の漁業者から話しを聞き、川の変遷記録を続けていく。

須築川に建設した砂防ダムが、流れ下るべき大小の石を扞止したために、安定した自然の川の流れを狂わせ、その結果、川が変化を始め、川岸が崩れ、山が崩れ、川が荒れ、サクラマスやサケが枯渇するまでに激減してしまった。ダムをスリット化するだけで、元のように大小の石が流れ下り、産卵場が復活し魚が増え、海藻が増え、自然の仕組みが蘇る。。注目すべきは、全道でサケの漁獲が低迷しているというのに、この管内は、サケの漁獲が好調だということである。

 

トンネル残土の搬入場で、高濃度のヒ素を検出。

函館近郊の北斗市は、北海道新幹線トンネル工事で発生する掘削土(残土)を近隣町からも受け入れている。環境基準超えの有害重金属含有の要対策土(有害残土)である。保管場所は、村山地区の国道227号線沿い砕石跡地。この下流側の砂泥から0.015mg/Lという環境基準1.5倍超えの高濃度のヒ素が検出された。

水を採水:2020年4月26日
砂泥を採取。この砂泥から高濃度のヒ素が検出された。:2020年4月26日

高濃度のヒ素が検出されたことから、分析調査を行った市民団体は、北海道民の生活環境を護る立場である渡島総合振興局に事実確認の調査を申し入れた。ところが振興局は、市民団体からの情報を、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構へ漏洩。機構は早々と分析調査を行い、「ヒ素は環境基準値以下だった」と公表。市民団体への聞き取りなど一切無いままにである。ヒ素を含んだ砂泥の採取場所すら聞こうともしない。だから逆に機構が調べた場所が何処なのか分からない。機構は市民団体の分析調査なんて相手にもしないという態度である。何より恐ろしいのは、この調査で周辺ではありえない高濃度のヒ素検出したことである。村山の要対策土保管場所からヒ素が漏れ出したことが示唆され、それを機構公式認めるかたちになった。

出典:北海道新聞(渡島・檜山版)・2020年8月25日
出典:北斗民報・2020年年9月号(9月6日発行)

ヒ素の環境基準値は0.01mg/L以下だが、機構の調査では、0.01mg/Lが2地点、0/008mg/Lが1地点あることが示された。他の地点はこの数値よりもず~っと低い数値だ。ヒ素0.01mg/Lの数値は、そもそも自然状態ではあり得ない高い数値と言える。

8月24日に開催された北斗市議会の調査特別委員会で、市側は市民団体の検査機関の分析方法は、機構のJIS規格の分析方法とは異なり、信憑性が無いとして一蹴したという。市民団体が分析を依頼したのは全国組織の農民連の検査機関であり、農民が安全・安心な農業生産を営むために検査を依頼している機関である。(0.015mg/Lという環境基準1.5倍超えの高濃度のヒ素が検出されたことから市側は都合の悪いデータを認めないようにする一心で、口にしてはいけない「農民連は信憑性が無い検査機関である」と市議会で思わずうっかり公言しちゃったのである。北斗市の農業者がよりどころにしている検査機関の信頼性を著しく損ねるものだ。

公務員は「国民全体の奉仕者」だ。北斗市民が支えている北斗市は、市民のために奉仕する行政機関だ。市は市民が生業にしている農業を護るのが職務の一つだ。それなのに、なぜ、農業者の生業を護ろうとしないのだろうか。公務員の基本に立ち返り北斗市民の生業を護るための奉仕に励んでいただきたいものだ。

村山の砕石跡地。鉄塔の下部に左右に白く広がっているのが有害残土。雨水や浸透水で崩壊している崖の直下に。有害残土は、まだまだ山積みされる。2020年4月26日

今ならまだ間に合う。市民の生業の農業を脅かす村山の有害残土捨て場について、北斗市は、保水能力の低い牧草地が広がる「きじひき高原」の直下で、雨水や浸透水による浸蝕により既に崩壊が拡大している場所が、本当に適切な場所なのか?科学的な裏付けに基づいた正しい判断がされたものか?情報を公にして、今一度、北斗市民と向き合い、互いに情報を持ち寄り、智恵を出し合って、見直しも含めた再検証を行っていただきたい。

 

 

トンネル排水の恐ろしい環境汚染が止まらない。

春の川には多くの魚たちがやって来る。濁水を川へ排水する北海道新幹線トンネル工事。有害重金属混じりの濁水をPACとアクリルアミドで処理し、その処理水に含まれる残留成分を放流水槽(沈澱水槽)で沈澱させて、その上水を川に流す。この処理法を怠れば、川も海も汚染させることになる。流域の環境汚染は、私たちの飲料水や海産物をも危険に曝す。

八雲町の「ルコツ工区」では、2017年に沈殿物を垂れ流していたことから、私たちの指摘を受けて、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は改善を行っている。

今はどうなっているのだろうか?2020年4月30日に現場を取材した。

北海道新幹線トンネル工事現場「ルコツ工区」からの排水口の周辺は白くなっていた。撮影2020年4月30日。

白いもやもやが漂う白濁した水が川に流れ込んでいた。この白い沈澱物は一体、どういうことなのか…?

排水は白濁し、川に流れ込んでいた。排水口の周辺は白い物質が堆積している。撮影:2020年4月30日。
排水口の周辺は白い物質が堆積し、長期間にわたり、流されていたことがわかる。撮影:2020年4月30日。

まただ!2017年と全く同じ、沈澱物を水中ポンプで吸い上げて川に排水をしていたのだ。有害重金属含有の沈殿物をである。

2017年と同様に、放流水槽(沈澱水槽)の底に沈澱させた沈澱物を水中ポンプで吸い上げて排水していた。撮影:2020年4月30日。
2017年に、改善の申し入れで増設された放流水槽(沈澱水槽)から排水されている。ところが、なんと、放流水槽(沈澱水槽)で沈澱させた沈澱物を水中ポンプで吸い上げて排水していたのだ。呆れるばかりだ。撮影:2020年4月30日。

有害重金属混じりの処理濁水を放流水槽(沈澱水槽)で沈澱させて、その上水を川に流すという改善を2017年に行い、放流水槽(沈澱水槽)を増設して配慮するという機構は、その約束を全く反故にした。沈澱した残留物をわざわざ水中ポンプで吸い上げて、川に流しているのだから、悪質極まりない。呆れた組織だ。

排水口の周辺は白い沈澱物で覆われていた。撮影:2020年4月30日。
排水と沈澱物を採取して分析する。撮影:2020年4月30日。

北海道新幹線工事の沿線の人たちは、こんな不誠実な現場があることをよく知ってほしい。

住民説明会では環境に配慮するといいながら、この有様なのだ。機構の説明は決して鵜呑みにしてはいけない。この現場が、「機構の説明は信じるな」と教えてくれている。

工事沿線地域の人たちは、常に現場を監視する目が必要だと自覚していただきたい。

2017年には放流水槽(沈澱水槽)の上水ではなく、沈澱させた沈澱物を吸い上げて川に排水していた。機構に改善を申し入れ、改善されたハズだったのだが…。撮影:2017年11月17日。

八雲町内だけでも11箇所でトンネル工事が行われ、それぞれに排水がされている。排水量は膨大だ。噴火湾では養殖ホタテ貝の斃死が問題になっている。北海道新幹線トンネル工事が始まり、排水が始まった頃と妙に符合するから気味が悪い。

指導的立場にある国土交通省および、道民の生活と安全を護る立場の北海道はこうした現場があることを知り、現場を監督し、徹底した指導を行って早急に改善をしていただきたい。そして、こうした公共事業は誰のためのものなのかを認識し、大いに反省していただきたい。

以下は2017年に残留物を吸い上げて排水していた記事。

新幹線トンネル工事の排水問題。その2

鉄道運輸機構の嘘。濁水処理は、見せかけだった。

 

青山ダムと当別ダムによる河川荒廃と危惧される当別活断層の存在

巨大ダムは、微細な砂やシルト分(泥)ばかりを選り分けて下流へ流す。だから、川は泥川になり、川から魚がいなくなる。

非灌漑期に貯水をカラにする農業用ダムの底を見れば分かる。カラになった巨大ダムの底は泥ばかりになっている。水が抜かれてカラになった石狩川支流当別川の青山ダムを取材した。

非灌漑期に水を抜いた青山ダム。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムの底は泥ばかりだ。撮影:2019年11月3日
青山ダムから流れ出る水は濃い泥水だ。撮影:2019年11月3日

青山ダムは、泥ばかりを溜め込んでいることがお分かりいただけるだろう。流れ出す水はご覧のように泥水だ。その結果、川底には微細な砂やシルト分(泥)が堆積し、魚は繁殖が出来なくなる。川底に産み落とされた卵は、微細な砂や泥を被り、窒息してしまうからだ。かつてはサクラマスやサケ、カワヤツメなど魚類が豊富な川だったというが、その面影はもう無い。そして、青山ダムの下流には更に巨大な当別ダムが建設された。

石狩川水系当別川

 

当別ダムは多目的ダムである。青山ダムで見たように、ダムの底は泥だらけ。そして、その泥が大量に下流に放流されることになるわけだ。撮影:2019年11月3日。
巨大な当別ダム。撮影:2019年11月3日

巨大な当別ダムは、溜め込んだ泥を下流に流す。その泥は、石狩川を経由して石狩湾を泥で染めることになる。そればかりか…

この当別ダムには一抹の不安がある。ダム付近に活断層とされる「当別断層」があるからだ。実際に活断層が動き、地表がずれた痕跡がある。青山中央地区にある「道民の森」公園の敷地内に当別断層の露頭があり、当別断層を直に見ることが出来る。下の写真で分かるように右側と左側で大きな段差が出来ている。これがずれた断層面である。地面には亀裂が走っている。

当別断層公園。左の平らなところと右側の一段高くなったところが当別活断層の断層面がズレたところ。.断層の露出部。撮影:2011年10月28日

この当別断層の位置がよく分かる図は、下記のサイトで見ることができる。

当別断層

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/f04.htm

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/ktk/bousaikaigi/zisin/08sankouzuhyou.pdf

活断層「当別断層」と「当別ダム」の位置関係が分かるように地図とGoogle Earthの衛星写真に重ねて表示してみた。

元図に加筆している。当別ダムと当別活断層の位置関係の図。
Google Earthの衛星画像と当別活断層の位置を重ねた。出典:Google Earth

当別断層とダムの位置関係を図示してみれば、ダムのこんなにも近くに断層があることが分かる。もしも当別断層が動けば、ダム湖に面した山が湖面に崩れ落ち、ダム津波が発生する。そうなった時、当別ダムの堤体は津波に耐えられるのだろうか?

地すべりで発生するダム津波の怖さは、イタリアの「バイオントダム」の事例で知ることができる。

衝撃の瞬間「ダム津波の脅威」

また、当別ダム直下の地層がずれれば、堤体そのものが崩壊するかも知れない。地図や衛星写真にダムと断層を重ねてみれば、この場所に巨大ダムを建設することが果たして適切だったのか、疑問を感じるばかりである。当別ダムの下流には住民の暮らしがある。こんな場所に巨大ダムの建設を認めるだけの安全を担保する科学的な裏付けはあるのだろうか?

当別断層が動く確率は低いと言われても、福島第一原発事故や熊本地震のように事後になって「未知の断層」が動いた「想定外」だとして始末される。一昨年の2018年9月6日未明には、胆振東部で震度7の地震(平成30年北海道胆振東部地震)が発生し、JESEA地震科学探査機構「MEGA地震予測」のホームページには、この地震の前に苫小牧から札幌にかけての地表が沈降する現象が見られ、震源となった胆振地方では沈降と隆起が見られたとある。この地震でも、震度や震源が事前に予測された訳ではない。

https://www.jesea.co.jp/earthquake/003/

https://shizensaigaichosashi.jp/higashinihon-zishinhasseikikendo-katsudansou/

https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/index.htm

科学的な地震予知が確立されていないのに、巨大な当別ダムを当別断層と接するような位置に建設したことは、大きな過ちを犯したのではないか?

「人間の愚かさ、自然への理解の欠如、管理の失敗」

人間の過信が引き起こす人災は、日本の巨大ダムでも起き得る。

ダムは安易に建設してはいけない。

 

 

ダムの影響がよくわかる暑寒別川

北海道北部の増毛町にある「サクラマス保護河川」の暑寒別川は、ダムの影響がよくわかる。1号砂防ダムは、もう砂利で満杯で、川水は堤体を乗り越えて流れている。ダム下流は、砂利の殆どが流されてしまい、川底の岩盤が剥き出しになっている。これがダムの影響の典型的な姿である。そして、川岸は浸食されて垂直の崖化し、川岸の土砂・巨石が立木もろとも流されて、川幅が異常に広がっている。

暑寒別川1号砂防ダムの下流は砂利が流されて岩盤が露出し、川岸まで流されて川幅が広がっている。撮影:2019年11月3日

「土石流防止」の砂防ダムが、その下流で新たに土砂を産出して土石流や流木を発生させている。そうして流された砂利はすぐ下流の頭首工に溜まっている。その為、頭首工から流れ出す砂利の量が極めて少なく、下流側は岩盤の露出が広がっている。

1号砂防ダムの下流の頭首工のところで、砂利が止まり、下流側に砂利が流れる量がごく僅かになっているのが分かる。撮影:2019年11月3日
頭首工の直下ではたくさんのコンクリートブロックが敷き詰められているが、土台の砂利が流されてしまったので、バラバラに壊れている。撮影:2019年11月3日
頭首工の下流側は砂利が流れてこないので、岩盤の露出が広がっている。巨石を組んで砂利を食い止めようとした痕跡があるが、悉く失敗して流されている。撮影:2019年11月3日
コンクリートブロックを敷いて、川底の砂利を止めようとした工作物があるがご覧の通りに壊れている。ダムで砂利が止められると、何をやっても壊されるのだ。税金がこうして無駄に失われている。撮影2019年11月3日
川底の砂利が失われ、川底は下がり続ける。川岸の崩壊を防ぐために自然石の護岸やコンクリート護岸にしていたが、すべて壊された。川岸の崩壊はさらに拡大している。撮影:2019年11月3日
頭首工の下流側は、川岸崩壊を防止するためのコンクリートブロックが水面のはるか上部にあり、壊されているのが分かる。川岸が崩壊すれば土砂・流木が流れ出し、災害を生み出すダムの影響は深刻である。撮影:2019年11月3日
ダムの下流では砂利が流されて、川底が下がり、さらに岩盤が露出してしまっている。川底が下がるのだから、川岸が崩壊して、そこから土砂・流木が流れ出し、下流に災害をもたらすことになる。撮影:2019年11月3日

暑寒別川は、サクラマスやサケの資源保護の為の禁漁河川である。勿論、釣りは出来ない。でも、考えていただきたい。保護を目的に釣り人を排除しているが、こんな川の状況にしておいて、サクラマスやサケの資源を保護していると言えるのだろうか?そもそも岩盤が露出した処でサクラマスやサケが繁殖出来るとでも言うのだろうか?川がこのような状況になっているのに、河川管理者は1号砂防ダムの上流に、更に複数の床固工(堤高の低いダム)を建設した。これで川全体でサクラマスやサケが産卵できないようにしてしまったのである。

釣り人が、この川でヤマメを1尾でも釣りあげれば逮捕!処罰される。しかし、河川管理者が造ったダムの影響でサクラマスやサケの資源が根こそぎ失われることになっても、誰かが罰せられることは無い。

暑寒別川

魚道を取り付けていても、産卵する場所がなければ、魚道を上っても役に立たない。ダム下流では卵を産み落としても卵が砂利ごと流されるのだから、魚が減るのは当然だ。川岸崩壊で流れ出す泥(微細な砂)やダムから流れ出す微細な砂を被り、卵は窒息して死んでしまう。

何度も言うが、この川は「サクラマス保護河川」だ。河川管理者のやるべきことは、釣り人に責任転嫁するのではなく、卵が育つように川の仕組みを蘇らせることではないか。

北海道南部せたな町「良瑠石川」や「須築川」に学ぶべきだ。

良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

須築川ダムのスリット経過報告会と現地視察

 

 

須築川ダムのスリット経過報告会と現地視察

2020年2月14日、函館建設管理部による関係機関と協議会員を対象とした「須築川砂防えん堤報告会」が開催され、パタゴニア札幌スタッフの方と参加しました。

これまでスリット化が進むにつれ、現地を経過観察していた私たちの予想通り、報告会ではサクラマスが遡上し、上流で産卵していたことが明らかにされました。スリット化の効果が認められた訳です。スリットの間口は3.5m、切り込みの深さは6.75m。

撮影:2019年11月4日

ダムの堆砂は、スリット化によって流れ出したものの、粒径は全体に小ぶりなものばかりで、下流の国道276号線(229号線)までは河床が上昇するような量には到達していないとの事。また、心配された土砂災害も無く、泥水の影響もヘドロによる水質の劣化も無いことが報告されました。

国道276号線(229号線)橋。河床低下が進行しているために、橋脚の基礎は剥き出しのまま。まだ、ここまでは十分な量の砂利が到達していない。撮影:2019年12月19日

報告会の後、段階的スリット(少しずつ切り下げていく)次の工事着手直前の現場を視察しました。

須築川砂防ダムのスリット化工事現場視察。撮影:2020年2月14日
澪筋を切り替えて、更なるスリット化工事が進められている。堤体は塗り付けたコンクリートで厚みを増していた。撮影2020年2月14日。
間口3.5mのスリット部からダム上流側へ。撮影:2020年2月14日。
須築川砂防ダムの上流側(堆砂側)からスリット部を見る。左右の管は須築川の川水を送水する管。撮影:2020年2月14日。
須築川砂防ダムの堆砂は徐々に抜けていたが、堆砂は樹林化し陸地化しているので、全量が一気に出るような心配は無かった。撮影:2020年2月14日。
堆砂の中の腐葉土などの有機質は押し固められ、ちまちまと浸蝕されて流れ出した痕跡が認められた。大量の泥やヘドロの影響が無かったのはこのためと思われる。撮影:2020年2月14日。
大きな石がゴロゴロしていた河口は、普通の砂浜のように砂礫の渚が蘇ってきている。漁港の出入口が、スリット化によって須築川から流れてきた砂利で閉塞すると言われていたが、現在その兆候は無い。撮影:2020年1月10日。

ダムのスリット化で砂利が流れてきたので、「サケがあちらこちらで産卵していたし、今まで見たことが無かったアユがたくさん産卵していた」と地元の漁師が語った。また、河口付近の海域ではスリット化が始まってから海藻の育ちがよくなり、今までにない大型のワカメが育ち、ホンダワラが密生するようになってきたとも言う。

私たちは、これからもドローン空撮による河口域の海藻の回復状況も含め、自然河川の復活、水産資源の回復など取材を続け、ダムのスリット化の効果を検証します。

 

 

トンネル残土の有害・無害の判別方法は?

今や、北海道新幹線の延伸が進むにつれて、トンネル掘削土の投棄場所や方法が問題になっている。その中でも、有害な重金属を含んでいる汚染土(機構用語「対策土」)と、そうでない土(「無対策土」)は、一体どうやって調べて選別しているのか?皆さんは、ご存知ですか?

このGoogle Earth写真の場所は、八雲町遊楽部川に注ぐ支流の「音名川」の扇状地である。川と川とが合流する扇状地は、地下水が豊富な場所だ。赤点線で囲ったところには窪地があり、いつも水が溜まっていた。

川と川が合流する扇状地は地下水豊富な場所だ。赤点線円のところに窪地があり、いつも水が溜まっていた。北海道新幹線の「新八雲駅」の正面にある。出典:Google Earth

地下水が浸みだして出来たこの窪地の水たまりをオオハクチョウやマガモなど水鳥たちが利用していた。

水溜まりで羽を休めているオオハクチョウ。撮影:2017年4月9日

ここに、北海道新幹線立岩工区のトンネル掘削土と、野田追(南)工区の掘削土が投棄されて埋められた。

オオハクチョウやマガモたちが羽を休めていた水たまりが掘削土で埋められてしまった。撮影:2019年2月7日

持ち込まれた掘削土に、有害重金属は含まれていないのだろうか?これが汚染土なら、地下水豊富な場所への投棄は土壌や地下水が汚染される懸念がある。

音名川と周辺の小高い山から流れ出す川水は、扇状地の地下へ浸透して、遊楽部川に湧き出している。こうした湧水の吹き出す川底にサケたちは産卵し、この湧水に我が子の命を託している。そして、遊楽部川の水が注ぐ噴火湾は、大規模なホタテ養殖場になっている。また、残土が投棄された扇状地帯では農家の人たちが、井戸水を生活用水に使用している。そうなると、この窪地に持ち込まれたトンネル掘削土が、有害な重金属を含んでいるかどうかは、重大な問題になる。

八雲町春日地区に立岩工区及び野田追(南)工区から掘削土が持ち込まれた。この掘削土は有害重金属が含有されているのか、いないのか…。撮影:2019年2月7日

八雲町は、「機構から無害(有害重金属は含まれていない)と聞いている」と言う。しかし、現場に投棄された掘削土を、見れば見るほどに疑問を感じてならない。それは、なぜか…?立岩工区から窪地に持ち込まれた「無害」な掘削土と、工区内で保管している「有害」な掘削土は、見た目は酷似しており素人目には区別がつかず、同じに見えるからだ。

下に「無害」と「有害」の写真を並べる。皆さんには違いが分かりますか…?

写真・左は立岩工区から春日の農地に持ち込まれた無害とされる掘削土。写真・右は立岩工区内に保管されている有害重金属含有掘削土。撮影:左・2019年1月25日:右・2019年2月17日

八雲町は有害・無害を区別する方法を確認したわけではない。「機構の第三者委員会の専門家が判断しているから問題は無い」と繰り返す。疑問を訴えても、機構の説明する「言葉」を右から左に伝えるだけで、同じ答えしか返ってこない。

では、機構は「有害」「無害」をどのように区別しているのだろうか…?住民説明会で配付された料資がある。

出典:機構提供の住民説明会用の資料

資料では、工事着手前に、トンネルのルートに沿って地上から垂直にボーリングし、「採取したコアを用いて重金属等の溶出量・含有量を調査します」と、説明が添えられている。

次の資料では、実際にトンネルを掘り進めながら掘削方向に100mごとに進行方向に水平にボーリングを行い、「コア」を採取して、有害重金属の含有の有無を判別することが示されている。

トンネル掘削前のボーリング調査図。出典:機構提供の住民説明会用の資料

二段構えで確認するという分かりやすい説明資料だ。しかし、ボーリングの大きさ”直径”は説明されていない。機構に説明を求めたところ、ボーリングの直径は僅か6.6cmであることが分かった。約80㎡もの広い掘削面積に、針の穴のような極めて小さな規模である。

針の穴のようなコアであることが分かるように、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の資料に直径6.6cmのコアを入れてみた。

例え図に描くと、有害重金属含有の地層を外す可能性が極めて高いと分かる。トンネルの掘削面積に対してこんな小さなコアを抜き取って全体を判定しているというのだから、有害重金属含有の地層を外す可能性は拭えない。地層は均一な構造にはなっていない。地層中には断層もあり、物質も異なり複雑に混在し、地層の配置も重なりも単純ではない。

有害重金属含有の地層を外せば、100m区間の全部が有害重金属含有の無い地層と判断され、掘削土は無害として扱われる。そこで、機構に「有害重金属含有の地層を見落とすことがないのかどうか?」の説明を求めた。機構は、各トンネル工事現場には「地層を判別できる専門の職員」がおり、掘削面の地層を「目視」で「有害・無害の判別」をしていると言う。各トンネル工事現場には、地層を目で見て見分けることができる専門家がいると言うのである。

出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の住民説明会用の資料
出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の住民説明会用の資料

「有害・無害の判別は科学的な裏付けが無い」ということが分かった。職員個人が、目で見て判断するという恣意的な判断で決めているという信じられない恐ろしい話だ。

北海道新幹線トンネル工事にかかわる沿線市町村の住民の方たちは、科学的な裏付けが無いまま、有害・無害を判別した掘削土を市街地建物の地盤材や畑の嵩上げ、また、農地そのものに持ち込んでいることを知っていただきたい。科学的な裏付けのない判別なのだから、判断を誤れば、有害な重金属が紛れ込んだ掘削土を何らの対策をすることなく、機構が言う「無対策土」として投棄することになる。将来、汚染が確認された時には地下水や土壌に汚染が広がり、手に負えなくなる。

地下水は人間を含むすべての生きものたちの命の水である。農林水産業を支える水でもある。市町村の住民の生命・財産を守るのはその地の行政の役目だ。地域の産業を守るのも行政の仕事の筈。地元の行政の担当職員はその責任の重さを意識して、責任を持って、機構に対して科学的なデータの有無を確認し、裏付けのないものは拒否するくらいの断固たる姿勢で臨んでいただきたい。現状のように有害無害の判断を機構に丸投げにして、汚染が発覚した時には、機構という組織があるのかどうかすら分からない。つまりは責任の所在すら無くなっているかも知れない。

「汚染が発覚したら機構に補償してもらえばよい」という声も聞く。だが、重金属含有掘削土と汚染の影響の因果関係を証明することは時間と莫大な経費がかかるだけで、不可能と思った方がよい。因果関係が分かったとしても、対策や改善ができるかどうかも分からないだろう。その結果、憂き目に遭わされるのはその地で暮らす住民である。北海道新幹線の工事が遅れるから…などと言っている場合ではない。

北海道新幹線・野田追(南)工区から持ち込まれるトンネル掘削土。有害・無害の判別には、受け入れする側がしっかり確認する必要がある。

残土を投棄した後、芝やシロツメクサの種子をばらまいて植栽している。盛り付けた残土は重機で粉砕されているので、風雨・雪にさらされて効率よく土壌中に溶出していく。有害重金属含有の有無が曖昧のまま扇状地に投棄されたのだから、土中の有害成分が土壌に浸透して地下へと潜り込み、地下水に流れ込むかと思うと心配でならない。売り土地になっている場所もある。土地の所有者が変われば、管理の手は町から離れる。

芝やシロツメクサの種子を撒いている。
残土を盛り付けた上面の芝やシロツメクサの育ちは悪い。側面は残土が剥き出しのままだ。
植栽もままならず剥き出しのまま、残土を捨てた土地が売りに出されている。

住民の健康被害が出た場合、水産資源や農作物に影響が出た場合も因果関係を証明するのは住民、農漁業者側であり、莫大な費用と時間をかけて証明するのは至難の業だ。機構は、因果関係を被害者側が証明しない限り、責任は認めない。その時に機構の組織があるのかどうかすら分からない。こんな係争が起きないようにできるのは「今」しかない。今できることは、安全性の裏付けの無い掘削土の持ち込みは即刻中止させることだ。十分に時間をかけて、安全・安心が確保されるように有害・無害の判別を科学的に適性に行い、有害重金属含有掘削土は安全・安心が確保できる場所を選定して、汚染物質が土壌に浸透しないように完全に遮水した施設に保管し、常にモニタリングしながら未来永劫に保管し、万全の態勢を担保しておくことが必要だ。残土を受け入れる責任として自治体の長は、これを機構に申し入れ、未来永劫に保管・管理する責任の所在と対策を取るように機構に念書を書いてもらうぐらいは出来る筈であり、やるべきことである。

 

 

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