九州地方の豪雨災害で、川に面した斜面が次々に崩壊し、流れ出した土砂・流木が人命財産に及ぶ深刻な大災害をもたらせた。ここで、河川防災の専門家たちの言葉の使い分けが実に巧妙であることに憤る。
「深層崩壊」と、「山脚崩壊」である。
今回のニュースでは、「豪雨によって山斜面の地中深くに雨水が浸透して地表面を浮かせて滑りやすくなった為に、立木もろとも斜面がズリ落ちた「深層崩壊」という現象である」と説明をしている。これまで専門家たちは、川底が下がると川に面した山の斜面が「砂山くずし」のように崩れ落ちる「山脚崩壊」を説いてきた。しかし、それを防止する目的で治山ダムを次々に建設してきたが、そのダム自身が下流の河床を下げることになり、山脚崩壊を連鎖的に多発させ拡大する一途を辿っている。近年の豪雨で起きる災害の真相が次第に見えてきた。そこで専門家たちがあみ出した言葉が「深層崩壊」という言葉である。このまま「山脚崩壊」と解説した場合、河川の「河床低下」が問題視され、その原因を探ることになれば、これまで建設してきた「ダムの影響」が白日に曝されるからである。
2017年8月1日、豊平川上流で山が崩れるメカニズムについて考えさせられる景色が見えた。国道230号線の無意根大橋でトンネルの入口の基礎部が崩壊しているのが目にとまったのだ。
無意根大橋の上流側には巨大なダムがあり、その下流は川底が掘り下がり、川岸や山斜面が崩れる度に護岸工事が繰り返される。更に階段状にダムを造り、川底が浸食されないようにコンクリートブロックも敷き詰められている。上流にダムがある限りは、ダムの下流の川底の浸食は止まらない。
無意根大橋の下流側の両岸は、鋼鉄製の護岸に川底をコンクリートブロックで敷き詰めている。しかし、敷設後に更に川底が掘り下がり、コンクリートブロックは崩れ落ちている。隧道(トンネル)のある山斜面の下部は浸蝕されて今にも崩落しそうだ。
子どもの頃に遊んだ「砂山くずし」を思い起こしてほしい。砂山の砂を手で取り払うと、ドサッと砂山が崩れ落ちる。同様に山斜面の基礎を掘り進めばドサッと崩れ落ちることは目に見えている。大雨の洪水は川底を更に掘り下げ、山裾はより崩れやすくなり浸食の規模が拡大することは明白である。もしそうなった時、無意根大橋の隧道(トンネル)の山は、大規模に崩壊して、国道274号線と同じように深刻な災害が発生することになる。
危険度は増している。即刻、ダムの撤去が必要だ。この写真にあるすべてのダムを撤去して、川底が掘り下がらないように砂利を供給するしかない。河川防災の専門家たちは、「深層崩壊」説を唱えて誤魔化すのではなく、自ずと推奨してきたダムの影響を認め、これまで奪われてきた人命に対して負うところは全くないと言い切れる防災を願いたい。