北海道南部の太平洋側に注ぐ八雲町「遊楽部川」で進行している「河床低下」は危機的な状況にある。
遊楽部川河畔にある砂蘭部公園の対岸の川底が急速に掘り下がり、川岸が大きく崩壊した。この場所は、湧き水が豊富でサケの産卵場である。川底の石の間から湧き水が噴き出していることもあり、浮き石になっているので、増水すれば、容易に川底の石が流されて、川底は深く掘り下がる。
同じく河床低下が著しい支流の砂蘭部川は、河岸崩壊で発生した土砂が流れ出し右岸側に堆積し、流れを左岸側へ押しやったことと相まって、ご覧のように深く川岸を浸食することになった。
河床低下した川は、川岸から湧き水が浸み出すようになり、川周辺の地下水が抜き取られ、水位を下げることになる。井戸水に依存している周辺住民からは、生活用水が足りなくなったと聞いている。かつて釧路湿原を畑地に開墾する際に、畑の周りに深く溝を掘る「明渠排水」が行われた。湿地の水が抜かれて地下水位が低下し、乾燥化するというわけだ。河床低下は、まさに明渠排水と同じ効果を発揮する。貴重な水資源がこうして減少し、失われて行く。
そして、河床低下は、危険な川へと変貌させるのだ。
河床低下の危険性は、川底が掘り下がるので、各所で川岸が崩れることにある。遊楽部川上流に架かる道々42号線の橋の取り付け部が浸食されて大きくえぐられている。橋の取り付け部の基礎材が車が通る度に押し出されるので、路面に窪みが出来ている。
増水ごとに確実に橋台の裏側は浸食されている。やがては橋の取り付け部が崩れて道路が陥没する懸念が拭えない。
北海道では多くの川で河床低下が進行している。東川町の忠別川に架かる忠別橋では橋の取り付け部が陥没し、通行中の車が転落して犠牲者が出た。新得町のパンケシントク川、清水町のペケレベツ川、広尾町のルピナイ川など、橋の取り付け部が陥没して、車が転落し、それぞれに犠牲者が出ている。何れも、ダムが引き起こしている「河床低下」による河岸崩壊が起因になっている。
八雲町の遊楽部川でも橋の崩落の危険性を、河川管理者である北海道渡島総合振興局函館建設管理部に訴えて3年になるが、いまだ放置されたままである。壊した川が暴れる恐ろしさを微塵も感じていないようだ。