サケの不漁は、ロシア側の「先獲り」が原因とする記事で、道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場の卜部浩一研究主幹が、「海水温が高い状態が続いたため、日本に戻るサケがロシアの海域に停滞し、その間にロシア側に漁獲されてしまった」というのである。
また、赤潮の影響という声も聞く。動きの緩慢なウニやカジカなど沿岸地つきの魚介類、逃げることが出来ない定置網のサケに被害があったが、定置網以外でサケが赤潮の影響で大量に浮いたり、浜に打ち上げられたという話しは無い。太平洋側の漁獲低迷は著しいが、日本海南部は2019年、2020年、2021年と3年連続で漁獲が右肩上がりに伸びている。この違いにこそ着目し、卜部浩一研究主幹に説明していただきたいものだ。
日本海側せたな町、島牧村、乙部町では2010年から治山ダム・砂防ダムのスリット化を手がけ、広めている。
八雲町水産課は、「日本海南部のせたな町の漁獲向上は、サケ稚魚を海中飼育して放流しているので、その効果ではないか」と言う。しかし、サケ稚魚の放流前の海中飼育は、10年も20年も前から取り組まれている。(成長が早まるために、4年で帰るところ3年で帰るので小ぶりになったという事が話題になったことがあった)サケ稚魚の海中飼育が漁獲向上の効果と言うのであるなら、八雲町をはじめ、全道及び全国に広まっている事だろう。
噴火湾に注ぐ川では、サケの自然産卵が見られていた現場のすべてが、河床に砂の堆積が目立つようになってから、産卵に来るサケがいなくなってしまった。つまり、河床に堆積した砂の影響で、産み落とされたサケの卵が育たなくなり、そこで産卵するサケの子孫が絶えたという事だ。産卵場としての機能が萎え、失われてしまった事が原因だ。サケが産卵していた場所が、どのように変わったのか写真を添える。
かつては、上流から下流まで支流を含む川の至る所でサケが産卵していた。サケの遡上に合わせて、北方圏からオオワシ・オジロワシが冬を乗り切るために自然産卵後のサケ(ホッチャレ)を食べに飛来する。ワシたちも川の上流から下流まで、支流を含む至る所で見られた。即ち、ワシが見られるポイントは、サケの産卵場と言う事である。しかし、砂が目立つようになってから、サケもワシもすっかり姿を消してしまった。つまり、産卵場が消滅し、サケの資源が消えたという訳だ。川を上ってくる筈もないサケを、ワシたちは待ち続けている。空腹に耐え、じっと川面を見続ける姿は傷ましいものだ。
川で自然産卵するサケが激減、消滅していると言うのに、サケの漁獲低迷の原因を、川に目を向けずに海に求めていることが実に不可解である。サケは、再生産を「川」で行っているのにだ。
サケの卵が育つ「川の仕組み」が壊れてしまった原因が、河川事業にあり、ダムの影響であることは明白だ。しかし、そこを追求すれば、同じ行政機関の利権構造に亀裂が入りかねない。「他国のせい」「赤潮のせい」「温暖化のせい」…と言って目を背けておけば丸く収まる。昨今は実におかしな科学がまかり通っている。専門家・科学者と自負する人たちは、正しい科学を駆使して、川の持つ再生産の力を蘇らせることに智恵を使い、力を注いでいただきたいものだ。自然の再生産の力を蘇らせ、活性化させることが、今、世界が求めるSDG’sではないのか。
餓死したオジロワシ幼鳥の胃袋からはサケの骨ではなく、カラスの羽が出てきた。ワシたちは餓死寸前だ。自然のサケ資源は、決して人間だけのものでは無い。