不都合な真実を隠し続けた「独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が、遂に認めた北海道新幹線トンネル残土の恐ろしい事実。機構は環境基準の270倍を超える溶出量の猛毒のヒ素が含まれる掘削土を2年も前から掘り出していながら、市民には教えず、知らせず、隠していたのである。
南鶉工区、天狗工区、台場山工区の3工区から出た「条件不適土」とは、ヒ素の含有量が84mg/kgで、ヒ素の溶出量は環境基準値0.01mg/Lを、なんと270倍も超える2.7mg/Lの残土であることを、市民に追究されて、ようやく認めた。
公表された天狗工区に山積みされたヒ素の量のうち、溶出量が環境基準をはるかに超えていてもヒ素含有量が<15mg/kgの残土の数値は公表されていないので、公表された数値のみを使用して算出したところ、ヒ素の全重量(最大値)= 867.25kg = 約0.87トンとなった。(ただし、残土1㎥=2.5tとし、ヒ素含有量は公表の最大値を使用)
驚くべき量である。ヒ素は空気に触れ、雨水にさらされると、僅か0.1gで人が死ぬ猛毒の「亜ヒ酸」になって流れ出す。ヒ素だけでも800万人以上が死ぬ量の猛毒のヒ素が天狗工区の狭い敷地に置かれているのだ。
※機構は、定量下限値(<15mg/kg)の場合はヒ素含有量は算出できないという。つまり、機構は捨てた残土が膨大であっても含まれるヒ素の全量を把握していない。捨てたヒ素の全量も分からないのに、安全だとする科学的な根拠は一体どこにあるというのだろうか…?
溶出量が環境基準をはるかに超える270倍のヒ素含有の残土の処分先も処分方法も決まっていないのに、公表された資料には「改正案」と記してはいるものの、出端から溶出量が「0.01mg/L以下」という環境基準値が示されている。…新幹線のためなら、人が麻痺しようが死のうが、農産物や海産物がどうなろうが知ったこっちゃないらしい。
機構が、2年も前から隠し続けた高濃度ヒ素を、公表せざるを得なくなった背景には、地場産業と郷土を守るために市民が声を上げ、「新幹線トンネル有害残土を考える北斗市民の会」を立ち上げて活動を開始し、村山有害残土捨て場から環境基準の1.5倍を超える0.015mg/Lのヒ素が漏れ出ている事実を突き止めるなど、市民の関心が高く、追究したことにある。
同じく南鶉工区でも「条件不適土」の残土が、狭い工事敷地内から谷側へ崩れ落ちるように、無造作に積み上げられている。
夏には散水車で粉塵を流し、積雪期には粉塵ごと雪を谷側に押し出して捨てている。国道227号線の斜面の雪を真っ黒に染めた。黒い雪は、春には側溝に流れ出し、川に流れ込んだ。2年前、私たちが指摘していた黒い雪について、機構は無視し続けた。それから2年も垂れ流しは続き、2020年11月12日の北斗市議会の調査特別委員会で、機構担当者が工事を中断していることを報告した。
機構は、北海道民を舐め切っている。これまで、まったく不愉快極まりない不誠実な対応ばかりして来た。専門家や数字、絵空事の資料を使っては、各自治の説明会などで平気で住民を騙し、結局のところ自治のトップと有益者だけで決済された事業が、この有様だ。ろくなことが無い。私たちの暮らし、郷土を守るには、地域住民のみんなで、しっかりと現場を見て、説明を求め、改善を求め、声を上げていくしか術はない。