八雲町を流れる遊楽部川(北海道渡島半島の太平洋側)は、支流ともに多くの治山・砂防ダムがあり、流下する砂利が止められ、ダム下流全域で河床低下が進行している。それに伴い、立木もろとも川岸が崩れ、根っこ付きの流木があちこちで見られる。災害が多発化、規模も拡大し次々の災害を孕んでいる。
その一つが、八雲町上八雲の遊楽部川に架かる道々42号線の「セイヨウベツ橋」。
撮影2022年11月27日。遊楽部川上流の道々42号線のセイヨウベツ橋の上流側では河床低下が進み、川岸の樹林が根っこごと倒れ込んで流された。その後も更に川岸が崩れ、セイヨウベツ橋の取り付け部道路の基礎部までえぐられた。
1990年5月30日の写真で写っている倒れこみ始めた河畔林が、全て無くなっている。川岸の崩壊は自然状態でも発生するが、崩壊後、時間の経過と共に崩壊面が崩れ、崩れた土砂は下に貯まり、やがて緩やかな斜面になり、そこに草木が生えて元のような川岸に戻っていく。しかし、河床低下による河岸崩壊は別格だ。崩壊後、崩れた土砂は流されるため、常に、崩壊面は垂直の崖になったままだ。写真で判るように崩落面が常に垂直の崖になっている姿が、河床低下による河岸崩壊なのである。
そして、崩れ続けた川岸は後退していき、とうとう、セイヨウベツ橋の取り付け部(橋台)の裏側まで崩壊し、水流が当たるようになって洗掘され、基礎材が抜かれて橋台のコンクリート枠だけになってしまっている。これでは、道路の基礎材を押さえる仕組みが無いので、基礎材が抜ければ橋の取り付け部で道路が陥没、崩落することになる。道路管理者は、応急処置で土嚢を投入しているが、砂利不足になっているのだから、下部の砂利が抜かれて土嚢は沈み込んでいる。役立たずの応急処置であり、極めて危険な状況になっている。
橋と道路の取り付け部は、通行車両の重みで道路の基礎材が押し出され、すでに、道路に窪みが見られるまでになっている。やがて発生するであろう「道路陥没」が示唆されているのだ。
このまま放置していれば、橋の取り付け部の道路が陥没するのは時間の問題だ。道々42号線の管理者である北海道渡島総合振興局函館建設管理部や出先機関の八雲出張所、また、八雲町建設課へも訴え続けて1年を経過したが、2023年11月30日現時点においても何らの補修もされず、放置されたままだ。函館建設管理部八雲出張所の説明(2023年11月29日)では、渡島総合振興局函館建設管理部が担当になっており、今年度は予算が取れず、先送りされたという。生命にかかわる事態が予想されるのに先送りされたことに驚く。人命を守ることが最優先課題だろうに…。
「放置して、災害が大きくなれば、国から災害補修工事が引き出せる」おぞましいが、こうした手法があることを耳にした。
近年は、厳冬期の1月や2月でも雨が降る。積もった雪に激しい雨が降れば、想定外の増水が発生する。豪雨で見通しのきかない闇夜に、上八雲からセイヨウベツ橋方向に緩いカーブを下った車が、陥没した橋の取り付け部にさしかかり、気づいた時には……
北海道の道路陥没の事例は、東川町の「忠別川に架かる忠別橋」、新得町の「パンケシントク川に架かる橋」、清水町の「ペケレベツ川に架かる橋」、大樹町の「歴舟川支流ヌビナイ川に架かる橋」の事例がある。いずれも橋の取り付け部の道路陥没で、車が転落し犠牲者が出ている。各所の現場を取材したが、どの川にも上流に砂利を止める河川横断工作物(ダム)があり、その下流一帯で、著しい河床低下が進行していた。どの現場にも「共通する特徴」だ。まさに陥没事故直前の姿が、セイヨウベツ橋のような状況だったことが伺える。
セイヨウベツ橋の位置図。
道々42号線は、太平洋側の八雲町と日本海側のせたな町を結ぶ渡島半島を横断する幹線道路だ。道々42号線を利用する方は、遊楽部川増水時には、鮭誕橋へ迂回された方がよいだろう。この危険な状況を訴えても、1年以上経過しても放置したままなのだ。人命にかかわることなので、警察関係者の方たちも、ぜひ、この現場を確認し、早急に、適切な対策をしていただきたい。